世間から金の亡者と呼ばれ逮捕までされた「ホリエモン」こと堀江貴文さんは、どのような人なのでしょうか。 今回紹介する『ゼロ なにもない自分に小さなイチを足していく』は、彼の著書のなかでもっとも大衆寄りといえる一作。優しい言葉で「何のために働くのか」「仕事のやりがいとは」「お金よりも大切なものとは」などを見つめ直すきっかけを与えてくれます。本記事では、堀江貴文の半生や、書籍から学ぶべきポイントをわかりやすく説明していきます。
『ゼロ なにもない自分に小さなイチを足していく』は、2013年10月に出版された堀江貴文の自叙伝的一冊です。実業家として一世を風靡した彼ですが、2006年、33歳のときに証券取引法違反で逮捕され、懲役2年6カ月の実刑判決を下されます。このことは大きなニュースとなり、彼の世間からの評価は一変しました。
本書の刊行直後、2013年11月に刑期を終了し、「ゼロ」からのスタートを切った堀江貴文。本作には、今まであまり語られることのなかった彼の半生や、獄中でも彼が持ち続けた「希望」について、ありのままの本心が語られています。
2006年1月、堀江貴文33歳のとき、証券取引法違反で逮捕される。そして、懲役2年6カ月の実刑判決を下された。
あまりの突然な出来事に衝撃を受けて人生のどん底を味わったが、彼は逮捕・服役の経験を「この出来事でマイナスになるわけではなくゼロに戻るだけだ」と考え、ポジティブに捉えました。
刑期を終了し、自由の身に戻った彼が、出所した直後に「伝えたいことがある」という理由で書かれた本書。 働く理由と仕事のやりがいは何か、お金よりも大切なものはあるのか、素直な気持ちで語ります。
第0章 それでも僕は働きたい─刑務所にて服役後、自由の身となった堀江貴文は何を考えるか。─
第1章 働きなさい、と母は言った─はじめて語る父・母について。そしてある仕事と出会うことに。─
第2章 仕事を選び、自分を選ぶ─「失敗したところでマイナスになるわけではない」と思えるようになるまで。─
第3章 カネのために働くのか?─孤独と向き合う強さを持ち、「もらう」から「稼ぐ」へ。─
第4章 自立の先にあるつながり─自分の頭で物事を考えていくためには自立すること。─
第5章 僕が働くほんとうの理由─お金のためとは別に他の目的を持って働くことができたらなら。─
堀江貴文が生まれたのは福岡の田舎町。父は日産のトラックのセールスマン、母はとにかく激しく、どこまでも不器用な人だったそうです。
彼の第一の転機は小学3年生の時でした。「みんなに合わせなさい」という考えがなく、個性を伸ばせという教育をしていた担任の先生が、他の生徒よりもダントツで成績の良かった彼に進学塾をすすめたのです。のちに彼はこの先生に出会っていなかったら、今の自分はどうなっていたのだろうと語っています。
彼が中学に進むと同じ頃、コンピュータという存在が現れました。中学校の合格祝いに買ってもらったコンピュータで、彼はプログラミングに熱中し始めます。ファミコンのように誰かが作った世界で遊ばされるのではなく、自分が遊ぶ世界を自分で作るという創造性に、夢中になりました。彼はこの頃から「コンピューターが作る未来」を予感していたそうです。現在ではずいぶんと馴染み深くとなっているプログラミングに当時から目を向けていたのは、さすがホリエモンと言えますね。
しかし、プログラミングに熱中しすぎるあまり、中学では落ちこぼれになってしまいます。その後、高校へと進学し、遊びを覚えさらに没落していきました。
そんな没落した人生から抜け出すために、彼は進路先に「東大」を選びます。受験勉強では、「勉強とは大人を説得するツールだ」という考えを元に猛勉強。小学生の頃に百科事典を覚えるのが趣味だったことがここで発揮されます。
必死の努力の末東大に合格することができましたが、思っていた世界ではなく、彼は東大に幻滅してしまいます。そんななかでもヒッチハイクや塾のアルバイトなどで学びを得ていったある日、彼は「あるもの」と人生において決定的な出会いをすることとなります。
あるものとは、「インターネット」でした。その圧倒的な自由さに無限の可能性を感じ、彼は起業する決意をします。東京大学在学中のことでした。会社の設立資金を貯める時間が惜しいと600万円の借金をして、のちのライブドアとなる最初の会社を立ち上げたのです。
そこから10年はいろいろなところで語られている激動の時代。インターネットバブル期の「時代の寵児」は、このような半生から生まれました。
堀江貴文はよく若者から、「成功へのショートカット」や「掛け算」で成果が出せるものはないのか?という質問を受けるといいます。もちろんノウハウや知識などで「掛け算」は可能なものの、まず「足し算」(地道な努力で少しずつ積み重ねること)が必要であると彼は強調しています。
一例として、ビジネススキルを上げるためにビジネス書を読んでも、一向に成果が表れないことが当てはまります。1と1をいくら掛け算しても1のまま。知識やテクニックを覚えるのは、その「イチ」を足し算で積み重ねた後の話です。では、いかにして「イチ」を積み重ねていくのでしょうか?
