身近な生き物でありながらも海外ではデビルフィッシュと呼ばれる「タコ」。日本人の私たちからすると食卓を彩ってくれる食材ですが、なんとも奇妙な生態を多く持っている生き物です。今回はそんなタコの生態とタコにまつわる本を紹介します。
タコは、軟体動物門・頭足綱(頭足類とも)八腕形上目、タコ目に属する海洋動物の総称です。
複数の吸盤がついた8本の触腕を特徴とし、一般に「足」と呼ばれる部分は腕を指します。
丸くて頭のように見える部分は胴体で、胃や心臓などの器官が収められています。目のある部分が頭となり、そこから腕が出ています。このような特異的な体の構造から、これらの仲間は名前の通り頭足類と呼ばれています。
構造としては腕のある方が前方となり、普段泳ぐ時には胴の方向、つまり後方へ向かって進んでいることになります。
タコの仲間は世界中で200種類以上いると言われ、、日本近海でも50種類以上が確認されています。
食用にされることが多いことから一般的にタコというとマダコのことを指すことが多いです。
マダコは日本のみでなく、オーストラリア、大西洋、地中海など全世界の温帯域の砂礫や岩礁海域に広く分布しています。マダコは体長60センチメートル、
体重3.5キログラムくらいに達し,寿命は2年といわれています。
タコが食べるのは、主に二枚貝やエビやカニなどの甲殻類などです。
腕を巻き付けたり、硬いクチバシで貝殻に穴を開けたり、カニなどの甲殻類は8本の腕で包み込んだのち「チラミン」という毒素を注入して弱らせてから捕食します。
攻撃する前に墨を吐き、相手を混乱させる事もあるそうです。
タコは一生の最後に、1度だけ繁殖を行います。産卵期は、夏の暑い時期に行われ、メスのタコは岩穴やたこつぼの中で卵がふ化するまで何も食べずに卵を守ります。
その期間はとても長く、マダコで1カ月。冷たい海に棲むミズダコでは、卵の発育が遅いため、その期間は6カ月から10カ月にもおよびます。
子供が生まれるとメスのタコは役目を終えたかのように死んでいきます。
タコの卵は黄白色で、藤の花に似ていることから「海藤花(かいとうげ)」とも呼ばれているそうです。
そもそもタコに対して血のイメージがありませんよね。タコが捌かれている時に血が流れるという光景を見たことがありません。
でもタコにもしっかり血は流れています。
タコの血液には特殊な物質が含まれており、青い色をしています。これは血液中に含まれるヘモシアニンに銅が含まれていて、酸素と結びつくことによって青くなります。
私たちがタコの青い血を見ることがないかというと、死んだタコは酸素を取り入れることができないため、血液はヘモシアニン本来の色である透明な色になり、血が無いように見えるのです。
タコの他にもイカ、アワビなどの腹足類、エビやカニなどの甲殻類にも青い血が流れています。
タコは敵から身を守るために擬態する能力が非常に長けています。
「色素胞」という特殊な細胞を使い、脳からの指令を受けて、縮んだり、緩んだりすることで体の色を変化させています。この伸ばしたり縮めたりすることによって、色素を集めたり、広げたりして体の色を変化させています。
タコの中には色だけでなく、表面に凹凸を作ったりと皮膚の質感を変えられるタコもいるようです。
タコの生態を語る上で、最も奇妙なのが心臓と脳が複数あるという事です。
人間の心臓は一つなのに対して、タコは心臓を3つ持っています。
ひとつは全身に血液や酸素を送るためのメインの心臓です。残りのふたつは鰓(えら)心臓と呼ばれるもので、左右の鰓にひとつずつ配置され、鰓に血駅や酸素を送ることに特化した器官になっています
たくさんの筋肉を機敏に動かすには大量の酸素を必要とするため、心臓が3つあると言われています。
またタコには9つの脳があり、メイン以外の8本はそれぞれの腕に存在しています。これは腕はそれぞれが味覚と触覚を持っており、onoonoが独立して動く。一本ずつが意志を持っているというのは驚きです。一本ずつバラバラに動く事もできますが、メインの脳が指令を出せば8本がしっかりと連携する事もできます。
人間の神経細胞の数は約160億に対して、タコは5億ほどで、犬とほぼ同じ数と言われています。そのため地球の95%を占める無脊椎動物の中では、一番賢いと言われています。
タコといえば足が8本というのが共通認識ではありますが、実は腕が8本以上のタコが存在するそうなのです。
1998年12月に三重県の志摩マリンランドに入館した、ギネスブック級のタコはなんと足が96本もあります。タコの足は切れても再生するため、生えているというよりも、元々の腕が裂けて、その一つ一つが新たな腕になっているかのようです。
こういったタコの「多足化」が起こる原因については、明らかではないようです。敵に食べられたり、傷ついたところが再生する際に、足の数が増えたのではないかと考えられています。
また、タコはストレスを感じると自分の足を齧ることがあり、その際にはもう再生することはないそうです。
タコの腕にある吸盤は、1本につき200~240個もあります。それが8本ということはタコは合計1600個の吸盤を体に纏っていることになります。
そしてタコの吸盤には触覚や味覚などの役割があり、生き抜くためには欠かせないものです。
オスとメスで吸盤の大きさが異なり、大きめでバラバラなのがオス、小さくて整然としているのがメスになります。
体の作りが似ているイカの吸盤も同じような役割かと思いきや、タコは筋肉の動きで吸盤の中を真空にしものを吸い寄せているの対して、イカの吸盤は、内側に硬いギザギザした刃のようなものが付いたリング状で、これを滑り止めとして、獲物に絡みつき捕まえた後に引っ掛けて離さないようにするという違いがあります。
ダイオウイカとマッコウクジラが海の中で戦うとクジラの体に傷ができるのは、その鋭い吸盤によるものです。
- 著者
- 下戸猩猩
- 出版日
大人も知らない「実は…」シリーズ第2弾で、生き物の知られざる生態の真実に迫ります。マンガなのでとてもわかりやすく、楽しく生き物について学ぶことができます。生き物の見た目や数字だけではなく、生きざまや性格など、これまでの辞典や図鑑では伝えにくいエピソードを集めた新しい事典です。
- 著者
- 鈴木 香里武
- 出版日
メディアでもお馴染みの魚を愛し、魚に愛されて令和のお魚王子「鈴木香里武(カリブ)」の代表作。「なんでこんなカタチになっちゃったの?」「なんでこんな生きかたしてるの?」と海の生き物の不思議について紹介されています。大人でも答えることができない生き物の生態を楽しむことができます!
タコの生態はまだわかっていない事も多いので、これから発見されるものもありそうですね。普段口にしているタコがいかに面白いいきもだということをわかっていただけたのではないでしょうか。