人間関係における若者の葛藤を見事に作品の世界観として映し出し、そこが共感できる、とファン続出中の浅野いにお。「どうせ若い女の子が好きな漫画家でしょ?」と思っている人も1度読めば、浅野いにおワールドのトリコ!
『おやすみプンプン』や『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』など、多くの作品が話題となる、作者。『ソラニン』は宮﨑あおい主演で、2010年に映画化もされました。
浅野いにおのデビューは、1998年。「ビッグコミックスピリッツ増刊Manpuku!」(小学館)で『菊池それはちょっとやりすぎだ!!』が掲載されます。
2001年「月刊サンデーGENE-X」(小学館)GX新人賞に『宇宙からコンニチハ』で入選します。初の連載作品は『素晴らしい世界』。
可愛らしい絵柄が人気で、でんぱ組.incのシングル「あした地球がこなごなになっても」やサンボマスターの「きみのためにつよくなりたい」などのジャケットイラストや、アーティストのグッズTシャツのイラストレーターとしても有名です。
デビュー前の一時期は、最終兵器彼女などで有名な高橋しんのアシスタントをしていました。
この作品はバンドマンである種田成男と社会人2年目のOL井上芽衣子の恋愛や、仲間たちとの人間模様を描いた作品です。何気ない2人の日常が読んでいてとっても可愛らしいです。しかしストーリーは後半あらぬ方向へと向かっていきます。
一念発起してレコーディングした種田のバンドの楽曲をレコード会社に送ったところレコード会社のうち1社から連絡が入ります。しかし依頼内容はバンドのデビューではなく新人グラビア・アイドルのバックバンド。現実的な厳しさもしっかりと描かれています。
- 著者
- 浅野 いにお
- 出版日
- 2005-12-05
音楽を扱った漫画はサクセス・ストーリーが多いので、「そんなに物事がうまくいく訳ないだろ」と斜めに見てしまうという読者の方も多いのではないでしょうか。しかしそんな人にも現実的な描写の多い浅野いにおの『ソラニン』は、きっと心に響くと思います。
何かを失って変わりに何かを得るという世界観は、題材がバンドではなかったとしても読む人たちの人生に当てはまります。
『ソラニン』については<漫画『ソラニン』の魅力を徹底紹介!大人の入り口に立ったあなたにおすすめ!>で紹介しています。気になる方はあわせてご覧ください。
現代を生きる若者たちの日常を、作者の独自の視点からリアルに描いた連続短編集です。浅野いにお初の連載作品でありながらすでに現在のいにおワールドの片鱗が伺われます。
生きにくい社会で精いっぱい頑張っても、評価されず心を削る現代の若者。短編それぞれに出てくる主人公たちの視点、思考はまさにリアルな若者たちとリンクします。
- 著者
- 浅野 いにお
- 出版日
- 2003-05-19
若者特有の虚勢や意地。そしてストーリーを通して描かれる人間や社会の怖さや、誰しも1度は感じた経験があるであろう「大人にはなりたくない」という気持ち。
ある意味好き嫌いはかなり分かれる作品ではあると思いますが、浅野いにおの持ち味である独特の間や登場人物のセリフまわしは、この作品ですでに完成されているように思えます。
作者初の連載作品ということもあり、浅野いにお好きを公言するなら!必ず読んでおくべき作品です。
浅野いにお今作の主人公は普通の絵柄の人間ではなく、らくがきのような鳥です。しかし周囲は普通の人間として扱っています。愛らしい鳥の姿をした主人公・プンプンの人気と、どこにでもありそうな街でおこる一風変わったシュールな出来事の相乗効果で、連載期間は5年にもおよび人気を博した、浅野いにおの作品です。
他のいにお作品を知らなくても、この作品だけは知っている!という人が多いのは、シンプルなのになぜか可愛らしいプンプンの影響ではないでしょうか。
彼には田中愛子という幼馴染がいます。中学までは一緒でしたが、高校からは別々になってしまいます。愛子への想いを胸に、日々モンモンするプンプン。学校が変わって好きな子と離れ離れになった経験は誰しも持っているものではではないでしょうか。
