みなさんは「コウノトリ」といえば何を思い浮かべるでしょうか。「幸せを運ぶ鳥」のイメージや特急列車や宇宙ステーションの物資補給船の名前にもなっているため鳥自体を見ることがなくてもその名前を聞いたことはあるはずです。今回はコウノトリの生態と最後にコウノトリにまつわる書籍を紹介します。
体重は約5kgで大きさは約110cmです。翼を広げると約2.2mあります。
日本に住む鳥の中では大型の部類に入ります。体は白く、翼の外側部分は黒い、目の周りと足が赤いのが特徴的です。
ロシア・中国の極東地域を主な繁殖地とし、中国の東南部や韓国、台湾に渡って越冬します。日本では兵庫県豊岡市で主に見ることができます。
外見は、ツルに間違えられやすいですが、生態的にはかなり違いがあり、どちらかといえばサギやトキなどに近い仲間です。首をまっすぐにして飛びます
鶴との違いとしてはコウノトリは樹の上に止まることができますが、ツルは木に止まることはできず、樹上ではなく地面に巣を作ります。また、コウノトリはツルのように鳴き声を出すことができません。
あまりイメージにないかもしれませんが、性格は神経質で闘争心が強いです。特に繁殖時期には、巣に近づいた相手をくちばしで何度も突き刺すなど容赦ない光景も見られます。
基本的には湿原に面したマツの樹の上などに巣を作りますが、森林伐採による営巣木の減少により、人間が生活を営む地域にも巣を作るようになりました。木の他にも建築物や鉄塔などの高所に巣を作ります。
コウノトリは肉食性で魚、カエルや蛇、鳥類の卵や雛、昆虫などを食べます。ネズミなどの小型の哺乳類を捕まえることもあります。
コウノトリの成鳥は鳴くことはなく、嘴を鳴らすクラッタリングでコミュニケーションを取ります。このクラッタリングで天敵に対しての威嚇(いかく)や挨拶、愛情表現などを行います。
その音は2km先まで聞こえると言われています。
生まれたばかりのヒナの頃はなくことができますが、ある程度大きくなるとクラッタリングだけでコミュニケーションをとるようになります。
コウノトリといえば、赤ちゃんを運んでくる幸せの象徴となっていますが、細かくいうと日本のこうのとりではなく、この伝承はヨー ロッパコウノトリについてのものが由来となっています。
昔、子供に恵まれない夫婦が暮らしており、ある日その夫婦が住む家の煙突に「シュバシコウ」という鳥が巣を造り、卵を産み、子育てを終えたシュバシコウを見送った直後に夫婦に子供が授かったというお話があります。
シュバシコウはコウノトリにとてもよく似ている鳥のため、この話が日本に伝わる際に、シュバシコウがコウノトリに置き換わったと言われています。
コウノトリの親は子育ての中でヒナを殺すことがあります。主に餌不足が理由で、ヒナをすべては育てきれない場合は一番小さいヒナを殺します。残ったひなにたくさん餌を与え、巣立つ可能性を高めることなどが目的と考えられています。大型の猛禽類などではヒナ同士で殺し合う兄弟闘争というものがあり、厳しい自然界ではこのようにヒナが命を落とすのは珍しいことではありません。
江戸時代までコウノトリは、日本全国で当たり前に見ることのできる鳥でしたが、明治期以降の乱獲や農薬の影響などにより餌となるドジョウなどが激減したことや、巣作りを行うための大きな木が少なくなったことなどから個体数が減少し、1971年には日本では姿を見ることはできなくなりました。
しかし、コウノトリをずっと大切にしてきた歴史があり、最後の生息地だった兵庫県豊岡市では、もう一度、コウノトリを羽ばたかせようと野生復帰計画がスタートしました。
全国で一番多くのコウノトリを飼育している「兵庫県立コウノトリの郷公園」によると、野生復帰事業は2005年から行っていて、野生のコウノトリは2022年6月末現在で、全国で271羽確認されているということです。
日本では、「文化財保護法」によって昭和 31 年( 1956 )に国の特別天然記念物(地域を定めず)に指定されました。また、「文化財保護法」のほか、「種の保存法」でも国内希少野生動植物に指定され、保護(捕獲、殺傷、損傷の禁止など)されています。コウノトリの他にも、トキやライチョウなどの鳥類も特別天然記念物に指定されています。
鳥類研究の第一人者でもあり、兵庫県立コウノトリの郷公園園長の山岸哲によって行われた科学的調査をもとに、2014年に福井県越前市の施設で生まれた「げんきくん」を追いかけ、一羽のコウノトリの半生を描く感動のノンフィクション!全ての漢字にふりがなが振られているため、子供たちにもわかりやすい一冊になっています。
- 著者
- 山岸 哲
- 出版日
兵庫県豊岡市では、兵庫県立コウノトリの郷公園をはじめとする保護・繁殖活動により、今ではコウノトリのいる風景が当たり前になっています。この本は、そんな豊岡市に生息するコウノトリとの四季のくらしを紹介していきます。町が一体となってコウノトリが生息できる環境を作っていく姿を見ることはこれからの日本そして地球にとっても大切なことです。写真とともにコウノトリの生活が紹介されているので、子供から大人まで、コウノトリの魅力を知ることができます。
- 著者
- ["宮垣 均", "兵庫県豊岡市の人々"]
- 出版日
コウノトリが年間を通じて生息し繁殖できるということは、多様な生物が生息できる環境があり、その地域が人間にとっても安心·安全な環境と言えます。いずれ日本のどこでもコウノトリを見ることのできる日が来ることを願っています。