5分でわかる検察事務官!就職は国家公務員一般職の受験必須。年収が高く、安定。仕事内容を網羅!

更新:2021.12.4

司法の世界で働く、検察事務官という職業。混同されがちですが、検察官とはまた違う職種です。国家公務員として一般職の採用試験に合格し、検察庁に採用されてはじめて検察事務官になることができます。基本的には検察官の右腕として裁判で必要な証拠書類の調達、刑の執行、会計処理など、検察官を支える仕事をおこなっています。検察官がスムーズな仕事をおこなう上で、欠かせない存在です。 本記事では、検察事務官の仕事内容や年収、採用試験の内容などについてご紹介します。検察事務官から検察官へなるルートもありますので、その内容も漏れなくチェックしてくださいね。

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検察事務官とは

検察事務官は、検察庁に勤務する国家公務員です。

検察事務官と混同される仕事のひとつに検察官があります。しかし2つの仕事はまったく違うものであり、就職ルートも異なります。検察事務官として働くには国家公務員一般職の採用試験を受験します。検察庁に採用されたら検察事務官になることができるのです。

検察事務官から検察官を目指す方もいる

検察事務官は、司法試験を受験して検察官を目指していたけれど、司法試験のハードルが高いと感じた方にとっておすすめの仕事であるかもしれません。

検察庁のホームページによれば、検察事務官→副検事→正検察官のキャリアアップルートが存在します。検察事務官が特定の試験に合格すると副検事になり、副検事を務めて検察官特別考試に合格すると検察官になることもできます。

検察事務官で3年以上、副検事で3年以上の経験が必要なため、かなりの年月がかかります。ですが、検察事務官からのキャリアのひとつとして覚えておくのはよいかもしれませんね。

検察事務官の仕事内容

検察事務官の主な仕事は、検察官のサポートです。捜査・取り調べ・裁判などのシーンで、検察官の右腕として業務をサポートします。

具体的には、取り調べの立ち会い、罰金の徴収、刑の執行、捜査資料作成など多岐にわたります。配属される検察庁によっては会計や経理と事務的な仕事をおこなう場合もあります。

検察事務官の仕事をおこなう上で、正確な事務処理能力と、些細な点に気付いて仕事を進められる注意力は欠かせません。犯罪や事件に関わる業務をおこなうため、冷静な判断力、感情に流されない仕事への姿勢も求められます。

社会のために、事件や犯罪の真実を明かしたい。その一翼を担いたいと考える方には天職ともいえる仕事でしょう。

検察事務官の年収

検察事務官の給与には初め「行政職俸給表の行政職(一)」が適用されます。そのため新卒では、高卒は14万6000円で、大卒は17万6700円が基本給となっています。しかし高卒は5年程度、大卒は1年程度で、「行政職俸給表の公安職(二)」の給料が適用され、給料がアップする仕組みになっています。

さらに基本給の他に、超過勤務をした場合の超過勤務手当など、各種手当も加わります。

今回、平均給与額は「行政職俸給表の行政職(一)」と「行政職俸給表の公安職(二)」の両方をみていきましょう。

行政職俸給表の行政職(一)の平均月給

平均給与月額は40万円前後です。俸給と呼ばれる基本給約32万円に、さまざまな手当が支給されてこの金額となっています。平均給与月額は高いものの、適用される職員数が最も多いため、実際の給与額にはばらつきがあるでしょう。

年収に換算すると、500万円前後になります。

行政職俸給表の公安職(二)の平均月給

平均給与月額は約41万円です。基本給は約34万円。年収に換算すると500万円台のためあまり変わらないように思えますが、適用される職員数は「行政職俸給表の行政職(一)」の約2分の1。そのため大きな金額差はないと考えてよいでしょう。

参考:令和2年国家公務員給与等実態調査報告書

検察事務官になるには。採用試験の内容

検察事務官の採用試験は、大卒程度の国家公務員一般職(試験区分「行政」)と、高卒者試験(試験区分「事務」)のみです。大学院卒の国家公務員総合職での採用はおこなわれていないので注意が必要です。

