ファンドマネージャーとは、投資信託で資産形成を考えている人が資産運用を任せるパートナーのこと。大きなお金を動かす華やかなイメージのある仕事ですが、結果が顕著に出るシビアな職種でもあります。ファンドの運用は複雑なため必ず成果が出る手法はなく、そのために専門的な知識のアップデートが欠かせません。 本記事では仕事内容をはじめ、就職先やおすすめの資格、日系と外資系の年収の違い、未経験からの転職事情について解説。本文を読んで「もっと深く知りたい!」と思った方は、記事の最後に関連書籍も紹介しています。こちらもぜひ参考にしてみてください。
ファンドマネージャーとは、金融資産を運用する専門家です。主に運用会社に所属し、投資家から預かった資産を計画通りに運用します。
ファンドマネージャーの仕事は、企業調査、銘柄選定、投資判断、ポートフォリオ管理の4つに分類できます。これらの主要業務で投資家の期待に沿ったパフォーマンスを積み上げ、成果を上げていくことが求められます。
株式や債券投資する企業経営の状況調査をおこないます。主に企業の財務諸表分析のほか、決算説明会へ参加したり、企業取材をおこなったりして調査を進めます。会社によってはアナリストがおこなう領域でもありますが、自らの足で調査することで投資判断に必要な材料を自ら獲得することができます。
運用方針や目的に合わせた銘柄選びをおこないます。安定的にコツコツ運用するのか、ハイリスク・ハイリターンを承知で攻めるのかなど、投資家の目的に合わせて企業の株や国債を選びます。また、選定基準としては、企業であれば社会の課題や変化に対応するモノやサービスが提供できているか、国であれば政治や経済状況においてどのような変化が予想されれるかなどを見て判断します。
ファンドマネージャーだけの価値観や考え方で、運用成果を上げ続けるのは困難です。そのためアナリストやエコノミスト、ディーラー、投資顧問会社のスタッフなどの意見や価値観を取り入れ、連携し株式や債券などの銘柄選定や売り買いの判断をおこなうことが大切です。
ファンドマネージャーは、ファンドがガイドライン通りに運用がなされるようにポートフォリオを作成、管理し、運用報告を顧客に説明する責任があります。
ファンドマネージャーとして活躍できる就職先は、一般的に以下のような金融機関があります。
ただ、新卒でファンドマネージャーとして採用されることはほとんどありません。多くの方はアナリストとして経験を積んだのち、株式の運用部門などに配属され、その後ファンドマネージャーへとキャリアアップしていきます。
仕事の内容自体に違いはありません。
しかし日系の金融機関へ就職した場合、その企業内のファンド運用担当者という立ち位置になります。そのためファンドマネージャーとしての仕事の成果が報酬にダイレクトに結びつくことは少ないと言われています。
対して外資系の金融機関では、ファンドマネージャーという職種に特化した人材として採用されるため、専門家としての立ち位置となります。その分、成果に対して厳しい評価がなされますが、その分高い報酬も望めます。
ファンドマネージャーの年収は、勤めている企業が日系か外資系かで大きく変わります。
ファンドマネージャーの平均年収は会社員平均より高く、700万円〜1000万円となっています。実際に大手求人サイトの募集一覧を見ても、最大でも1500万円と高めに設定されています。
基本給に成功報酬も加算された額が年収となるため年収幅が広いのですが、日系企業に勤めているファンドマネージャーはあくまでもサラリーマンという立ち位置。そのためいくら成功報酬を得たとしても、部長や役員クラスの年収を超えるのは構造的に難しいという面があります。
平均年収は大きくあがり、1000万円〜2000万円となっています。全般的に日系より年収は高く、なかには年収5000万円で求人をかけている外資系企業もあります。
外資系は完全成功報酬型であるため、大きな成果を出せば出すほどインセンティブやボーナスにきちんと反映されます。
ファンドマネージャーになるために必要となる資格はありません。 ただし先に述べた通り、ファンドマネージャーは社内でアナリストからステップアップするケースがほとんどです。その際に取得しておくと昇格が有利になるのが「証券アナリスト」の資格です。
世界のマーケットや株式市場や債券市場の動きなどに明るいことを証明できる資格ですが、難易度の高い試験のためかなりの勉強量が必要です。また、証券アナリストとして登録するためには厳しい受験資格が定められています。
第1の講座ではポートフォリオ・マネジメントや財務分析、経済について学びます。第2の講座では証券分析や企業分析、市場・経済分析とレベルアップした内容がおこなわれます。
合格率は例年50%前後と比較的高い水準にあります。2016年〜2020年の合格率のデータを見ていきましょう。