勉強でも仕事でも、あるいはコンピュータのプログラミングでもそうですが、歯を食いしばって努力したところで大した成果は得られないと彼は言います。努力するのではなく、その作業に「ハマる」こと。何もかも忘れるくらいに没頭すること。それさえできれば、参考書の丸暗記だって楽しくなってくるのです。そしてそれが仕事を好きになることにつながっていきます。
「ハマる」ために有効なこととして、彼は「自分の手でルールをつくること」をおすすめしています。ダイエットであれば「1日30分運動する」というノルマを設定し、来る日も来る日も「今日の目標」を達成することだけを考える、というものです。それがどんなに小さな「イチ」であっても、地道に足し算をしていけば、確実に歩みを進めて目標へ近づくことができます。
踏み出すのにとても勇気がいる「大きな一歩」ではなく、今すぐ踏み出せる「小さな一歩」を見つけて、着実に「足し算」して行くことが大切なのです。
堀江貴文は大学時代、友人とヒッチハイクで日本全国を旅して回ろうと計画し、北海道以外の全国をヒッチハイクで制覇しました。ヒッチハイクには、お金がなくても勇気一つでどこにでも行ける圧倒的な自由があります。彼はヒッチハイクで小さな成功体験を積み重ねることにより、コンプレックスだらけの自分に自信を持てるようになったと言います。
ヒッチハイクに誘われた時に行ってみるのか、イベントに誘われた時に参加してみるのか、イベント会場で積極的に話しかけようとするのか……。人生とは、こうした小さな選択の積み重ねによって決まってきます。チャンスはだれにでも平等にやってきますが、問題は目の前に現れたチャンスに迷いなく飛びつくことができるかどうかです。
「チャンスに飛びつく力」は、人としての「ノリの良さ」だと彼は主張します。小さな成功体験の前には小さなチャレンジがあり、そしてその小さなチャレンジとは「ノリの良さ」から始まります。そんな成功体験から「自分にもこんな大胆なことができるんだ!」という自己達成感を獲得することができるのです。
何かを待っているだけの受動的な人間ではなく、勇気を持って自分の意思で一歩前に踏み出すような能動的な人間になることが、人生において重要になってきます。
また、堀江氏の著書『他動力』では、興味のあることにどんどんチャレンジしていく、「他動力」こそがこれからの時代に必要なスキルだと説いています。
多動力について気になる方はこちらの記事をどうぞ。
<「多動力」とは何か徹底解説!ホリエモンが考える現代を生き抜く必須スキル!>
緊張してしまうのは自分の「自信」の問題であり、自信がない人は自信を形成するための「経験」が圧倒的に不足している、と彼は言います。そして経験は時間が与えてくれるものでもないようです。
では、緊張してしまったり、恐れから行動できなくなるのはなぜなのでしょうか?
