5分でわかる司書!社会人から転職できる?資格の取り方や働き方、年収を解説!

更新:2021.12.4

公立図書館や学校図書館などで、本の貸出・返却、管理などをおこなう司書。図書館でさまざまな業務に関わり、本と人をつなげる大切な役割を持っています。本好きであれば、図書館で本に囲まれて働くのは憧れのひとつではないでしょうか。そこで今回は、司書のなり方について、必要な資格や活躍できる場所、求人状況などを詳しくご紹介していきます。司書について学べるおすすめの本もセレクトしましたので、ぜひ参考にしてみてくださいね。

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司書ってどんな仕事?

司書の仕事内容は?

図書館で働く司書というと、受付で本の貸出・返却をしてくれる人というイメージがあるかもしれません。利用者と関わる仕事も大切な業務ですが、本を管理するために多くの仕事をおこなっています。司書がどのような仕事をしているのか、主な仕事内容をチェックしていきましょう。

本の貸出・返却

司書の基本的な業務として、本の貸出・返却は大切な仕事です。本のコードをスキャナなどで読み込み、貸出期間を伝え、利用者に渡します。返却の際は、利用者から本を受け取ります。一見簡単な作業ですが、利用者の方と接するので、気持ちのよい接客を心がけなくてはなりません。

高齢の方や家族連れの方などに合わせた対応を心がけ、コミュニケーションをとることによって、気持ちよく利用してもらえます。
 

本の配架・管理

図書館に置いているたくさんの本は、司書がわかりやすくきれいに整理していきます。配架とは、本を書棚に戻す作業で、返却された本や新しく追加された本などを、本のジャンルなどの情報を参考に付けられた番号をもとに、利用者が見やすいように陳列する仕事です。

しっかりと整理整頓されていると、利用者は目的の本を探しやすくなります。司書としても、本や映像資料などがきっちり配架することによって、問い合わせに対応しやすく、管理業務の効率も改善されるでしょう。
 

図書館に並べる本の選書

図書館に置く本を選べるのは、司書だからこそできるワクワクする仕事です。選書は、やみくもに好きな本をセレクトするのではなく、地域の特色や利用者の傾向などを考えて、ニーズのある本を選んでいきます。

家族連れや子供の利用が多い場合は児童書を、資料の問い合わせが多いなら郷土資料を増やすなどの選書が求められます。司書として選んだ本が借りられ、誰かの生活や人生を変えるかもしれないと考えると、とてもやりがいのある仕事ですね。
 

レファレンスサービス

レファレンスサービスとは、利用者からの問い合わせに対応するサービスです。図書館には、「どの本読んだらよいかわからない」「読みたい本が見つからない」という悩みを抱えた利用者が多く訪れます。

曖昧な問い合わせでも、ヒントを頼りにお目当ての本を案内するのが、司書の腕の見せ所です。PCで検索して本を探すこともできますが、専門性を生かして司書だからわかる本を案内すると、利用者のニーズに応えられるでしょう。

イベント運営

図書館では、読み聞かせ会などのイベントを開催することもあります。イベントのスケジュールを決めたり、使用する本を探したり、会場を設営したりするなど、イベントを運営するのも司書の仕事です。ボランティアさんに手伝ってもらうときは、打ち合わせも必要ですね。

他にも、絵本作家を招待した講演会やワークショップ、企画展示など、図書館によって取り組みはさまざまです。

司書になるために必要な司書資格・司書補資格とは

司書として働くためには、「図書館司書資格」や「司書教諭資格」が必要になります。資格がない司書が多く働いているのも実情ですが、専門性を持ち正規雇用となるには資格の取得が不可欠です。司書資格・司書補資格・司書教諭資格について、概要や取得方法をご紹介していきます。

司書資格

司書資格を取得するためには、いくつかの方法があります。

  • 大学(短大を含む)または高等専門学校卒業生が司書講習を修了し資格を得る
  • 大学(短大を含む)で司書資格取得に必要な科目を履修し卒業を待って資格を得る。 (→これには通信制・夜間・科目等履修を含みます)
  • 3年以上司書補としての勤務経験者が司書講習を修了し資格を得る。
     

司書資格を取得できる大学や短大であれば、単位を取得することによって、卒業と同時に資格の取得が可能です。
 

また司書講習を修了することでも、資格を取得できます。司書講習とは、全国9大学程度でおこなわれる講習で、例年7~9月に実施されています。

司書講習の受講資格は以下の通りです。
 

  • 大学に2年以上在学(短大卒業者含む)し、62単位以上を修得しているかまたは高等専門学校を卒業していること
  • 2年以上司書補(国立国会図書館または大学若しくは高等専門学校の附属図書館の職員で司書補に相当するものも含む)として勤務した経験があるもの

参照:文部科学省

司書補資格

司書補とは、司書をサポートする仕事です。司書補として3年以上勤務し、司書講習を修了することでも司書資格を取得できるので、司書補から司書を目指すのも方法のひとつとなります。

