『ソラニン』や『おやすみプンプン』を描いた漫画家・浅野いにおが描く最新作『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』。宇宙人と人類の戦争が日常に溶け込んだ世界で暮らす少女達のデストピア青春譜である本作を既刊11巻分を一気にネタバレありでご紹介します。これまでの「浅野いにおワールド」とはひと味違います。
8月31日、東京都の上空に現れた巨大な宇宙船。地球を侵略しようとする宇宙人とアメリカ軍による激しい戦闘の末、宇宙船は東京・渋谷の上空で停止しました。多くの死傷者を出したこの日を人類は「8.31」と呼び、その日から人類と「侵略者」による戦争が始まったのです。しかし「侵略者」の力は意外にも弱く、武装した人類は次々に「侵略者」や宇宙船を駆逐していきます。
そうした日々のなか、宇宙船……通称・母艦が空に浮かぶことも「侵略者」がいることも普通のことに。戦争は平凡な日常の中へ溶け込み、人々は「くそ平和」な生活を送るようになりました。
小山門出(こやま・かどで)と中川凰蘭(なかがわ・おうらん)もそんな平凡な平和を送る女子高生。仲良しの友達と青春を謳歌していましたが、その裏では着実に滅亡が近づいてきていたのでした...…。
『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』は、2014年から雑誌「ビッグコミックススピリッツ」で連載が始まりました。2021年には小学館漫画賞の一般向け部門を受賞した話題作です。小学館の公式サイトではPVも公開されています。『おやすみプンプン』『ソラニン』といった作品とは違う「浅野いにおの新境地」である本作の世界観を感じてみてください。
本作の主人公。ショートカットとメガネが特徴の高校3年生で、凰蘭とは親友でありゲーム仲間。両親ともに漫画編集者で、その影響もあるのか作中に登場する国民的漫画「イソベやん」のコアなファンであり、グッズを集めたり漫画の内容を熱っぽく語るなどマニアックな面を見せることもあります。
3年前の宇宙船襲撃(8.31)の際に父親が行方不明になっており、今は母親と2人暮らし。しかし、その母親も精神的に不安定な部分があり、進学については悩みを抱えている様子です。担任教師の渡良瀬に想いを寄せています。
門出と同じ高校に通う3年生。長い黒髪のツインテールが特徴で、門出とは小学生以来の親友です。生粋の女子高生ゲーマーで、毎日徹夜でオンラインゲームに興じているため万年寝不足状態、会話にネットスラングを多用するなどオタクな面も目立ちます。
空気を読めないタイプで友人の趣味をクラスで暴露してしまうなど暴走することも多々あります。恋愛にはまったく興味がなく、宇宙船と交信を試みるなど若干現実逃避気味なところがある女の子です。
元アイドルの少年。「LOVE無限大」というアイドルグループに所属していましたが、8.31の時に宇宙船の襲来に巻き込まれてしまいました。その後、家族の意向で死亡扱いにされていましたが、ある日突然、そのままの姿で現れました。その際に侵略者の言葉を話すなど、謎の多い人物です。
門出や凰蘭の友人で高校3年生。茶髪のおかっぱが特徴の女の子です。第1話では、同級生の小比類巻に告白してリア充になることを企んでいました。実は、門出や凰蘭達仲良し5人組の中では1人だけ高校からの友達で、そのことを少し気にしている様子です。リア充になりたいのはそういった微妙な疎外感から来る張り合いのようなものでもありました。
5人組の中ではやや浮いた存在で、ストーリーが進むと衝撃的な展開も待ち受けている要チェックなキャラクターです。
門出や凰蘭達の仲良し5人組の1人で、メガネと三つ編みが特徴の女の子。小柄でちょっとぽっちゃりした印象です。8.31の際に自宅が汚染地区に指定されてしまい、5人の弟達と一緒に親戚の家へ身を寄せています。しかし、両親だけは国からの補助金を貰うために仮設住宅に暮らしていて、そういった両親の生き方に後ろめたさを感じることもあり、複雑な心境を抱いているようです。
