緩すぎる軟禁生活に癒やされる!アニメ化された漫画『姫様“拷問”の時間です』の魅力を紹介

更新:2025.1.1

『姫様“拷問”の時間です』のは拷問とは名ばかりの好待遇で日々を過ごす、囚われの姫様と魔族の様子を描いたシュール系コメディ漫画です。タイトルとは裏腹に癒やされる緩い内容が大好評。 2024年1月にはアニメ放映がスタートした漫画『姫様“拷問”の時間です』について、原作のあらすじや設定、魅力をご紹介していきます。

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3行でわかる漫画『姫様“拷問”の時間です』

  • 囚われのお姫様が軟禁生活で拷問を受ける
  • 拷問とは名ばかりで実際は手厚い待遇
  • シュールな天然ボケとリアクションが面白い

漫画『姫様“拷問”の時間です』は気楽に笑えるほのぼのコメディ!

『姫様“拷問”の時間です』はWeb漫画サイト・アプリの「少年ジャンプ+」で2019年から連載中のコメディ漫画です。総閲覧数2億PVを越えており、既刊14巻で累計発行部数は60万部以上。最新の第14巻は2024年3月4日に発売されました。

囚われの姫が主人公で、日々過酷な拷問――とは名ばかりのご馳走や遊びの誘惑を受け、毎回なんだかんだ屈してしまうお話。恐ろしげなタイトルと軟禁設定とは裏腹に、絶対に誰も傷つかず気楽に読めるのが人気です。

可愛らしい筆致で描かれる、愛さずにはいられないキャラクターが特徴。ネットを中心としてファンが多く、「次にくるマンガ大賞2020」Webマンガ部門で2位に輝きました。

そんな『姫様“拷問”の時間です』は2023年6月にアニメ化が発表。メインキャストは姫役・白石晴香、エクス役・小林親弘、トーチャー役・伊藤静です。アニメは2024年1月8日からTOKYO MX、BS11ほか各種サブスクサービスなどで配信中。

姫様が拷問に負ける!?漫画『姫様“拷問”の時間です』のあらすじ

もはや数えられないほどの長い年月を争ってきた国王軍と魔王軍。終わりが見えない戦いの中、国王の長女にして第3騎士団団長の「姫様」が、愛用する意思持つ聖剣「エクス」とともに魔王軍の捕虜となってしまいました。

国王軍に弱点を突くために手段を選ばない魔族たちは、姫様に条約違反の「拷問」を日々行っていきます。これ見よがしにご馳走を食べる、キュートな愛玩動物を愛でる、楽しそうな遊びに興じる……。

禁欲生活を強いられていた姫様にとって、それらは耐えられない責め苦でした。姫様は毎回、苦しさから逃れるように――というか味わったり堪能したり遊び倒したりするために、拷問に屈して国王軍に秘密を話してしまいます。

「くっ、殺せ……!」とはならない漫画『姫様“拷問”の時間です』の登場人物!

主人公は「姫様」と呼ばれる美少女です。最新エピソードまで本名は不明なまま。アニメでの姫様役は、『ゴールデンカムイ』アシリパ役で有名な白石晴香です。

姫様は長い金髪と常に頭に乗せている王冠がトレードマーク。魔王軍との戦いに身を捧げるいわゆる姫騎士的なポジションですが、厳しい訓練に比重が置かれたせいか、精神年齢はほぼ幼児です。そのため戦闘能力はずば抜けているものの、常に拷問(誘惑)には負けっぱなし。

ギャグシーンでの姫様はかなり誇張したデフォルメ(時にブサイク)にされ、公式で「バカ顔」と呼ばれています。

姫様を天然ボケとするなら、ツッコミ役に当たるのが聖剣エクス。アニメのエクスの声優は『ゴールデンカムイ』杉元佐一役の小林親弘です。

自分の意思を持つ伝説の武器で、常識がズレたキャラクターばかりの本作において数少ない常識人枠。設定的に姫様がエクスを手にすると無双出来るはずですが、囚われの身なので持つことはありません。

本作は魔王軍の拷問官たちが、捕虜の姫様に拷問という名のおもてなしをする内容なので、必然的に登場人物の大半が魔族(基本的に全員善人)です。

そんな中で準主人公と言っていいのが、魔王軍最高位拷問官のトーチャー・トルチュール。声優は『ハヤテのごとく!』桂ヒナギク役などを演じている伊藤静です。

トーチャーの見た目はクール系の美女ですがれっきとした悪魔。拷問の天才と呼ばれる一方、細かい配慮を欠かさない気配りの達人です。基本的になんでもこなせる超有能な人物ですが、根本的なところがズレています(魔王軍全体の特徴)。

他には短いながらもほぼ毎回出番がある人格者の魔王、2人組の拷問官・陽鬼と陰鬼コンビ、魔王の1人娘にして幼稚園児のマオマオちゃんや姫様に「ママ師匠」と慕われるジャイアントなどなど……。バラエティ豊かな魔族が多数登場します。

