ホテルや高級レストランなどで働いているイメージのある職業「ソムリエ」。豊富なワインの知識を用いて、ワインに関係するさまざまな場所で活躍することができるお仕事です。ソムリエのテイスティングの仕草には目を奪われる部分がありますよね。 ソムリエになるためには、どのような資格やスキルが必要なのでしょうか?この記事では、気になるソムリエの働き方、年収、などをご紹介した後に、ソムリエになるためには必須資格と言われているソムリエ試験の対策本をご紹介します。ワインが好きという人は、資格の取得を検討してみてもいいかもしれません。
ワイン好きが増えたことによって、「ソムリエ」という職業にも注目が集まっています。ソムリエとは、ワインの知識を専門に持っている人で、レストランなどでお客さんがワインを選ぶのを助けたりする、ワイン専門の給仕をする人です。
フランスやイタリアではソムリエの国家資格がありますが、日本では国家資格ではなく、民間資格となります。
ソムリエは職業の名前であり、資格の名前でもあるので、資格がなくてもソムリエと名乗ることは間違いではありませんが、多くの場合は試験に合格した人がソムリエを名乗っています。また、資格を持っていることが知識を証明し信用にもつながるので、必須資格であるといえます。
ソムリエ資格を持った方が活躍している職場は複数あります。
まずはお客さまに直接ワインを提供する場があげられます。こちらは一般的な職場のイメージではないでしょうか。またそれ以外にも、飲食店のコンサルティング会社、ワインの輸入会社などもあります。ワインを取り扱う場所においてソムリエは重宝され、活躍できると考えてよさそうですね。
ソムリエの給料は厚生労働省が公開した「賃金構造基本統計調査の職種別賃金額」によれば、2015年時点での月給は約20万円となっています。こちらはソムリエではなく給仕従事者としての平均値ですから、ソムリエの給与水準はもう少し高いと考えていいでしょう。
また年収は300万〜600万円ほどが一般的ですが、キャリアやお店のグレードによっても差があります。また、キャリアを磨いていくことによって年収1万円程度に到達する方も一部います。ソムリエとしての知名度をあげることがいちばん年収に反映されますから、全日本最優秀ソムリエコンクールなどの大会に出場するのもいいでしょう。日々鍛えたソムリエとしての技術を客観的に評価される場所での経験は、キャリアにもいきるはずです。
ソムリエの適正がある人としては、第一に、当たり前ですが「ワインが好きであること」があげられます。ソムリエにワインを選んでもらうようなお客さんは、ワインに関する知識はなくても、ワイン好きがほとんどです。ワインが好きでない人というのは、それだけで信用され辛いです。
また、レストランなどでは、食事に合わせてワインを選択する「ペアリング」もおこなう必要がありますので、ワインだけではなく「食事についても興味がある人」が好ましいです。「ソースにつかわれているオレンジの風味などと、このワインの香りがマッチします」などの説明をするためには、メニューを熟知する必要があります。
そして、「探究心」も必要です。ワインといえばフランスとイタリアが有名ですが、ドイツ、スペインやカルフォルニア、オーストラリア産のワインなどもあります。また最近ではイスラエルワインなどにも注目が集まっています。よりよいワインを選ぶには探究心をもって、世界各地で作られているワインについての情報を集め、積極的に味わい、それぞれの特徴をきちんと記憶することが大切です。
この3つの特徴がある人は、ソムリエの適正があるといえます。
前述した通り、「ソムリエになりたい」と考えた場合、ソムリエ試験に合格するというのは非常に重要です。
日本では、日本ソムリエ協会(JSA)と全日本ソムリエ連盟(ANSA)の2つの民間団体がソムリエ認定試験をおこななっています。日本のレストランで見かける、ブドウのバッジをつけているソムリエは、日本ソムリエ協会の試験を突破したという証です。
どちらの民間団体の試験も正式なものですが、日本ソムリエ境界の資格保有者は3.3万人程度、全日本ソムリエ連盟の資格保有者数は3300人ですので、人数から考えて業界スタンダードといえるのは、日本ソムリエ協会の資格でしょう。ここでは、日本ソムリエ協会の試験について、説明したいと思います。
日本ソムリエ協会でソムリエの試験を受験するには、飲食店、あるいはワインに関連する職業にフルタイムで3年以上働いていること、1次試験当日に現職である必要があります。ソムリエを目指すにはまずそれなりの経験値を積むことが必須なのです。
そして日本ソムリエ協会の試験は、筆記試験・テイスティング・実技試験の3つのパートからなります。
◾️一次試験
一次試験「筆記試験」では、ワインに関する知識が問われます。ワインの種類や銘柄、産地、ブドウの品種などが問われます。2018年より、全国にあるテストセンターと呼ばれる会場で受験するコンピューターを使ったCBT形式になっています。
◾️二次試験
筆記試験に合格すると、二次試験「テイスティング」を受験することができます。例年、テイスティング試験は10月におこなわれます。テイスティングでは、お酒の入った5つのテイスティンググラスが出されます。
外観、香り、味などから判断して、ワインの品種、生産国、ヴィンテージを答え、テイスティングコメントを記入する、という試験内容になります。
また、5つのテイスティンググラスのうち、2つはシェリーやウィスキーなどワイン以外のお酒ですので、ワイン以外のお酒の知識も多少必要になります。
◾️三次試験