門出や凰蘭達の仲良し5人組の1人で、長い黒髪とぱっつん前髪が特徴です。亜衣とは幼稚園からの幼馴染で、高校進学時には被災して引っ越しを余儀なくされた亜衣に合わせてわざわざ自宅からは遠くなる高校に進学するほど仲良しです。ボーイズラブが好きないわゆる腐女子。自分の趣味に関しては周りに隠していましたが、凰蘭にバラされてしまいました。
門出や凰蘭達のクラスを受け持つ男性教師。覇気のない目をしているように見えますが、生徒達とは友人のように接することも多く気さくな性格をしています。そのため生徒達からの人気も悪くありません。夢も希望もないような教師らしからぬ言動をすることもありますが、門出から好意を寄せられていることに気が付いても適当に受け流すなど大人の対応をする一面もあります。
小山門出と中川凰蘭は、東京の高校に通う3年生。彼氏を作ってリア充になろうと画策したり追試を受けたり、高校の教師に淡い恋心を抱いていたり、門出や彼女の友人達はごく普通の日常を過ごしていました。
しかし、そんな何の変哲もない日常の上空に浮かぶのは巨大な宇宙船。3年前の8月31日、地球は突如、宇宙船に乗った侵略者に襲撃されました。その時に多くの犠牲を出しつつも、宇宙船通称・母艦は渋谷上空で停止。
その後母艦も侵略者の力も大したことはなく、自衛隊と時折戦闘をくり広げつつも、人々は普通の日常を送るようになったのでした。
上空に巨大な宇宙船が浮かんでいるというSF的な設定がベースとなりつつも、1巻で主に描かれるのは門出達女子高生の日常。3年前に多くの犠牲を出し、いまだに避難所で生活していたり、「A線」と呼ばれる有害物質で汚染されている場所があったり。人々に影響がないわけではないのですが、母艦や侵略者達との戦闘が日常の一部のようになり、門出達も普通に暮らすことができていました。
そのため、1巻では本作がSFっぽい日常ものなのか、これから本格的にSFへ展開していくのか、なかなか読み取ることができません。宇宙戦争をテーマにした漫画は珍しくありませんが、本作はその「膠着状態」から始まるところが新鮮。
そのぶん先が気になりますし、ラストでは謎の元アイドル・大葉圭太が意味ありげに登場するなど、次への期待が膨らむ展開となっています。ぜひ次巻へ期待しつつ読んでみてください。
- 著者
- 浅野 いにお
- 出版日
- 2014-09-30
母艦が渋谷上空に浮かぶ東京。宇宙人と自衛隊の戦闘がたびたび繰り返されることが日常の日々で、門出や凰蘭は相変わらず普通の女子高生として賑やかで平凡な毎日を送っていました。
2巻では、小型円盤が相次いで襲来するなか、遅刻寸前の凰蘭が町中を駆け抜けて行くなど、1巻から引き続き日常と非日常が混在した世界観が描かれていきます。2巻は、ストーリーが進むというよりも、1巻で描き切れなかったぶんをさらに深堀して描いていくといった雰囲気です。
一方で、1巻では登場しなかったキャラクターも何人か登場。門出や凰蘭達以外のメインキャラクターが出揃い、これからいよいよストーリーが進んでいくかもしれないという感じもします。ラストまで読めば、3巻への期待も否応なく膨らんでくるでしょう。平和ボケした登場人物らを見ていると、現代の日本を揶揄しているようにも読めます。
新しく登場するキャラクターの1人に、須丸光(すまる・ひかり)という女性がいます。彼女は国産戦闘兵器を開発するセンターの広報係で、門出の担任・渡良瀬の恋人でもあります。何となく曰くありげで、今後のストーリーでも重要な立ち位置になってくるのではないかと思われます。彼女や彼女を取り巻くキャラクターにも注目です。
- 著者
- 浅野 いにお
- 出版日
侵略してくる宇宙船との戦闘の中で、数年ぶりに民間人の犠牲者が出てしまいました。これまで戦闘を繰り返しつつも大多数の国民は平和な日常を過ごしており、宇宙人との「戦争」は自分達の生活の外側にあるものでしたが、それが僅かに綻びてしまうのが、この第3巻です。
