英語を活かせる仕事、輸出や輸入に関する事務の仕事に、「貿易事務」という仕事があります。貿易に関する専門的な知識と事務能力、そして英語の能力が身についていないと難しい仕事です。そのため一般事務に比べ年収の水準が高く、やりがいも感じられます。転職先としても人気が高い事務職の仕事のひとつです。 この記事では、仕事内容や就職・転職に有利な資格について解説していきます。また貿易事務についてより詳しくなりたい方のために、おすすめの書籍も3冊紹介します。そちらも合わせてぜひ手とってみてくださいね。
貿易事務は読んで字のごとく貿易に関する事務仕事ですが、貿易自体あまり身近ではないので詳しくは知らない人が多いと思います。この章ではそのような人のために主な仕事内容と仕事のやりがいについて解説します。
貿易事務の仕事を短く説明すると「海外取引先との輸出入取引の際に発生する事務手続きをする仕事」です。主な仕事は以下の3つ。
商品を輸出入するときに必要な書類の作成をおこないます。
インフラが整備された日本国内での運搬とは異なり、輸出入では長期間にわたる輸送となるため、破損や紛失のリスクが高くなります。そのため、税関への申告、検査などで必要となる書類商品名や価格を記載した、さまざまな形式の書類が必要になるのです。
記載する言語は英語が基本。正確に記載しなければ税関でとまってしまうこともあるため、書類内容を理解し抜け漏れなく作成することが重要です。
輸出入にともなう商品の輸送業務も、貿易事務がおこなうことがあります。
たとえば輸出の際にはトラック、船、飛行機などを手配したり、貨物を海外に持ち出したりする許可を得るため、また輸入の場合は貨物を国内に持ち込むときや、倉庫や輸送手段の許可を得るために、通関手配の業務をおこないます。
また、その際の海外の取引先とやり取りは、英語でのメールや電話でおこなうことがほとんどです。
注文を受けた商品の納期管理や倉庫内の在庫管理をおこななったり、悪天候によって輸送が遅れた場合などのスケジュール調整などをおこないます。出荷納品管理のデータはエクセルなどを使って管理することが多いので、簡単なPCスキルは必要です。
各国のルールや国際的な法に則って外国のスタッフとやり取りをおこなったり、書類を作成したりする貿易事務ですが、やりがいとしてまず挙げられるのが「英語が活かせる」です。英語を活かせる仕事に就きたいという人は多くいますが、ここでは貿易事務ならではのやりがいを紹介します。
貿易事務として海外の顧客や関連企業とやり取りをおこなうなかで、国際情勢や外国の文化や考え方の違いなどに触れる機会が多くあります。
日本のビジネスの常識が通じないケースに直面したり、デモや自然災害、政治などの影響を受けざるを得ない状況を経験したりすることで、国際情勢についての知識を身につけることができます。
貿易は身近な言葉ですが、その中身については仕事に関わらない限りなかなか見えてきません。貿易事務として業務に携わり、通関書類や船積手配の書類など多くの専門用語やフォーマットに触れることで、貿易の仕組みを詳しく知ることができます。
貿易事務の給与はその専門性から、一般事務や営業事務などのほかの事務職と比較して優遇された金額となっています。
IT事務への転職に特化した転職応援メディア「IT事務の教科書」が200名(正社員)を対象におこなった調査によれば、事務職の月収ランキんぐは貿易事務がトップという結果になっています。
貿易事務の仕事は海外とのやりとりも多いため、貿易の専門的な知識に加え、語学力も必要とされます。比較的スキルの高い方が集まって専門的な仕事をおこなうため、月収も高い傾向にあるのです。
ほかの事務職や一般的な会社員の平均年収と比べても給与は高めです。大手求人サイトの掲載内容を見ても、年収は最低でも300万円台から始まっており、上限は600万円ほどが多く見られます。
またなかには契約社員でも400万円を超えることもあります。ちなみに正社員と契約社員の差はボーナス分で、月給の差はさほどないようです。
もし日本語以外の外国語を話すことができ、事務職に就きたいと考えている方がいるなら、貿易事務の仕事への就職や転職を検討してもよいでしょう。
