金融業界を代表する銀行で働く人たちを、銀行員と呼びます。銀行にはさまざまな部署があり、目的を遂行するために各自がお金とお客様の双方に真剣に向き合うことで仕事が成立します。ここ数年では、銀行員を主人公とした大人気テレビドラマ『半沢直樹』の登場により、その認知度は上がりました。ドラマ内では、個人や法人相手にお金を貸すかどうか、不正はないかといった内容が繰り広げられ、多くの方が関心を持ったはず。 今回は、そんな銀行員が取り扱う仕事内容や年収、就職や転職事情についても詳しく解説します。勉強になる参考書籍もご紹介しますので、合わせてチェックしてみてくださいね。
銀行員とは「銀行に勤めている人」のことです。お金に関するさまざまな取引や、取り扱いのサポートをおこない、社会経済を支える大きな役割を担っています。経済の活性化に貢献することも期待される職業です。
銀行員のことを「バンカー」と呼ぶ場面があります。これは元々、欧米の投資銀行家をさす呼び名でした。
日本でも「銀行家」を指してバンカーと呼ぶことがあります。窓口担当のような個人相手ではなく、企業を相手に貸付や回収をおこなったり、それなりの役職についている人が日本でのバンカーに該当するようです。
銀行には、都市銀行・地方銀行・信用金庫・政府系銀行・ネット銀行といったさまざまな種類があります。それぞれ、対象としている客層や経営理念には違いがあり、各自の目標に向かって業務を遂行しています。
ちなみに、ドラマ『半沢直樹』で登場する架空の銀行「東京中央銀行」は、日本の都市銀行をモデルにしています。国内では最大手、世界でも第三位の地位に君臨するメガバンクとしてストーリーが進んでいきます。
前の章でご紹介した、都市銀行・地方銀行・信用金庫・政府系銀行・ネット銀行などが、おもな就職先としてあげられます。
「メガバンク」といわれれる日本の大手3社も、就活生からは人気の高い企業です。メガバンクという言葉に明確な定義はなく、大企業や上場企業が取引先であったり収益規模の大きい都市銀行を呼ぶことが多いようです。
言わずと知れた大手都市銀行。利用している方は多いでしょう。東京外国為替市場の顧客評価では、14年連続トップを獲得しています。(2006〜2019年)
働く側の目線として、営業に対して厳しいノルマを設けていないというのは、特筆すべき点かもしれません。社員が余裕を持って働けるよう、融資審査には時間を十分にとっているそうです。
参考:三菱UFJ銀行HP
メガバンク3社のなかでも、効率性の改善(ペーパーレスなど)に力を入れている銀行。他社と比べると、海外勤務のチャンスが多いのも特徴としてあげられます。
みずほファイナンシャルグループの特徴は、キャリア形成ルートが多用であること。社内の人事異動も盛んで「若手のうちから様々な仕事に携わることができる」という特徴があります。
上記3社以外でも、銀行によっては転勤も多くある職業です。都市銀行や外資系銀行の場合、海外への転勤も視野に入れておく必要があります。
銀行がおこなっている業務は、大きく分けると次の3つです。銀行員は普段これらの業務をおこなっています。
お客様から預かったお金を管理する。私たちもよく利用する、お金を預けたり引き出したりすることに関する業務。
資金を必要とする個人や企業に対して、利子をつけてお金を融資する業務。
口座をもつお客様からの依頼により、振り込みや送金をおこなう業務。電気料金やガス料金といった公共料金の口座振替がこれに該当する。
銀行には、紹介しきれないほどの部署や担当が存在します。ここでは、一般の人にも身近な担当業務について一部ご紹介します。
窓口担当は「テラー」とも呼ばれます。銀行の窓口で、接客や手続きを担当してくれます。学生でも銀行窓口を利用する機会があるため、一番身近ともいえる存在かもしれませんね。
一口に「営業」とまとめることが出来ないほど、実際の業務は目的によって数多く分かれています。代表的なのは「融資課」や「渉外課」と呼ばれる部署。同じような仕事内容でも、「営業第一課」「営業第二課」と呼ぶ企業もあり、部署の名前は銀行ごとにまったく異なります。
あの半沢直樹がやっていた仕事は、この「融資課」の仕事です。取引相手とするのは、個人・法人に分かれ、取り扱う金融商品の違いやお金の額も大きく異なります。営業関係の部署を希望する場合は、コミュニケーション能力も大事です。
「市場リスク」「信用リスク」「オペレーショナルリスク」などの部門に分かれ、銀行で起こりうるさまざまなリスクのコントロールをしたり、管理するためのルールを決めたりする担当です。人・モノ・金・システムなどリスクが起こりうる全てに対応していくのが仕事です。
大手都市銀行の三井住友銀行HPにも、次のように記載があります。
多様化、高度化するリスクを的確にコントロールし、銀行の安定経営や事業拡大に寄与していく。(引用:三井住友銀行HP)
上記の他に、他業種企業にもある人事や企画・広報などの仕事も存在します。
所属する銀行や、その規模によっても給与の額はかわります。また、所属する部署・個人の業績によっても差があるでしょう。
業界全体でいえば、平均年収は600万円前後と一般的な企業と比べて給与水準は高いです。また基本的には、毎年、安定的に昇給していきます。
銀行の支店長クラスになると、年収は800〜1000万円となる銀行も。世間から「高収入を得られる仕事」というイメージをもたれている通りの高収入が得られる業界です。
銀行員として働くには、金融・経済・税務・不動産などの知識が必要となっていきます。具体的には、入社前もしくは後に、次のような資格を取得するよう会社から求められることも多いようです。
そのほか、語学に強みをもつ人も活躍できる機会が与えられています。銀行も国際化が進み、海外で取引をおこなうことも企業によっては少なくありません。