撃墜された「中型船」が吉祥寺駅付近に落ち、巻き込まれる形で民間人が亡くなってしまったのですが、その中には門出や凰蘭達の仲良しグループの一人、栗原キホがいました。告白をしたりされたり、恋愛して失恋したり、とにかく普通の女子高生をしていたキホがいきなり日常から消えてしまうことは、門出達には大きな影響を与えました。
読者としても、メインキャラクターだと思っていたキホがこんなにも序盤で死んでしまったことで、この作品の世界が「戦争中」であることを再認識します。また渡良瀬の恋人である須丸光が、プロポーズをしてきた渡良瀬に対して、戦争中なのにお気楽過ぎると言い放つシーンがありました。
他にも、宇宙人の生態や人類側の隠された思惑なども少しずつ明らかになっていくなど、ストーリーが一気に展開していく1冊になっています。
- 著者
- 浅野 いにお
- 出版日
前巻までに、メインキャラクターの1人だったキホが死んでしまい、それまで背景のようだった「宇宙人の襲来」という現実は、唐突に平和な日常の中で存在感を発揮してきました。しかし、実はそれと並行して門出や凰蘭は大学受験をして、第一志望に落ちていました。この日常と非日常の落差が混在している世界は本作ならではといえるでしょう。
4巻からは、第一志望には落ちたものの無事に大学に進学した門出達の話になります。そして、冒頭から新キャラクターが登場。竹本ふたばという新キャラは、大学進学を機に上京してきた女の子です。地元では頭のいい女の子として知られているようで、門出と同じく『いそべやん』のコアなファン。そのことで門出と意気投合することになりました。
前巻で宇宙人の生態が明らかになっていたので彼女達の活動も理解できますね。しかし、一つの活動に傾倒することはある種の危険をはらむものであります。ふたばの今後の動きに注目したいところです。
また、地方では「中型船」の墜落の件を境に東京は数年のうち滅びるなんて噂もされているようです。ここからどういう展開になるのか、ますます目が離せません。
- 著者
- 浅野 いにお
- 出版日
前巻から始まった大学生編。ここまでに侵略者である宇宙人の生態や人類側の思惑、宇宙人の保護を訴える団体の登場、戦闘をビジネスにしている人間達など、「侵略者」に対する様々な視点や思考が登場してきました。
東京は滅びるという噂も登場するなど不穏な空気が流れ始めていましたが、本巻ではそんな空気がますます加速しているように感じられます。しかし、そんな空気感がある一方で、門出や凰蘭達はラブコメ的な日常をくり広げていました。
冒頭には、行方不明になった後に「侵略者」となって現れた大葉圭太が登場。この圭太は門出や凰蘭とともに暮らしていて、凰蘭は圭太と割といい感じになったりします。門出のほうはといえば、渡良瀬といい感じになっていました。
渡良瀬は須丸と付き合っていましたが、その関係も惰性的で、すでに別れています。もともと門出が高校在学中だったため見て見ぬふりをしていた渡良瀬でしたが、門出の好意には気が付いていたので、この展開もごく自然なものなのかもしれません。
『おやすみプンプン』で表現されていたような狂気も感じ始める5巻。世界の滅亡という展開が色濃くなってくる中、門出や凰蘭達の日常がどうなっていくのかが気になる1冊です。
- 著者
- 浅野 いにお
- 出版日
いよいよ世界の滅亡がかなり確実なものとして描かれ始めてきましたが、本巻ではついに具体的な数字が出てきます。また、冒頭に登場する新国立競技場。その地下に巨大な施設が作られていることが判明します。
少し前に総理大臣を始めとした政治家達が、新国立競技場が「飛ぶ」といった会話をしていましたが、どうやら一部の人間達は着々と逃亡の準備を進めているようです。もちろん大多数の国民達は何も知りません。お偉い人達だけが助かろうとするのは滅亡ものの作品ではよくある話ですが、現実の日本とリンクした内容が散見されるだけに本当に現実化してしまいそうですね。
これらのことからも、滅亡へのカウントダウンがいよいよ始まったのだろうかという気配を感じます。
