歯科医師、歯科衛生士以外に歯科で働くことのできる職業の歯科助手。公的な資格が不要で未経験でも就職しやすい職業であり、全国どこでも働くことができます。そのため結婚を機に退職した方や、産後で社会復帰をしたいと考える方から非常に人気です。しかし実際に就職・転職をするにはどうしたらいいのか。また収入面も気になるところです。 本記事では歯科助手の働き方やおすすめの認定資格、転職事情など詳しくご紹介します。また、歯科がメインとなる書籍もあわせてご紹介します。歯科医師の道に進んでみたいと考えている方は、歯科がどういうところでどんな働き方をするのかを知っていただければ幸いです。
歯科助手とは簡単にいうと、歯科医の治療のサポートをおこなう職業です。歯科助手は国家資格ではないため、法律上で業務内容の決まりはありません。そのため、業務内容は未経験者でもおこなえる場合がほとんどです。
歯科助手の仕事は歯科医の診療の補助や事務作業です。具体的には下記のような業務があげられるでしょう。
歯科における業務は歯科医師だけでおこなうことは困難です。
たとえば歯科の治療も医師がひとりで、患者さんの歯を診ながら器具を選んでスムーズに診療をおこなうことは難しいですし、経営の面でも歯科医だけですべての仕事を回すのは困難であるといえます。そのため歯科医院では歯科助手のサポートが必要不可欠なんです。
歯科助手はよく歯科衛生士と混同されますが、異なる点が大きく分けて2つあります。
1つは資格の違いです。歯科衛生士は国家資格になりますが、歯科助手は国で認められている資格ではありません。また、歯科衛生士は医療職に分類されますが、歯科助手は一般事務に分類されます。
もう1つは 仕事内容です。歯科衛生士の仕事内容は歯科衛生士法において歯科診療補助 、歯科予防処置、歯科保健指導と位置づけられています。一方、歯科助手は歯科医療業務以外の業務となり、先ほどご紹介した歯科衛生士の仕事や歯科医の仕事を代行した場合、法律違反として罰則されることもあります。
歯科助手の収入は、新東京歯科衛生士学校の2019年の調査によると、月収の平均で約16万円とされています。年収は200万円〜300万円が一般的な数値です。基本的には高収入ではなく、また年齢や経験による上がり幅もあまり大きくはなく、最大でも450万円ほどです。
ちなみに先ほどご紹介した歯科衛生士は、同じ調査データによると約26万円となっています。歯科衛生士が国家資格であることに加え、専門的な知識を習得するのに養成学校での修業が法的に定められていることから、この違いが出ていると考えられます。
歯科助手は、将来、歯科の仕事をしたいという方がアルバイトとして働いたり、家庭と仕事を両立したいという主婦の方に多かったりする傾向にあります。そのため、歯科助手で生計を立てていこうと働いている方は少ないようです。
また、歯科助手が働く場である歯科のクリニックは個人経営のところがほとんどです。そのため、施設や地域によって給料の相場が異なるのでご紹介した給料よりも高くなったり安くなったりする可能性があります。
そもそも歯科助手という国から認められた資格はありません。そのため無資格であっても歯科で働いて歯科助手の業務をすれば、歯科助手になることはできます。
ですが、歯科助手の育成と資質の向上を目的に都道府県歯科医師会もしくは都道府県歯科医師会が適当と認める機関が認定講座を実施して歯科助手の資格認定をしています。
「日本歯科医師会歯科助手資格認定制度」では、歯科助手の資格3種類に分類しています。
平成29年に歯科医師がおこなった調査では、甲種の資格取得者数は1万8775名と他の歯科助手資格よりも資格取得者が少ないことが特徴です。そのため、就職や転職の時にこの資格が武器になるといえるでしょう。長きにわたって歯科助手として働きたいという方はぜひ取っておいてほしい認定資格です。
2つ目の乙種第一の資格取得者は、3つの資格のなかで最も多い15万5874名です。主として診療室内の仕事に従事する方に取って頂きたい資格です。
3つ目の乙種第二の資格取得者は、12万1831名です。主として事務的な仕事に従事する方に取って頂きたい資格です。
参考:日本歯科医師会/公益社団法人日本歯科医師会 歯科助手資格認定制度
この資格認定を得ておくことでどんな業務ができるのかが分かるので、就職や転職の際に有利となるでしょう。特に、歯科医師会の会員の診療所ではこれらの資格を必須とする場合が多いため、無資格で入社した方には働きながら資格を取得を勧めるというケースもあるようです。
歯科助手としての能力を客観的に示すには、他の民間資格の取得も検討していいかもしれません。
それぞれ資格を発行している機関も、試験内容も異なります。しかしこれらの資格もあわせてとって億個で、転職や就職の際には有利になるはずです。詳細が気になる方は各機関のホームページなどで確認してみてくださいね。
必須の国家資格などはなく、未経験でも働きやすい歯科助手。そういう背景もあり、異業種から未経験での転職や、歯科助手から異業種への転職と転職事情は多種多様。今回は歯科助手の気になる転職事情を詳しくご紹介します。
