経理と聞いてみなさんはどのようなイメージがありますか。「正確さが求められる仕事」「数字とにらめっこしながら黙々とこなす仕事」そんなイメージを持っている人も多いかと思いますが、それだけではありません。数字から経営課題を読み解いたり、適切な勘定項目を経験や知識から判断したりと発見や分析、推測といった要素もあります。 本記事ではそんな奥の深い経理の仕事について紹介します。仕事内容をはじめ、就職に有利な資格や適性、年収事情についても触れていきますので、基本的な知識を知っておきたい人は、最後までしっかり目を通してみてください。
経理は言ってしまえばお金管理のプロです。ここでは経理業務とはどのようなもので、どういった人が向いているのかを解説します。
ざっくり説明するとお金の動きを記録し管理するのが経理の仕事で、仕入の管理や売上の管理、給与や保険料の計算などがあります。
具体的には、下記のような業務があります。
「伝票処理や会計ソフト入力」は、売上や仕入れの処理や出張費などでの先払いなどの取引を決まった勘定科目に当てはめ仕訳、記録します。その他には、決算に必要な貸借対照表や損益計算書の作成に加え、在庫の確認、決算仕訳をおこなう「決算関連書類作成」、従業員の所得税の過不足を精算する「年末調整」などがあります。
また日常業務、月次業務、年次業務といったようにサイクルごとにそれぞれの仕事もあります。業務範囲は幅広いうえ、いずれも数字を扱うことから正確性が求められます。
経理職は会計の専門的知識を必要とするため、一般事務職に比べ高めの給料が期待できる職種です。全国の平均年収は300万円台とされています。しかし、都会と地方ではどうしても年収に差がでてしまうことは多いようです。
また勤務する会社の規模や業務内容により年収差はあり、大企業ほど給与水準は高くなる傾向にあります。経理の仕事で高収入をのぞむなら、中小企業から大企業に転職することが大きなポイントとなってくるでしょう。
経理のAI化については、みなさん気になっているところではないでしょうか。今後の進化や処理領域の可能性によってもどこまで代用できるのかが変わってきますが、全ての業務が取って代わられるということはないようです。
経理の仕事には人でなければ対応が難しい例外処理というのが結構な頻度で発生します。
たとえば、会社のルールに沿って細かく正しい勘定科目を計上しなければならない月次決算。契約書の画像を取り込んでも、文章の意味を完全に理解し、それに紐づく会計仕訳を自動生成して会計データに流し込むといったことは、AIでは難しいとされています。
また業務上の理由で支払日などを急遽変更しなければならないといった、ルールから逸れたケースなども無人での処理は厳しいようです。
このような分野はAIは不得意なため、経理の無人化というのは現時点で考えづらいのです。ただし上記のような処理はある程度の知識やスキルが求められるため、常日頃の研鑽は怠らないようにしましょう。
経理の仕事をするのに必須の資格というものはありません。実際、求人サイトを見てみると、日常会計の仕事であれば未経験でも多くの募集が見られます。
しかし、経理の仕事で役立つ資格が多くあるのも事実です。この章では、経理を目指す人におすすめする資格と、スキルアップに有利な資格を紹介します。
◾️日商簿記検定
「日商簿記検定」は、簿記検定のなかで知名度も難易度も高い検定です。1954年に開始された歴史ある検定で、年間受験者数もかなり多い検定となっています。
日商簿記検定で合格すると、財務諸表を読む力や会計知識を証明できます。レベルは1~3級までありますが、現場で使える技能が身につきやすいのは2級と言われています。
2級の試験科目は、商業簿記と工業簿記のふたつ。商業簿記では企業を取り巻く関係者に対し、正確な報告をするために記録・計算する技能が問われます。工業簿記は経営管理に必須の知識である、企業内部での部門別の記録・計算する技能が問われます。
試験時間は120分以上で、合格基準は正答率70%と難易度は高いです。また合格率は20%台が多いですが、回によっては10%台の時もあり、決して簡単に取得できる資格とはいえないでしょう。
「給与計算実務能力検定試験」とは、名前の通り給与計算に関する能力を測る資格です。給与計算の基本的な知識に加え、給与計算に関わる社会保険、労働に関する法律、税務知識などについて詳しいことをアピールするのに有利な資格といえるでしょう。
級は2級と1級があり、2級は年に2回、1級は年に1回試験がおこなわれています。2級は基本的な給与計算などができるレベルで、1級は年末調整やイレギュラーな給与体系にも対応できるスキルを持ち、給与計算に関する全ての業務に精通しているレベルとされています。