さて、そんな不穏な空気が流れる中で、門出の恋愛にも進展があります。渡良瀬といい感じになっていた門出でしたが、渡良瀬にフラれる形で失恋してしまいました。どうやら渡良瀬は元カノである須丸から滅亡に関わる話を聞いていたらしく、そのあたりのことも門出をフッた理由の一つのようです。
一方、凰蘭と圭太はあまり変化がないように見えますが、気になるのは「侵略者」である圭太。そのことが凰蘭や門出とどう関わってくるのか気になるところです。また、宇宙人の保護活動をしていたふたばですが、活動がどんどんエスカレートしていって、何やらマズイ方向へいきかけています。ふたばの動向からも目が離せません。
- 著者
- 浅野 いにお
- 出版日
「侵略者」である宇宙人の力は武装した人類の力に及ばない……というのは、ここまで何度も明らかにされてきたことでした。そのため滅亡が近いというのは、「侵略者」に人類が滅ぼされるのではなく、母艦のエネルギーが暴走し崩壊するという意味だったのです。
そのXデーも近いとされている中、日本は母艦や宇宙人の情報開示に協力せず、兵器の開発や演習を繰り返すなど、その対応はアメリカの反感を買い、激しく非難されていくようになりました。
一方、凰蘭達は、大学のミステリー研究会の夏合宿に参加することに。そこで凰蘭はつい圭太に告白を決行します。前巻で「侵略者」である圭太がどうなっていくのか不穏な空気も漂っていましたが、本巻では凰蘭と圭太の恋愛模様が加速しています。世界の緊張は高まっているのに日常は至ってラブコメ。この差こそ「デデデデ」の魅力といえるでしょう。
しかし、今回はラブコメで終わらないのが本巻1番の見どころです。ラストになって明かされる衝撃の展開。なんと凰蘭が並行世界から来たタイムトラベラーだというのです。予想のはるかに上を行く展開に驚かされますが、7巻はここで終わり。すぐにでも8巻を手に取りたくなること間違いありません。
- 著者
- 浅野 いにお
- 出版日
前巻のラストで、凰蘭が並行世界から来たタイムトラベラーだという衝撃の真実が明かされました。友人であるキホが「中型船」の墜落に巻き込まれて死んでしまうなど、凰蘭の比較的身近なところに「戦争」がありましたが、それでも彼女にとって「戦争」は別の世界で行われているようなものでした。
普通の大学生として平和な日常を送っていた凰蘭でしたが、ここに来て一気に非日常の渦中に入り込んできました。8巻では、門出と凰蘭の8年前の出来事についてがメインに描かれます。
ここで描かれる過去は、今の門出や凰蘭達がいる世界ではなく、凰蘭がもともといたであろう並行世界の話です。この世界の門出や凰蘭達は「侵略者」である宇宙人と接触、交流をしていました。そして宇宙人の持つ秘密道具を使い、友達と困っている人を助けようと考えるように。
しかし、まだ子供である門出の行動はしだいにエスカレートしていってしまいます。違う世界線とはいえ、門出達のこれらの行動が今後にどういう影響を与えるのがとても気になるところ。
また、宇宙人の保護団体にいるふたばも追い詰められている様子が描かれており、こちらも今後の動向が気になります。漫画内の架空漫画「イソべやん」の伏線も回収されることに。ぜひ続きに期待してください。
- 著者
- 浅野 いにお
- 出版日
前巻から続いて、並行世界における門出と凰蘭の小学生時代の話です。「侵略者」から借りた秘密道具を使い困っている人を助けようと考えた門出達でしたが、その行動が思わぬ電車の脱線事故を引き起こしてしまいました。門出は自責の念にかられます。
しかし、しだいにその感情は自分の中の正義と結び付き、結果として門出は暴走状態となってしまいます。そのことに気が付いた凰蘭は門出と衝突。そしてそれが、最悪の結果を招くことになってしまいました。
この世界線で救われることのなかった門出を救うため、凰蘭は兄や「侵略者」の力を借りて「門出と出会う前」まで時間を遡っていました。そしてそこから新しく世界を作っていたのです。この世界こそが、これまで描かれてきた門出や凰蘭が過ごしてきた世界でした。
