沖縄が舞台の小説おすすめ6選!直木賞受賞作や『テンペスト』など名作ぞろい

更新:2021.12.12

第二次世界大戦が終わってから25年以上が経ち、日本に返還された沖縄。戦争の悲惨な歴史が多く残る場所として知られている一方で、自然豊かな情景と住民たちのおおらかな人柄が観光客にも人気です。この記事では、そんな沖縄やかつての琉球王国を舞台にしたおすすめ小説を紹介していきます。

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直木賞受賞!戦後の沖縄が舞台のおすすめ小説『宝島』

第二次世界大戦後の沖縄。子どもたちのリーダー格であるオンちゃんと、弟のレイ、親友のグスク、恋人のヤマコは、米軍基地に忍び込み、物資を盗んで島民たちに分け与えていました。

ある日の夜も嘉手納基地に侵入しましたが、米軍に見つかって狙撃され、オンちゃんが行方不明になってしまいます。

残された仲間は、彼の生存を信じながらも成長。成人し、それぞれ警官、テロリスト、教師となって、別々の方法で沖縄の人々を守ろうとするのです。

著者
真藤 順丈
出版日
2018-06-21

2018年に刊行された真藤順丈の作品。「直木賞」「山田風太郎賞」を受賞しています。真藤自身は東京の出身で、本作を完成させるまでに7年の歳月をかけたんだとか。

物語は、戦後の1952年から本土返還されるまでの1972年までの20年間にわたる沖縄の様子が、現地の若者視点で語られています。

行方不明になってしまったみんなの英雄的存在であるオンちゃんを探すミステリー要素もありつつ、日々命がけの状況で生きる沖縄の人々の複雑な心情を巧みに描いているのが魅力的。本土では喜ばしいこととして伝えられていた返還も、現地の人々からしてみると必ずしもそうではなかったこともわかります。

怒りや悲しみ、屈辱を抱きながらもエネルギーに満ちた少年少女たちの成長に、心揺さぶられるでしょう。ラストは涙なしには読めない名作です。

沖縄の美しさと人の繋がりを感じられるおすすめ小説『アンマーとぼくら』

リョウの父親は各地の自然を撮影する写真家、母親は元教師の優しい人でした。北海道で仲良く暮らしていましたが、リョウが小学生の時に母親が癌で亡くなったことをきっかけに、沖縄に移り住むことになります。

気持ちの整理がつかないまま、父親からは新しい母親だと、晴子が紹介されました。リョウは当然反発しましたが、4年後、今度は父親が事故にあってあっけなく死亡。血の繋がりがない母親と息子だけが取り残されてしまうのです。

さらに時は流れ、大人になったリョウは、1度は離れた沖縄に戻ってきます。久しぶりの島内を、晴子とともにまわるのです。

著者
有川 浩
出版日
2016-07-20

2016年に刊行された有川浩の作品。沖縄出身メンバーで構成されたロックバンド「かりゆし58」の「アンマ―」という曲をきっかけに執筆されたそうです。

30歳を過ぎて沖縄に戻ってきたリョウが、疎遠だった義理の母親と沖縄の観光地をめぐる3日間を描いたストーリー。過去の記憶と現在を交錯させながら物語は進んでいきます。

限られた時間のなかで、かつては言えなかった思いを伝えあう2人。文章からは血の繋がりを超えた愛情を感じるでしょう。

また沖縄の雄大な自然を描いた情景描写も魅力的。懐の深さを感じ、すべての悲しみを受けとめてくれるような一冊です。

『アンマーとぼくら』の他にも作者・有川浩の作品を読んでみたい方は、こちらの記事がおすすめです。

人気No.1恋愛小説家・有川浩の書籍をランキング形式でおすすめ!新作も

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有川浩の作品はあらゆる世代からの人気が高く、映像化したものも数えきれないほど。本好き読者による2011年の好きな作家ランキング女性編では、堂々の1位を獲得している作家。そんな有川浩の人気作品をご紹介します。

テレビドラマ化もされた琉球王国が舞台のおすすめ小説『テンペスト』

19世紀末の琉球王朝に、ひとりの少女が生まれました。しかし男児を望んでいた父親から見放され、名前もつけてもられません。3歳の時に自分で真鶴と名付け、優秀な彼女は独学で勉強。13か国語を習得し、その才能を伸ばしていきます。

ある日、家の再興を期待されて厳しく育てられてきた義兄の嗣勇(しゆう)が失踪。これをきっかけに、真鶴は性別を偽って、兄の代わりに王朝の役人として生きていく道を選ぶのです。

