主に目や耳に障害のある子どもたちの教育や支援をおこなう、特別支援学校教諭。 平成29年の文部科学省の調査によれば、特別支援学校は全国に1135校あるとされています。しかし学校や生徒の数と比べ教員の人材不足は問題となっています。 特別支援学校教諭は実際にどんな仕事内容をおこなっており、専門的な知識を有して働くにはどうしたらいいのか。 今回は、そんな疑特別支援学校教諭に必要な知識や就職事情、そして収入面についても解説していきます。記事の最後にはあわせて読んでいただきたい書籍もご紹介しています。こちらも参考にしてみてください。
養護学校・盲学校・聾学校、この3つの学校を合わせて、特別支援学校と呼びます。なかには、病院と併設している学校もあり、そこに通う障害を持った生徒一人ひとりに合わせた、指導やサポートをおこなう教員のことを「特別支援学校教諭」と呼んでいます。
目や耳が不自由な子どもたちが、将来的に自立して生きていくための支援をおこなうのが、この職業のもつ大きな目的です。最低でも、小中高いずれかの教員免許を必要とする職業であることから、特別支援学校教諭は公務員として認められています。
通常の学校にもある特別支援学級と呼ばれるクラスでは、学習障害(LD)・注意欠陥/多動性障害(ADHD)・高機能自閉症などの子どもたちにも適切な指導や支援をおこなっています。かつては「特殊学級」や「障害児学級」と呼ばれていましたが、2006年に名称が変更されました。
特別支援学校も学級も、それぞれに障害があり個性もある子どもたちと向き合う仕事です。できること・できないことの違いも一人ひとり異なるため、子ども本人とその保護者に配慮した対応も必要とされます。
食事やトイレに関しては、個々の障害の重さや性格などによって、サポートの程度が異なります。
通常の教員よりも、精神的・体力的にも大変なことも多い仕事ですが、人数(1校に対しての職員)は多めに配置されていることがほとんどです。きめ細やかな支援や、サポートを必要とする児童・生徒が多いことが、配置人数が多くなっている理由のひとつです。
特別支援学校教諭は公務員であるため、給与は各自治体の公務員給与規定に基づいて決められています。また、専門知識を必要とすることから、通常の教員よりも給与は高めに設定されており、初任給の相場は21〜24万円です。
平均月給は約40万円。年収に換算すると480万円ほどとなります。
この金額に昇給や賞与での増加があるため、年収幅は400万円〜700万円と大きく開いています。その他、最終学歴による月給の差もあります。
まず、大前提として、小・中・高いずれかの教員免許が必須となります。さらに、特別支援学校教諭の免許もプラスで取得しなければいけません。
しかし、特別支援学級については、通常の教員免許だけでも働くことが可能です。実際、特別支援の教員免許を持たずして、職務についている人も多いのが現状であり、その原因は人員不足だといわれています。
基本的に、教員免許を取るためには4年制大学を卒業する必要があります。私立・国公立のどちらに進学するかによって、学費にもかなりの差があるため、進学を検討する場合は、家族との話し合いのうえで学校を決定してみてください。
また、福祉系や教育系の学部がある大学を選択するのがベター。通常の教員ではなく、特別支援学校の教員として働くことを決めているなら、特別支援学校教諭の課程がある大学を選ぶことで近道となるでしょう。
結論からいうと、異業種からの転職は可能です。ほかの仕事を通して積んだ経験や考え方が役に立つ場面も、特別支援学校で働くうえでは十分に可能性のある話です。そういった点は、ぜひ採用試験でアピールしましょう。
実際に転職してくる人のなかには、給料・手当の改善が目的ではなく「やりがい」「貢献感」を求めて転職してくる人が多いようです。
転職の場合(資格がすでにある人は)、各施設の採用試験に合格する必要があります。雇用形態には、正規雇用と非正規雇用がありますが、どちらも倍率は高めなので試験対策はしっかりとおこないましょう。
上記以外に、特別支援学校教諭として最も大切なのは人間性でしょう。子どもたちの個性や障害に対して、固定概念や先入観をもつことなく、フラットに接することのできる人が求められています。これは、子どもたちの保護者への対応に関しても同様です。
- 著者
- ["星山麻木", "相澤るつ子"]
- 出版日
障害の有無に関わらず、子どもたちの持つ様々な個性を受け入れ、彼らがお互いに助け合える方法を提案しています。
絵本感覚で読み進めることができるため、お互いに個性を認め合うことが、やさしく自然と心に入ってきます。障害児という言葉を「虹色な子どもたち」と表現するところにも、著者のやさしさを感じますね。
- 著者
- 柘植 雅義
- 出版日
- 2013-05-24
現在に至るまで、障害や発達の遅れがある子どもたちに、どのような教育が行われてきたのか?また現在の課題はなんなのか?といった内容も盛り込まれている読みごたえのある1冊です。また、戦前・戦後の特別支援教育の歴史についても学ぶことができます。
実際に特別支援教育に携わる人の、見解や想いを知りたい人は一度読んで見ることをおすすめします。
- 著者
- 藤原 里美
- 出版日
教育に関わる可能性のある人、すべてに対応している1冊。読むことで、子どもたちだけでなく、保護者への対応も学ぶことができます。
「障害がある」と言われていなくても、周りの子より発達の遅れが気になったり、困った行動をとってしまう子もいます。そういった子どもへのケース別の対応方法が書かれています。イラスト付きなので、活字だけの本が苦手な方にもおすすめです。
個性が大事にされる時代に入り、障害やセクシャリティなどへの偏見は、減少しているように感じます。
しかし、理解することはできても、実際に障害のある子どもの学校生活を手助けしたり、将来その子が心配なく生きていけるよう指導することは、相当な体力と精神力を駆使する場面が少なくないはずです。
社会的にも、この先長く必要とされ続ける「特別支援学校教諭」の仕事。興味がある方は、まず教員免許資格の取得を目指してみてください。今回ご紹介した、子どもの教育に関する書籍も、ぜひ手にとってみてくださいね。