現代社会でシェアハウスといえば、当たり前の暮らし方になってきていると思いますが、実は鳥類界でもシェアハウス制度は存在しています。 シャカイハタオリという小型の鳥が世界最大の巣を作ることをご存知でしょうか。 今回はシャカイハタオリの驚くべき巣の構造とシャカイハタオリについて取り上げている本を紹介します。
アフリカの南部に生息しているスズメの仲間です。全長は14cm、体重は26〜32グラムで大きさも見た目もスズメそっくりです。
主食は穀物や昆虫で、砂漠地帯で水辺の環境がないため水分は生き物から摂ります。
この小さな体でとてつもない大きさの巣を作り上げます。
シャカイハタオリは大きな木や電柱などの構造物に巣を作ります。
その巣にはなんと500羽以上が住み着き、横幅が9m、屋根の厚さが4mその巣の重さは最大1トンになると言われています。もちろん鳥が作る巣の中で一番大きいです。しかし、ただでかいだけでなく巣の中は一つ一つ個室なっているようです。
最初からここまで大きい巣を作るわけではなく、生まれた子供は巣立っても同じ場所で生活するため、何世代にも受け継がれここまで大きくなるそうです。
驚いたのが同じ巣がなんと100年以上使われることもあるということです。
また日中と夜間の寒暖差の大きいアフリカですが、この家は耐熱性、耐寒性も素晴らしく建築としても非常にレベルが高いと言われています。
通称砂漠の一級建築士と呼ばれているそうです。
コロニーとして集団生活する鳥は数多くいますが、これだけ大きな巣の中で共同生活する鳥はシャカイハタオリだけです。
それだけ大きな巣を作る方法は意外にも単純です。
まず木の隙間に持ってきた枯れ草を詰めていきます。これを1羽1羽が行い枯れ草を隙間なく詰め込んでいきます。そして、枯れ草を詰め込んだ枝の上部に細い枝を組み合わせて、そこにまた枯れ草を差し込むことで強度を上げて、外気の影響を受けないような作りにしていきます。そこからそれぞれ自分の部屋をつくっていきます。
何年もかけて大きくなる上に、修繕を繰り返すので何年も同じ場所に頑丈に住み続けることができるのです。
過酷な環境であるアフリカでは、身を隠す場所はほとんどありません。加えて、耐熱性、耐寒性が優れているとなるとその環境を求めて他の生き物が住みつくことが、シャカイハタオリの巣では頻繁に起こります。
他の種の鳥やトカゲ、蜂、さらには天敵となるハヤブサなどが居候しており、不思議な共生関係が築き上げられているといいます。
生まれたばかりの雛が捕食されるというケースもあるようですが、天敵となる蛇やトカゲを追い払ってくれる役目もあるため不思議な共生関係が生まれているようです。
シャカイハタオリの巣作りには現場監督ともいうべき存在がいます。
巨大な巣の建造および状態を常にチェックする存在がおり、その現場監督がしっかり指示をすることで秩序が保たれているようです。
現場監督の鳥が巣作り中の鳥を監視し、さぼっていたりやる気がなかったりする鳥を見つけては罰を与えているそうです。
自然界で言えば働きアリのシステムに似ています。
巣作りの任務をサボって自分の個室作りに集中している鳥はコロニーから追い出されてしまうこともあるそうです。
天敵が多いシャカイハタオリは、上空から猛禽類に狙われないように下向きに出入り口がついていると言われています。
サバンナの砂漠地帯では、私たちが想像する一般的な鳥の巣を作ってしまうと襲ってくださいと言っているようなものです。
また高い木に巣を作ることで蛇の侵入を防ぐ役目があります。
しかし巣に蛇が入り卵を食べ尽くすこともあるようです。
シャカイハタオリはシーズン毎に約4羽前後の雛を育てます。巨大なコロニーということもあって、シャカイハタオリの子育てもこの巣の中で行います。巣の中では、特に若鳥がより幼いヒナの子育てを補助をする役を担っていて、同じ巣内にいる血縁のないヒナの子育てをする特性があります。
コロニーは一心同体であり、巣の中で一つの助け合いの社会が生まれているのです。
こういったところもシャカイハタオリのシャカイ(社会)と言われる由縁かもしれません。
尻の穴が家のカクレウオ、空気の家に住むミズグモ、一生外に出られない家で暮らすドウケツエビなど、生態学者加藤英明が監修した生き物の巣に特化した一冊。生き物がなぜ巣を作るのか、その形にはどんな意味があるのかイラストや写真とともに解説してくれています。生き物のなんで?がこの本で解決されるはずです!
- 著者
- 英明, 加藤
- 出版日
- 著者
- 鈴木 まもる
- 出版日
この本には北は北極から、南は南極まで世界各地に住む鳥と巣と卵について取り上げられています。鳥の生活を知るだけでなく、巣を作る上でどんな環境が大切なのかということを知ることができます。巣を作って卵を産むという鳥の神秘的な行動を堪能することができます。
一見やばい鳥の巣と思われがちなシャカイハタオリですが、その巣の構造はとても機能的で、小さい鳥だからこそ力を合わせて自然を生き抜こうとする姿が伺えます。
日本にいる限り鳥の巣に圧倒されることは生活の上でなかなか起こり得ませんが、シャカイハタオリの巣を目前にしたら一度後退りしそうです。