優しい世界を感じる拷問がクセになる!漫画『姫様“拷問”の時間です』の魅力

『姫様“拷問”の時間です』はタイトルのインパクトが凄いです。初見だと勘違いする恐れがありますが、本作はまったく害意のない平和そのものなコメディ・ギャグ漫画。

特にひどい(いい意味で)のは、タイトルにもなっている拷問の内訳。ほどよいきつね色に焼いたバターたっぷりのふかふか食パンを目の前で食べるだの、多人数プレイのパーティゲームを目の前で遊ぶだの、食欲や遊びの欲求を刺激する他愛のないものばかりです。

ただ、そこで登場する食べ物や遊びが本当に美味しそう、楽しそうなのがポイント。食べ物の執拗かつ丁寧な描写は完全に飯テロ(読んでると食べたすぎてつらくなる)レベルです。

お話としては毎回、拷問には屈しないと張り切る姫様が、即オチで負けてしまうのがお決まりの展開。一応負けると国王軍側の秘密を話すという了解になっていますが、本当に国家機密レベルなのはわずかで、大抵はくだらない内容で脱力してしまいます。

枠組みとしてはワンパターンなので、人によってはマンネリに感じるかも知れません。とはいえずっと読んでるとクセになってきます。肩の力を抜いてまったり楽しむ人におすすめ。逆にアッと驚くダイナミックな展開の物語が好みの方には不向きです。

あと世界観はファンタジーっぽいですが、技術・文明は現代レベル。魔王軍はトップの魔王をはじめとして善人しかいないので、なぜ姫様の母国と敵対して戦争状態にあるのか不思議です。くだらない行き違いがきっかけなのではと考察したくなりますが、根本的になんでもありなギャグ作品なので深く突っ込まない方が良さそう……。

漫画『姫様“拷問”の時間です』おすすめエピソード:カップ麺テロ【第1巻ネタバレ注意】

いつものように始まるトーチャーの拷問。今回彼女が用意したのは、何の変哲もないカレー味のカップ麺でした。姫様はシーフード派を主張して無根拠な自信を見せますが、散々拷問に屈してきたところを見ているエクスは不安を覚えます。

トーチャーは粛々とカップ麺にお湯を注ぎ、規定時間の3分間をただ待つだけ……と思いきや、彼女は時間が過ぎてもカップ麺を放置し続けました。この拷問の目的はカップ麺で食欲を煽ることではなく、食べ頃を越えて放置された麺が伸びていくことに耐えられるかどうか、だったのです……。

著者
["ひらけい", "春原 ロビンソン"]
出版日

一般的に飯テロとは食欲を煽る行為を指しますが、美味しいものが駄目になっていく飯へのテロというか、ちょっと方向性が違うのが面白いところ。精神力を試すという意味では、本作中で珍しく拷問寄りの拷問。

ちなみに姫様が漏らした秘密は、王国の東門が水曜日に手薄になるという超重要なものでしたが、「水曜日は塾がある」というよくわからない魔王の事情で有益な情報扱いとはなりませんでした。

漫画『姫様“拷問”の時間です』おすすめエピソード:運動会で姫様と魔王が雌雄を決する?【第3巻ネタバレ注意】

魔王の愛娘マオマオちゃんは、まだ幼いながらも溺愛されすぎた結果、最高位拷問官トーチャーより役職が上のハイパー上級見習い拷問官。マオマオちゃんの拷問の手口はどれも拙いものですが、幼児特有の愛らしさで姫様はメロメロになっており、拷問だの捕虜だの関係なく親しい間柄となっています。

ある時、姫様はマオマオちゃんが通う幼稚園の参観に呼ばれました。この日ばかりは拷問など一切なく、お子様たちの頑張りをただただ楽しむだけだったのですが……。そこにマオマオちゃんの保護者――すなわち魔王が現れたことで、一気に緊張が増します。

著者
["ひらけい", "春原 ロビンソン"]
出版日

魔王といえば、国王軍にとっての仇敵。しかも魔王は姫様が観覧席にいることを知っており、なんらかの策を張り巡らせている様子が窺えました。いったいどんな罠が待ち受けているのか。一騎討ち(?)の勝敗はどちらになるのか。2話に渡って描かれる運動会の顛末は、ぜひ実際にご覧ください。

バトル漫画のノリに思えますが、あくまで本作が脱力コメディ漫画であるということは強調しておきます。

漫画『姫様“拷問”の時間です』おすすめエピソード:魔界一武道会出場【第6巻ネタバレ注意】

魔界一武道会、それは5年に1度開かれる魔界最強を決める大会です。優勝すればなんでも望みを叶えられる、その大会への出場を姫様は許可されました。ただし聖剣エクスは持ち込めず、姫様は徒手空拳。

姫様の勇名は広く轟いており、1次予選の5人参加バトルロイヤルでは他の参加者が共闘して、姫様の撃破を狙いました。そして次の瞬間……地に伏していたのは4人の魔族。姫様はたった1人で華麗に立ち回り、素手で屈強な選手たちをノックアウトしたのです。

著者
["ひらけい", "春原 ロビンソン"]
出版日

普段しょうもない拷問に情けなく敗北し、バカ顔で醜態を晒す姫様と同一人物とは思えない大活躍。やっていること自体は凄いのものの、表情がいつも通り緩いので、いまいち迫力を感じられないのは残念ですが。

あっさり勝ち進んでしまう姫様。望みはもちろん釈放なので、優勝すれば拷問だらけの捕虜生活を抜け出せます。果たして姫様は魔界一武道会で最強に輝くのでしょうか。

ちなみに2次予選はペーパーテストで、エクス曰く姫様は学力優秀とのこと。文武両道の才女っぷりを見られるかどうかは、本編でお楽しみください。

アニメ『姫様“拷問”の時間です』は映像と音で飯テロクオリティアップ!?