結果、門出がどうなったかは、ここまで本作を読んできた通りです。真実が明らかになってから再び話を読み返してみると、キホの死の衝撃がなおさら強くなります。この時の凰蘭の気持ちを想像するとあまりにも辛くなります……。
真実が明らかになったここから、凰蘭と門出がどう生きていくのか、ストーリーがどう展開していくのか、ますます目が離せません。
- 著者
- 浅野 いにお
- 出版日
前巻までに、この世界が門出を救うために凰蘭が過ごし直しているものであるということがわかりました。もともと凰蘭がいた世界では、実は「侵略者」は事前調査の結果、地球に侵略することはないという結論に達していました。しかし、凰蘭が門出のためにタイムトラベルをした結果、「侵略者」と人類で戦争が行われている世界線となっています。
そして、遂に東京上空に浮かぶ母艦が崩落し始めます。アメリカや中国からは圧力をかけられ、追い詰められた政府要人は新国立競技場の地下に秘密裏に作った「Ocean」という飛行船で東京から逃亡を図ります。
東京が壊れていくなか、東京を離れて合宿をしている門出達は海や花火で遊んで夏を満喫していました。ここに来ても非日常と日常の落差が膨大。しかし、そんなのどかな時間の中で、圭太だけは「母艦」へ向かいます。圭太は崩落する「母艦」を安全に着陸させる方法を知っていたのです。
そして遂に人類滅亡まで12時間を切った...というところで次巻へ続きます。いよいよラストが近い雰囲気が漂ってきた最新刊です。
- 著者
- 浅野 いにお
- 出版日
最新刊である10巻は74話から81話までが収録されていました。その後、雑誌での連載は90話まで進んでいます。コミックス未掲載であるこれらの話はどういったものか、各話を簡単にご紹介しましょう。
崩落する母艦を安全に着陸する方法を知った圭太は、一人で東京へ向かおうとします。圭太と二度と会えなくなると思った凰蘭は彼を止めますが、凰蘭の制止を振り切り、圭太は母艦へ向かいました。一方、東京では母艦の崩落や謎の巨大な手の出現など様々な異変が起こっていますが、それでも人々の危機感は薄く、平凡な日常を繰り返しているのでした……。
秘密道具を使い母艦に向かって飛行していた圭太は、自衛隊の砲撃により母艦に墜落してしまいました。そこで「侵略者」と接触した圭太。圭太の説得を受け入れた「侵略者」とともに母艦の爆発を止めようとしますが、そこに割って入ってきたのは、凰蘭達のかつての同級生で今は過激派に身を置く小比類巻(こひるいまき)でした。己の野望のために圭太を殺そうとする小比類巻。圭太の窮地を救ったのは…⁉
みんなを助けたいと母艦の爆発を止めようとする圭太と、そんな圭太を殺そうとする小比類巻。そして圭太に手を貸す「侵略者」。しかし、激しい戦いの中で圭太は母艦から落ちてしまいます。圭太の想い叶わず崩落していく母艦。そして、日本以上に「侵略者」を他人事として見ていた世界各国にも人類を滅ぼす光が降り注ぎます。
人類滅亡の数か月前。動画配信をしていたある大学生が動画を配信していました。それは「侵略者」とすでに2年もともに生活をしていて、母艦はいずれ爆発する、「侵略者」は人類と共存を目指しているというものでした。しかし、動画を配信した大学生は失踪。動画もすぐに削除されます。彼の動画は不都合な真実だったのです。一方、車で東京へ戻ろうとしている凰蘭と門出達は、他愛のない将来の話をしていました。しかし、人類が滅亡するまで、すでに15分となっていたのです。
世界に謎の光が降り注ぐ中、東京の人々は渋滞や天気の心配をしたり仕事をしたり、常と変わらない日常を過ごしていました。しかし、空から落ちてくる光に触れた人々の体は抉り取られ、母艦の爆発によって建物は人々ごと砕けていきます。何の変哲もない日常が続くと思っていた人々は、それを疑う暇すらなく消滅していったのです……。
遂に爆発した母艦。これまで何が起きても明日も日常が続くと思っていた人々は、最後の瞬間まで日常の生活を送っていました。しかしそんな人々を、爆発は容赦なく飲みこんでいきます。都市も生活も、そして人々も、一瞬のうちに壊されていくのでした。その中には凰蘭にメッセージを残していた兄のひろしの姿もあって……。
