5分でわかるウツボカズラの生態!!虫を引き寄せる消化液の秘密とは?!

更新:2023.1.11

一般的に植物は虫の餌となり生態系を支えていますが、自然界には虫を捕食する植物がいることをご存知でしょうか。中でもウツボカズラは独特の姿をしており、一度見たら忘れることはないでしょう。今回はそんなウツボカズラの生態とウツボカズラにまつわる書籍を紹介します。

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ウツボカズラはどんな植物?

 

ウツボカズラは代表的な食虫植物で、現在100種類以上が確認されています。

 

種類によって大きさ、葉や捕虫袋の形、色、模様が異なり、捕虫袋は球状だったり、楕円形だったり、底がすぼまり漏斗状になったりと様々です。

 

中でも大きさ約30センチと最大級の種類になると、捕虫袋にはネズミやカエルといった小動物も入ることがあるそうです。

 

https://www.asahi.co.jp/webnews/pages/abc_16135.html

 

兵庫県加西市にある県立フラワーセンターが世界最大級のウツボカズラの育成に成功し、ギネス世界記録に認定されています。
 

 

種類によって大きさ、葉や捕虫袋の形、色、模様が異なり、捕虫袋は球状だったり、楕円形だったり、底がすぼまり漏斗状になったりと様々です。

 

つるは長いものでは15mにもなり、樹木などに絡まって成長します。

 

ウツボカズラの名前の由来は、弓矢(ゆみや)の矢を入れる細長い道具「靫(うつぼ)」からきていると言われています。また、属名のネペンテスはギリシア語で「憂い・悲しみを消す」と言う意味ですが、由来は不明となっています。

 

昔からウツボカズラのつるや袋は原産地で利用され人間と根強い関係もあります。つるは荷物や橋の結束などに利用され、袋は水入れ、そして米を炊く道具にも使われました。


 

ウツボカズラはどこに生息している?

 

食虫植物全体で言うと、分布が広く熱帯ジャングルから日本の沼地まで、世界中に分布しています。その中でウツボカズラの多くは、東南アジアを中心に、ボルネオ島、スマトラ島に生息しています。
 

高温多湿を好み、夜は霧で覆われるような熱帯雨林の低地から高地にかけて自生しています。他の植物に巻きついて生えていたり、岩や木にくっついています

 

ウツボカズラの袋の中には何が入っている?

 

ウツボカズラといえば気になるのがやはりあの袋の部分だと思いますが、葉っぱの真ん中を縦に走る脈(中肋)が長く伸び、その先端がつぼのようにふくらんで捕虫袋になります。

 

つまり葉っぱの一部が変形したものです。そしてあの袋の中には消化液が入っています。

 

液体のほとんどは水分ですが、虫を誘う蜜のような役目を果たします。匂いに誘われ袋に落ちた虫は徐々に消化され、袋の内側から吸収されていきます。

 

虫が消化されていくというだけに人間にも害があるように思えますが、虫が入っていない未開封の捕虫袋は無菌状態に近く、原産地では飲まれることもあるようです。

野生の猿が飲むことから、モンキーカップという異名もあります。

 

 

なぜ虫を捕食するのか?

 

なぜ植物が虫を食べるようになったのか?

 

食虫植物が育つ環境は高い山の湿原地帯なのですが、気温が低く、水分はたくさんある清らかすぎて、落葉があっても分解するバクテリアがありません。 そうなると生えている植物はそのままでは栄養不足となってしまいます。かつて食虫植物は他の植物との競争に負け、栄養が豊富で生育しやすい土地を追い出され、痩せた土地でも生きのびるために、虫を食べて栄養を得るという方法を獲得しました。そのおかげで栄養が乏しい土地でも生息することができるようになりました。

 

虫を捕らえるしくみとは?

 

ウツボカズラの虫を捕らえる方法は非常に凝っています。

 

虫を捕らえるワナは落とし穴のような作りになっている上に、数々のトラップが忍ばされているため、捕らえた虫は簡単に逃げることができません。捕虫袋はその薄さの割にはかなり硬くてしっかりしており、1つの袋で半年くらいは虫を捕らえて消化することができます。

 

捕虫袋のフタの部分には蜜腺があり、虫たちはそこから分泌する物質に誘われてやってきます。誘われた虫は捕虫袋の襟部分に止まります。襟はつるつるして滑りやすく、内側に向かって筋が何本も走っています。足を滑らせた虫は袋の中に落ちます。落ちた虫は内壁伝いに登ってきても、襟の部分がネズミ返しのような構造になっており、外に出ることはできません。 さらに捕虫袋の内側はロウが塗られたみたいにつるつるしていて、とても登りにくくなっています。捕虫袋の底には消化液がたまっていて、浸透性が高いために虫の体にまとわりついて逃げられなくなります。最終的に虫たちは溺れ死んでしまい消化されていきます。

 

ウツボカズラには苦手な虫がいる?

 

数々の虫をその袋で捉えていくウツボカズラですが、苦手な虫も多いようで、危害を加える害虫にはカイガラムシ、アブラムシ、ハダニのほか、根に寄生するセンチュウなどがいます。 特にカイガラムシはウツボカズラの葉や茎に取り付き、養分を吸い取ってしまう天敵とされています。

 

ウツボカズラは育てられる?

 

夏になるとホームセンターや園芸店でも販売されている植物です。高温で湿度が高い環境で育てることと、枝が長く伸びたら切り戻しをすることがきれいな捕虫袋をつけるコツです。気温は25~30度、湿度80%以上の環境を保てると、生育がよくなるそうです。

何よりも「高温多湿が大好きで、乾燥と低温が苦手」という性質を忘れずに育てましょう。

 

 

ネペンテスとその仲間たち 食虫植物ハンドブック

 

著者
土居 寛文
出版日
2014-10-29

虫を捕まえて養分にするために進化した食虫植物たちが掲載されていて、食虫植物に関しては国内屈指の栽培家として知られる著者「土居寛文 」による初のガイドブックとなります。様々な種類の食虫植物を楽しめる上に、食虫植物の育て方も知ることができます。

 

育て方がよくわかる 世界の食虫植物図鑑: アジア、アメリカ、アフリカ、オーストラリア、ヨーロッパ 各国の特徴ある食虫植物の育て方

著者
直樹, 田辺
出版日

食虫植物の魅力に取り付かれて50年という著者の「田辺直樹」。日本食虫植物愛好会を設立した人でもあるため、食虫植物への愛が別格です。

食虫植物全般を収録した図鑑となっていて、最近の改良品種の増加によって登場した暑さに強いタイプや、美しい園芸種(交配種)、気難しい種、花の個体差など、食虫植物の魅力を余すところなく解説しています。


一見怖かったり、不気味な感じがある植物ですがとても興味深い生き物として見ることができるのではないでしょうか。意外にもお家で育てることもできるということで、興味を持った方はチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

 

 

 

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