落語は、室町時代末期から安土桃山時代の頃に生まれ、現代にも受け継がれている伝統芸能です。落語家は言葉や身振りだけで人を笑顔にできる職業であり、「笑点」や寄席などで目にして、憧れている方も多いでしょう。古くからの伝統的な職業ということもあって、どうしたらなれるのか、社会人からでも目指せるのかなど気になる部分が多いはずです。 この記事では、落語家になるまでの道のりや年収、向いている人などを解説します。落語や落語家についてわかるおすすめの本もご紹介するので、ぜひ参考にしてみてくださいね。
落語家になるためには、まず落語家である師匠を見つけ、入門・弟子入りする必要があります。
師匠と呼ばれる落語家は、落語家の階級で最も位の高い「真打ち」と呼ばれる人です。一度選んだ師匠に長く教えを乞うことになるので、寄席や講演会などで直接落語を体験し、弟子入りしたい師匠を慎重に見きわめましょう。
師匠に弟子入りを許可してもらえたら、一人前の落語家である「真打ち」を目指すための修行が始まります。真打ちまでには、いくつかの階級があります。
「前座見習い」では、通いや住み込みで師匠の身の回りの世話や雑用をこなし、その様子を師匠が見て資質や熱意を見きわめていきます。
「前座」に昇級すると、雑用に加えて寄席に同行する機会も出てきます。寄席をただ見学するのではなく、会場設営や道具の準備、呼び込みなどさまざまな仕事をこなす必要があり、この期間はおよそ4年ほどです。
「二ツ目」になると、真打ちではないものの、一人の落語家として活動できるようになります。メディアや公園などで売りこんだり、寄席に出演するチャンスをつかんだりすることによって、たくさんのお客さんを目の前にして、落語を披露することができます。
二ツ目の期間はおよそ10年で、弟子入りから約14年間を経て、真打ちになることができるのです。
落語家になるためには、学歴や専門資格は必要ありません。年齢も問わないので、誰にでもなれる可能性があります。若いうちから弟子入りしたり、社会人から一念発起して入門したりすることも可能です。
落語家というと男性をイメージしがちですが、女性落語家も増えています。落語が好きな女性にも落語家を目指せるチャンスをあります。
どのような立場から落語家を目指すとしても、落語への熱意や愛情などがあり、14年もの修行を乗り越えられるかが大切です。厳しく長い修行があっても、それでも落語家になりたいという思いがあれば、門はいつでも開かれています。
落語家を目指すにあたって、収入面は知っておきたいポイントです。
前座見習いはまだ落語家として名前はなく、収入はあまり期待できません。しかし先輩の落語家がご飯を奢ってくれたり、さまざまな仕事をこなすことで食べるのに困らないくらいの収入にはなることが多いです。
前座になり師匠に名前をもらうと、講演会や落語会、寄席などに出演し、出演料が発生します。寄席は一般的に参加した落語家で入場料の半分を山分けすると言われています。寄席だけとなると、1日1人あたり数千円ほどになるのではないでしょうか。
寄席以外に落語会や講演会をおこなうとなると、出演料はさまざまです。階級が上がるごとに出演料が高くなる傾向があり、真打ちになり独演会を開けるまでになれば数十万~100万円ほどの出演料を得られることもあります。
初めは限られた出番で収入も決して多くありませんが、腕を磨き階級を上げ、人気を得ることで収入も上がっていくでしょう。
落語家に適性があるのは、どのような人なのでしょうか。
まず大前提として、落語が好きなこと、落語に興味があることが大切です。
落語への愛情や探求心が日々の鍛錬や研究の原動力になり、長い修行期間を乗り越えたり、真打ちになってからも落語家の道を究めたりすることにつながっていきます。
落語は、演目を聴いてくれるお客さんがいなければ成り立ちません。お客さんを笑わせたい、落語を楽しむひと時を幸せに感じてもらいたいなど、お客さん・人への思いも必要です。お客さんが笑ってくれるように落語を探求するとともに、笑顔にさせられたときのやりがいや達成感は何事に代えられないでしょう。
最後に適性としてあげたいのが、落語以外にも真摯に向き合える人であることです。
落語家として1人前になるためには、二ツ目まで4年、真打ちまで14年と長い道のりがあります。落語だけでなく、師匠の身の回りの世話や雑用、寄席の運営などもこなさなければいけません。
落語だけに打ち込めない状況を理解し、何事にも真面目に取り組み、着実に努力を重ねられる人が落語家に向いているでしょう。
- 著者
- 和浩, 稲田
- 出版日
落語の基本についてまず知りたいというときにぴったりなのがこちらの1冊です。落語に関する疑問をイラストでわかりやすく解説しているので、解説書で学ぶのが苦手な方でも気軽に手に取ることができます。
「寄席ってなに?」という疑問から、演目や落語の種類、落語家のなり方などが細かく解説されているのがうれしいポイントです。意外な豆知識も散りばめられた、痒い所に手が届く書籍で初めての落語書にぜひ読んでみましょう。
- 著者
- 立川こしら
- 出版日
こちらの1冊は、立川志らくさんを師匠に持つ、立川こしらさんの生き方や落語論にスポットライトを当てて綴られています。立川こしらさんは、ミニマリストという顔も持っている人気若手落語家です。
現代的な生き方は、落語にも取り入れられています。古典落語をベースにして、人気アプリを落語の題材にするなど現代のエッセンスを取り入れた独自のスタイルはさながらDJのようです。これからの時代の落語家像に通ずる、新世代の落語家の生き方や落語論を学んでみてくださいね。
- 著者
- 広瀬 和生
- 出版日
活躍している人気落語家には、長い下積み時代を乗り越え、たくさんの人に愛される理由があります。こちらは人気落語家5人へのインタビューがまとめられた1冊です。
柳家三三、春風亭一之輔、桃月庵白酒、三遊亭兼好、三遊亭白鳥の5人のインタビューでは、下積み時代や師匠の話、ブレイクのきっかけ、当時の苦楽などが語られています。ディープな話が多く、落語家をこれから目指す方はぜひ知っておきたい内容です。
落語好きならたまらない1冊になるはずなので、楽しみながら落語とは何か、落語家とはどのような職業かを学んでみましょう。
落語家になるまでには、師匠に入門してから前座見習い、前座、二ツ目、そして最終的には真打ちになるため14年間ほどの修行を乗り越える必要があります。長い修行は必要であるものの、学歴や資格、年齢、性別を問わず目指すことができ、社会人から落語家への転身も可能です。落語が好きな人や人を笑顔にしたいという思いが強い人は落語家に向いている人でしょう。
長い修行期間があっても落語家にどうしてもなりたいという信念がある方は、ぜひこの記事やおすすめの本を参考にして、落語家を目指すために動き出してみてくださいね。