母艦の爆発は東京を飲みこみ、さらに遠く離れた地域に地震を起こしました。空を覆うキラキラした光の粒と巨大な光の柱。それらを眺めながら、人類は滅びていきました。
東京を飲みこんだ爆発は、日本のみならずアメリカでも起こっていました。日常を送っていた人々がいきなり死ぬ日々の中、ホワイトハウスには大統領を始めとした用心達が集まっています。自分は選ばれた人間だと言う大統領でしたが、それに反旗を翻す要人達。アメリカはすでに地球を見限っており、「侵略者」の世界への侵略を企てていました。人類は「侵略者」になろうとしていたのです。
門出の父・ノブオは、漫画の編集者をしていました。仕事も家庭もままならないことが多く絶望することも多くありましたが、それでも平凡な日常を送っていました。しかし、それも「8.31」のせいで壊されてしまいます。「8.31」に巻き込まれたノブオは「侵略者」に体を乗っ取られてたままずっと意識を失っていたのです。ようやく意識を取り戻した時、世界は人類が滅亡してから8年の歳月が過ぎていました。
90話が雑誌に掲載されたのは2021年3月22日発売の「ビッグコミックスピリッツ」でした。90話までが収められた11巻が2021年7月末に発売。そこから現在(2021年7月現在)までは休載中で話は進んでいません。作者のTwitterによると、最終章は夏頃に再開予定だとか。再開したあかつきには一気にラストまで駆け抜けるのかもしれません。連載再開、またコミックス最新刊が発売されるまでの間に、ぜひ1巻から読み直してみてはいかがでしょうか?
- 著者
- 浅野 いにお
- 出版日
「イソベやん」というのは、本作に登場する架空の国民的漫画のことです。作中の人物が読んでいる様子がたびたび描かれ、特に門出やふたばはコアなファンであることが明らかになっています。
その名前のイメージからわかるように、「イソベやん」は実在する国民的漫画「ドラえもん」のオマージュ。キノコのようなフォルムをしたイソべやんは未来からやってきて内緒道具を使います。もちろんドラえもんを意識したキャラクターです。
そんなイソべやんと一緒に暮らして何かと内緒道具に頼る怠け癖のある女の子がデべ子。「ドラえもん」でいうところののび太です。他にもメスゴリラ、ヒネ美など、「ドラえもん」を知っている方なら思わず笑ってしまうようなキャラクターが続々登場します。ただ、内容は「ドラえもん」と違いシニカルで現代を皮肉ったものとなっています。
一見すると本編からは独立していて、それだけ読んでも面白い作品ではありますが、よくよく読むとどうやら本編に密接な関係がある内容なのではないかと考えられます。
1番わかりやすいのは、夏休みの宿題を扱った話です。「イソべやん」では夏休みの宿題が終わっていないという話が2回ほど出てきますが、1つには明確に8月31日が描写されています。「8.31」といえば本編で「侵略者」の母艦が襲来した日です。また、最終章では「夏休み」もキーワードになってくるので、意識して描かれていることは間違いないのではないでしょうか?
他にも、「イソべやん」の内緒道具と「侵略者」の秘密道具には似たものがありますし、共通するテーマを扱っていると思われる話もあります。そもそもイソべやんのキノコ型フォルムも、どこか爆発を連想させます。
「イソべやん」と本編がどう絡んでいるのか、伏線が張られているのかなど、考察してみるのも本作を楽しむ読み方の1つかもしれません。
『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』は、ただいま「ビッグコミックススピリッツ」では休載中ですが、コミックスは11巻まで発売中。
他に、漫画アプリ「ピッコマ」や「まんが王国」などでは、一部を無料で読むこともできるようです(これらは急に配信終了になる可能性もあるのでご注意ください)。最新刊が出る前にぜひチェックしてみてはいかがでしょうか?