言葉を巧みに操り、一遍の詩を紡ぐ詩人という職業。ただ言葉をつなげるのではなく、自分自身の思いや伝えたい願いを込めてリズムや韻を使い、時には自由に詩をつくっていきます。しかし詩人は毎日をどのように過ごし、そして生計を立てているのでしょうか。活躍できるのはひと握りの詩人だけだとしても、憧れの詩人の姿を追って働きながら詩を書き続ける人は少なくありません。 今回は、詩人になるまでの道のりや活動の仕方、向いている人、年収事情などを詳しく解説します。詩に興味がある方や言葉が好きな方は、ぜひ参考にしてみてくださいね。
詩人とは、詩を制作・発表し生計を立てている人のことを言います。詩の作り方はさまざまで、自分の思いの丈を言葉に込めたり、情景や感情を言葉に乗せたりするなど、言葉を巧みに操る表現者でもあります。
詩人にはさまざまな活動の仕方があります。
詩集や朗読会以外にも詩を発表する機会は増えており、SNSをうまく活用して詩人としての活動の認知度を高めている方も少なくありません。
納得できる詩は、一朝一夕できるとは限りません。言葉が降りてきてすぐにできることもあれば、思い通りの表現が見つからず苦しむこともあるでしょう。自分の中にある言葉や表現、感性などと向き合い、詩を編み続けるのが詩人の仕事です。
詩人になるために必要な資格はありません。自ら詩人と名乗ったときから詩人といえますが、詩人として認知され、詩作で生計を立てるためには、自分の詩が世に知られることが足がかりになります。
詩を世間に知られ、詩人になるまでの道のりに決まったルートはありません。
詩人となるきっかけは人それぞれです。しかし、ただ詩を発表するだけでなく、詩に触れる人の心を揺さぶらなければなりません。
決まった道のりがないということは、誰にでもチャンスがあるともいえるでしょう。社会人として働きながら詩を作り続ける、発信し続けることによって、詩人として転身できるかもしれません。
16歳から詩人として活動している文月悠光さんは、現在フリーランスで会社に就職せず詩人としてさまざまな仕事にチャレンジしています。「大学生の頃から詩人として仕事をいただくことが多かった」と文月さんは話しますが、就職することで詩と向き合う時間や、ひとつの詩を書く仕事が他の仕事に繋がるチャンスであることを知っているからこそ、就職はしないという判断をくだしたそうです。
参照:Owlly
何より大切なことは、自分が詩人になることを疑わずに詩に向き合い、さまざまな方法で自分の作品を発信し、可能性を広げることでしょう。
詩人の方がどのように収入を得ているのでしょうか。主な収入源には、以下のようなものがあります。
詩人の年収や収入は人によってさまざまですが、詩人としての収入だけでは生活することが難しいのが実状です。
詩人としての顔のほかに、言葉を扱うコピーライターやエッセイスト、脚本家などと兼業する方も多くいます。まったく異なる仕事と兼業する場合もあり、専業の詩人になることは簡単ではありません。
今後、詩人にフォーカスが当たることがあれば、詩人として生計を立てられるチャンスが広がる可能性があります。短歌や俳句が再注目されたように、さまざまな媒体を通して詩に脚光が当てられるかもしれません。新しいチャンスをつかむためには、やはり詩を作ること、発信することが大切になるでしょう。
詩人になるためには、表現の幅が広いことはもちろん、題材を見つける感受性や想像力、詩を書き続ける根気などが必要でしょう。詩人に向いているのはどのような人かいくつかご紹介します。
詩は、映像作品や絵本とは違い、読み手に言葉だけで風景や感情を伝えたり、想像のきっかけになったりするものである必要があるでしょう。同じ言葉で伝えるものには、小説もありますが、小説よりも少ない言葉でひとつの作品を作り上げなくてはいけません。
少ない言葉で感情を揺さぶるためには、幅広い語彙・表現を持ち、読み手に影響を与えながらも、伝えたいことを散りばめる言葉選びのセンスが必要です。
語彙・表現を身に付けるためには、詩作や小説などからたくさんの言葉に触れましょう。辞書を読み込むこともおすすめです。普段使っている言葉の新たな意味を知ったり、これまで知らなかった言葉に出会ったりでき、頭の中に言葉の引き出しが多く生まれるでしょう。
詩の多くは、日常生活の些細な出来事や風景、季節の移り変わりなどを題材にしています。毎日訪れる朝や、一見いつもと変わらない街並みから変化を見つけたり、小さな出来事に感動したりできると、詩の世界が広がっていくでしょう。
感動した出来事や日常の小さな変化などから、詩を編む想像力も大切です。唐突な例ですが、うっかり落としてしまったコンタクトレンズからどんな風景を想像するでしょうか?