- 著者
- 浅野 いにお
- 出版日
今作の人気の理由の1つに、プンプンがとにかく不幸という点があります。「18年間生きてきて今日ほど、生きることに絶望した日はなかった。」というプンプンのセリフに、この物語の全てが集約されています。
SNSのアイコンなんかを可愛いキャラにしてる人は「自分のことをこのマスコットのように可愛がってほしい!」という願いが多かれ少なかれあるかと思いますが、人間だれしも持っている自分を自分以外の何かにしてしまいたい!という気持ちや、自分は団体の中で浮いてるんじゃないだろうか?という不安感をうまく主人公のデザインに落とし込んだ点において、浅野いにおはまさに天才です。
もっと詳しく知りたい方は<『おやすみプンプン』5分でわかるあらすじと魅力!鬱すぎるプンプンの人生【13巻完結、ネタバレあり】>の記事もご覧ください。
この作品は、とある楽曲が作品の隠れテーマのように使われています。その楽曲は70年代初期に活動したバンド・はっぴいえんどの名曲『風をあつめて』です。新旧問わずたくさんのアーティストにカバーされている楽曲ということもあり、世代問わず人気の楽曲です。
71年発表の楽曲が使われてはいますが、舞台は現代の海辺の町。主人公たちも当たり前の現代の少年少女といった感じで、自宅の自分の部屋にもネットがひいてありブログなんかを更新していたりもします。そのブログも物語の後半に大きく関わってきたりと、伏線の多さも浅野いにお作品の面白い部分です。
十代の若い男の子が最近のバンドではなくはっぴいえんどを聴いているという部分は、ある種作者の好みなのかもしれませんが、後半で歌詞に合わせた主人公たちのシーンは圧巻の一言です。無理やり歌詞の内容に絵をハメたというより、物語の必然とさえ感じてしまう印象的でイキな演出だと思います。
- 著者
- 浅野 いにお
- 出版日
- 2011-03-17
誰もが持つ青春時代の甘酸っぱい感じや初体験。人よりも前に進みたい気持ちと、押し通したいそれぞれの正義と偽善が、浅野いにおの作品の随所に溢れています。
忙しすぎて恋愛感情を忘れてしまった大人が読んでも、切ない気持ちを思い出せそうです。青春らしい毒も散りばめられているので、その辺にはご注意くださいね。
突如UFO(侵略者)が現れた東京を舞台に、そこでくり広げられる女子高生の日常を描いた作品です。侵略者が現れたってクリスマスはクリスマス!と言った感じで「来年もみんなでこうやって集まれるかな?」なんて言いながら特に何をするわけでもなく過ごす主人公ら5人の女子高生。
しかし年明けに侵略者の中型船が市街地へ墜落し、仲良し5人組の1人キホは帰らぬ人となってしまいます。昼過ぎになって登校してきた5人組のなかでもひときわボケ発言の多い凰蘭(おうらん)は、親友が死んだことを知ってか知らずか「ケーキを食べに行こう」と3人に提案します。しかし凰蘭と幼馴染である門出(かどで)は泣きながらキホが死んだことを伝えます。
見開きの画面いっぱいで描かれる凰蘭の後ろ姿と「知ってる」の一言。読んでいて思わず泣いてしまった人は多いのではないでしょうか。この作品は単純な女子高生の日常生活を描いた作品ではありません。そしてそのことを再確認させられるエピソードが随所に織り込まれており、読者を飽きさせない要素となっています。
- 著者
- 浅野 いにお
- 出版日
- 2014-09-30
可愛い絵柄のキャラと一風変わったキャラが同居している世界観。これは近年の浅野いにおの特徴の1つかもしれませんが、それが完成に至ったのがこの作品ではないでしょうか。
女子の可愛さを書く際に、とにかく造形的に整えて描くアニメ、漫画が多い昨今。本作は主人公ら女の子のメンバーを個性的に描くことによって、魅力的に仕上げています。緻密に描かれた背景にも、ぜひ注目です。
いかがでしたか?浅野いにおの作品は、何度も読み返したくなる名作ばかりです。まだ読んだことない作品、ぜひ読んでみてください。