錦鯉やったね!『くすぶり中年の逆襲』は50歳のおじさんシンデレラストーリー

更新:2022.3.3

2021年12月19日、おじさん2人のシンデレラが誕生しました。43歳と50歳の漫才コンビ・錦鯉が、M-1グランプリ2021で優勝を飾ったのです。ここでは劇場で錦鯉を応援してきたライターが11月に発売された自伝書『くすぶり中年の逆襲』を読み、そのおすすめと錦鯉への思いを綴ります。

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ホンシェルジュは、錦鯉の才能をイチ早く見つけていました!

11月に錦鯉の2人による自伝書『くすぶり中年の逆襲』を発売していた新潮社の担当者も、今回のM-1優勝を飛び上がるほど喜んだことでしょう。ホンシェルジュ編集部の1人であるライターの私も実は同様。2020年8月の段階で、ホンシェルジュでの企画記事や連載を錦鯉の長谷川まさのりさんに依頼していたためです。

まさのりさんにおすすめ本について書いていただいた企画記事はこちらをご覧ください。

フリースタイル書評バトル-芸人編- 【第3回「型破りエピソード芸人」】

フリースタイル書評バトル-芸人編- 【第3回「型破りエピソード芸人」】

第3回となる「フリースタイル書評バトル-芸人編-」。バトル形式で芸人に本をおすすめし合ってもらい、その紹介文を読んだ皆さまからの投票で、今後「連載」の権利を獲得する芸人が決まります。 今回は「型破りエピソード芸人」として錦鯉・長谷川、蛙亭・岩倉、スタンダップコーギー・奥村、春道・櫻間の4名が集結。いったいどんな本を、どんな語り口で紹介してくれるのか、誰も予想がつかない展開が待っています!

まさのりさんによる4コマ漫画連載はこちらです(現在、再開未定です)。

錦鯉長谷川まさのり49才絵日記【連載初回】

錦鯉長谷川まさのり49才絵日記【連載初回】

「M-1ラストイヤーが56歳」。2020年現在49歳ながら、お笑い第七世代とともに新たな旋風を巻き起こしているのが、錦鯉の長谷川まさのり。フリースタイル書評バトル第3回「型破りエピソード芸人」で優勝した彼の新連載が、ここに始まる! 本来小説や漫画を紹介するサイトである「ホンシェルジュ」ですが、長谷川に今回挑戦を依頼したのは、なんと彼自身による「漫画連載」。「錦鯉長谷川まさのり49才絵日記」と銘打ち、彼の波乱のエピソードをギャグ漫画化してもらいます。夢は大きく、目指せ書籍化!彼の記憶と歴史に刻まれた、珠玉のストーリーとは?

ライターは、2020年頃まで事務所ライブの行われる千川Beach V(びーちぶ)や新宿などの劇場でいつも錦鯉に大笑いさせてもらっていました。破天荒すぎておじさんすぎる2人が、M-1の決勝の舞台に立ったというだけで驚いた2020年。そして大ブレイクを果たし、「錦鯉売れてよかったね!」と誰もが満足していたことでしょう。2021年、優勝を果たしてくれるとは夢にも思っていませんでした。

錦鯉、感動をありがとう!

芸人にネタで笑わせてもらう以上のことを求めるのは無粋かもしれません。しかし「50歳のおじさんの人生に感動できるドラマを見出す」ということも、今回のM-1の楽しみ方の1つとなったのは確かです。

そこで、錦鯉の2人がどのようにして人生を歩んできたのか、もっと興味を持った方のために『くすぶり中年の逆襲』という自伝書を紹介したいと思います

コアファンにもライトファンにもおすすめの『くすぶり中年の逆襲』

『くすぶり中年の逆襲』は自伝書といってもまえがきとあとがき以外は対談集のような仕上がり。2人が机に向かってうんうん唸りながら書いたというものではありません。対談している2人を脳裏に思い浮かべて、動画のテロップを読むというような手軽さがあります。

書籍内で明かされるエピソードは、どれも破壊力バツグン。特にボケのまさのりさんのキテレツなエピソードは、自身によるnoteやラジオ配信アプリ「GERA」でも明かされていますが、書籍で初めて世に出るエピソードも。隅々まで錦鯉のメディア露出を追いかけている方でも新たな発見があるでしょう。また、「ツッコミの渡辺隆さんの普段の私生活や考えをあまり知らない!」という方にももってこいの1冊です。

著者
錦鯉
出版日

『くすぶり中年の逆襲』おすすめエピソードはまさのりさんの貧乏飯!

ライターのおすすめエピソードは、まさのりさんが貧乏飯についてのこだわりを語る部分です。

劇場で錦鯉を見てきた方は耳にしたことがあるでしょう、まさのりさんの貧乏時代の食事について。まさのりさんは食パン(8枚切り。6枚より8枚のほうがたくさんあるように感じるため)にマヨネーズを塗って食べていました。このことはまさのりさんを知っている方にはおなじみかと思いますが、その塗り方にもこだわりがあるのだとか。

それは、マヨネーズを一筆書きで「区」の字に塗ること。「区」の字に塗れば、空いている右側の1辺はマヨネーズの味にならず飽きずにバランスよく食べられるのだそう。このディテールからは、この食事を何度も摂っていたのだろうと想像ができます。

そしてこの「区」の字を説明する時の語彙にもご注目。「足立区の区」とまさのりさんが説明するのに対してなぜ足立区なのかとツッコミを入れる隆さんの鋭い視線は書籍の中でも健在です。思いついたことをそのまま一生懸命に話すまさのりさんと、それを見守る隆さんの関係性がありありと目に浮かぶエピソードでした。

錦鯉のお笑いは、もう伝統芸能

隆さんは錦鯉のネタについて「結末が分かってても楽しめるようなネタをやっている」と語ります。

これは、とっても偉大なこと!そして、お笑いの仕組みとしても、やろうと思って簡単に構築できるものではないとライターは思います。

たとえば落語や歌舞伎などの伝統芸能は、「この物語が聞ける/見られる」とわかって楽しみにいくもの。しかし現代の芸人らは、反対に斬新さを求められています。どんどん新しいワード、新しいシステムのネタを生み出していかないとお客さんに認めてもらえないという苦しみを、少なからず味わっているように感じるのです。

しかし錦鯉は、ワードやシステムの奇抜さで笑わせるのではなく「おバカなキャラクター」という生きざまで笑わせてM-1チャンピオンまで登り詰めました。むしろこれしかできないという強さ。もはや伝統芸能の域。それだけを貫いた男の生きざまに、審査員までもが目を潤ませるようなことを成し遂げたのでしょう。

優勝賞金と、豪華な副賞を手に入れた錦鯉。もうまさのりさんもマヨネーズ食パンを食べることはなくなってしまうかもしれません。それでも、これからも私たちのことをその生きざまで笑わせてくれることには間違いないのです。

ホンシェルジュではこれからも錦鯉をはじめとしたお笑い芸人の方々を、リスペクトを込めて応援していきたいと思います。

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