テイスティング試験に合格した後、最後におこなわれるのが、三次試験の「実技試験」です。実技試験では、実際にワインをサーブします。ソムリエナイフなど用意された道具を用いて、ワインを正しく提供できるかがチェックされます。試験は、例年11月におこなわれます。
◾️試験免除の制度も
一次試験・二次試験は受かったけれど、その後の試験で落ちてしまった場合は、翌5年間のうち3回までは、合格した分の試験が免除されます。初回の試験で合格できなくても、その後の再チャレンジがしやすい嬉しい制度ですよね。
ソムリエ試験は難易度が高いと言われています。それは合格率をみる限り一目瞭然です。
2015年:40.9%
2016年:29.0%
2017年:23.5%
2018年:26.5%
2015年までは例年40%前後で推移していましたが、2016年以降は30%未満の合格率が続いています。これは2016年にソムリエとワインアドバイザーが統一されたためと考えられます。また増加傾向にあっったソムリエの技術や質の向上のため、意図的に試験内容が難しくなっている可能性もあります。
お酒の仕事をしていない、または従業年数が3年に満たない人にむけて「ワインエキスパート」という資格もあります。
こちらは、一次試験「筆記試験」・二次次試験「テイスティング」は共通ですが、三次試験「実技試験」がありません。
ワインエキスパートの資格は、ソムリエ資格に準ずるものとしてワイン業界でも認められていますので、飲食店のコンサルティング会社、ワインの輸入会社などワインを直接サーブしないような場所で活躍したい方はこちらの資格でもよいかもしれません。 ぜひ検討してみてくださいね。
難易度の高さから完全に独学で試験にのぞむことは難しく、多くの受験者はワインスクールに通ったり、対策講座を受けたりしながら受験対策をおこなっています。
しかし、ワインスクールでは正しい知識や試験のコツなどを習うことができますが、受講料が高額なことと、時間がない人にとっては通い続けるのが難しいという難点があります。そうなると独学が勉強の軸となることも少なくないでしょう。
ここでは独学で勉強する人に向けて、おすすめの本と参考書を3冊ご紹介します。
- 著者
- []
- 出版日
『ワインとグルメの資格と教室2020』は、ソムリエ試験を受験する人の必須本とも言われています。20年近く前から発売されており、毎年改訂されています。
この本の中には、ソムリエ試験が実際にどういう風におこなわれるか、合格者のインタビュー、ワインスクールの紹介、などが掲載されています。この本だけで、ソムリエ試験の試験対策をおこなうことはできないものの、ソムリエ試験を初めて受験する人にとって、ガイドブックとなる本です。
また、2013年から2017年までの5年分の過去問が解説つきで収録されていますので、こちらも活用できます。
2018年からはコンピューターでランダムに問題が出題されるCBT形式が採用されているため、受験対策が難しくなっているそうですが、それでも過去5年間分の問題を網羅しておくことははずせないでしょう。
三次試験の実技については、日本ソムリエ協会のテキストやビデオを見て、道具を揃え、実践練習をおこなう必要があります。また、三次試験対策の講座なども開催されています。こういった内容についても、『ワインとグルメの資格と教室 2020』の中に書かれていますので、こちらをベースに対策方法を練ることができます。
- 著者
- 杉山 明日香
- 出版日
こちらは筆記試験用の対策本です。ソムリエ試験の問題は、ソムリエ協会の教本から出題されます。したがって、ソムリエ協会の教本を丸暗記できれば確実に合格できるのですが、非常に分厚いテキストですので、実質的には不可能といえます。
こちらの本では重要なポイントだけが解説されており、この本の内容を覚えると90%くらいの正答率をだせると言われています。
またソムリエ協会の教本は毎年発行されるのですが、それにしたがって、こちらの本も改訂されています。ワインの世界は変化が早いので、受験する年のものを購入することがおすすめですよ。
また、地図帳が掲載されているのも魅力的です。ワインの産地はただ地名を字面で覚えるのではなく、地図とセットで覚えることで格段に覚えやすくなります。
- 著者
- 久保將
- 出版日
テイスティング試験用の対策本です。
テイスティング試験では、ワインの品種、生産国、ヴィンテージを答えるだけでなく、テイスティングコメントを記入する必要があります。
また、テイスティングコメントは、ソムリエ協会の方針に沿って、採点されます。この「ソムリエ協会の方針」に沿って、テイスティングについて初歩から説明しているのがこちらの本なんです。
別冊付録としてついてくる「ソムリエ・ワインアドバイザー・ワインエキスパート呼称資格認定試験・二次攻略テクニック」も、テイスティング試験対策としてぴったりの1冊なので、あわせて勉強してみるのもいいかもしれません。
ソムリエは専門知識を有するプロフェッショナルであることが伝わったのではないでしょうか。
ワインに関する豊富な知識に基づいてお客様の食事の体験をグレードアップする、全世界からどのワインをインポートするか選別する。こういった仕事内容に興味がある人にとって、ソムリエ試験は必須項目となります。受験には実務経験が必須となり、難易度は高いです。しかし「ワインが好き」「ワインについてもっと知りたい」という人にとっては、ぜひ取得してほしい資格でもあります。
今回紹介した書籍などを用いて効率よく試験対策をおこない、試験合格を目指してみてください。資格を取得すればもっとワインの世界が楽しくなることは間違いないはずです。