同じくヘアスタイリングをする仕事でも、おしゃれでいえば美容師のほうが先に頭に浮かぶ人が多いと思いますが、今や時代も変わり、おしゃれな男性が通うような理容室も増えています。本記事ではそんな注目の仕事、理容師について解説していきます。仕事内容をはじめ、資格の取り方や将来性、給与にいたるまで要点を絞って紹介。また美容師と理容師の違いについても言及しています。 理容師に興味がある方、目指そうと思っている方に向けた書籍もレコメンドしますので、ぜひあわせてチェックしてみてください。
美容師と同じく、お客さんのオーダーに従い散髪をおこなう理容師という仕事。
店構えから理容室と美容室の違いは雰囲気で伝わりますが、実際仕事内容は何がちがうのでしょうか。この章では理容師の仕事についてと、働くうえで必要な国家資格の取り方やそのほかのあると便利な資格について解説します。
理容師の主な仕事は、ヘアカットやスタイリングのほか刈込み、顔そりなどの方法ににり容姿を整えることです。基本的な施術の流れは以下の通りです。
このほかカラーリングや、髪をロッドで巻き上げるワインディング、頭皮クレンジングなどもおこないます。
施術内容を見て「美容師がおこなう施術と一緒に思えるけど、何が違うの?」と疑問に思った方がいるかもしれませんが、違いは「5.シェービング・顔そり」です。とは言っても施術自体の違いはそれだけなのでほぼ同じことをしています。
どちらかといえば、理容師と美容師の違いは施術より目的にあります。美容師は「美しくすること」を目的としているのに対し、理容師は「整えること」を目的としています。もちろん免許も異なるので、取得する資格についてはきちんと違いを覚えておいた方がよいでしょう。
理容師として仕事をするためには国家資格である理容師免許が必須。ただし誰でもすぐに資格試験を受けられるわけではなく、理容師の養成課程がある専門学校で2年間(通信の場合は3年間)、知識や技術を学ぶ必要があります。
試験は実技と筆記に分かれています。
理容の物理・化学、理容理論
試験の合格率は年によって多少上下しますが、おおよそ70%ぐらいと言われています。ちなみに近年の実際の合格率を見ていくと、平成29年2月の試験の場合は75.1%、平成28年8月の試験では60.5%となっています。
資格には理容師免許のほか、あると便利な資格もありますのでここで2つだけ簡単に紹介します。
こちらは自分のお店を持つために必須となる資格です。2名以上が働く理容室には、管理理容師資格取得者をひとり以上置かなければならないと理容師法で決められています。
管理理容師は講習会を受け、修了証書を交付された方のみが名乗ることができます。その受講資格は理容師の免許または美容師の免許を取得し、3年以上実務経験を積んだ方のみです。
講習会は全3日間。公衆衛生4時間、理・美容所の衛生管理14時間を受講し、講習効果があったと判断された方が管理理容師として資格を得ることができるのです。
公益財団法人日本毛髪科学協会が認定する資格です。毛髪に関する知識と精度の高い診断技術を習得することで、髪の毛に悩みを持つ人に的確なアドバイスができるようになります。
こちらも講習会の受講をし、その後おこなわれる認定試験に合格することで資格を取得することができます。講習は2日間にわたっておこなわれ、講習の内容は以下になります。
毛髪診断士の認定期間2年間で、更新するには認定更新試験をおこなわなければなりません。講習会は東京で年に3回、大阪では年に2回開催されます。その年の講習会のスケジュールに関しては「日本毛髪科学協会」が更新している「毛髪診断士認定講習会年間スケジュール」を確認するようにしましょう。
参考:日本毛髪科学協会
「美容師になりたい人は周りでちょくちょく聞くんだけど、理容師を目指している人はあまり聞かないし、実際のところ理容師のニーズってどうなの?」という疑問を持っている方は多いかもしれません。この章では理容師のニーズや将来性について解説します。
一昔前と違い、いまは男性が美容室を利用することも珍しくない時代です。そのため「理容室は美容室と比べて集客が見込めないのでは?」と思っている方も多いと思います。実際、20~ 64歳男性の45.7%が美容室を利用しているというデータもあります。
