整った和服姿、凛とした立ち姿、親しみやすい人柄などが印象的な「仲居」。古くから女性の仕事とされてきた歴史がある職業ですが、時代の流れとともに男性の仲居も見かけるようになりました。仕事に向き合う姿は職人のようで、就職や転職先として選ぶ方は多くいます。 今回は、そんな仲居の仕事内容や気になる収入面、仲居のなり方などを解説します。また、意外に高時給な仲居のアルバイトの情報もご紹介。仲居の仕事や観光業界に興味のある方は、ぜひ参考にしてみてください。
江戸時代より昔から、旅館や料亭で給仕や接客、お客様の身の回りのお世話をする女性の仕事として親しまれてきた職業が「仲居」です。
仲居は旅館のなかでも花形の職業です。お客様と接する時間も多く、旅館の「顔」としての役割も担っています。日本旅館らしく、着物を着て働く姿も特徴的な職業です。
近年では、男性の仲居も少数ながら活躍している姿を見かけるようになりました。しかし、まだまだ女性の仕事というイメージは強く、女性中心の職場という雰囲気が残る実情があります。
ここで豆知識をひとつお伝えしましょう。昔から女性の仕事だったという歴史はあるものの、男性の仲居が一切居なかった訳ではありません。
給仕や接客は女性の仕事でしたが、重い荷物を運ぶような仕事をしていた「男衆(おとこし)さん」というポジションが当時は存在していました。現在でも、年配の方を中心に「男衆さん」と親しみを込めて呼ぶお客様もいるようですが、基本的には男女の区別なく「仲居さん」と呼んでも問題ありません。
旅館もしくは料亭がメインですが、最近では「和」をテーマにしたホテルも増えてきており、そういった場所で仲居として働いている方々もいます。
代表的なのは、東京・大手町にある「星のや東京」です。仕事の内容としては仲居と大きな違いはないのですが、星のや東京では「お茶の間さん」と呼ばれ、活躍しています。
料亭の場合は、主に個室までの案内や料理の給仕がメインです。各界の要人が会食をおこなったり、重要な商談がおこなわれたりと、お客様のプライバシーを尊重したり適度な距離感を持って接することが求められる場面も多々あります。
客室への案内など、ホテルのベルスタッフ「5分でわかるベルスタッフ」に近い仕事も多くありますね。客室の清掃については、専門の清掃業者に依頼している場合や旅館に清掃担当の係が在中している場合もあります。
仲居の平均月給は20万円前後、年収にすると300万円前後です。日本人の平均年収の水準より、少し低い傾向にあることが分かります。
しかし、業績のよい旅館や料亭ではボーナスが出ることもあるため、日本人の平均年収である420万円前後の収入を得ている人もいるようです。
世界でも「日本流のおもてなし」に注目が集まっている今、仲居はこの先も必要とされる職業だと予想できます。今後、活躍の場がなくなってしまうという心配はなさそうです。
「仲居になりたい」「旅館や料亭の仕事を知りたい」という方は、高級料亭でのアルバイトもおすすめです。
求人の数は決して多くはありませんが、一流料亭の時給は1300円前後のものが多く、着物の着付けを覚えることができる・マナーを学ぶことができる・学生でも高収入を得られるなど、メリットが多いのも魅力です。興味がある方は、ぜひ求人情報を探してみてください。
仲居として働く上で、特別な国家資格などは必要ありません。また学歴・資格も不問としているところも多く、入社するためのハードルはそこまで高くないようです。
しかし、最低限の観光に関する知識・マナー・語学などを学んでおくことで就職に有利になることは間違いありません。あまり観光業界についての知識がないという方は、専門学校や大学への進学も検討しましょう。
どのようなことを学べる学校へ行けば、仲居への近道なのでしょうか。
専門学校であればホスピタリティを実践形式で学べる授業も多く、即戦力となれるような技術を取得することが出来ます。
大学への進学を検討している方は、観光学や語学系の学部を選ぶと役に立つ知識を多く学べるでしょう。実際に観光業界に就職した人の中には、観光系・ホスピタリティ系・語学系の学部出身者がたくさん働いています。
旅館や料亭でお客様にサービスを提供する仲居の仕事。おもてなし精神に溢れ、一番にお客様のことを考え行動する仕事の姿勢に、感動したことがある方は少なくないでしょう。
そんな仲居への転職では、いくつか注意したいポイントがあります。
老舗の旅館や料亭は、職人気質な部分が多くあります。そのため育成システムが整っておらず「仕事は見て盗め」というスタイルがいまだ続いている職場が多くあります。
異業種からの転職で右も左も分からないなかでも、自ら仕事を獲得していくという心意気がなければ難しい部分があるのです。