アニメ『姫様“拷問”の時間です』は2024年1月から放送中。制作しているのは『かげきしょうじょ!!』、『Do It Yourself!! -どぅー・いっと・ゆあせるふ-』を手がけてきた、比較的新しいアニメスタジオのPINE JAMです。

原作ファンが気になるクオリティですが、結論から言うと大成功と言って良いでしょう。原作をそのまま動かしているような作画、見事な演出、異常にこだわっているサウンドなど素晴らしい出来映えです。

特に飯テロ(とたまにあるアクション)が秀逸。姫様のイメージ映像による、匂いや味の感想が無駄に豪勢なビジュアルでこれでもかとぶち込まれてくるため、原作以上にお腹が空きます。

さらに姫様のアホ具合に磨きがかかっており、リアクションがかの有名なアニメ版『ミスター味っ子』もかくやのオーバーアクションで、気を抜いていると思わず吹き出すこと請け合いです。

構成の都合でエピソードの順番が入れ替わっており、ボディラインが見えるシーンなど一部性的な要素はカット。他には王国の秘密や報告のやりとりが変わっていたり、原作よりキャラクターを掘り下げるオリジナル要素が加えられていたりと、少し改変されている部分があります。

すでに原作を読んでいても楽しめるので、未見の原作ファンはぜひご覧ください。

ちなみにアニメの放送期間はおそらく1クール。おおむね原作の3~4エピソードで1話分なので通常だと4~5巻辺りまでアニメ化されそうですが、前述の通りエピソードがかなり置き換えられているので、アニメ化の範囲を予想するのは難しいです。

原作者・春原ロビンソンとは。代表作『戦勇。』

漫画『姫様“拷問”の時間です』の世界観、ストーリーを考えているのは原作者の春原ロビンソンです。1986年3月12日生まれ、37歳の山口県出身の男性。

物心ついた時から漫画家を志しており、高校在学中や卒業後に出版社へ投稿・持ち込みを行っていました。しかしなかなか芽が出なかったらしく、夢を諦めて3DCGの専門学校に通い、一時はアニメ会社に就職したそうです。

ところがそのアニメ会社で体を壊し、22歳ごろに離職。そこから改めて漫画家を目指しました。

春原ロビンソンが最初に注目されたのは、ニコニコ動画へ投稿した紙芝居のような動画です。誰もが知る作品のパロディがメインで、シュールギャグでまたたく間に人気になったのですが、当時あまり見かけない作風を研究してあえて挑戦したとか。

著者
春原 ロビンソン
出版日

その後、2010年にニコニコ静画で発表したギャグファンタジー漫画『戦勇。』が人気となり、商業版が2012年から「ジャンプスクエア」で連載開始。2013年には同作品のショートアニメが制作されました。

春原ロビンソンは自身で『戦勇。』を描くかたわら、漫画原作を担当するようになって現在に至ります。

代表作である『戦勇。』、『姫様“拷問”の時間です』からするとシュール系ギャグが得意なように思ってしまいますが、シリアス・サスペンス作品を手がけることもあります。漫画原作者としてはかなり器用な部類と言えそうです。

作画・ひらけいとは。

ひらけいは『姫様“拷問”の時間です』の作画担当です。年齢は34歳前後。詳しいプロフィールは非公開。

デビューのきっかけは26歳の時、小田島平計名義で「週刊少年ジャンプ」の新人賞「ガリョキンPro」への応募です。同作品がラブコメ部門努力賞を受賞。

2016年ごろから原作付き漫画を断続的に発表し、商業デビューを果たしました。2019年に始まった『姫様“拷問”の時間です』がヒットし、現在も連載が続いています。

著者
["ひらけい", "上野 祥吾"]
出版日

なんと言っても画力の高さがひらけいの魅力。デビュー前の投稿作品の時点で、漫画としての完成度やキャラクター造形が優れており、ヒカルの碁』や『DEATH NOTE』などで知られる小畑健に高く評価されるほどでした。

ひらけいの作画は女性キャラクターの愛らしさ、美しさはもちろん、ちょっとした仕草の表現力が非常に多彩です。デフォルメの崩し方も上手いので、キャラクターのギャップが魅力的な『姫様“拷問”の時間です』の作風にぴったりな漫画家と言えます。


漫画『姫様“拷問”の時間です』はアプリ「少年ジャンプ+」なら全話初回無料で読めます。この記事で気になった方は、ぜひそちらからどうぞ。基本的に1話完結方式なので、隙間時間などで気楽に楽しめますよ。

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