人間にはいつか必ず死が訪れ、故人を悼む葬儀がおこなわれます。深い悲しみに包まれる葬儀において、人の死に向き合いながら仕事をおこなうのが納棺師です。納棺師は「おくりびと」とも言われ、故人を棺に納める仕事のほか、葬儀を執りおこなうための幅広い仕事を担当しています。精神的なタフさが求められるものの、なくてはならない仕事であり、誇りを持って取り組める仕事といえるでしょう。 今回は、納棺師という仕事について、仕事内容や給料、就職先や役立つ資格などを詳しく解説していきます。納棺師について知ることができる本もご紹介するので、気になった方はぜひ手に取ってみてくださいね。
納棺師は、葬儀というシーンで人の死に向き合う特殊な仕事です。棺に故人を納めるという仕事はもちろん、葬儀社のスタッフのひとりとして、葬儀に関わる仕事を幅広くおこなう必要があります。
地域のしきたりや葬儀の規模によって業務は異なりますが、主な仕事内容をチェックしていきましょう。
納棺師は、映画「おくりびと」でも描かれたことでも知られています。故人を棺に納め、葬儀にお送りする役目があり、そのために遺体と向き合い、管理するという大切な仕事です。
遺体の状態に応じて、特殊な技術や薬品などを使って、腐敗をおさえたり、修復したりするなど、直接遺体に触れながら管理をおこないます。
顔そりや化粧をしたり、表情を変えたりするなど、最期に美しい姿に整えるのも納棺師の仕事です。遺族に寄り添いながら作業を行い、安らかに見送る手助けをする重要な役割を担っています。
納棺業務を専門に扱う業者ではなく、葬儀社スタッフとして納棺業務に携わることも多いです。葬儀では、葬儀の手配から司会進行、片付け、事務作業などたくさんの仕事があります。
納棺業務はそのうちのひとつであり、幅広い仕事を担うことになるでしょう。納棺業務に携われないことも考えられるので、あらかじめ理解した上で働く場所を選ぶことが大切です。
納棺師として働くためには、特別な資格は必要ありません。他の職種と同じく、専門学校から就職する方法の他にも、いくつかのなり方があります。主な納棺師へのなり方を3つご紹介していきます。
納棺業務や遺体を清める湯灌(ゆかん)などを専門に扱う業者があります。専門学校や大学を卒業し、専門業者に就職することで、納棺・湯灌(ゆかん)を専門におこなう仕事に従事できます。
専門学校・大学といっても、納棺師になるための学校はありません。葬祭やセレモニーなどを学べる学校で、衛生学や司会業務講習、マナー講座などを受講し、知識を身に付けることになります。
必ずしも納棺業務に携われるとは限りませんが、葬儀社に就職するのも方法のひとつです。葬儀に関わる幅広い仕事の中のひとつとして、納棺や湯灌(ゆかん)をおこなうことになるでしょう。
納棺・湯灌(ゆかん)はもちろん、葬儀全般に関わりたいという方は、葬儀社への就職がおすすめです。
納棺師という資格はないので、別の業種から転職することも可能です。人の死に寄り添うという仕事柄、人生経験のある人を求めている業者もあります。年齢を重ねていても、比較的転職しやすい業種といえるでしょう。
納棺師の平均給与は、月収25万円ほどと言われています。年収は300~400万円ほどです。いっぱんてきな平均年収・月収よりも少々低い水準となっています。
ただ、働く場所によって、給与は大きく変わってきます。大手の葬儀社であれば、一般的な水準よりも高い給与を期待できるでしょう。地方の葬儀事務所など規模が小さくなると、給与が少なることもあるので、給与にこだわる場合は就職先選びが重要です。
納棺師になるために必要な資格はありませんが、あると役立つ資格はあります。葬祭ディレクター・仏事コーディネーターといった2つの資格について、概要や難易度などをご紹介します。
