寺田寛明のどる×こみ!【連載第3回】

「日常」は一言で括れない

こんばんは。R-1グランプリで10位だったアイドルオタクです。

「決勝に行って仕事が増えて大事なアイドル現場に行けなくなってしまったらどうしよう、なんとしても死守したい」という想いが会場と審査員の皆様に伝わったのか、見事最下位をとりました。

仕事もあんまり増えてないので余裕で現場に行けています。

このコラムもホンシェルジュ的には「賞レースで結果残して有名になるタイミングで話題になるぞ」的な目論見もあったと思うのですが、引き続きただのオタクが書いてる文章になります。(編集者注:まだ諦めてません!)

本と、アイドルを同時に紹介する、変なコラムです。

 

さて、本日ご紹介する漫画は『それでも町は廻っている』です。

大田区の下町で育ち、メイド喫茶(?)で働く女子高生、嵐山歩鳥(ほとり)と商店街の人々の日常を描いたいわゆる日常系ギャグ漫画です。全16巻。一話読み切り。

この漫画を日常系って表現するのが正しいのかあまりわかってないんですけど、「それ町」はただの日常系だと思って読んでいると突然SFチックになったり、オカルトになったり推理ミステリーになったり、「なんかめちゃめちゃ変な展開してる……」と思わず惹きこまれてしまう不思議な作品です。かと思うと日常部分もしっかりおもしろい。描いてる人あるある強いんだろうなあと思います。

そして何より、漫画自体の構成が異様。とにかく読んでみてほしい。いいから最後まで読んでほしい。

著者
石黒 正数
出版日
2006-01-27

 

そんな「それ町」といっしょにオススメしたいアイドルが「nuance(ヌュアンス)」です。

発声するときは普通にニュアンスって読んでください。略して「ヌュ」

村上ショージの娘が「ぬゅぬゅゅゆゅゅゅゅゅ」と名乗っていた時期よりかは読みやすいと思ってください。

 

Wikiをそのまま貼りますけど、どういったグループかと言うと「横浜の商店街が企画するイベント『ガチでうまい横浜の商店街No.1◯◯決定戦』(ガチ!シリーズ)のテーマソングを歌うアイドルユニット」という、何を言っているのかわからない紹介になってしまいます。要は横浜発のロコドル(ローカルアイドル)です。

ロコドルっていうと、地元に密着して地元のイベントで歌って地元の観光大使みたいなのに何個も就任して地元の人が撮ったガサガサの映像がYouTubeにアップされて、みたいなイメージになりがちですが、nuanceも「それ町」と同じく、ただの日常系ではないんです

まずロコドル的な面としては、作曲やデザインを横浜のクリエイター達を起用したり、横浜の街をイメージした曲を作ったりしていて地元への愛がうかがい知れます。(マジでただのオタクなのでこの辺の内情は間違っていたらすいません。)

ただ、普通そういう地元をテーマに作った曲って地名やグルメが歌詞の中に出てくることが多いんですけど、nuanceは横浜の具体的なワードが出てくるわけでもないし、たとえば「タイムマジックロンリー」という曲を聴いてみてほしいのですが、めちゃめちゃ変な展開の曲だし、ロコドルがやるような曲じゃないだろっていうぐらい攻めたことやってます。「なんだこの曲……でもめちゃめちゃ聴いてて心地いいぞ、なんだこれ……!」そんな曲です。

メンバーのパフォーマンスからも運営の公式SNSからも誠実さが溢れていて、地元の人々に愛されながらも、横浜から良いものを発信しようという気概を感じます。

 

日常系漫画『それでも町は廻っている』× ローカルアイドル nuance

ちなみに僕は「それ町」という漫画を、ワタナベエンターテインメント所属のトリオ芸人「ぎょねこ」のオジマアロー(通称ぎょねオジ)に教えてもらいました。

ぎょねオジ(芸能界で一番nuanceわかちゃんのチェキ列に並んでいる男)の好きなアイドルをぎょねオジ(夏フェスでnuanceの「雨粒」という曲を見て 祖母の葬儀 よりも涙を流していた男)の好きな漫画とあわせて紹介するという、私信のような記事になってしまいました。せっかくなのでぎょねオジ(大食い)からも「それ町」とnuanceに関する共通点を聞いてみました。

 

たしかに、nuanceのmisakiさんはライブの楽屋で焼き鳥をヘアアイロンで挟んで温めたり、もともとあるホクロを濃く書き足したりしているのでちょっと変わった女の子かもしれません。

「タイムマジックロンリー」のようなトリッキーな曲があったかと思えば「ハーバームーン」でラップ、「雨粒」でしっとりさせるなど楽曲の幅も凄いです。ぎょねオジ(背が高い)の言うことにも一理あります。

 

その親しみやすさとは裏腹に……

さて、ここから先は「それ町」の少し大事な要素に触れるので前情報なしで読みたい!という方は漫画を読んでから進むことをオススメします。ただ、別にこれを知っててもおもしろさが損なわれることはそんなにないかなと思いますが、一応軽いネタバレ含みます。

「それでも町は廻っている」という漫画をある程度読み進めていくと、違和感を感じる部分が出てくると思います。一話読み切りの作品だからそういうもんか?と思って進めていくけどやっぱりどこかおかしい。

主人公の髪の長さが話によって長かったり短かったり、呼び方が変わったり。

実はこの作品は、嵐山歩鳥の高校生活3年間のうちのどこかの話が時系列バラバラに掲載されています。

前回は3年生のときの話だったのが、次の回は1年生のときの話になっていたり。

それに気づいて読み進めたとき、この漫画はギミックだらけの何度も読み返さないといけない作品に表情を変えるのです。平和な話だと思っていた回に実はゾッとするようなメッセージが込められてたりします。

そう、タイムマジックが使われているのです。

タイムマジックロンリー

nuanceと「それ町」、ぜひヌュマにハマってみてください。

 


編集追記(編集者より)

R-1をきっかけに新たに寺田寛明さんのファンになった方、ついてきてくれてますでしょうか?正統派のフリップも、こちらの寺田さんも寺田寛明の魅力。ぜひ今後も彼の活躍と、アイドルとのチェキツイートにご注目です。出演情報などはご本人によるTwitterをフォロー!

この連載は5月も第1水曜の18時に更新予定です。ホンシェルジュのTwitterアカウントから最新情報をご確認いただけます。

過去回はこちら。

寺田寛明のどる×こみ!【連載初回】

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寺田寛明のどる×こみ!【連載第2回】

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文中に登場したぎょねこのオジマさん。この記事だけだと大食いのアイドルオタクということしか伝わりませんが、普段は設定が漫画やアニメのようにポップなコントが持ち味のコント師です。気になる方はオジマさんのTwitterもチェックしてみてください。

nuanceについて気になった!会いに行きたい!という方は、nuance公式サイトをご覧ください。

様々なリンクを貼りましたが、最後に「これ本のサイトがやっているコラムだったな」と気づいてくださった方はこちらの記事もおすすめです。

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主人公の女子高生、嵐山歩鳥を中心に、クラスメートやバイト先、家族や町の人たちの日常に、毎回様々な謎解きを絡めて繰り広げるサスペンス(?)コメディ『それでも町は廻っている』(石黒正数)の最終巻となる第16巻が発売されました。

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