水族館でも動物園でも見ることができる数少ない動物といえばペンギン。そのなかでも代表的な種類がコウテイペンギンではないでしょうか。子どもから大人まで大人気です。今回はコウテイペンギンの生態とペンギンにまつわる書籍を紹介します。
世界のペンギンは全部で18種類存在しており、ペンギンのなかでも最も南に生息している種類になります。寒い地域で暮らしているのがペンギンのイメージですが、アデリーペンギンとコウテイペンギンのみが南極で暮らしています。
先に発見されたオウサマペンギンよりも大きかったので、王様よりも称号のある皇帝から、コウテイペンギンと名付けられたそうです。
体長は115 ~130cm、体重は20~45kg。白と黒を基本に、頭部から胸部にかけてうっすらと黄色を帯びているのが特徴です。
主に魚やイカやオキアミ、甲殻類を食べます。ペンギンには歯がない代わりに、舌と上あごにギザギザの突起があり、口の奥に向かっているので、簡単に魚を食べることができます。
ペンギンといえば水中を泳ぐ代表的な鳥類ですが、コウテイペンギンは水深560m、27分間も潜水した記録があります。
南極という非常に極寒な環境の中生活しているコウテイペンギンは、厚い皮下脂肪と密集した羽毛で体を覆うことで断熱性を高めています。-20度を下回る気温にも対応しているのです。
血液から熱が奪われないように毛細血管を収縮し、そのまま血流が悪くなって起こるしもやけや凍傷。南極の氷の上で生活しているエンペラーペンギンやアデリーペンギンの足は常に氷に触れていますが、しもやけにならないのには秘密があります。
ペンギンやカモ、寒い地域に生息する白鳥や鶴などの足の皮膚には、「ワンダーネット」と呼ばれる血液の熱交換機能が備わっています。体内で温められた血液が流れる動脈に、指先で冷やされた血液の流れる静脈が絡みついており、熱交換して体温を保っているのだとか。毛細血管を収縮させる必要がなく血が滞るようなことがないためしもやけの心配もありません。
陸上ではよちよちと歩くイメージがあるペンギンですが、他にも移動方法があります。腹ばいになって足で氷を蹴りながら移動するこの滑り方はソリを意味する「トボガン滑り」と呼ばれます。
体が大きなコウテイペンギンは歩くよりも滑った方が移動をしやすいのです。どこでもトボガン滑りをするのわけではなく、ツルツルしてきちんと平らな氷の上でしかこの行動を行いません。
オウサマペンギンとの比較をされやすいコウテイペンギン。
この2種類は容姿がそっくりなため、よほど詳しくない、一般の人はおそらくどちらがコウテイペンギンかどうか見分けるのはむずかしいでしょう。形態や色合いなどはコウテイペンギンに似ていますが、大きさがひと回り小さいのがオウサマペンギンです。
また、ペンギン他にも頭部から胸にかけての黄色部分がオレンジ色っぽいことなどから区別することができます。
コウテイペンギンは基本的に夏を海で過ごし、残りの期間を繁殖地で過ごします。秋になると産卵のため海辺の天敵を避け内陸に向けて50km以上長時間歩きます。
そこまで離れる必要があるのは、ヒョウアザラシやシャチなどの天敵がいない安全な場所で子育てをしたいからです。
そしてメスは卵を産み、食べ物を調達するために、また海へと戻っていきます。よく卵を温めるコウテイペンギンの映像を見ることがありますが、孵化するまで卵を守っているのは実はオスのコウテイペンギンなのです。つまりオスは、繁殖地に着くまで1ヶ月、卵を温めるのに2ヶ月、メスにヒナの世話を引き継ぎ、食べ物を求めてそこから海に辿りつくまでに1ヶ月、合計4ヶ月の間何も食べずに子育てを行います。最終的にオスの体重は40%近くも減ってしまうそうです。これが世界一過酷と言われる子育ての理由です。
メスが戻ってくる前にヒナが生まれた場合、オスは食道から乳状の分泌物を吐き出し、ヒナに与えます。これは「ペンギンミルク」と呼ばれ、非常に栄養が豊富で、ヒナの体重が倍になるぐらいまで育てることが出来るそうです。
コウテイペンギンのヒナの姿を見ると、黒い頭に白い顔、体はグレーという、親ペンギンとまったく違った姿をしています。
南極の環境に対応した生態と考えられています。南極では5月末から約2カ月、1日中太陽が出ない日が続きます。巣を持たないエンペラーペンギンは、ヒナとはぐれると落ち合える場所がない。環境が厳しい南極では、一度はぐれてしまうと命を落としかねません。
親ペンギンが見つけやすいように、わかりやすい配色になっているというわけです。
まず大きな理由は敵から身を守る、危険を察知できるというメリットがあります。
親鳥はエサを獲りに海へ向かわなければなりません。親鳥が戻ってくるまでヒナたちは「クレイシ」と呼ばれる共同保育所があってそこにヒナたちは預けられます。親以外の大人ペンギンがいて、先生かのようにヒナたちを守ります。
クレイシはコウテイペンギンでは卵から孵った約6週間後に作られます。
ペンギン以外の動物や鳥類もクレイシを作ることがあります。
ただ、エサをとって戻ってきた時に自分のヒナがいなかったり、はぐれてしまうと親鳥は、他のヒナを奪おうとすることもあると言います。
- 著者
- 渡辺 佑基
- 出版日
ペンギンの種類や習性を知ることができる一冊。タイトル通りペンギンたちの思わず、応援したくなるようなどんまいなエピソードが集まっています。イラストなので、お子さまはもちろん大人も楽しめる、雑学を知ることができるペンギントリビアブックです。
- 著者
- ["博也, 水口", "敦, 長野"]
- 出版日
ワイルドライフ写真家として高く世界で評価されている水口博也氏。南極やフォークランド諸島、サウスジョージアなど亜南極の島じまでペンギンを長く撮影してました。また、精力的に撮影活動をつづける気鋭の写真家、長野敦の写真を中心に、世界中のペンギン類のすぐれた生態写真200点以上を一堂に集めた、見るごたえある1冊になっています
今回はコウテイペンギンについて紹介しました。自然界では見ることはなかなか難しいですが、動物園や水族館であれば比較的見ることができるかと思います。ぜひ生態を知った上で観察してみてください。