「葬祭ディレクター技能審査」は、厚生労働省が認定する資格で、葬祭業に関わる人の知識・技能の向上を目的としています。1級と2級があり、2級では個人葬における葬祭サービス、1級ではすべての葬儀における葬祭サービスについて知識・技能を問います。
葬儀について幅広い知識・技能を身に付けるきっかけになるので、納棺師・葬儀社スタッフとして働く上で役立つ資格です。
参照:葬祭ディレクター技能審査
「仏事コーディネーター」とは、仏事に関わる幅広い知識を身に付けられる資格です。仏壇や仏具、供養、文化などに関わる知識を問うので、取得しておくと実務に役立つでしょう。
納棺師は、人の死に関わる欠かせない仕事である一方で、遺族の悲しみに触れる大変な仕事でもあります。
納棺師には、どのようなやりがい・大変さがあるのでしょうか。それぞれを理解して、納棺師という仕事を詳しく知っていきましょう。
納棺師は、故人の最期の姿を整えたり、管理したりする重要な役割を担っています。悲しみに触れたり、プレッシャーを感じたりするなど、精神的な負担がかかりますが、無事に葬儀を終えると、遺族から感謝の言葉をかけてもらえるでしょう。
プレッシャーから開放され、遺族の感謝に触れられる瞬間は「この仕事をしていてよかった」と感じられる瞬間であるはずです。納棺師という特殊な仕事に誇りを持ち、より多くの遺族と故人に関わっていくやりがいになるでしょう。
人の死に直接触れる仕事であり、故人の姿や遺族の悲しみ・喪失感を目の当たりにするので、精神的な負担がかかるでしょう。中には、目をそむけたくなる遺体もあり、心に与えるショックも大きいはずです。
葬儀社スタッフとして働く場合は、いつでも対応できるように24時間体制を敷いている業者も多くあります。心だけでなく、身体にも負担がかかるので、体力や使命感なども求められます。
- 著者
- 川上 知紀
- 出版日
納棺師・葬儀社のスタッフの一人として働くためには、お葬式について知ることも大切です。本書では、葬儀社を経営している著者が葬式に関わるトラブルなどを詳しく紹介しています。
お葬式という場面で、葬儀社に求められることとして、お金や手順などの幅広い知識を学ぶことができます。利用者が何に困るのかなど、利用者目線で語られているので、納棺師になったときにサービスに役立つ知識やノウハウが詰まっているのがおすすめポイントです。
- 著者
- ["薄井 秀夫", "柿ノ木坂 ケイ"]
- 出版日
納棺師など葬祭業界で働く職業をまとめた書籍です。納棺師・湯灌師の章では、それぞれどのような職業かを丁寧に解説しています。納棺師とは何かを知る入門書におすすめです。
納棺師といっても、所属する組織によっては、葬儀社スタッフとして幅広い仕事をすることもあります。納棺師のほかに、生花祭壇スタッフや葬儀司会者なども解説されているので、業界を俯瞰し、葬儀に関わってどのような仕事が求められるのかを学ぶことができるでしょう。
- 著者
- 永井 結子
- 出版日
納棺師としての日々を綴った著者のブログ「今日のご遺体」を書籍化した作品です。納棺師として実際に行っている死に化粧や湯灌、白装束の着せ方などがリアルに描かれています。
悲しみに触れる仕事ですが、暗くなりすぎずちょっと笑えてしまうのが本書の魅力です。裏社会の葬儀など普段知ることのできない葬儀の様子などをユニークに綴っています。リアルな納棺師の仕事を知りたい方や読みやすい本で勉強したい方におすすめの1冊です。
映画「おくりびと」でも知られる納棺師は、故人を棺に納める納棺業務を行います。ご遺体の状態の維持や化粧・顔そりなどをおこない、葬儀に向けて故人に扱う大切な仕事です。
精神的・身体的な負担がかかる仕事ではあるものの、故人・遺族の最期に寄り添う使命感や遺族からの感謝の言葉はやりがいといえるでしょう。
納棺師になるためには、納棺業務の専門業者や葬儀社に就職するのが一般的です。ご紹介した本も参考にして、納棺師という仕事を深く知り、ぜひ目指してみてくださいね。