司書補資格を得るためには、司書資格を持っているまたは司書補の講習を受ける必要があります。司書補の要件や講習の受講資格は以下の通りです。

  • 要件:司書資格を有するものまたは、高等学校若しくは中等教育学校を卒業したものまたは高等専門学校第三学年を修了した者で司書補の講習を修了したもの
  • 司書補講習の概要:毎年7~9月に全国5大学程度で実施
  • 司書補講習の受講資格:高等学校若しくは中等教育学校を卒業したものまたは高等専門学校第三学年を修了した者

参照:文部科学省

司書教諭資格も選択肢のひとつ

学校図書館で働く方法として、司書教諭資格を取得するのも選択肢のひとつです。司書教諭とは、学校図書館で専門的な業務をおこなう教員のことを指します。すべての学校に配置する義務はありませんが、担当になると、司書の仕事と合わせて読書教育など本を教育に活用できます。

司書教諭資格は、教職課程のある大学で、教員免許と並行して単位を取得する必要があります。まず教師になり、配属された学校で図書館を担当するかが決まるので、教員採用試験に合格し、教師になることが大前提です。

司書教諭資格を持っていても、必ずしも学校図書館の担当になるとは限りません。ピンポイントで目指すのはハードルが高いことを念頭に置いておきましょう。

司書が活躍できる場所と働くまでの道のり

司書が活躍する図書館は、街にある公立図書館だけではありません。国立国会図書館や大学図書館などさまざまです。それぞれで司書になるための道のりは異なるので、どこで司書として働きたいを考えてみましょう。活躍できる場所・道のりをチェックしてみてくださいね。

公立図書館、公立大学・高等専門学校の付属図書館

公立図書館や公立学校の付属図書館で働く司書は、地方公務員として扱われます。そのため、採用されるためには、地方公務員試験に合格する必要があります。

地方公務員試験の内容や採用形態は、自治体によって異なります。図書館の職員としてそのまま直接採用されることもあれば、自治体の職員になってから図書館に配属されることもあるので、受験する自治体の採用形態をあらかじめチェックしておきましょう。

国立国会図書館

国立国会図書館とは、国会の立法・調査活動をサポートすることを目的に運営されている図書館です。出版されるすべての書籍・資料が納本されており、目録情報を提供するなど、全国の図書館活動を支える役割も果たしています。

国立国会図書館では、独自の採用試験を実施しています。募集区分や業務内容は以下の通りです。

 

  • 総合職:調査業務、司書業務、一般業務など
  • 一般職:調査業務、司書業務、一般業務など
  • 資料保存専門職員:各種図書館資料の保存修復、資料保存に関する企画・調査など
  • 情報システム・設備専門職員:情報システムや設備機器の企画・調達・維持・管理など

 

私立大学の図書館

私立大学に設置されている図書館の職員は、各学校ごとに採用試験が実施されています。働きたいエリアや学校を調べ、直接募集の有無や試験概要を問い合わせてみましょう。
 

学校図書館

学校図書館で働くためには、先ほど紹介した司書教諭資格を取得して目指す方法のほかに、事務職員として採用される場合もあります。募集は、自治体ごとに異なるので、住んでいる自治体の窓口に問い合わせするのがおすすめです。教員として、図書館にも関わりたいという方は、司書教諭を目指してみましょう。

司書の求人状況・雇用形態。正規雇用は狭き門?

資格の取得や司書になるまでの道のりはもちろん、求人があるのかも気になるところです。司書の求人状況・雇用形態をあらかじめ理解しておきましょう。

求人数が少なく倍率は高い

司書として図書館で働きたいという人が多い反面、正規雇用の求人数は非常に少ないです。国立国会図書館の過去3年間の採用状況を見てみましょう。

  • 平成29年度:総合職114.8倍(採用者4名)、一般職77.6倍(採用者16名)
  • 平成30年度:総合職108.5倍(採用者4名)、一般職90.8倍(採用者13名)
  • 平成31年度:総合職84.8倍(採用者4名)、一般職57.0倍(採用者17名)

参照:国立国会図書館

数百人の申込者に対して、採用者は数名で、倍率は100倍に近い年も競争率も高いです。公立図書館や私立図書館なども同様で、若干名の募集となるため倍率が高くなっています。

正規雇用は狭き門

正規雇用の募集は少なく狭き門ですが、パートやアルバイトなどの非正規雇用での募集は見つけやすくなっています。司書資格が持っていなくてもよい求人も多くあるので、とにかく図書館で働いてみたいという方は、求人サイトをチェックしてみましょう。

正規雇用よりも給与など待遇面で劣ることには注意が必要です。待遇面を重視したい場合には、司書資格を取得し、働きたい図書館での採用を目指しましょう。

司書の年収は?

司書の年収は?