それは最初から「できるわけない」とあきらめているからです。できっこない、という心の壁を取り除くことで、行動ができるようになります。やりたいことがたくさんある人は全ての物事に対して「できる!」と確信しているから好奇心が湧いてくるのです。
仕事でも勉強でもあるいは恋愛でも人は「できない理由」から考えると、どんどんネガティブになっていきます。自分がいかにダメなのか、不幸で恵まれない人間なのか、どんなにモテない人間なのか。そんなことばかりが頭をよぎり、行動が難しくなってしまうのです。何でもできる人とそうでない人の違いは能力の差ではなく、意識の差ということになります。
できないというフィルターを外して、何事も「できる!」という前提に立ち、そこからできる理由を考えることです。「起業なんて自分にはできるわけがない」と考えてしまっている人は、実際は15人に1人が経営者であるという事実を知り、「起業はそんなに難しいことではない」と考えることで行動できるようになります。
彼は、服役中はいつも「ここから出たら早く働きたい」と思っていたそうです。
人生の中で仕事はもっとも多くの時間を投じるものの一つになります。そこを我慢の時間にしてしまうのは、どう考えても間違っています。多くのサラリーマンは労働をお金に換えているのではなく、自分の時間をお金に換えてしまっているのが現状です。
お金(給料)とは「もらうもの」ではなく「稼ぐもの」だと彼は主張します。自分は「時間」以外のなにを提供できるのか?それは知識だったり、スキルだったりしますが、彼は自分が他に貢献できるものについてもっと真剣に考えなければならないと言います。
さらに、仕事のやりがいについても語っており、やりがいは見つけるものではなく、自らの手で「つくる」ものとしています。たとえばマニュアル通りに仕事をこなすのではなく、もっとうまくできる方法はないかと自分の頭で考える。そんな能動的な行動を続けることで、「与えられた」仕事が「作り出す」仕事に変わっていくことになるのです。
彼にとって、銀行からお金を借りることは時間を信用で買っているということだといいます。これからの時代を生きるためには「お金」ではなく「信用」に投資することが求められます。困難に陥ったとき、人生が終わってしまうようなピンチに出会ってしまったときに、救ってくれるのはお金ではなく信用です。
では、信用に投資するとはどういうことなのでしょうか?
何にもないゼロの人が「私を信じてください」と言ってもなかなか信用してもらえません。それでもひとりだけ確実に信用してくれる人がいます。それは、自分です。
そして、自分に寄せる強固な信用を「自信」というのです。成功体験を積み重ねることで自信が持てるようになると堂々と人と接することができるし、多少難しいような仕事でも「できます」と即答できるようになります。自分を信じて日々の仕事をこなしていくと、上司から新規事業を任された時には自信をもって返事することができます。
自身を持って少しだけ背伸びをすることは悪いことではなく、他者から信用してもらうためには乗り越えなければいけないハードルでもあります。
- 著者
- 堀江 貴文
- 出版日
- 2015-12-05
「やりたくないけど、家族や友達から言われたから仕方なくやっている。」
「間違っているのではないかと思っていても、上司からの命令には逆らえない。」
このように日常の中で、本音を言わず、本心を殺して過ごしてしまうことは多いもの。こちらの本では、「やるべきことをやり、言うべきことを言う」、後悔しない生き方を紹介しています。一度きりの人生だからこそ、後悔もなくワクワクできるような人生を歩みたい、という思いを後押ししてくれる一冊です。
「ゼロ」を読んで堀江貴文の生き方に興味を持った方は、ぜひこちらも読んでみてください。
東京改造計画
2020年05月30日
こちらは2020年5月30日に発売された書籍。今、彼が何を考えているのかがはっきりと理解できます。
コロナ時代の日本や東京の未来を危惧して、VRライブのインフラ整備、オンライン授業の推進、コロナウィルス対策、ネット選挙の導入、世界一の暇つぶし都市……など、計37の東京改造計画を訴えています。
「今こそ、未来のために立ち上がろう」という強い思いが伝わってくる内容になっています。
信用経済3.0 個人の信用をお金にできる時代を私は創造してゆく
時代は組織で稼ぐ、個人が稼ぐ時代から、個人が信用を得る時代へ。信用の経済についてもっと知りたい方におすすめの一冊です。
信用経済の進化の過程のなかで、今時代はまさに信用経済2.0から3.0に移りゆこうとしています。この変化に順応するためには経済の「今」を知る必要があります。
本書ではお金の歴史から経済の流れを解説し、どのように信用経済に辿り着いたのか?信用経済において経済を回す要因は何か?どうしたらこの時代にお金を持つことができるのか?について、その本質を見極めていきます。
いかがだったでしょうか。今回は、堀江貴文の書籍『ゼロ なにもない自分に小さなイチを足していく』から学べる内容について紹介しました。激動の人生を歩んできた著者の言葉から、考えさせられることは多いと思います。また、どんなに失敗しても、諦めなければ必ず前に進める、と前向きな気持になれるはずです。ぜひ、実際に手にとって読んでみてください。