私たちの安全で健康的な食生活を守ってくれる食品衛生監視員。就職先は主に国家公務員となるか、地方公務員となるかの2つ。食品衛生監視員になるには認定資格が必要で、試験には年齢制限があるため早めの行動が大切です。仕事内容は業務により違いますが、どの業務もとても重要な役割を果たしています。 本記事では、そんな食品衛生監視員という仕事、年収、試験を受けるための要件などを詳しく解説しています。記事の最後には、食品衛生監視員の道を検討している方に読んでいただきたいおすすめの書籍もご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
食品衛生監視員とは、食品の安全が確保できるように監視する職業です。食品衛生監視員としての働き方は、国の公的機関で国家公務員として働く場合と、地方自治体の保健所で地方公務員として働く場合があり、場所によって業務内容は異なります。
そのため取得しなければならない資格はありませんが、職業として認められるための要件を満たす必要はあります。
国の公的機関で働く場合は、全国の主要な海・空港の検疫所において以下のような仕事をおこないます。
輸入食品監視業務とは、営業目的で輸入する食品に対して事前に提出してもらっている届け出を参考に輸入された食品が日本の食品衛生法に適合しているか、必要な検査がおこなわれているかなどを審査します。
たとえば、日本では使用してはいけない添加物が使用されていないか、製造が日本の規制を遵守しておこなわれているかなどの確認。もしも違反をしている可能性があるとした場合には、必要に応じて輸入業者に対する指導をおこないます。
他にも、「輸入食品監視指導計画」に基づくモニタリング検査として港湾区域や倉庫へ趣き、倉庫で輸入食品の確認や、サンプリングもおこないます。
この時に貨物の開封作業なども自らおこなうこともあり、食品衛生監視員の仕事のなかでも体力勝負の仕事であると言われています。
検査業務は、食品衛生監視員の仕事のなかでも働ける場所が日本で6か所しかありません。
病原微生物や寄生虫などの検査を実施する微生物検査と、残留農薬や残留動物用医薬品、添加物、有毒有害物質等の検査を実施する理化学検査をおこないます。また、他にも海外からの研修生の受入、海外への講師派遣による技術協力も実施しています。
検疫衛生業務とは、国内に常在しない感染症の病原体が海外から侵入することを防ぐことが仕事です。海外から来航する船舶、航空機およびその乗組員、乗客に対して検疫をおこないつつ、必要に応じて病原体の検査も実施します。感染者がいた場合には、隔離、消毒等の防疫措置を講じています。
その他にも、感染症を媒介するねずみや蚊などの生息状況調査および病原体保有検査の実施も食品衛生監視員の仕事です。動物の輸入届出の調査をおこなって、動物から人への感染を予防します。
国の公的機関で採用された場合には検疫所が全国にあるため、2~3年ごとに異動があります。そのためずっと同じ地域で働き続けるということはできません。
地方自治体で働く場合は、また仕事内容が異なります。具体的には以下のような仕事をおこないます。
飲食店等の営業施設の許可事務では、主に実地調査をおこないます。飲食店を営業したり、食品を製造、販売したりする場合に必要となる営業許可や、届出に則って営業施設が許可基準に合致しているかを確認します。
営業施設に対する監視と指導では、文字通りあらゆる施設での監督・指導をおこないます。実際に営業をしている施設の立ち入り、食品が基準どおりに製造されているか、温度管理など取扱いが衛生的であるか、施設や設備の衛生状況について監視をし、必要な施設に対して指導をおこないます。
食中毒等の調査では、食中毒や食品による事故が発生した場合に、関係者や医師の協力を得て調査をおこないます。
食品の検査では、営業施設からサンプリングした食品を検査して、規格や基準が守れているかの検査をおこないます。基準に違反していた食品が流出しないように対応をしていきます。
食品に関する苦情や相談への対応は、たとえば購入した食品にカビが生えていたなどの苦情や相談に対応したり、食品関係営業者に対して講習会を実施したりします。食品衛生に関する知識の普及を目指しているのです。
収入については公務員のため、地方および国家公務員の給与形態に準じます。
初めての月給は低く感じてしまうかもしれません。ですが、賞与を含めた諸手当てが充実しており、昇給制度も整っているので、長く働き続けるほど安定した収入を得られる職業であるといえるでしょう。
