ホテルでの仕事といえば、フロントで働く姿がぱっと思い浮かぶ人は多いのではないでしょうか。ホテルのフロントはゲストが一番に顔を合わせる、いわばホテルへの印象を左右する重要な仕事です。 本記事では、ホテルへの就職を目指す方へ「どうしたらホテルフロントで働けるの?」「どんな学校に行けばいいの?」といった疑問にお答えし、就職の近道になるヒントもお伝えしていきます。 ホテルフロントで働く予定がなくても、ホテルに泊まるのが今までより楽しくなるようなホテルマンの魅力や関連書籍もご紹介します。接客業界に興味があるという方は、ぜひチェックしてみてください。
ホテルフロントの仕事
ホテルのフロントは主に「フロントデスク」と呼ばれます。カウンターで接客業務をおこなう部署です。具体的には下記のような業務をおこなっています。
他にも荷物の預かりや周辺施設・観光スポットの案内、外貨の両替などをおこなっているホテルもあります。
ホテルではフロント単独でサービスを提供する場面は少なく、常にベルスタッフ・ドアマン・ハウスキーピング・レストランなどと連携して、質の高いサービスを提供しています。
時には、フロントを含めたホテル全体で連携し、プロポーズなどの一大イベントを演出をすることもあります。部署内にとどまらず、ホテルでは常にチームワークが大切になります。
客室からの電話やレストランの予約をフロントで受付し、各部署に連絡をしたりすることも多いためホテルの中の司令塔的存在でもあります。
ホテルフロント以外の仕事にも興味がある方は、ぜひお金を貯めて自分の働きたいホテルに一度宿泊してみるとよいでしょう。
視点を変えてホテルマンの働きぶりをみることで、いかにチームワークで仕事が成り立っているかに気づくはずです。
◾️コンシェルジュとの違いは?
ホテルに関連しフロントの次に思い浮かぶ仕事として「コンシェルジュ」があります。
フロントとの違いとして、コンシェルジュはホテル内ではなく、ホテル外の案内をすることが主な業務です。ホテル周辺のお店の情報や、楽しめる場所などをゲストに聞かれた際、持っている知識から案内をしたり、知らない情報があれば調べたりしてゲストの記憶に残る旅行をサポートします。
その他にもチケットの手配やさまざまなサービスの予約、旅行プランなどの作成もおこないます。またフロントとは別にコンシェルジュデスクを設けているホテルは数多くあります。
年収で考えると300万〜400万円の間程度とあまり水準は高い方ではないようです。
ホテルは24時間体制で営業していることが前提ですので、基本的にはシフト制です。生活リズムを一定に保つことが難しく、夜勤もあります。
マネージャークラスになると年収も上がり、ホテルによっては1000万円近く稼ぐ人もいます。どちらかというと、国内企業よりリッツカールトンやパークハイアット、アマンなどの外資系ホテルの方が給料の水準は高い傾向にあります。
専門学校か大学卒業を目標に
観光系の専門学校や同じく観光系の学部のある大学にいくと、就職の際に役立つ情報を学べるでしょう。観光系の専門学校は、カリキュラムに語学の授業が組み込まれていることがほとんどです。大学でも語学系の学部出身の方が入社するケースはよくあります。
就職試験を受けるホテルによっては、語学力の一定基準を設けていることも。特にホテルフロントは英語で電話を受けたり、接客する場面が多く、基準をクリアしていないと就職試験を受ける資格が得られないケースもあります。
上に載せたのはあくまで目安の基準ではありますが、履歴書に記載できれば武器となります。入社したいホテルが決まっている方は、これらの情報を就活口コミサイトなどでも調べてみましょう。
もちろん新卒入社だけでなく、中途採用やアルバイトから内部登用されて正社員になる方法もあります。新卒・中途に関係なく、ホテルを利用したことがある、バイトの経験からホテルで活かせることがあるといった方は面接で有利になることもあります。
ホテルに就職する際に、国家資格は必要ありません。しかし、先ほどお伝えした通り外資系ホテルでは一定の語学力が求められることがほとんどです。
語学以外に持っていると就職時に有利になる可能性のある検定をご紹介します。
◾️ビジネス能力検定試験
「ビジネス能力検定試験」では、社会人に必要な仕事の能力を評価します。就活前におさえておきたいビジネスの基本的な知識・マナーが問われます。職種・性別関係なくさまざまな人が受験しており、合格率は3級82.2%、2級70.4%、1級35.2%となっています。
◾️秘書検定