司書としてどのくらいの年収・給与を得られるかも気になりますよね。公立図書館や学校図書館で教師と司書の兼任で働く場合は、地方公務員の扱いとなるので、比較的安定した給与を得られるでしょう。年収300~400万円ほどが平均となっています。

さらに高い給与で働きたいという場合は、専門性を求められる大学図書館や国立国会図書館がおすすめです。高度な業務が要求されるものの、司書資格を生かして好待遇を期待できるでしょう。

非正規雇用の場合は時給制

司書は無資格で働くこともできますが、正規雇用ではなく、パート・アルバイト・派遣といった非正規雇用です。非正規雇用の司書は時給制のことが多く、正規雇用に比べると年収・給与は下がってしまいます。よりよい待遇を求めるならば、資格を取得し正規雇用を目指すのが最適な方法です。

司書への転職状況。社会人からの転職は?

司書は人気ある職業

司書は人気のある職業です。そのため社会人になってから司書への転職を考える方も少なくはありません。しかし、前述したように司書として正規雇用が少なく、そもそも求人数自体も頻繁にはでていません。

また求人が出ていたとしてもアルバイトやパート、派遣などの非正規雇用の場合も多く、司書として働くことはできても、それだけで生活できるほどの収入を得られるかどうかは難しいでしょう。

社会人から司書になるには

非正規雇用であれば資格なしでも司書として働くことができます。しかし、正規雇用で専門性を持った司書として働きたい方は、司書資格を取得することをおすすめします。

社会人から司書になるには、いくつか方法があります。

 

  1. 大学(短大を含む)、高等専門学校卒業生している場合、司書講習を修了する
  2. 通信制・夜間の大学に通いながら、司書資格取得に必要な科目を履修し卒業する

 

すでに大学・短大・高等専門学校を卒業している場合は、全国9大学程度で実施されている司書講習を修了し資格を得ることができます。

司書講習は7月〜9月にかけておこなわれます。2か月間しっかりと時間割が組まれているため、その期間、仕事の調整やあるいは休職することが必要となるでしょう。

司書資格に年齢制限はない


司書資格の取得に年齢制限はありません。ですので、時間と司書として働きたいと思う心があれば、いつでも資格取得を目指すことができます。

しかし資格が取得できたとしても、やはり求人が少なく、就職することが難しいことは事実です。そのため、どうしても司書として働きたいという方は早い段階で動き出しておくことがよいでしょう。年齢が若い分、求人が出るのを待つこともできます。

司書・司書教諭について詳しく知りたいときにおすすめの本

著者
後藤敏行
出版日
2016-04-25

図書館情報学を専門にする著者による、司書を目指す方に向けた1冊がこちらです。基礎編・実践編・これからの図書館員像といった3つの見出しで構成されています。

基礎編では、司書の仕事やなり方に加えて、若手図書館員へのインタビューが収録されているので、現場の声を知りたい方におすすめです。

実践編では、公共図書館や大学図書館、学校図書館など、図書館の種類ごとに仕事内容などが解説されています。図書館の違いを知ったり、気になる図書館の理解を深めたりすることができますね。

学校司書・司書教諭を目指す人におすすめの本

著者
学校図書館スタートガイド編集委員会
出版日
2015-04-15

学校図書館で働きたい、司書教諭として図書館に関わりたい人におすすめの書籍です。

「そもそも学校図書館とは」から始まり、学校図書館の業務が詳しく解説されています。知る、整える、応える、働きかける、連携するといった項目ごとにまとめられており、学校図書館でどのように働くべきかがわかるでしょう。

学校図書館の司書や司書教諭の方からも、よい口コミが集まっています。司書になってからはもちろん、なる前から参考になる本なので、ぜひ手にとってみてくださいね。

 

図書館司書の試験対策におすすめの参考書・問題集

著者
後藤敏行
出版日

図書館職員採用試験の参考書として、評価の高い対策問題集です。「司書もん 第1巻」は、最新の法改正を踏まえて、第2版が出版されました。

過去問を分析し、頻出している分野の問題・解答・解説を収録しているので、傾向を知ることができ試験対策に効果的です。

対策問題だけでなく、学習方法や最新情報の集め方なども解説しています。どう勉強したらよいか迷っている方にも役立つでしょう。第2巻、第3巻も第2版が発行される予定なので、合わせて試験勉強に活用してみてくださいね。

司書は、公立図書館や学校図書館、国立国会図書館などで活躍し、たくさんの本と人をつなげる、社会になくてはならない仕事です。本好きにたまらない職場で、本に関わりながらたくさんの人と交流することができます。非正規雇用が多いことや入れ替わりが少なく求人が見つけにくいなど狭き門ですが、本に囲まれて働く素敵な仕事が待っています。資格やなるまでの道のりと合わせて、おすすめの本もチェックして、ぜひ司書を目指すきっかけを見つけてみてくださいね。

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