ただし「理容室の気楽さがいい」という理由で、男性は30代になると美容室から理容室にシフトしていくという傾向もあるようです。また、最近は20代後半から40代ぐらいまでの男性をターゲットにしたおしゃれなお店も増えており、理容室のイメージチェンジも進んでいるようです。
そのほか外出が困難な高齢者・障がい者を対象とした出張理容師のサービスや、レディースシェービングを施術できるエステサロンを併設した店なども人気で、やり方次第ではまだまだ理容師として活躍できる場はあります。
参照:第6回投資促進等WG
理容師は独立開業し経営者へと転向するケースがほとんど。そのため、独立準備はできるだけ早く計画しておくといいでしょう。「いつまでに独立すのか」「初期コストと機器や設備などを導入する場合にかかるイニシャルコストはどれぐらい用意するばいいのか」などに加え、立地や規模も重要です。
もちろん髪を切ってもらいたくなる理容師になるためには技術も大切なので、修練も怠ってはいけません。
最後の章では理容師の給与事象について触れます。早速見ていきましょう。
理容師の平均年収は約280万円ほどです。この数字を見て「低い…」と感じた方もいると思います。
実際、一般的な会社員の年収が400万円とされているため、どうしても見劣りする数字です。ただし、理・美容師は給与が上がっていく前の見習いの段階でドロップアウトしていく方が多いため、それが年収が低くなっているひとつの要因ともいえます。
やはり無資格で働いている見習いの段階では圧倒的に給与が低いため、養成学校に通い理容師免許を取得した状態で理容師になることをおすすめします。
- 著者
- ["大岳 美帆", "木村 由香里"]
- 出版日
理容師と美容師の役割の違いを詳細に解説してくれるほか、養成学校で身につけられる知識、適性や心構えなどのマインドについて学べる1冊。
個性豊かな活躍をしているオーナーや現役スタッフのインタビューなども収載されており、店舗経営の仕方、業界の発展のための取り組みヒント、バックステージでおこなわれていることなど、入門書ながらしっかり掘り下げた内容になっています。
美容師と理容師、自分が一体どちらの職業に向いているのか。いまいち決断しきれない方は、こちらの1冊を通してそれぞれの違いを知ることで決断の後押しになるかもしれません。
- 著者
- 大西 昌宏
- 出版日
24歳で父の経営する理髪店で理容師のキャリアをスタートさせた著者。現在11種類の業態を運営し、上海や香港など海外にも店舗出店するなど、理美容総合ビジネスにおいて大きな成功を収めています。
そんな著者の「勝ち残るためのノウハウ」を詰め込んだのが本書。「人材育成のために徹底的に投資すること」「儲かるための仕組みを作ること」など、経営を成功させるためのヒントがいっぱいです。
- 著者
- 加藤 寿賀
- 出版日
理容師は頭髪の刈込み、顔そりなどをおこなう職業であるため、男性理容師を思い浮かべるかと思いますが、当然ながら女性の理容師も多く働いています。
本書は、東京・新橋のガード下、わずか6坪の理髪店で94歳まで理容師として働いた女性の言葉を1冊の本にまとめた内容。
15歳で理容師修行を始め、94歳で亡くなるまで一時たりともハサミを置かず理容師として働きつづけた彼女から学ぶのは、理容師の仕事だけではありません。
生きるとは、死ぬとは。そして働くとはどういうことなのか。自分の生き方に自信をなくしかけている方に読んでほしい1冊です。
理容室と聞くと「髪を刈るところ」みたいなイメージを持っている人も少なくはないと思いますが、今はおしゃれなバーバーも増えおり、若い人のなかでも理容師を目指す人は増加中です。
また戦略的に理・美容両方の資格を取り、若いころは美容師として活躍し、30代後半から理容師に転身する人なども多くいます。
決して収入がいいわけでなく、漫然と仕事をこなすだけでは生き残るのが難しい業界ですが、それはあなた次第。「やってみたい」と思っていただけたのであれば、ここで紹介している書籍なども参考にし、長く活躍していける理容師をぜひ目指してみてください。