5分でわかるホシガラスの生態!ホシガラスの貯食行動とは!?

更新:2022.5.16

カラスは世界に130種類生息していて、ほぼ世界中に分布していると言われています。 日本で言うとカラスといえば街中にいる、人間のゴミを漁る黒い厄介な生き物を想像しがちですが、実は種類はそれだけではないのです。 今回はカラスの中でも面白い生態を持つホシガラスと動物の行動にまつわる本を紹介していきます。

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ホシガラスとは?

 

ホシガラスは標高2000m以上の高山帯に生息しています。(有名な生息地では富士山にも生息しています)
日本では四国以北で生息と繁殖をしていて、一年中みることができる鳥です。
場所によっては低いところで暮らしているものもいるようですが、都心ではみることはできないので、カラスの中でも珍しい種類になります。
英語ではspotted nutcracker(実を砕くもの)と呼ばれます。

 

体の大きさや特徴は?


体のサイズは35cmと一般的なハシブトガラスやハシボソガラスよりは一回り以上小さいです。フォルムは小さなカラスといった見た目ですが、体の模様が特徴的です。黒色の体に白色の斑点がたくさんあり、星のようににみえることからホシガラスと言う名前がつきました。なんともロマンチックな由来です。しかし、ホシガラスは他のカラスと比べて見た目は美しいのですが、ガアー、ガアーとしわがれた声で鳴くため、声はカラス同様あまり美しくありません。

昔から登山者にはよく知られており、「岳鴉(だけがらす)」という名でも呼ばれていたそうです。
 

何を食べている?

 

主にハイマツの実を器用に割りその中の種子を好んで食べます。ただやはりカラスというだけあって、昆虫、鳥の卵や雛、山小屋で出たゴミなど何でも食べることもできます。
ホシガラスは喉袋にパンパンに木の実を詰めて移動することでも有名で、一度に140個ほどの実を大きな喉袋に入れて隠し場所に運んでいきます。
ハイマツの球果は二年目に成熟しますが、成熟してもあまり開きません。そのため知能が高いホシガラスはクチバシや岩などを使って器用に中身を取り出します。

 

ホシガラスの好きなハイマツとは?

 

高さ30-200cmのマツ科の常緑低木で、地面を這うように生息しています。 地域としては東シベリアから、北海道、本州中部以北にかけて分布しています。

面白いことにハイマツが生じる場所から上には高木が育たないという指標になっています。高い木が育つことができる限界を「森林限界」といい、森林限界より上には、ハイマツやお花畑が広がります。

ホシガラスがハイマツを食べる場所には、食べた跡がたくさん残っています。

 

どのようにして冬をこえる?

 

ホシガラスは冬を越すために貯食という行動を取ります。キツツキやリスなどと同様に冬は餌が取りづらくなるため、秋の間に土の中や木の洞など自然という貯蔵庫に餌を隠しておくのです。カラスの仲間は基本的にこの貯食行動をとることが多いのですが、ホシガラスはその数が圧倒的に多いのです。
貯食した木の実は冬や春だけでなく、次の年の夏まで利用されるようです。

 

驚くべき貯食の数

 

ホシガラスの驚くべき特徴は、毎年、32000個ものマツの種子を貯食し、その1ヵ所当たりの貯食個数は平均3.7個と言われています。さらに貯食場所は8,600ヵ所以上に及ぶそうです。しかもホシガラスはそのひとつひとつの場所を記憶しているというから驚きです。たまに忘れてしまうこともあるようですが、8割近く正確に貯食の場所を探し当てるようです。

しかもただ貯食した場所を覚えているだけでなく、すでに回収した場所の記憶や無くなっていた場所の記憶、貯食した餌の種類の記憶までしているようです。

カラスの仲間は記憶力に関しても驚異的と言われることが多いですが、そのなかでもホシガラスはずば抜けているかもしれません。

ホシガラスの子育ては?

 

ホシガラスの子育ては他の鳥類と比べて早く、冬から春にかけてのまだ山に雪が残る時期から始まります。
これは、ホシガラスの天敵となる蛇などが冬眠から目覚める前に子育てをするためです。しかし、春先ではまだ餌が十分に確保できません。そのため秋に貯めた木の実を雛たちに与えるのです。

ホシガラスの巣についての情報は少なく、日本国内でも確認されているのは数件程度だということです。
 

残った種や実はどうなるの?

ホシガラスが貯食した木の実は全て食べられるわけではありません。木々が失われた場所にも貯食を繰り返し、残った種が発芽することで新たな生態系を生み出す役割を持っているため、ホシガラスは「森を再生する鳥」としても知られています。
貯食行動はハイマツにとっても、最終的にはホシガラスの子孫たちへの贈り物となるのです。

 

野鳥ポケット図鑑 ひと目で見分ける287種

専門的な図鑑ではないですが、さっと開けるためバードウォッチングの際に持ち運びやすい一冊です。

著者
修, 久保田
出版日

 

動物の賢さがわかるほど人間は賢いのか

霊長類の社会的知能研究における第一人者であり、その著書は20の言語に翻訳されています。鳥をはじめとする動物たちがどのくらい賢いのかまとめられています。
ホシガラスの貯食についても説明されているので、研究などに加えて動物たちの面白い生態を知ることができます。

著者
["フランス・ドゥ・ヴァール", "松沢哲郎", "柴田裕之"]
出版日

 

カラス学のすすめ

医学博士で農学博士、解剖学者である杉田昭栄によるカラス研究の集大成が詰まった一冊です。ホシガラスとは違いますが、カラス自体の生態や行動の秘密を知りたい方はおすすめです。

著者
杉田昭栄
出版日

もし高い山を登る際は、ホシガラスを探してみてはいかがでしょうか。
その際は、喉が膨らんでいるか、貯食する場所を探していないか観察してみてくださいね。きっと登山も何倍も楽しくなると思います。

 

 

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