合格率は2級が70%台ですが、1級は開催される年によって大きく変動しています。過去3年の1級の合格率を見てみると、2017年35.28%、2018年59.19%、2019年46.23%となっています。2016年の合格率が20%台と低かったことから、試験内容の調整がおこなわれているのかもしれません。
「ビジネス会計検定®︎」は、会計の基本的な知識が身に着いていることを証明してくれます。資格を取得するためには財務諸表について特に詳しく勉強するため、会計的アプローチによる分析能力が優れていることを訴求できます。
レベルは3級、2級、1級があり、同日に2つの級の受験が可能です。3級では主に財務諸表を理解するための基礎的な知識を身に付け、2級では財務諸表を分析する力を身に付けることができます。そして1級ではそれらの会計情報に関する総合的な知識を身につけることができます。
3級、2級は比較的合格率が高く、開催される回によっては60%台、50%台も記録しています。しかし1級に関してはかなり難易度が高く、例年の合格率は10%台となっています。日商簿記検定と同じレベルで難易度が高いといえるでしょう。
◾️経理・財務スキル検定(FASS)
「経理・財務スキル検定」は債権・債務の管理、連結決算などの実務スキルを問う試験です。この資格を取得しておくだけで実務経験に匹敵するような経理・財務の知識があることをアピールできます。経理・財務のプロとしてのスキルを証明できる試験のひとつです。
「税理士試験」はその名の通り税理士資格を得るための試験のことです。会計2科目と税法3科目の合計5科目で構成されています。国家試験のため非常に難関ではありますが、このなかの1科目だけでも合格すれば、企業の経理部門で評価されることは間違いないでしょう。
受験資格は3通りあり、職歴による受験資格も設定されています。ですので実務経験を積んでから受験するのもひとつの手です。
先述の通り、経理の仕事は正確性が求められます。それは些細な数字の間違いが企業の信用にかかわる大きな問題につながることもあるからです。そのため計算や数字の間違いに気づけるなど、注意深く仕事ができる人が経理には向いています。
また、計算が合わないケースがあっても嫌にならず根気よく原因を探っていける人も経理の仕事においては重宝されるでしょう。
会計の世界史イタリア、イギリス、アメリカ-500年の物語
2018年09月26日
数字とにらめっこするばかりが経理の仕事ではありません。「どうせ勉強するなら楽しくやりたい!」という人におすすめの本がこちら。会計の本なのに、細かい数字はいっさい出てきません。
経理の歴史をストーリー仕立てで解説してくれています。物語を楽しく読み進めるだけで、簿記、決算書、財務会計、管理会計、ファイナンス、IFRSなどの仕組みがよくわかります。
イラストと写真、ひと目でわかるイメージ図など、視覚で理解できるのもポイントです。
- 著者
- ["大手町のランダムウォーカー", "わかる"]
- 出版日
専門用語が多いため、はじめての人にはなかなかとっつきにくい経理の仕事ですが、この本なら楽しく会計を学べます。
実際の企業を事例としてあげ、数字を用いた会計クイズを解いていく形式なので、楽しく決算書を読めるようになります。オールカラーで見やすいうえ、図解を多用した解説などの工夫も満載です。
経理を目指す人だけでなく、社会に出て働くようになってから決算書に興味をもったり、もっと経営目線で働きたいと思った人にもおすすめの1冊です。クイズを楽しみながら最後まで読んだら、決算書や財務諸表が読み解けるようになっていたという声も多く、遊びながら学びたい人にはぴったりの本といえるでしょう。
オールカラー 一番わかる!経理の教科書
2015年10月27日
経理の基礎を素早く学びたい人におすすめの1冊。
「仕訳を制する者が簿記を制する」「毎日おこなう現金と預金の管理を覚える」といったように経理の業務が体系的にまとめられており、わかかりやすく整理されています。
伝票のイラストや業務上のポイントなども掲載されているほか、仕訳例や勘定項目の使用例、帳票の記載例も充実しています。わからないことをすぐ調べるのに便利なハンドブック的な使い方もできるでしょう。
会計事務所で働き始めたばかりだったり、税理士として働き始めたばかりの人にとって、よい教科書となるはずです。
経理は一般的によく知られた仕事ですが、型にはめて処理できる業務もあれば例外的に発生する業務もあり、一筋縄ではいかない仕事です。しかし、そこがこの仕事の醍醐味であって、経理に「人」が必要な理由でもあります。
そんな経理の仕事に興味を持ったのであれば、ここで紹介した3冊は全部おすすめ。ぜひ楽しく学んでお金管理のプロフェッショナルを目指してみてください。