就職・転職時の仕事選びや今後のキャリアについて悩むことは、誰もが一度や二度は経験することではないでしょうか。そんな時に頼りになるのがキャリアコンサルタントです。あらゆる仕事に精通し、さらにその人に合ったアドバイスをおこなうといったキャリア構築のスペシャリストです。働き方の多様化や、若年層の早期退職問題、不景気による失業など問題が多いため、コンサルタントを常駐させる会社も増えています。 本記事ではそんなキャリアコンサルタントの魅力をはじめ、仕事内容や年収、必要な資格、適性、転職事情を紹介。また目指す方に読んでもらいたい本を3冊レコメンドしますので、こちらもぜひ参考にしてください。
キャリアコンサルタントの仕事は、勤務先によって内容が大きく異なります。民間企業と公的機関とでは違いがありますし、また同じ民間企業でも企業内でキャリアコンサルティングをする人もいれば、人材紹介企業や人材派遣企業で求職者のマッチングをおこなう人もいます。
ここではそれぞれの勤務先でどんな仕事をおこなうかを簡単に解説していきます。
民間企業での仕事は主に4つに分けられます。それぞれどんな仕事をおこなうかを見ていきましょう。
企業内でキャリアのカウンセリングやコンサルティングをおこないます。今の部署でキャリア形成していくのか、異動して別のキャリアパスを探るのか、または転職して新しいことを始めるのかなどといったことを相談者と一緒に考え、アドバイスするのが特徴です。
人事部の社員がおこなう場合もあれば、外部のキャリアコンサルタントを採用する企業もあります。
人材紹介とは、採用活動をおこなっている企業と求職活動をしている人とをマッチングさせるサービス。求職者のやりたいことや待遇面の希望を聞き出し、条件に合った企業を紹介します。
派遣先のマッチングに加え、勤め始めてからも派遣社員のフォローアップをおこないます。
派遣先に出向き、仕事は自分に合っているか、体調は良好か、人間関係で困っていないかなどをヒアリング。もし悩みがあれば改善に努めます。
キャリアコンサルタントとして企業で経験を積んでからフリーランスになる人や、起業する人もいます。人材紹介企業のなかには社長が元キャリアコンサルタントというところも多いようです。
公的機関での仕事は主に2つに分けられます。民間企業に比べると少なく感じるかもしれませんが、どちらもキャリアに悩む人を支援するには欠かせない仕事です。
大学の進路相談室で学生の質問や悩みに答えたり、生徒を対象に合同セミナーを開催し就職に関する情報を提供したりします。また、中学や高校、職業訓練校などでキャリア教育の講師を務めるキャリアコンサルタントも多くいます。
主要な勤め先は各都道府県のハローワークです。求職者に対し仕事案内をおこないます。人材紹介企業や人材派遣企業と同様、求人募集を考えている企業への営業活動もあります。
さまざまな場所で働くことができ、相談者に寄り添いながら一緒にキャリアに関する悩みを解決していくキャリアコンサルタントですが、年収における一般資料は公開されていません。
ただキャリアコンサルタントの求人を見るに、人材コンサルタントやカウンセラーなどの月給は25万〜30万円で、年収は少し幅がありますが400万〜500万円となることが多いようです。マネジメントもおこなうようなキャリアコンサルタントであれば、年収900万〜1000万が相場となります。
勤務先の違いによる年収の差はあまりないため、勤務先を金額で選ぶというよりも、どんな形でキャリアの支援に関わりたいかで決めることができる職業といえるでしょう。
専門的なスキルも必要になりそうですが、そもそも資格がなくてもできる仕事なのでしょうか。ここで解説するのでしっかりチェックしましょう。
キャリアコンサルタントは2016年から国家資格化。次の4つのレベルに分けられるようになりました。
上記4段階のレベルのうち「標準レベル」からキャリアコンサルタントを名乗ることができます。
また国家資格試験の受験には以下のいずれかの条件を満たす必要があります。
ちなみに試験費用は学科試験が8900円、実技試験(論述・面接)が2万9900円。
試験に合格すると、厚生労働省に有資格者としての登録をおこなう必要があり、手数料の8000円に加え、登録免許税が9000円かかります。
試験は年に数回、3日間にわたっておこなわれます。1日目が学科・実技論述試験で、2、3日目は実技面接試験とわけて受験するため、個別の受験も可能となっています。
それぞれ、学科は100点満点中70点、実技は150点満点中90点以上の合格基準が定められています。
なお試験範囲はキャリアコンサルティングをおこなうために必要な知識や理論にとどまらず、社会保障制度や学校教育制度の知識など、広範囲に深い理解が求められます。
一般的な常識から専門的な知識までカバーしなくてはならないため、合格率はあまり高くありません。日本キャリア開発協会が公開した過去3年分のデータを見ると、学科と実技同時受験者の合格率は以下のようになっています。
全体を通して見ても50%〜60%あたりが平均値であることが分かります。
しかしこれだけを見ると難しく感じるかもしれませんが、学科と実技を分けた合格率はそれぞれ学科69.1%、実技65.3%と同時受験より高いことが分かります。勉強する範囲が広いので、学科と実技を分けて受験することもおすすめします。