今回は例として、国家公務員採用一般職試験(大卒程度試験)の内容をご説明します。

国家公務員採用一般職試験の受験資格

基本的に国家公務員採用試験の年齢制限は30歳までとなっています。そのため、令和3年度の試験では、受験資格は以下のように記載されています。

  1. 1991(平成3)年4月2日~2000(平成12)年4月1日生まれの者
  2. 2000(平成12)年4月2日以降生まれの者で次に掲げるもの
  3. 大学を卒業した者および2022(令和4)年3月までに大学を卒業する見込みの者並びに人事院がこれらの者と同等の資格があると認める者
  4. 短期大学または高等専門学校を卒業した者および2022(令和4)年3月までに短期大学または高等専門学校を卒業する見込みの者並びに人事院がこれらの者と同等の資格があると認める者

ここに記載されている西暦は、試験が開催される年によって変わるので、試験前に必ず確認しましょう。

採用一般試験の全体的なスケジュール

こちらは毎年ほとんど変わりないスケジュールとなっています。

  • 受付期間:4月上旬
  • 第1次試験日:6月
  • 第1次試験合格者発表日:7月
  • 第2次試験日:7月〜8月
  • 最終合格者発表日:8月中旬頃
  • 採用内定:10月頃
  • 採用:翌年4月

ほとんど1年がかりのスケジュールです。詳細な日付については、自身が受験する年の人事院のHPを見てご確認ください。

参照:国家公務員採用一般職試験(大卒程度試験)

国家公務員一般職試験の採用人数

一般職試験での採用予定人数は、受験区分によって細かくわかれています。たとえば令和3年度におこなう試験の場合では、以下の人数の採用を予定しています。

  • 行政:約730名(関東甲信越地方)、約570名(本府省)
  • 電気・電子・情報:約250名
  • 機械:約120名
  • 土木:約410名
  • 建築:約100名
  • 物理:約170名
  • 化学:約110名
  • 農学:約150名
  • 農業農村工学:約40名
  • 林学:約90名

行政は地方採用、本府省採用ともに最も広く採用枠が設けられています。しかし広い分、受験者数も多くなるため、試験対策はきちんとおこなうことをおすすめします。試験範囲が広く勉強が大変なため、短期間での詰め込みよりも、年間で勉強スケジュールを組んでコツコツこなしていくとよいでしょう。

参照:2021年度一般職試験(大卒程度試験)採用予定数

検察事務官は、高卒での受験も可能です。高校卒業後、法学の知識を生かして仕事をしたいという意欲があれば、検察事務官の試験の受験も考えてみるのはいかがでしょうか。

検察事務官になるには。大学での優遇の差について

国家公務員試験は、難易度が高いと言われています。国家公務員と聞くと高学歴のエリートしかなれないイメージを持っている方は多いと思いますが、実際はそうではありません。

在学する大学での学力区別はありませんし、面接時に使用する面接カードにも、学歴を記載する欄はありません。あくまでも受験者個人の学力が問われるのみです。

最終合格後の官庁訪問時には多少、学歴を見られることもあるかもしれません。ですがこのようなこともほとんどないと考えてよいでしょう。

日本の裁判の仕組みを知りたいなら

著者
["ベリーベスト法律事務所", "カプコン"]
出版日

大人気ゲーム『逆転裁判』のキャラクターがイメージになっています。法律の専門家が弁護士・検察官・裁判官の仕事をそれぞれ解説した本です。

イラスト入りなので見ているのも楽しく、解説も分かりやすい。裁判の仕組みをスムーズに頭の中に入れていくことができます。

ニュースを見て、裁判の仕組みが分からない場合、もっと詳しく知りたいと思った場合に読んで欲しい本です。読後には、ぜひ裁判所に行って、実際の裁判を傍聴するのもよいでしょう。

第2章では弁護士と弁護士を支えるパラリーガル、第3章では検察官と検察官を支える検察事務官、第4章では裁判官と裁判官を支える裁判所事務官の職業と仕事についてそれぞれ紹介されています。

裁判に関わる多くの職種について知ることのできる1冊です。

検察官の仕事とは。現役検察官と検察事務官を知りたい方におすすめ

著者
飯島 一孝
出版日

検察官といえば正義のために働いている人という印象を受けると思います。検察官はドラマになったことがあるので、裁判で弁護士と論戦を交えているので憧れた人がいるかもしれません。