歯科医療の現場では歯科助手はどこも人手が足りていない場合が多く、未経験でも比較的採用されやすいのが現状です。予備知識がまったくない状態でも採用されることがあり、その場合は実務を通して経験や知識、用語を身に付けていきます。初めは大変ですが、3カ月ほどでひとりで業務をこなせるようになります。
給料は先述した内容では平均月給16万円ほどですが、前職の給料をベースに交渉する形になるので、実際には個人差があります。16万円前後の方もいれば、20万円台の方もいます。このあたりは交渉次第ですし、また経験があれば平均より高い月給になることもあるでしょう。
次に歯科助手から異業種への転職事情をご紹介します。まず転職を考える主な理由としてあげられるのは以下の3点です。
給料面は何度も書いているように、決して収入がいいとはいえません。正社員であれば年2回の賞与がありますが、問題なのは基本給の低さです。長期間勤務しても給料が大きく変わるわけではないけれど、労働時間は長く、雑務の量は多い。そういった状態のまま働き続けることができず、転職を考える方が最も多いです。
次に言われているのが教育体制が整っていないことです。大きな歯科医院の場合は歯科助手が何人かいるため、未経験でも細かくケアしてもらいながら仕事を覚えることができます。
しかし個人経営の歯科医院では、歯科医師が忙しいことに加え、歯科助手の数も最低限なため落ち着いて教えてもらえるような環境が整っていないところがほとんどです。そういった環境では仕事を覚えることも一苦労。このような実情もあり、数年間勤めて転職される方も少なくありません。
歯科助手は全国どこでも求人があるため、場所を選ばず働きたい方には最適な職業のひとつです。しかし転職しやすいことは、働きやすいこととイコールではありません。転職を考える際に気をつけたいポイントを知っておきましょう。
一番多いのはせっかく歯科助手の資格を取得し、転職もしたのにすぐに辞めてしまうケースです。そうした場合は歯科助手の仕事自体に見切りをつけるのではなく、この歯科医院は自分には合わなかったと考えて、次の転職先を探すことがおすすめです。
その際、大きな歯科医院か個人経営の歯科医院か、働く前からどちらが自分に合うのかを見極めるのは困難です。どちらでも働いてみてから自分にあっている規模の歯科医院へ再転職するのも選択肢のひとつです。
最後に歯科助手として働く上で最も気をつけたいポイントが、覚える業務や知識が比較的多いことです。また歯科医療の研究は日々進んでいますから、最新技術に関する知識はアップデートしていく必要があるでしょう。
実務以外に勉強することも多いですが、そのことをポジティブに受け取り、学びながら仕事をこなしていける方は歯科助手に向いているかもしれませんね。
- 著者
- 坂木 司
- 出版日
- 2009-04-09
大っ嫌いな歯医者で受付のアルバイトすることになる主人公が、歯科での患者さんやスタッフとのかかわりを描いた小説です。
歯の治療だけでなくそれにまつわる事情も持ち込まれ、患者さんが歯科に通う理由を深く描いています。
歯科助手という明記はありませんが、主人公がおこなっている業務はまさに歯科助手の業務と重なります。歯科助手として働く上で患者さんがどのような思いで歯科を受診しているのかを知っていただくのにぴったりの1冊です。
歯科のスタッフの関わりや、歯科での仕事についても描かれているので、歯科助手になりたいが歯科になじみのない方は歯科について勉強になるのではないでしょうか。
- 著者
- 埼玉県歯科医師会
- 出版日
歯科助手として働いていくうえで必要な知識をわかりやすくまとめた本です。歯科助手としての仕事や役割だけでなく口腔内の解剖なども詳しくのっているため、とても勉強になります。
この本はフルカラーでとても見やすいことが特徴です。また、一般財団法人口腔保険協会からの出版ということもあり、実践に沿った内容が多いことも魅力です。
本気で歯科助手を目指す方には参考書としても活用できるのでぜひお使いいただきたい1冊です。また、歯科助手になってからも参考になる内容が多いので長期的に使えるのではないでしょうか。
- 著者
- 若林 健史
- 出版日
患者さんが歯科に関して普段から思っているさまざまな疑問を、歯科医師が丁寧に解説する1冊です。
歯の治療などは医師に質問する方が多いですが、なぜ予約制なのか? なぜ1回で終わらないのか?などといった疑問は、受付にいて気軽に声をかけやすい歯科助手に向けられることが多いです。そういう時にでも丁寧に答えられるヒントがたくさん隠れています。
歯科になじみがないという方、歯科についての理解が浅い方に読んでいただきたい本です。歯科を理解することで歯科助手の仕事がより楽しく働きやすくなるのではないでしょうか。
歯科助手は未経験、無資格でも始められる職業であり、年齢の制限もないためチャレンジがしやすいのではないでしょうか。
歯科助手として働いている方のなかには、レベルアップとして歯科衛生士にチャレンジする方もいます。歯科の分野で働き続けたいという方や歯科の基本を現場で学びたいという方に歯科助手はおすすめの仕事といえます。
ここでご紹介した書籍で歯科について理解を深め、歯科助手という職業が気になる方はせひチャレンジしてほしいと思います。