5分でわかる宮大工!伝統工法の詳細や実力を証明できる資格や就職先、年収などを解説!

更新:2021.12.4

国宝や文化財に指定されている木造の建造物をはじめ、貴重な建物の建築や補修などを行う宮大工。世界に誇る建築技術を習得して伝統的な神社・仏閣の保全に携われる魅力の大きな仕事です。ただ憧れだけで仕事を選ぶのは危険。建築現場ではやりがいを感じられるとともに、危険と隣り合わせの仕事でもあるからです。 本記事で仕事内容をはじめ、やりがいや大変さ、就職先、資格、年収について解説します。また最後に関連書籍も紹介。さまざまな情報をインプットして宮大工について学んでもらえると嬉しいです。

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宮大工の仕事内容。工法など必要な技術とは

一般的な印象として「神社仏閣などの歴史的建造物の建て替えや修繕をおこなう職人」という宮大工ですが、フォーカスしてみるとさまざまな仕事があります。この章では宮大工の仕事内容や、必要な技術について解説します。

宮大工の仕事内容

「木組み」と呼ばれる日本の伝統的な工法で神社や仏閣を造るのが宮大工。新築や建て替えだけではなく、改修工事も主要な仕事のひとつであるため、文化財の補修や解体に携わることもあります。

現代は神社や仏閣を伝統工法を用いて新築することは減ってきましたが、古民家ブームなどの影響で日本建築の木造住宅を好む人も増えているため、最近では一般住宅の新築工事や改築工事をおこなう業者も増えています。 

そのほか神社・仏閣だけでなく城郭建築にも木組みが用いられているため、城の修繕なども定期的に携わる仕事です。

宮大工の工法

「木組み」は釘や金物をほとんど使わず、木自体に切り込みなどを施し、はめ合わせていく建築の工法。電動工具は使わず木材の加工を全て手でおこないます。

また宮大工の技術を語るうえで「継手」も解説しておかなければなりません。継手とは木材の長さが十分でない場合に、長さを継ぎ足すときに使われる技術のことで、「腰掛鎌継ぎ」「台持ち継ぎ」「追掛け大栓継ぎ」など多くの種類があるのが特徴。この技術のすごさは釘などを使わずに強度を担保できるだけではなく、材をはめ込んでしまうと繫ぎ目もほとんど分らないくらいの美しい仕上がりにあります。

継手は組み方の知識に加え、正確に材を削る技術が要求されるため、習得までに長い期間を要します。

宮大工になるには。必要な資格

このような伝統技法を用いる仕事なので「特別な資格がいくつもあるのだろうな」と思う方もいるかもしれませんが、宮大工専門の資格はとくにありません。現場でつちかった自身の腕前がすべての職人の世界なのです。

在来工法よりも格段に技術の難易度は高く、一人前と呼ばれるまでに最低でも10年の修行が必要だと言われています。ただ取得することで大工としての実力を証明できる資格もあります。

建築大工技能士国家資格

「建築大工技能士」の資格は、木造建築の大工工事に必要な技術力を証明する国家資格です。試験は3級から1級まであり、3級は誰でも受験可能ですが、2級は実務経験2年以上、または3級合格者のみ、1級は7年以上の実務経験、または2級合格後2年以上、3級合格後4年以上の実務経験がある方が受験対象となります。

試験内容はどの階級も学科・実技があります。比較的難易度は低めと言われていますが、参考程度に平成25年度の合格率を見てみましょう。

  • 3級:49.6%
  • 2級:25.2%
  • 1級:38.4%

超難関の試験ではありませんが、受験資格に実務経験が含まれていることを考えると多少難しい試験ではあるのかもしれません。しかし現場で経験を積みながら学科試験の対策をおこなえば資格取得は遠い話ではないでしょう。さらに詳細が気になる方は、中央職業能力開発のホームページをご確認ください。

参照:中央職業能力開発

現場工事をおこなう職種のなかでは高収入

職人の仕事で最も不明なのが給与だと思います。結論から話しますと宮大工の給与は、現場系の仕事のなかでは高収入の部類入ります。では実際の数字を見ていきましょう。

宮大工の平均年収

おおよそ382万円~501万円ほどと言われています。ほかの現場系の仕事と比べても高収入ですし、一般的な会社員の平均年収は400万円ほどなので、しっかり貰えている印象です。