孫寧温と名乗り、最速の出世を遂げていく真鶴。しかし彼女を妬む者から謀反人の疑いをかけられ、八重山へ流刑となり……。

著者
池上 永一
出版日

2008年に刊行された、沖縄出身の作家、池上永一の作品。舞台化やテレビドラマ化もされています。

琉球王国が沖縄になるまでの期間を描いた物語。史実とフィクションを織り交ぜ、緻密に構成された世界観が読者を惹きこみます。

流刑になった真鶴は再び女に戻り九死に一生を得るのですが、今度はその美しさを見初められて、側室として王宮に戻ることになりました。そのころ、本土にはペリーを載せた黒船が来航。すると外国語が話せる孫寧温を王朝へ呼び戻すよう命令がくだるのです。真鶴は、孫寧温と真鶴の一人二役をこなさなけらばいけなくなります。

真鶴の波乱万丈な人生はもちろん、近代化の波に押される琉球王国の栄枯盛衰も楽しめるでしょう。展開が早く、軽快な文章で、ストーリーはまるでジェットコースターのように突き進んでいきます。最後まで一気読みできる作品です。

近代化への流れを琉球王国の視点からみたおすすめ小説『琉球処分』

かつて琉球王国は、清と薩摩藩双方の冊封体制下にあり、独自の封建国家を築いていました。日本で明治維新が起こると、薩摩藩の圧制から逃れられると希望を抱きます。

しかし新政府の役人がやって来て、琉球藩として日本のルールに従うよう言い渡してきました。大久保利通などの官僚は、琉球王国を清から引き離して日本に組み入れようとさまざまな政策を実施します。

日本と清、どちらと歩みを進めていくのか、琉球王国は大きな決断を迫られることになるのです。

著者
大城 立裕
出版日

1968年に刊行された大城立裕の作品。大城は沖縄出身で初めて「芥川賞」を受賞した作家として知られ、沖縄県立博物館の館長を務めた経験もある人物です。

「琉球処分」とは、明治新政府による近代化を目的とした政策のこと。「廃藩置県」として知られています。

日本と清の両方と通じながらも、独自の国家としてアイデンティティを保っていた琉球王国。一方で日本は、清に領土を奪われたくないと、なんとか明治新政府の制度を適用しようとするのです。認識のズレを絶妙に描く文章と、苦しみもがきながら国の方針を決めていく琉球王国の姿が魅力でしょう。

特徴的な固有名詞や人物名が多く出てきますが、読みにくくはありません。国とは、国家とは何かを考えさせられる一冊です。

沖縄で出会った2人の若者を残酷な現実が襲うおすすめ小説『メタボラ』

沖縄のジャングルで、記憶を失いさまよっていた「僕」と、職業訓練校から脱走してきた昭光という少年が出会います。2人はそれぞれ「ギンジ」「ジェイク」と名前を変えて、新たな人生を歩むことにしました。

しかし、閉塞感の漂う沖縄で自分探しをする彼らは、しだいに残酷な運命に飲み込まれていくことに。「僕」はなぜ記憶を失っていたのでしょうか、そして一体何者なのでしょうか。

著者
桐野 夏生
出版日

2007年に刊行された桐野夏生の作品。2人の少年が出会い、「ギンジ」と「ジェイク」の視点が交互に描かれていく構成です。

沖縄の陽気で美しい風景とは裏腹に、基地問題や移住者の増加、不況など、どこか息苦しさをともないながら物語が進行。そこに沖縄独特の方言がまざり、作品の深みを増しています。

記憶を取り戻した「ギンジ」は、自身のあまりにも壮絶な過去に対峙しなければならなくなりました。一方の「ジェイク」はホストになりますが、どんどんと身を滅ぼしていくのです。

けっしてハッピーエンドでは終わらない、希望だけじゃなくて絶望も伝わってくる、考えさせられる一冊になっています。

他にも作者・桐野夏生の作品を読んでみたい方は、こちらの記事がおすすめです。

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『東京島』や『グロテスク』など実際の事件を題材にした作品が有名で、映像化も多くされている桐野夏生。その作品の魅力は、人の持つ心の闇や、偶然が重なり狂っていく様を巧みに描く高い描写力にあります。

沖縄に移住した破天荒家族を描いたおすすめ小説『サウスバウンド』

小学6年生の主人公は、長男なのに名前が「二郎」。父親の一郎は元過激派で会社勤めをしたことがなく、いまは家で小説を書いています。

二郎がそんな父親のことを変わり者だと気づいたのは、小学校になって友達ができた時。どうやら父親は国を嫌っているらしく、しばしば騒動を起こしていました。

そんな一家が沖縄へ移住することになり、ついに家族の絆が試されます。

著者
奥田 英朗
出版日
2005-06-30

2005年に刊行された奥田英朗の作品。映画化もされました。

とにかく型破りな一郎が痛快。息子である二郎の客観的な視点で描かれることで、滑稽さと格好良さがわかりやすいでしょう。立場や理屈をものともせず、自分の正しいと思ったことを貫く姿は魅力にあふれていて、文章からも裏表のない性格が伝わってくるのです。

ハラハラする展開もありますが、沖縄ならではの開放的な雰囲気が心地よく、青春小説のような爽やかさを感じられる家族の物語です。

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