相手に「感じがよい」と思われるようなコミュニケーションの取り方を徹底して学びたい人は「秘書検定」がおすすめです。秘書検定では「人柄のよい人」の育成を目指しています。表情、態度、振る舞い、言葉遣い、話し方などが問われます。全級を通して理論と実践それぞれ60%以上の正答率で合格となります。
合格率は3級52.5%、2級48.9%、準1級44.1%、1級25.3%となっています。全119回を通して約400万人の合格者がおり、人気の検定だということが分かりますね。
◾️ホテルビジネス能力検定試験
「ホテルビジネス能力検定試験」はホテルの実務知識の体系的理解度を測定するための評価基準となる検定試験と言われており、よりホテルの仕事に特化した能力検定となっています。
宿泊、宴会などのサービスオペレーションから経理会計などのマネジメント業務など、ホテル業務に関する実務知識の習得を目指します。体系的な知識を身に付けられる検定ですので、ホテル業界志望の学生の団体受験が多いようです。
級は3つにわかれており、それぞれの合格率はベーシックレベル2級67.9%、ベーシックレベル1級56.3%、マネジメントレベル40.5%となっています。受験者数は年々増加しており、こちらも人気の資格だということが分かります。
なんと言っても「ホスピタリティ(おもてなしの心)」を持った人はホテル業界に向いているといえます。ホテルフロントはデスクで立ちっぱなしで業務に当たることが多いため、体力がある方は活躍できるでしょう。精神面では、ゲストの繊細な情報を取り扱うことも多いため、正確な仕事ぶりが求められます。
余談ではありますが、ある男性が家族と利用したことのあるホテルに不倫相手と何度も訪れているケースがありました。その男性が次に家族と来館した際「〇〇様、先日もご利用ありがとうございます」と言ってしまい、奥さんに不倫がバレてとんでもないクレームに繋がってしまった……というエピソードもあるくらいです。ホテル業務では基本のマナーや知識以上に、守秘義務も重要視されています。
- 著者
- 日本外国語専門学校 国際ホテル科
- 出版日
「すぐにでもホテルで働きたい」「よりホテルに特化した英語を習得したい」という方には、ホテルの仕事現場でそのまま使える英会話を学べる、こちらのテキストがおすすめです。
通常の英会話と違って、ホテルではよりフォーマルな表現の英語力が問われます。国際的名門ホテル出身の一流教師陣が自身のホテルでの勤務経験から、ホテルの仕事現場でそのまま使える英語表現・臨場感のあるエピソードを掲載しています。
実際に現場で働く先輩ホテリエたちのエピソードも紹介されていますので、より現実味のあるエピソードを知ることができるでしょう。
- 著者
- 高野 登
- 出版日
お客様を満足させるサービスやサプライズを成功へ導くアイデアなど、ホテルマンには臨機応変な対応力が求められます。
著者である高野登さんは「専門学校日本ホテルスクール」を卒業し、日本リッツ・カールトンの社長にまで登り詰めた人物。
その高野さん自ら筆をとり「想像力」を使ってサービスの可能性を広げるためのヒントが書き綴られています。ホテルに限らず、社会人として人と接する機会がある方、「もっと仕事ができるようになりたい!」という方が実践できる内容も載っています。
- 著者
- ["柴田 秋雄", "瀧森 古都"]
- 出版日
「日本でいちばん心温まるホテル」と言われたホテルアソシア名古屋ターミナル。現在は残念ながら閉館してしまった当ホテルを舞台にした4つの物語を掲載。
著者であり、ホテルの元総支配人である柴田秋雄さんの方針である「顧客満足よりも従業員満足」が、これほど言葉通りに体現された仕事場はなかなか見かけません。
ホテルで働く従業員にも、ホテルにやってくるゲストにも焦点があてられています。物語すべてが本当にあったエピソードをもとにしており、ホテルへの興味がなくても感動してしまうはず。
サービスという言葉に限らず、人を思いやることを考えさせられる1冊です。
今回は、ホテルフロントの仕事内容や、持っていると有利な検定などをご紹介しました。
「やっぱりホテルマンはかっこいい!」と感じた方は、ぜひ働く側の視点でホテルを訪れてみるとよいでしょう。休みなく立ち回る様子や外国語での対応を目の当たりにすることで「自分が勉強しなくてはいけないこと」「今の自分には足りないこと」などが見えてくるはずです。
就職は、新卒だけではなく中途採用の道も開かれています。必須の資格がないことで可能な道ではありますが、就活の際に有利と考えられている資格は取得しておいた方がよいでしょう。
ご紹介したホテルフロント以外にもホテルの中にはたくさんの仕事が存在しますので、興味のある方はぜひ調べてみてください!