ただ落ちたコンタクトレンズではなく、落ちている様子が透明なドームやボウルなどに見えると、コンタクトレンズを落としたことから自分だけの言葉の世界が生まれてくるでしょう。
何気ないことでも想像する癖をつけたり、感じたことを書き溜めたりして、感受性・想像力を鍛えてみてくださいね。
詩人になるまでの道のりは簡単なものではありません。チャンスをつかむためには、誰かの目に留まるまで詩を作り続ける必要があります。日の目を見ることができない期間があっても詩に向き合うためには、言葉や詩への愛情が必要でしょう。
言葉・詩を自分自身が一番好きであれば、辛い現状のなかでも詩を作り続けられるはずです。自分には目に見えなくても何気なく発信した詩が誰かの心に届いているかもしれません。詩作への愛情や意欲・情熱を持ち、いつかたくさんの人に届くと信じ続ける信念が必要です。
- 著者
- やなせ たかし
- 出版日
こちらの1冊は、アンパンマンの作者として知られるやなせたかしさんが綴ったものです。やなせたかしさんは詩人としてファンを多く持ち、詩については何か、詩の書き方などを暖かくユーモラスもある言葉で解説しています。
「だれでも詩人になれる本」という書名の通り、詩について学べるだけでなく、暖かい言葉が詩の制作に取り組む背中をそっと押してくれますよ。やなせたかしさんがおすすめする詩も紹介されているので、ぜひ一読してみましょう。
- 著者
- 谷川 俊太郎
- 出版日
詩について書かれた本は数多くありますが、詩とは何かを詩そのもので表現したのはこちらの1冊だけではないでしょうか。
詩人である谷川俊太郎さんが「詩とは何か」という問いを、自らの詩で答えています。普段詩にあまり触れていない方、子どもでも夢中になると評判で、谷川俊太郎さんが使う言葉の魔法にかけられるでしょう。美しい言葉に触れながら、詩とは何かを読み取り、自分自身でも考えてみてくださいね。
- 著者
- 渡邊 十絲子
- 出版日
これから詩をつくるたまには、詩について知ることも大切です。著者は詩人でもあり、現代詩の魅力を伝えるために、自らの経験をベースに様々な現代詩を丁寧に解説しています。
谷川俊太郎さんなどの詩を引用しており、詩に散りばめられた技や作者への思いを読み取り、これまでわからなかった魅力が見えてくるはずです。たくさんの詩に触れながら、現代詩とは何か、楽しみ方などに触れ、詩の世界により深く潜っていきましょう。
詩人は、日常な些細な出来事や小さな感動、風景を言葉に込め、詩を編む仕事です。
詩人として生計を立てるなら、コンテストでの入賞やSNS・投稿サイトで話題になるなど、自分の詩が世に知られる必要があります。世に知られ心を動かす詩をつくるためには、幅広い語彙・表現や感受性・想像力、言葉・詩への愛情などが欠かせません。俳句や短歌のように、これから詩に注目が集まることも考えられます。
自分の詩がたくさんの人に届くチャンスを逃さないように、詩の創作を続け、詩人としての道を切り拓いていきましょう。