そうした育成システムに危機を感じ、後輩のために仕事のノウハウを蓄積していける方は、仲居の仕事に向いているといえるでしょう。
先述したような内容から、他の職種へ転職する方は多いようです。
また老舗の旅館や料亭は山中にあることが多く、住み込みで働くためプライベートな時間がないといった面もあります。休日は生活用品を買うために時間をかけて下山しなければならず、他のやりたいことに時間を割くことが難しいのが実情です。
山中での暮らしに惹かれて転職する方も多いですが、その暮らしが実際に自分の気質に合っているかどうかは働いてみないとわかりません。その点も考慮して就職活動をする必要があるといえそうです。
日々の業務の中で、お客様から「ありがとう」「楽しい滞在だったよ!」といった言葉をかけられることも少なくありません。また時には、仲居の存在と心遣いが旅館・料亭の印象を左右するほどの影響力と存在感を持つこともあります。自分の仕事に誇りを持って働くことができる職業といえるでしょう。
仲居が活躍するのは旅館・料亭の内勤がほとんどですが、海外からの観光客増加の影響も受け、世界に向けて日本の魅力を発信することができるワールドワイドな側面も持ち合わせるようになっています。
仲居の職場でも、とくに旅館は24時間営業でありシフト制の場合がほとんどです。さらに、重い荷物や料理を運ぶことも多々あるため、体力のない人にとっては少々辛い職場でもあります。
こちらは最低限の知識があれば問題はありませんが、丁寧な言葉使い・相手に不快感を与えない身嗜みといったことに理解があることが求められます。
英語や他の外国語が話せないからといって、仲居になることが出来ないという訳ではありません。しかし現在では、日本旅館に対する外国人からの関心は日ごとに高まっています。彼らの期待値も非常に高いため、それなりの語学力があると日本の魅力を伝える場面では武器になるでしょう。
物怖じせず普段から誰とでもフラットに会話できる人は活躍できる可能性の高い業界です。自分から目上の人や外国人に声を掛けるといったことに抵抗がない人は、とくに実力を発揮出来るでしょう。
自分の国についての知識がない状態では、外国からやってくるお客様に魅力を伝えることはできません。また、日本人を相手に「日本の魅力を再確認させる」という場面も出てきます。
観光業界でも一番重要な素質といっても過言ではない能力のひとつです。「どうしたら相手が喜んでくれるか?」「もっと自分にできることはないか?」と常に考える姿勢を持つことが大切です。
普段から、自然と周りに気遣いができている人は仲居に向いている可能性があります。周囲の人から「気が利くね!」と言われたことがある人は、仲居として活躍できる素質を秘めているかもしれませんよ!
- 著者
- 山下 由美
- 出版日
宿泊部門や料飲部門というように細かく部署が分かれているホテルと違って、深く狭くお客様と関わることの多い旅館。そんな状況下では、クレームが発生した際に仲居さんが集中攻撃を受ける可能性も否めません。
どんな仕事をするにも知っておいて損はないクレーム対応術が書かれていますので、社会人だけでなく接客系のアルバイトをしている方にも、おすすめの1冊です!
- 著者
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- 出版日
「旅館」と一纏めにしてしまうのはもったいない程、個性に溢れた温泉旅館がたくさん載っています。美しい写真を眺めながら「どんな旅館の仲居になりたいか?」想像しながら眺めてほしい1冊です。
今回ご紹介した「星のや東京」も載っていますよ!
- 著者
- 林田 正光
- 出版日
「ホスピタリティ」と聞くと、ホテルで働く人に特化した心構えとイメージする方も多いかもしれません。しかし今では、ホスピタリティはサービス業界全体で重要視されるものとなりました。
本書における話もホテルでの出来事を中心に進んでいきますが、書いてある内容はそのまま旅館・料亭で使えるものばかりです。接客に興味のある人であれば、幅広く楽しんでいただけます。
実際に仲居になったあと、はじめは着物の着付けや旅館ごとの特色に戸惑うこともあるかもしれません。しかし、自分の存在や行動ひとつで世界に日本の良さをアピールすることができる、やりがいのある職業です。
興味がある方は、アルバイトを経験してみるのもよいでしょう。進学を考えているという方は、観光系の学部も検討してみてください。
着物を纏い一流のおもてなしをおこなう仲居。昨今の世界情勢が落ち着いた暁には、大活躍が予想される職業のひとつです。