食品衛生監視員は厚生労働省による任用資格です。そのため資格取得のための試験などはありませんが、資格として認められるための要件を満たすことが必要です。
食品衛生監視員として認められるためには以下の1から4のいずれかに該当することが必要です。
資格取得のための試験はありませんが、全ての人が食品衛生監視員になれるわけではないのです。
食品衛生監視員は公務員としての採用になるため、公務員試験を受けなくてはなりません。この試験のレベル自体は大卒レベルとされていますが、厚生労働省検疫所など一部機関によっては、食品衛生監視員として働くからには知っておきたい専門職試験なども受ける必要が出てきます。
毎年、入職希望者の割合よりも募集人数の方が少ないため、要件を満たしていたとしても試験に合格して就職をするのは狭き門と言われています。ちなみに平成29年度の倍率は7.7倍でした。
また食品衛生監視員には、21歳から30歳未満という年齢制限が存在します。そのため、大学に進学されている方が食品衛生監視員になりたいと考えた場合、大学卒業時にすぐに試験を受ける必要があるでしょう。
食品事業者や一般市民、公的機関などさまざまな方と接する機会があり、専門的な知識を啓発する場面も多いことから、地方自治体の試験には人物試験を取り入れています。コミュニケーション能力や人間性を見ているところも多いことが特徴です。
先述した食品衛生監視員になるための要件を満たしていれば、他業種からの転職も可能です。公務員職に就くには年齢制限があるため、勉強時間も考えるとなるべく早く動き出した方がよいでしょう。
民間企業から転職をする場合、勉強時間は最低でも1年間は見積もっておくことをおすすめします。食品衛生監視員になるための公務員試験は、倍率が高い上に採用予定人数の枠はそう多くありません。
働きながら勉強をすることを考えると、土日祝日に長時間勉強をしたとしても、平日は2〜3時間ほどの勉強時間の確保が限界かと思われます。年間で勉強計画を立て、毎日コツコツと勉強を続けることが大切です。
すでに公務員採用試験を受験するための基礎は学べている状態なので、民間企業からの転職よりはさほど大変ではありません。
以前おこなった試験対策を漏れがないようにおこない、筆記試験や面接対策などを毎日おこなえば問題ないでしょう。
- 著者
- 北 放夢寿
- 出版日
食品衛生監視員の仕事のなかでも、食中毒の原因を究明する部署の方のお話を小説化したものです。実際の食中毒事件を内容を一部変えてフィクション化したものなので、現場の役割に非常に忠実で、臨場感もあるストーリー展開になっています。
推理小説に仕上げられているため、食品衛生監視員の仕事を学びながらお話としても十分に楽しむことができるでしょう。
食品衛生監視員が主人公となる数少ない小説。特に地方自治体で食品衛生監視員として働きたいと考えている方には読んでいただきたい1冊です。
- 著者
- ["植木 幸英", "野村 秀一"]
- 出版日
こちらは、食品衛生学を微生物のレベルにまで掘り下げ、深く学ぶことのできる1冊です。
食中毒についてや添加物、農薬、輸入輸出についてなど食品衛生監視員としてどこで働いたとしても知っておきたい情報がたくさん詰まっています。働いてからも活用していくことができるのはもちろん、基礎的な知識をつけておきたい方や、採用試験の対策に使いたいという方にもおすすめです。
内容としては難しいですが、フルカラーでわかりやすい解説も入っているため、学習を深めるために活用してみてはいかがでしょうか。
- 著者
- 鑓田 浩章
- 出版日
上記で紹介してきた書籍とは異なり、舞台は魚市場。魚市場で魚を売買する業者さんの中で、食品衛生監視員がどのように活躍しているのかを知ることができます。
卸売市場での食品衛生監視員の仕事や、業者とコミュニケーションを取ることの大切さなどは、実際に働いたときにも活用することができるかもしれません。
実際に魚市場を取材して忠実に再現された内容なので、働いたときに参考になるのではないでしょうか。
人々の健康的な生活のためになくてはならない職業である食品衛生監視員。年齢制限があることや、採用倍率が高いこともあり、この仕事に就きたいと考える方は早い段階から、目標を立てて行動をした方がよいでしょう。
書籍を読んでいただき、食品衛生監視員の仕事を知ることで、さらに職業選択の参考になるのではないでしょうか。