クジラは地球上で最大の哺乳類であり、そのなかでもとりわけ大きいのがシロナガスクジラです。簡単に見ることができる生き物でないため、どんな暮らしをしているのか気になる方も多いのではないでしょうか。全てにおいてスケールの大きいシロナガスクジラの生態とシロナガスクジラにまつわる書籍を紹介します。
ナガスクジラ科ナガスクジラ属のクジラに分類されます。地域によって個体差があり、亜種を含めるといくつかの種類が存在しています。
淡い灰色と白のまだら模様で背びれは小さく、横に広がった尾ひれ、全体的に流線形の形をしています。
大きな口は体長の5分の1を占め、上あごは平らで幅広く、背面からはU字形に見えます。下あごは上あごよりも少し前に突き出して受け口になっています。
性格は大人しく、食事以外で他の生物を襲うことはありません。
体長は約25~32m、体重は200t(象約33頭分)まで成長します。34mが最大記録となっています。
クジラのなかでも2番目に大きいマッコウクジラの2倍の大きさにもなります。
寿命は平均で80~120年。
普段泳ぐスピードは時速18kmほどですが、危険を感じた際は最高速度50kmにもなります。
マッコウクジラほどではないものの、潜水能力もそれなりで500m程度、時間としては一度の呼吸で10~20分は潜ることができます。心臓の重さは約170kgと大きく、心拍数は最も遅い時で1分間に2回程度になることがあるそうです。
かつてシロナガスクジラは世界に30万頭近く生息していたが、現在は1万頭ほどにまで減り、絶滅危惧種に指定されていて、現在世界中で数千頭しか生息していないと考えられています。
地中海やオホーツク海を除く全海域に生息していて、世界中を回遊しながら暮らしています。回遊のルートは決まっていて、毎年ほぼ同じ道のりを移動しています。オキアミが豊富な北極でエネルギーを蓄え、繁殖するために赤道付近まで降りてきます。これを一年周期で繰り返すため、大規模な回遊が行われています。
シロナガスクジラはその体型を維持するために大量の餌を得る必要があります。主にオキアミと呼ばれる非常に小さいエビのような生物を、その大きな体の栄養源としています。
口の中もオキアミを食べるために特化しています。クジラは食性によってヒゲクジラとハクジラに分けることができます。シロナガスクジラはヒゲクジラです。(ちなみにイルカやシャチはハクジラになります)
シロナガスクジラの口の中には400本のひげが櫛のような役割を果たし、泳ぎながら海水とともにエサを吸い込む仕組みになっている。1日あたり4~8トンのオキアミを食べます。人間からすると果てしない食事の量ですが、一口で500kgものオキアミを食べることができます。
口の大きさに反して、シロナガスクジラは喉が狭いので、仮に大きな生き物(マグロなど)が入ったとしても基本的には吐き出します。
シロナガスクジラは世界最大の哺乳動物で、地球上で最大の生物のため、 ほかの大型動物と同様に、シロナガスクジラの繁殖には時間がかかります。約1年の妊娠期間を経て、1頭だけ子どもを産みます。
シロナガスクジラの赤ちゃんは生後で体長7m体重が2tほどで、1歳になるまで毎日90キロ体重が増加します。哺乳類のため生まれてから何ヶ月かは母乳を飲んで生活します。その量もスケールがでかく、一日約400~650リットルもの母乳を飲むと言われています。
その大きな体からシロナガスクジラを襲う生き物はほとんどいませんが、シャチはシロナガスクジラを狙うことがあります。
高い知能と集団での狩りができ、大人のシロナガスクジラを襲うことは稀ですが、子どものシロナガスクジラを襲うことが多いようです。
狩りの方法としては、仲間と連携してシロナガスクジラに息をさせないで殺すという手段をとるそうです。
クジラは海の中で鳴くことで、コミュニケーションをとっています。クジラのなかでも最も大きな声で鳴くと言われています。動物の中で最も大きく、ときには180デシベル以上の音量になります。
150km離れたほかのクジラに聞こえているそうです。水中は地上よりも音が伝わりやすいため、その性質をうまく使うことで、長距離のコミュニケーションを実現させているのです。
鳴き声が果たす役割としては
などさまざまな説があります。
シロナガスクジラは、さまざまな海を回遊するため、その影響で耳垢に含まれる脂肪分の量が変化することで、夏には脂肪の多い白い耳垢、冬には脂肪の少ない黒い耳垢が生じ、耳垢には白黒の縞模様が交互に刻まれていきます。シロナガスクジラをはじめとするヒゲクジラの年齢は、木の年輪のように層になった耳垢の縞模様から計測することができます。
クジラの耳の穴はふさがっているため、耳垢は生涯溜まりつづけるそうで、耳垢のサイズ長さ50cm以上、重さ約1kgにもなりにもなるそうです。
ヒゲクジラ亜目の巨大化について調べた研究によれば、比較的最近のことらしく、その原因は、約450万年前にし、気候変動によってプランクトンが大増殖しエサが豊富になったことによるもと言われています。
また、水の中では浮力によって重力の束縛から逃れられるためであるとも考えられています。
最近では海洋哺乳類のあの重さは、冷たい海の中で体を温かく保つために必要なものだという論文が発表されました。
クジラの祖先たちはかつて、陸上に居たことが様々な研究から分かっています。
哺乳類は一般的に、海にルーツを持ち、それが進化して陸にあがったと考えられがちですが、長い間海で進化し続けてきたわけではありません。インドやパキスタンで見つかった初期のクジラの化石を調査した結果、陸にルーツを持つ彼らは今から5000万年ほど前に、南太平洋の海に戻っていったと見られています。
大きな理由としては海にはエサが多く、天敵が少なかったのが理由と考えられています。
どちらかといえば戻ったというよりは、その選択がその当時の生活で一番適応しやすい環境だったのです。
- 著者
- ["アナリサ・ベルタ", "山田格", "黒輪篤嗣"]
- 出版日
90種類以上の全クジラ・イルカの精確なイラスト、詳細な生態解説と写真で迫る、最も信頼できるロングセラー図鑑の新装版です。近縁の新種クジラ3種が追記掲載されました。最新研究のオールカラー図鑑であり、絶滅危惧種と環境問題まで網羅する画期的な決定版です。
- 著者
- 博也, 水口
- 出版日
クジラ撮影の日本の第一人者、水中カメラマン水口博也氏の美しく幻想的かつ、ダイナミズム溢れるクジラやイルカの写真が130点近く堪能することができます。水口氏の写真は、種数の多さだけでなく、アート性も高く、見る者を圧倒させます。普段見ることができない写真から、最新のクジラ・イルカ情報も掲載し、それぞれの生態をも理解できる1冊です。
今回はシロナガスクジラの生態について紹介しました。地球上で一番大きな生き物ということでスケールの大きさがずば抜けていました。
今後まだまだ謎が多いシロナガスクジラの生態を知るためにも豊かな海を守っていきたいですね。