現実ってほとんどがモノローグ

おはようございます。

真空ジェシカのガクです。

そのままの体勢でいいのでスマホを顔の下に入れて読んで下さい。

十分反省は伝わってると思うので、切り替えていきましょう。

(土下座寝落ち後の人用挨拶になってしまいました。ごめん。)

 

好きな漫画とそれを読んでいた時期のことを書いています。

よろしくお願いします。

 

今回紹介するのは『スイミング』という短編集です。

確か大学の時か、芸人なりたてくらいの時に読んだマンガです。

著者
福島 鉄平
出版日

 

僕は大学4年の時に人力舎に所属して、芸人を名乗りだしました。

それと同時に夜勤のコンビニアルバイトを始めます。

動機は、なんか”夜勤”と”コンビニ”って芸人の下積みっぽくていいよね〜!僕もやりたい〜!という非常に雑魚なものでした。

代わってもらいやすいように同期の芸人と同じコンビニでオープニングスタッフで働きだしました。

”オープニングスタッフ”も相当かっこいいし。

 

けどコンビニってアルバイトとしてはベタすぎてダセエっしょ、という尖った部分もあります。

その不安を解消してくれたのは”病院の地下にあるコンビニ”という要素でした。

「どこにでもあるコンビニとは違うんだ。だってさ、病院が消灯した後に非常口から入って働くんだぜ。」

イキるには弱い要素でしたが、芸人始めたての尖り心はそれだけで普通のコンビニバイトに差をつけてるつもりになっていました。

 

このコンビニの勤務開始は午前0時からで、夜勤中のお医者さんか入院患者さんしか利用しません。

つまりめ〜ちゃくちゃ暇でした。

朝の通勤時間は忙しいんですが、0時〜7時くらいまでは2人とか3人くらいしかお客さんが来ません。

朝用の品出しを終えたらもう仕事終了。

あとはレジに立ってるだけ。

朝から予定があってそのまま夜勤の日とかは、何もしてないと立ったままでも確実に寝てしまいます。

 

なので、ほとんどの時間は監視カメラで店内にお客さんが来てないかを逐一チェックしながらスタッフルームで漫画を読んで過ごしていました。

アルバイトとしては良くない事なんですが、そうでもしなきゃ寝ちゃうから仕方無かったんです。

仕事を円滑に進めるため、という理由をつけて漫画を読みまくってました。

 

この時期が人生で一番漫画を読んでいたと思います。

近くのツタヤでアルバイトの前に漫画を買ったり借りたりして、毎日読みまくっていました。

前置きが長くなってしまいましたが、その時に出会った中の一つが今回紹介する『スイミング』という漫画です。

福島鉄平先生が書いている短編集で、同時にでた『アマリリス』という短編集もめちゃくちゃいい。

『アマリリス』の方はちょっと大人向けな感じで、『スイミング』は甘酸っぱい感じ。

青春の1ページを切り取ったようなお話が多いです。

著者
福島 鉄平
出版日

 

『スイミング』の中で一番好きなのは表題にもなっている『月・水・金はスイミング』というお話。

中学生の男の子がオサムくんが同じスイミングスクールに通うクラスメイトのマドカさんの事が気になりだすところから始まるんですが、このお話のすごいのは”ほぼ二人が会話をしない”んです。

最後に一回だけ会話をするんですが、それ以外二人はほぼ交わりません。

スイミングに向かうバスでマドカさんが喋っている話に聞き耳を立てながらオサムくんが色々なことを考えるだけ。

話はほとんどモノローグで進んでいきます。

でもそれがめちゃくちゃリアルでいいんです。

 

現実ってほとんどは自分のモノローグだけで進んでいくものですし。

コンビニ夜勤中なんか特にそう。

誰とも話さずひたすら9時間自分と対話し続けなきゃいけません。

その中で後から吹き出しになるセリフはほんのちょっとで、ほとんどは自分の中だけのモノローグで終わっちゃう。

 

オーディション→ライブ→バイト→ネタ見せ→ライブ→バイト→手伝い、みたいにたまたま色々重なって丸二日くらい寝ずに三日目の夜勤だった時。

眠さも限界で、体は動いてるけど意識はほぼレムみたいな状態でバイトに突入した日がありました。

なんとか乗り切ろうとレッドブルを飲んで気合を入れて品出しを始めたところまでは覚えてるんですが途中から意識が曖昧になっていきます。

次にハッと気づいた時、僕はお弁当のコーナーにジャンプを陳列してました。

少し湿ったジャンプの感触に違和感を覚えて急激に目が覚めて焦りました。

こんなのめちゃくちゃモノローグ。

「こんな日もありました。」くらいにしかならない。

自分の中ではあの時のお弁当コーナーにジャンプが押し込まれている光景が面白くていまだに覚えてるのに。

 

おばあちゃんが財布から大量の小銭をレジ横にぶちまけて、一円玉の山の中から宝探しみたいに五円や十円玉を探してお会計金額を揃えたのとか。

おじいちゃんが手ぶらでやってきて、財布どこに入れてるのかな?と思ったら耳の穴から五百円玉を出したのとか。

これらもかなりモノローグ。多分まとめて一個のモノローグです。

 

でもモノローグではおさまらない事が起きる事もあります。

このコンビニは最初にも書いたように地下三階にあったのですが、実は地下二階に霊安室がありました。

消灯した病院の中を霊安室を通過してその下のコンビニに行くというのはかなり怖いです。

自動ドアがないのでぼーっとしてると急に目の前にお客さんが現れて、お客さんの前で余裕で「ワッ!!」とか声をあげちゃった事もありました。

ちょっとの物音にもいちいち体をビクつかせて、毎日心臓に迷惑をかけながら働いていました。

 

ただ徐々に慣れてきて、突然足音がしてもお医者さんが来たなとかゆっくり歩いてるから患者さんかなとか判断するようになっていきます。

ある時、雑誌の棚にジャンプとかマガジンとかを正しく陳列しながら、背後に気配を感じたので「いらっしゃいませ〜」と言って振り返ると誰もいないという事がありました。

これが何回か続いた事がありました。

最近ちょっと怖い事が多すぎるなと思いながらまた別の日に品出しをしていると、エレベーターホールからすごいダッシュで人が近づいてくる音が。

女性の看護師さんがハアハア息切れしながらコンビニに入ってきて「今エレベーターに誰かいた気がするんです!」と僕に言いました。

この日以来まともな心拍数で働けなくなってしまって、この後そんなにしないうちに僕はこのバイトをやめます。

 

この出来事はさすがに誰かに話さないと怖くてやってられないので、何度か吹き出しになりました。

確か二年以上このコンビニでアルバイトして、この出来事以外は全部モノローグです。

人生なんてそんなもん。

でもモノローグ一つで済んじゃうような出来事も、よくよく考えてみると趣深かったりします。

そんな日のこともたまに思い出していきたいですね。


 

おしらせ

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