この本では捜査現場と取り調べをおこなう刑事部、証拠を揃える公判部、経済事件や汚職事件などを追及する特別刑事部といった各部署が紹介されています。ドラマだけでは知ることができない情報が載っています。現役の検察官や検察事務官の姿をインタビュー形式で紹介され、検察官になるための道のりも解説しています。

第2章 検察官の世界では、証拠品を扱う際、マスク・手袋を着用している写真が載っています。裁判に関わる書類を書くだけではなく幅広い仕事をこなしていることが分かります。

この本では検察事務官のインタビューがあるので、検察官だけでなく検察事務官に興味がある人にも薦めたい本です。

検察の歴史を知りたいなら

著者
倉山 満
出版日

この本を読むことで、明治政府の司法卿・江藤新平から現代にいたるまで検察庁の歴史をすることができます。

日本の司法は、事件で起訴するとほぼ100%で有罪となることから「精密司法」と呼ばれています。

検察官には、警察が逮捕した犯罪者を起訴するか、不起訴にして無罪放免にするかを決める権力があります。そのような権力を持つ検察に対して、憲政史が専門の著者・倉山氏が、精密司法の正義と矛盾を追究しているのが本書です。

たとえば、戦後の汚職事件ではロッキード事件やリクルート事件が有名です。高校の現代社会や政治経済の授業で耳にしたことがある方は多いでしょう。

他にも、意外ですが、佐藤栄作元首相も造船疑獄事件で逮捕される一歩手前まで捜査が進んでいました。当時の犬養健法務大臣が逮捕請求を検事総長に命じて取り消したことにより、結果的に逮捕はされませんでした。

この1件は、展開によってはノーベル平和賞受賞のきっかけになった「持たず、つくらず、持ち込ませず」という非核三原則はなかったのかもしれません。

検察庁改革や検察庁の歴史を知りたい方にとって、一読の価値ある1冊です。

検察事務官採用試験の対策。教養試験問題はどうクリアする?

著者
資格試験研究会
出版日

国家公務員一般職の採用試験には、教養試験と専門試験があります。

この本は、知識や知能をはかる教養試験の過去問です。平成20年度から令和元年度までの過去問が載っているので、対策として十分な問題量が確保できるでしょう。

教養試験の場合、数的推理が鍵になります。これは、中学・高校レベルの数学の問題をマスターすれば問題ありません。しかし、数的推理は学校の授業などではあまり取り入れられていないため、躓く方は多いと言われています。問題に慣れるまで過去問を繰り返し解いてコツをつかみましょう。

人文科学(日本史・世界史・地理・思想)と社会科学(法律・経済・政治)の試験もあります。これらの試験科目については高校の教科書の基本的な知識があれば十分です。

高校で習っていないまたは忘れてしまった場合、公務員試験用のポイントをまとめた参考書で補うとよいでしょう。

検察事務官採用試験の対策。専門試験の勉強もしっかりと

著者
資格試験研究会
出版日

公務員一般職の採用試験には教養試験と専門試験の2種類があります。

この本は政治や法律、経済などといった区分に分けられた専門試験の過去問です。平成25年度から令和元年度の国家公務員一般職の専門試験の過去問が載っています。

専門科目は、政治学 ・行政学・憲法・行政法・民法・ミクロ経済学・マクロ経済学・財政学・経済事情・経営学・国際関係・社会学・心理学・英語(基礎、一般)です。科目数が多いので、試験対策は時間との戦いになるでしょう。

法学系・政治学系・経済学系のいずれかの学部に所属しているまたは卒業している場合、大学の講義を活用すれば効率的に試験勉強ができるかもしれません。

検察事務官の場合、高卒枠での採用試験もあります。高卒枠での国家公務員一般職は教養試験のみで、専門試験はありません。


今回は検察事務官の仕事について紹介しました。

検察事務官は、検察官の右腕的存在です。実際の業務では、検察官とペアを組んで仕事をおこなっていきます。業務は、検察官がおこなう捜査・公判運営の補佐から総務、会計までさまざま。判断力とスピーディーな処理能力が欠かせません。

国家公務員のため収入水準は民間企業の社員平均より高く、安定もしています。最近では女性の検察事務官が増加し、それにともなった変化も徐々に見られているそう。女性が働きやすい環境が整備されているのは素晴らしいですよね。

検察官を支える、司法の世界。正義感のある方、責任感の強い方にとって、やりがいのある仕事といえるでしょう。

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