ただし、宮大工は現役期間が短いため、生涯年収は会社員と比べるとどうしても少なくなります。

ちなみに月収の平均は約31万円で、年代別に見ると以下のようになっています。

  • 20代:約21万円
  • 30代:約26万円
  • 40代:約33万円

こちらの年代別平均月収から考察するに、10年の修行を経てひとり目と認められたあたりから、給与は上がっていく傾向にあるようです。

宮大工としての就職先

寺社仏閣を手掛ける工務店が主な就職先

宮大工職人になるためには寺社仏閣などを手掛ける工務店に入社し、そこで技術を磨くのが一般的です。ただし寺社仏閣や城郭の工事は一般建築物の工事に比べると少なく、宮大工の求人数は在来工法専門の大工に比べて少数なのが現実です。

そのためそうしたこういった工務店では、並行して戸建て住宅などの一般建築物を取り扱うことも多々あります。

宮大工仕事のやりがいは大きいが大変さも見落としてはならない

厳しい宮大工の世界。大変さもありますが、厳しさを乗り越えるからこそ生まれる喜びや感動もあります。本章では宮大工のやりがいと大変さに触れていきます。

専門的な技術の習得

木材を正確に切り出したり、組み立てたりする作業は一朝一夕には身につかない技術です。しかしそこに一番の魅力が隠れています。誰もが扱えるわけではない特殊な技術だからこそ希少性があり大きな誇りが得られます。また自身の技術を後世に伝承する役割を担っていることを自覚し、それをやりがいに感じることもできます。

伝統的建築物の保全

自身の手によって歴史的にも価値のある文化財を守り、次世代に残していく。そのような重要な役割を担っていることを実感できれば、大きなやりがいが得られるでしょう。

宮大工としての大変さ

先述しましたが一人前と呼ばれる宮大工になるまでには「最低でも10年の修行が必要」というのが通例です。一般的な家屋大工の場合、おおよそ2~3年の現場経験を積めば一通りの業務をこなせるようになると言われているため、修業期間の長さは特筆すべき点かもしれません。

途中でリタイアしないためにも修業を自己研鑽の期間と捉え、一人前の宮大工に一歩ずつ近づいていることを実感できることが大切でしょう。

古建築を探訪しながら「手仕事」の素晴らしさに触れる

著者
松浦 昭次
出版日

宮大工の技術と日本人の手仕事のすばらしさを教えてくれる1冊。

著者は全国各地の国宝や重要文化財建造物の保存修理工事を手掛ける松浦氏。海住山寺の五重塔(京都)など国宝5ヵ所、法隆寺の山門(奈良)など重要文化財27カ所の修理に携わり、文化財専門の最後の宮大工と言われる人物です。

そんな名匠の長年培った経験から「伝統と、ものを生かす」の精神を学べます。

いい仕事はいい大工道具から

著者
手柴 正範
出版日

宮大工は伝統的な工法を用い神社仏閣の建て替えや修繕をおこないます。その完成度には技術もそうですが、道具の質も大きな影響を及ぼします。

本書は日本伝統の大工道具を使いやすく仕立てるコツについて書かれ仕込みのテクニック集。鉋、鑿、墨付け道具・刳り小刀などの仕立てと研ぎを写真で付きで解説してくれるので、駆け出しの大工はもちろん、奥深い道具の世界を知っておきたい人にもおすすめです。

相手(神社)を知れば意欲も高まる

著者
米澤 貴紀
出版日

日本各地の神社の見かたを図解で教えてくれる本書。鳥居、社殿、門・塀・垣、狛犬、神紋などのカタチの意味から、「古事記」「日本書紀」にまでさかのぼる神様と、そのご利益までを解説しています。図解とテキストで解説してくれるので神社初心者にもやさしいのがポイントです。

相手のことを知れば仕事に誇りを持てるだけでなく、作業一つひとつに心を込めて取り組むことができます。


自身の手によって歴史的に価値のある文化財を守り、次世代に残していくという役割を担っている宮大工は誇りを持って働ける仕事。また、木組み工法といった伝統の技術を学べる喜びと、それを伝承していく使命感も宮大工の醍醐味です。

しかし巧みの技術なため習得するまでの期間も約10年と決して短くありません。それでも「目指してみたい」「もっと知りたい」と思っていただけたのであれば、ここで紹介している書籍などで素晴らしい作品に触れたり、知識を学んだりしてモチベーションを高めていってください。

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