キャリアコンサルタントは、人生において切っても切り離せない「仕事」についての助言をおこなう責任の大きな職業。それを喜びと捉えるか、プレッシャーに感じるかは人それぞれですが、責任があるからこそ魅力も大きいし、反面厳しさだって相応にあるのです。
お客さんはキャリアについて悩んでいる相談者。なりたい自分になるにはどんな仕事に就くべきか、今の仕事のままで目標は達成できるのか、自分に合った仕事は何かなどの相談をしにきます。
先でも述べましたが、仕事は人生を左右するほどの大事な要因ですから相談者は真剣です。相談されるほうは手抜きなんてできません。「この人がどうしたら理想のキャリアを歩めるのか」を相手と向き合って考えるわけです。
そしてより深いつながりが生まれ、思いが共有されます。課題が解決できたり、目指すべき将来が定まったりした時などは、相談者の喜びを自分のことのように嬉しく思えるのです。
自分のことを分かっているようで分かっていないのが人間です。「自分が何をしたいのか分からない」といったフェーズからキャリアカウンセリングをおこなうこともしばしば。
経験や価値観などをヒアリングし、心の奥にあるやりたいことに気づいてもらうようにカウンセリングで導くのですが、キャリアコンサルタントになりたてのころは特に難しく感じるかもしれません。キャリアコンサルタントという職業を目指すなら、覚悟しておくべきでしょう。
相談者に信頼されてこそのキャリアコンサルタントですが、人に興味がある人が向いている職業といえるでしょう。
何が得意でどんな性格なのか、将来をイメージできているかなど、キャリアコンサルタントは相談者のことをよく知る必要があります。そのため人に興味があることが最重要。そもそも知らない人物のキャリアについて口を出す仕事ですから、人に興味がないのにキャリアコンサルタントを目指している人は少ないと思います。
またコミュニケーションで成り立つ仕事なので、相談者が心を閉ざしてはコンサルティングはできません。まだ信頼関係が築けていないのになんでもストレートに言ってしまうのはNG。相手の気持ちを考えた言葉選びができる人が適任です。
若年層の離職率の高さやキャリア形成の難しさから、最近ではハローワークや学校を始めとする公的機関にキャリアコンサルタントを常駐させていることも少なくありません。全体で見れば求人も多く、需要が増しているといえるでしょう。
しかし最近になって増加しているためか、成果を定量的に判断することの難しさからか、求人の多くは非正規雇用や業務委託の契約となっています。
正社員でなければいくつか業務委託契約を結び、生計を立てていくことも難しくはありません。しかしその場合は技能を証明できるキャリアコンサルタントの資格が必須となるでしょう。
キャリアコンサルタントは資格がなくても働くことはできますが、有資格者でなくてはその職業名を名乗ることはできません。そのため転職する方の多くが働き方に関わらず、資格を取得しているのが現状です。
- 著者
- 津田裕子
- 出版日
キャリアコンサルタントは何をする職業なのか、必要な資格と試験制度はどうなっているのか、どんなところで働くのかなど、基本的な内容を解説。
著者が実際にキャリアコンサルタントとして働いているため特に仕事紹介のセクションはリアルで、実務をイメージしやすい内容になっています。
なんとなく知っていたキャリアコンサルタントについての理解を深め、資格取得後にも実務で行き詰まった時に使える頼れる1冊となっています。
- 著者
- 原田 政樹
- 出版日
テキスト形式の解説と問題集がひとつになった国家資格の試験対策本。どの本を選べばいいのか分からないという人におすすめできる問題集です。
解説過去11回の試験内容が分析されているので、試験に出る可能性の高い問題から効率よく学べます。仕事をしながら勉強しなければならない忙しい人にぴったりです。
また解説も文章だけでなく図も使い要点がわかりやくすまとまっており、キャリアコンサルタントの予備知識があまりない人でも理解しやすい1冊になっています。
- 著者
- 木村 周
- 出版日
5度の過程を経て中身は最新!キャリアコンサルタントを目指す人や資格を取得してこれから勤務する人はもちろん、現役で頑張っている人にもおすすめの1冊です。
キャリアコンサルティングの諸理論にはじまり、人事・労務管理、メンタルヘルス、アセスメント関連、職業理解、労働法規関連、国の調査・分析資料、また新たな制度としてセルフ・キャリアドック、ストレスチェック、また第10次職業能力基本計画など、多岐にわたって学べます。
キャリアコンサルタントは仕事選び、キャリア構築といった人の人生に大きく関わる仕事。軽い気持ちで続けられる職務ではありませんが、責任が大きいぶんやりがいも十分です。またコンサルティングは相談者と二人三脚で進めていくため、深い関係性を築けるのも特徴のひとつです。
この記事を読んでキャリアコンサルタントの仕事に興味を持った方や目指す意思を固めた方は、できるだけ早めの試験対策をおすすめします。ここで紹介した3冊の書籍を手に取り、自分の理想のキャリアを実現させてくださいね。