情報化社会に合わせて、医療業界も少しずつ仕事の形を変えてきています。医療情報技師という仕事は、そんな変わりつつある医療業界において欠かせない存在です。医療という名前がついていますが、主な業務は患者さんの情報管理、施設内の医療用ソフトウェアの開発と、パソコンを扱う仕事をしています。情報化社会に伴い、そのニーズはますます高くなってきています。 本記事では、医療情報技師とはどのような仕事をしているのか、資格の取得方法や就職先、年収と詳しく解説していきます。 記事の最後には医療情報技師になりたいと考えている方におすすめの書籍もご紹介しますので、こちらもぜひ参考にしてみてください。
医療情報技師とは、日本医療情報学会が以下のように定義しています。
保健医療福祉専門職の一員として、医療の特質をふまえ、最適な情報処理技術にもとづき、医療情報を安全かつ有効に活用・提供することができる知識・技術および資質を有する者
参考:医療情報技師育成部会
医療情報技師は電子カルテなど医療機関のソフトウェアの開発や制作、メンテナンスや不備の対応などをおこなう仕事だと捉えてもらうと分かりやすいでしょう。
現在、医療業界もカルテの電子化などIT化が進んでいます。ですが、医療業界でITに詳しい方は少ないのが現状です。医療施設内のソフトウェアの開発や管理を医療情報技師にお願いすることがほとんどなのです。
医療機関ではまだまだIT化されていない病院も多く、現在だけでなくこれからも需要が高まる職業であると予測されています。
多くの医療情報技師は、以下のような場所で働いています。
ここから出向という形で病院へ赴き、仕事をしていきます。ですが、日本医療機能評価機構が実施している病院機能評価の項目を見てみると、評価要件に「医療情報技師の配置が望ましい」という一文が加わっています。
この評価要件により、病院は医療情報技師を直接雇用することで病院の安全性や質の高さを国から認めてもらえるようになり、病院の信頼が高くなります。このことから近年では病院が直接医療情報技師を雇用しているというところもあります。
医療情報技師の年収について公式なデータはありません。
求人を見てみると年収は20代で300万円前後とされています。ですが、この収入は雇用される企業や形態にもよります。特に、病院に直接雇用の場合には福利厚生や賞与が充実しているので、月収で見ると会社勤めの方より低くても年収で見ると高くなることも考えられています。
また、医療情報技師はソフトウェアの不調が起こると休日や夜間であっても急に呼び出されるということもあります。その場合には休日手当てや夜間手当がついてもう少し給料が高くなる傾向にあるのです。
医療情報技師は、無資格であっても医療情報技師として働ける企業に雇ってもらい、医療情報技師の仕事に携わればなることができる職業です。
しかし、ソフトウェア系の会社に就職しても必ずしも医療情報技師の仕事ができるわけではありません。また、医療という社会の情勢などにも左右されにくい分野は人気があるものの採用人数が少なく、採用を勝ち取るには狭き門であるといえます。
ソフトウェアの会社に就職したら絶対に医療情報技師の仕事をしたいという方や医療情報技師のスキルがあることを証明したい方、医療機関から直接雇われたいという方は資格を所持することがおすすめです。
医療情報技師として知識や技術を証明するための資格は日本医療情報学会が認める「医療情報技師能力検定試験」という民間資格を取得することが必要です。
医療情報技師能力検定試験は毎年1回おこなわれる試験で、医療に関する範囲だけでなく医療情報システム系や情報処理系なども出題されます。また、制度改正の動向についても出題されますが、こちらはテキストにはのっていないためニュースを随時チェックすることをおすすめします。
試験の合格率は例年30%台で推移しているため、しっかりとした試験対策が必要です。
資格不問で誰でも受験することが可能です。合格率が示しているように試験は比較的難易度が高いですが、今後の需要を考えたら取得する価値は高いといえます。医療に関する仕事に就職したい方は取得を検討してみてください。
- 著者
- 日本医療情報学会医療情報技師育成部会
- 出版日
日本医療情報学会が出版している1冊で、医療情報技師の資格を取得される方は一度は必ず目を通しておいていただきたい本です。
医療情報技師の資格を取得される方向けに医療情報の基礎的な知識を網羅しています。また2016年度〜2019年度の試験問題(合計6回分、480問)とその正解を収載しているため、試験対策としても活用できるでしょう。
医療情報技師の資格を取得できる専門学校などでも教科書として使われています。学校に通わず独学で学ばれる方はぜひ活用していただきたいです。
- 著者
- ["VERSUS研究会", "奥田 保男", "谷川 琢海", "横岡 由姫"]
- 出版日
上記のテキストは内容としては難しいものが多く、どちらかというと医療情報技師の道に進みたいと決めた方の学習用に活用していただきたい書籍です。
ですが、こちらは上記のテキストの内容をさらにかんたんに分かりやすくまとめたものですので、試験を受けるかどうかはまだ未定だけれども医療情報技師としてどのようなことを学ぶのか知りたいという方におすすめの1冊です。
システム構築や日常管理など、関係者のハラハラするような本音や実践的な事例などもりだくさんの内容です。1冊読むことで医療情報技師の仕事や役割を知ることができるのではないでしょうか。
この本は医療情報技師だけでなく、電子カルテなどを扱う医療者にも読んでもらえるように作られています。そのため、内容としては易しいのでこの1冊で医療情報技師の試験対策をするということは難しいですが、医療情報技師の仕事を知りたいという方にはおすすめです。
- 著者
- ["八幡 勝也", "木村 憲洋"]
- 出版日
医療情報技師はITの知識と医療の知識をつけておくことが必要であるといえます。この本では医療情報技師として最低限身に着けておきたい医療機器の知識を得ることができます。
電子カルテのシステムについても詳しく載っているため、医療従事者が電子カルテについてどのように理解しているのかも知ることができます。
こちらも、医療従事者などさまざまな職種が目を通すことを目的に作られているので内容は非常に分かりやすいです。ITの知識はあるけれど医療系の知識があまりないという方は目を通していただきたいです。
医療情報技師は資格がなくてもなれますが、資格があったほうが就職には有利になるものです。そのため、医療情報技師の道に進みたいと考える方は資格を取っておくことをおすすめします。
試験の合格率は決して高いとはいえません。ですので、試験を受けて資格を栄養と考えられている方は今回ご紹介した本を活用するなどしてしっかりと対策をしていただきたいと考えています。
今回ご紹介した本のなかには医療情報技師の分野の初学者には難しいと思う本もあります。ですので、まずは自分が読みやすいと思うものから読んでいただき、医療情報技師がどのような資格であるのかを知るためにぜひ活用してみてください。