総合職で働きたい場合は、4年制大学卒業がマストです。
進学先としておすすめなのは、経済学・法学部・商学部。特に「三菱UFJ銀行」や「三井住友銀行」などのメガバンクを狙うなら、高学歴である方が有利といえます。
2019年の大学別就職者数のデータを見ても、1位の早稲田大学、2位の慶應義塾大学は就職者数が200名を超えています。3位の同志社大学からの就職者が100名にも満たないことを考えると、高学歴だと就職に有利であることは間違いありません。
地方銀行や信用金庫になると、そのハードルは若干ですが下がります。短期大学卒業でも求人が出ることもありますが、メガバンクでは見受けられません。
海外勤務を視野に入れている方は、語学系の学部でも問題はありませんが、経済・金融業界に関する勉強はしておきましょう。
銀行員というと新卒入社が多い印象が強いかもしれません。なかには転職して銀行員を目指す方もいるでしょう。他業種からの転職についてご説明します。
基本的には、銀行経験者を中途採用するケースが多いようです。「金融関係の仕事がまったくの未経験」という状態では、銀行に転職するのは難しくなります。
もし金融関係の職についた経験があり、「大企業を相手に取引したい」「大きなプロジェクトに参加したい」という場合は、都市銀行や外資系銀行への転職がおすすめ。ただし、入社のハードルは非常に高いことは覚悟しておいた方がよさそうです。
ドラマの影響もあり「出向」と聞くとマイナスなイメージをもたれる方も少なくないかもしれません。しかし、それは非常に偏った見方です。
出向を言い渡される理由の中には、左遷に近い理由も存在しますが、実際には「期待されて」出向するケースも非常に多いのです。
たとえば、業績が低迷している取引先に出向するケース。その会社で業績不振の原因を見つけたり、何か失敗していることがないかを探し、業績を立て直すことを期待されて優秀な人材をあえて送り出すケースもあります。
銀行員の仕事は、顧客情報を取り扱うため「家に持ち帰って仕事します」が、長年NGとされてきました。しかし、昨今のご時世を鑑みると、そんなこともいっていられない状況に。メガバンクを筆頭に「テレワーク」を導入する企業が増加しています。
実は、新型コロナウイルス感染症の騒ぎが起こる前から導入は始まっており、一番早かったのが三菱UFJ銀行です。2016年7月に、メガバンクで初めてテレワークの制度を導入。それに続くように、同年には三井住友銀行も導入を決定しました。地方銀行でも、積極的にテレワークの導入が進んでいます。
他の職業と同じく、「同僚や上司とのコミュケーションが取りにくい」「集中力を保てない」といったデメリットもありますが、通勤時間の短縮ができたり、子育て・介護世代からは「時間の融通が効いて助かる」との声も。
問題のセキュリティー面は、各社で業務用の専用端末を支給したり、作業していることを知らせる仕組みを作ることで、今のところうまく作用しているようです。
今後も画面上での取引や会議が進んでいく見込みとなっていますが、実際は週に1日のみしかテレワークがおこなわれていなかったり、お金のやり取りをするのに対面でないことへの不安の声、利便性の悪さも課題となっています。
参考:東京都産業労働局
ときには、人情だけでは通り抜けられない案件もあります。担当したお客様に対して辛い判断が下ったとしても、自身の指名をまっとうする強い気持ちが必要です。
常に数字と向き合わなければいけないのが銀行員です。数字の桁がひとつ間違っていただけでも大きな問題になりかねないため、一つひとつの業務を丁寧かつ正確に進める能力が必要となります。
融資業務では、相手の返済能力や銀行の利益となるかを見きわめてお金を貸します。そういった場面での判断材料として、社会の経済状況や会社の経営状況の詳しい知識や情報が必要となります。
銀行では、サービス業の要素を含む業務もおこないます。お客様は大切な資産を預けるわけですから、やはり信頼できる人柄や誠実さなどが求められます。
- 著者
- 池井戸 潤
- 出版日
勉強や仕事の箸休めにもおすすめの1冊をご紹介します。
こちらは、大ヒットドラマ「半沢直樹」シリーズ6年ぶりの最新作。今作での半沢直樹の役職は、東京中央銀行大阪西支店「融資課長」です。ミステリーの要素も強いですが、バンカーに憧れる方でなくとも「今作が一番面白い」という声が続出しているほど。小説から銀行の仕組みや世界観を学ぶのはいかがでしょうか。
- 著者
- 滝澤 ななみ
- 出版日
銀行員として、より高度な仕事をこなすには「ファイナンシャルプランナー」の資格取得が欠かせないという企業も多いもの。こちらのテキストは、全ページフルカラーで見やすい構成となっています。
短時間で効率的に学べるよう設計されており、丸暗記の勉強方法が苦手という方におすすめのテキストとなっています。
- 著者
- 大杉 潤
- 出版日
「2027年までの銀行の未来予想図付き」という、興味を引かれる1冊です。
転職を考えている人向けの書籍ですが、「どんな人間が銀行で必要とされているか?」といった内容も盛り込まれているため、就職試験を控えている人にも役に立つ情報があるはず。金融関係の仕事に就きたいと考えている方は、手に取ってみる価値がありそうです。
一見「シビアな仕事内容」という印象を受けますが、銀行員は「お客様のために」という高い志も持ち合わせています。
情だけではお金を動かすことは難しいことですが、豊富な知識や経験があれば、助けたい人・応援したい人の力になることができる職業です。銀行員が主役のドラマを見たことで、この仕事に興味を持った方もいるでしょう。何かに影響を受けて、興味・関心をもつことはとてもよいことですよね。
ぜひ、自分が関わってみたい業務や部署などを、参考書籍の中からも見つけてみてください。