また科目別に見ても合格率は50%前後となっています。
この数字だけ見るとそこまで難関ではないように思えますが、合格者のほとんどは証券会社、投資運用、銀行、生命保険に関する企業に勤めている方たちです。もともと実務経験を通して基本の部分は習得できているため、全体の合格率が高いのだといえるでしょう。
また2020年で最も合格者の多い上位10社も公開されているので、あわせてご紹介します。
6位〜10位の企業は参考元ページからご確認ください。
先述した通り、ファンドマネージャーになるのに必須の資格はありません。しかし投資家から資金を預かり、成果を出さなければならない責任ある仕事なので、基本的な専門知識やスキルは当然ながら求められます。
そのため多くの方は「MBA」や「証券アナリスト」の資格を取得しています。さらに海外とのやりとりが多いため、ビジネスで通用する程度の英語力は必須です。英語力を計る目安となる資格や検定は受けておくと転職に有利になるでしょう。
ファンドマネージャーへの転職を考えるなら、遅くとも30代前半までにキャリアやスキルを身につけておきましょう。20代前半であれば未経験・資格ありでも転職は可能かもしれませんが、30代となるといくら資格を取得していても未経験での転職はほとんど不可能に近いと言われています。
現職がまったくの異業種である場合はなるべく早く金融業界へ転職し、実務を通して得られる知識や経験、キャリアを積んでから、ファンドマネジャーへの転職活動をおこなうことをおすすめします。それ以上の年齢となると相当の実績やキャリアがないと転職は難しいでしょう。
ファンドマネージャーは高い就職競争を勝ち抜くだけではく、就職してからも知識や情報も常にアップデートし続けなければなりません。また成果が評価と直結するシビアな仕事でもあるため、ひとつひとつの仕事に対して真剣になる必要があります。
ただしその大変さに見合った魅力がある、やりがいのある仕事でもあります。どんな部分がやりがいなのかをご紹介していきます。
ファンドマネージャーは結果が定量判断できるため、成果がわかりやすいのがポイント。こういった特徴はプレッシャーになることもありますが、成果が上がれば評価も上がるといった明確で公平な評価基準にもなるため、頑張って稼ぎたい人にとっては魅力的です。
マーケットはさまざまな要因によって変動するため、100%利益を出せる方法はありません。しかし確定ではないからこそ、調査して、根拠を集め、アナリストやエコノミスト、ディーラーの意見を集積し組んだファンドの成果が出れば、その努力分の喜びは十分味わえます。
- 著者
- 林則行
- 出版日
冒険投資家と呼ばれるジム・ロジャーズと、システムトレードの神様として名を知られるラリー・ウイリアムズに師事する著者が教える株式投資法。ファンドの組み立て方のひとつを勉強できます。
その投資方法とは、決算短信の4つの数字(売上と3つの利益)から、高成長する銘柄を見つけ出す「新高値投資」。株式投資での8割以上の判断は、公式に当てはめておこなうだけでいいという新方式です。
文章とデザイン(レイアウト)で、要点が強調されているのも分かりやすいため、これからファンドマネージャーを目指す方におすすめできる1冊でしょう。
- 著者
- 山下 裕士
- 出版日
著者は1960年に証券業界に入り、ファンドマネジャーとして日本の株式市場の発展を内側から体験する「株式投資・投資信託業界の生き証人」。長く当業界で活躍してきた著者が、株式投資の歴史から市場の見方を教えてくれます。
本書は3部構成になっており、1部は著者の体験をもとに、株式相場のどこを見て、どう考えるのがよいのかといった知識や相場観を中心に解説。2部は戦前、戦後、高度成長、バブルとその後の相場まで、100年あまりの歴史を振り返ります。3部はマキタや任天堂、ファナックなどの実際の企業を取り上げ、アナリストは会社のどこを見ているのかを解説します。
- 著者
- 杉田 浩治
- 出版日
本書は投資信託に携わる人のバイブルとして、また投資信託を学ぶ方のテキストとして最適な1冊。 著者は、半世紀以上にわたり投資信託と向き合ってきた日本証券経済研究所の特別研究員です。150年の歴史から現在の制度、商品、販売、運用、税制までをじっくり解説してくれます。
ファンドマネージャーは、資質と能力が問われる仕事です。高い競争率を勝ち抜き、さらにファンドマネージャーになってからも努力し続けなければなりません。しかし、優秀であれば億単位の年収を得られる可能性もあり、魅力もたっぷりあります。
本職についてもっと知りたい人、あるいは目指そうと考えている人は、ここで紹介した書籍などで知識とスキルを身につけ、ファンドマネージャーへの道を歩み始めてください。