貿易事務になるための必須資格はありません。しかし、新卒や未経験から貿易事務の仕事に就きたいと考えた場合、能力を証明できる資格があれば、ほかの人よりも優位なポジションに立てるはずです。
商品を輸入する場合、税関に輸入申告し検査を受け関税を支払った上で輸入の許可を受けなければなりません。このような輸出入の手続に関する業務をおこなうのが通関士です。
通関士の資格は財務省が管轄する貿易関連で唯一の国家資格です。通関書類の審査などは通関士資格を持っている人がおこなうため、この資格があれば船舶会社や航空会社の物流部門などで能力を活かせることの証明となります。
通関士の詳しい仕事内容や資格の内容については「5分で分かる通関士の仕事」を読むことでよく理解できるでしょう。
「貿易実務検定®」は、貿易書類や貿易業務に必要な英語の能力や汎用的な知識がどのくらい身についているかを証明できる資格です。平成10年に開始されまだ日は浅いですが、すでに約20万人もの方が受験sにているメジャーな資格でもあります。
難易度は3つ。
商社やメーカーなどで基礎的な貿易実務に携わる場合にあると有利な資格といえるでしょう。
詳細:貿易事務検定®︎
高い語学力と専門的な知識をもって働く貿易事務の仕事。転職を考える方もいるでしょう。しかし貿易事務の正社員の採用は、経験者や資格保有者が優遇されることが多いです。
そのため未経験でいきなり貿易事務に転職するのは難しいかもしれません。未経験の場合は、先述したような資格を取得しておくことで採用される確率をあげることができるでしょう。
資格や経験はないけれど今すぐにでも貿易事務として働きたいという方は、貿易事務のアシスタント職からキャリアをスタートさせるのを検討してもよいかもしれません。
未経験可の貿易アシスタントなら、実務を通して貿易取引の流れを把握できたり、資格取得のための知識を学べたりします。
アシスタント職の場合は派遣社員や契約社員となりますが、貿易実務者として確実に経験を積むことができます。そこから正社員を目指す方も少なくありません。
- 著者
- 木村 雅晴
- 出版日
貿易事務の仕事は、一般事務や営業事務に比べイメージしづらさがあります。はじめて勉強する方には、ビジュアルで理解のスピードを早めてくれる図解を多用した本がおすすめです。
本書は仕事の流れに沿って、親しみやすいキャラクターが図解でわかりやすく解説してくれます。
また著者が大手企業や派遣会社で貿易実務を教える講師のため、実際の仕事に即したリアルで使える内容になっています。最終章では実務の悩みやトラブルをQ&A形式で紹介。貿易事務の仕事を立体的に知れる1冊です。
- 著者
- 日本貿易実務検定協会
- 出版日
資格について紹介した章でも解説しましたが、貿易事務になるために必須な資格はありません。
ただし、貿易実務検定は定型的な貿易業務をこなせる水準にあることを証明できる資格であるため、持っておくと就職にも配属にも有利です。
本書は特にA級、B級、C級と3段階あるなかの特にC級の受験対策におすすめです。検定試験の内容や勉強法などの解説のほか貿易実務と貿易英語のポイントをわかりやすく解説しています。試験対策のテキストととしてかなり使える1冊です。
- 著者
- 黒岩 章
- 出版日
貿易事務の仕事の精度は、書類内容の理解度によって決まります。しかし、その書類の中身はそれぞれの国の法律などが絡み複雑で専門性が高いため、正確に理解するのは簡単なことではありません。
本書は貿易実務の流れのなかで、それぞれの書類がどのよう役割と機能をもって当事者間を行き来するのかをわかりやすく解説してくれています。
書類についての理解を深めるのにぴったりな1冊です。また使用頻度の高い書式をメインで扱っているのも嬉しいポイントです。
貿易事務は「英語を活かせる仕事だから」となんとなくで目指すと痛い目を見ることがあります。「思っていた仕事と違う」というそもそものケースもあるでしょうし、「書類が難解で理解できない」という壁にぶつかるケースもあるかもしれません。そうならないためにもまず仕事内容を知ることが大切です。そのうえで自分がやりたい仕事なのかをもう一度見きわめてください。もし「なりたい」という答えが出たならば、ここで紹介している書籍をはじめ、いろいろな情報に触れ、スタートダッシュをきめるためにしっかり準備しておいてください。