医薬品における高度な専門知識を持ち、医薬品の普及や改良に重要な役割を担っている「医薬情報担当者(MR)」という仕事。平均より給与水準が高い傾向にあり、医療という社会貢献度の高い分野で働くことができる注目の職業です。 この記事では、医薬情報担当者の仕事内容や役割、認証試験の内容や難易度、興味を持った方に役立つ本3冊をわかりやすく紹介していきます。
医薬情報担当者(MR:Medical Representatives)とは、医薬品メーカーに所属している医薬品のスペシャリストであり、営業担当者のことです。
総合病院やクリニックなどの医療機関において医師や看護師、薬剤師に対し医薬品の効能や副作用などの情報提供をおこない、自社製品の普及を促す仕事をしています。
また、実際の医療現場で使用された医薬品の効能や副作用などのフィードバックを収集し、自社製品の品質向上や新薬の開発研究にも役立てています。
医薬情報担当者(MR)の使命は、適切な治療薬として自社の医薬品が使われるよう、的確な医薬情報の提供や集めた副作用情報のフィードバックをすることです。他業界の営業活動とは位置付けが異なり、医薬品の販売促進活動ではなく医薬品情報を扱うことが主な役割となっています。
仕事内容は、大きく分けて外勤と内勤業務に分類されます。
外勤業務がメインの仕事であり、1日の半分以上は外勤業務に充てるケースがほとんどです。車で訪問することが多く、近辺にある複数の担当医療機関を一緒に訪れます。早朝や夕方にアポイントが入ることもあるため、場合によっては家からの直行や訪問先からの直帰をします。
医療従事者は急患や緊急手術など突発的な仕事が発生することもあるため、面会やアポイントの時間確保に苦労する場合もあります。面会の場合は、診療後や患者さんの来院が空いたタイミング、ドクターの院内の移動時間などさまざまであり、面会を長時間待つこともあります。
その対策として、複数の医師や医療従事者と15分〜30分程度時間を調整し説明会を実施することもあります。通常よりまとまった時間を設定しやすく複数の方と接点が取れるメリットがあります。
医薬情報担当者は、医療現場に携わりながら薬の改良や新薬の開発のサポートができる社会貢献度の高い仕事だといえるでしょう。
また、専門性が高い仕事のため給与水準が他の業界に比べて高く、平均年収が1000万円を超える製薬会社も多数あります。医療業界のため景気に左右されにくいというメリットもあり、安定的に長く働ける仕事だといえます。
特定の資格は不要、かつ給与水準が比較的多いことから、医薬情報担当者は他業種からの転職も多く人気の職業なのです。
医薬情報担当者になるには、特定の学歴や経験は不問です。しかし、医薬品メーカーなどの医薬品を取り扱う企業に就職する必要があるため、大学卒業以上の学歴を応募資格として設けている会社がほとんどなのが現状です。
また、医薬品メーカーの他に、CSO(医薬品営業マーケティング受託機関:Contract Sales Organization)に所属し、派遣社員として医薬品メーカーで働く方法もあります。
資格がなくても医薬情報担当者として働くことはできますが、多くの人は年に1度12月に東京・大阪でおこなわれる「MR認定資格試験」を取得しています。
業界の自主認定試験であるため法的な制限はないものの、医薬情報担当者としての高度な専門知識を証明するものであり、円滑に業務をおこなう上で重要な資格となっています。
医学部または薬学部出身者で資格保持者の場合は、MR認定資格試験の全3科目のうち2科目が免除になるため、資格取得に有利です。その反面、文系・理系問わず活躍できる職種のため、出身学部にこだわる必要は特にないでしょう。
MR認定資格試験の受験資格は下記2つのいずれかであり、医薬品メーカーやCSO企業に所属している場合は、資格受験が研修のカリキュラムに含まれていることがほとんどです。
試験合格後、6カ月間のMR経験を経て、修了認定を受けた人が初めてMR認定証の交付申請をできるようになります。
試験内容は、下記3科目から構成され、医師・歯科医師・薬剤師の資格保持者は「医薬品情報」「疾病と治療」が免除されます。出題範囲は、MR認定資格試験を運営するMR認定センターが発行しているテキストから出題される選択問題です。
科目ごとに合否の判定がされ、不合格になった科目は再受験が必要になります。
昨年2019年に実施された試験の受験者数は2133人に対し合格者数は1,584人であり、合格率は743%でした。
新規受験者数は全体の77%以上を占め、それ単独の合格率は836%と高い一方で、再受験者数の合格率は437%と大きく差がある傾向にあります。
例年の受験者数全体の合格率は70%前後を推移しており、試験の難易度はそこまで高くない資格といえるでしょう。
- 著者
- 長尾 剛司
- 出版日
医薬品業界の現状と業界の基礎知識などについて、わかりやすくコンパクトに説明している入門書です。
異業種からの参入、グローバルなM&A、AI活用などの業界の最新情報から業界の基本的な仕組みや各職種の仕事内容・キャリアパスなどの基礎知識まで幅広く網羅する内容になっています。
医療業界というと「創る」「売る」、薬局で「選ぶ」イメージが強いですが、「学ぶ」「運ぶ」「払う」のカテゴリーにも分けられているため、医薬品業界の全体像が理解できるはずです。
医薬情報担当者の取り巻く環境から理解でき、目指す方にはぜひ読んでほしい1冊です。
- 著者
- 川島 和正
- 出版日
医薬情報担当者を目指している学生に向けた就職ガイドブックです。
最新のデータを基にした業界研究や医薬品企業に就職するためのノウハウや、医薬情報担当者の仕事内容を丁寧に解説し、学生でも分かりやすい内容になっています。
さらに、業界大手の人事部採用担当者や現役トップセールスである先輩の医薬情報担当者のインタビューも豊富に掲載。面接対策だけではなく、入社後のリアルなイメージも持つことができる就活生必読書ですよ。
- 著者
- ["マーシャ・エンジェル", "千絵子, 栗原", "武郎, 斉尾"]
- 出版日
ニューイングランド医学雑誌の前編集長であり、タイム誌の米国で最も影響力のある25人に選出された経験もあるエンジェル氏が、事実に基づく明確な分析で製薬業界の隠された実態や陰謀に迫っている興味深い1冊です。
本書は、アメリカの巨大製薬会社が支配する医学界に警鐘を鳴らしており、今後の製薬ビジネスにどのような影響を与えるのか気になる、とても刺激的な内容になっています。
製薬業界に関わる全ての人に読んでもらいたいおすすめの本です。
医薬情報担当者は、医療分野に貢献できる社会的意義が高く、やりがいが大きい仕事です。専門性が高いため社会的安定性や信頼を得やすい仕事の1つです。医療業界のために最前に立って貢献できることに加え、給与水準も高く、人気の職業でもあります。
医薬情報担当者として働くのに必須な資格はありませんが、多くの人は「MR認定資格」を取得し、専門的な知識をしっかりと身に付けています。そのため他業種から医薬情報担当者へ転職し、仕事をしながら認定資格を取得する人も少なくありません。
医薬情報担当者への理解を深めるためにも、記事内で紹介した本をぜひ読んでみてくださいね。