お腹も心も満たされる光のドカ食い漫画『週末やらかし飯』の面白さと魅力を紹介！

更新：2025.1.2

『週末やらかし飯』はWeb漫画配信サービス＆アプリ「コミックDAYS」で連載中のグルメ漫画です。限界OLが仕事で溜めたストレスを週末のドカ食いで発散するハートフルコメディ。本作は同時期にスタートした『ドカ食いダイスキ！もちづきさん』に引っ張られる形で注目されましたが、ドカ食いが共通するものの面白さの性質はまったく違います。この記事ではそんな『週末やらかし飯』のあらすじや設定、どんなところが魅力なのかをご紹介していきます。

3行でわかる作品と記事の内容

仕事の出来る敏腕秘書がストレスでドカ食いするグルメ漫画
満足するまで食べたら無理せず残して別日にアレンジして食べきるのが新しい
同時期に異なるベクトルのドカ食い漫画がスタートして話題になった

漫画『週末やらかし飯』はこんな作品！

『週末やらかし飯』はWebコミック配信サービスおよびアプリ「コミックDAYS」で連載中のグルメ漫画です。作者は小村あゆみ。連載がスタートしたのは2024年5月で、第1巻が9月9日に発売されたばかりです。

本作はなんでもこなせる有能美人秘書の主人公が、日々の仕事で密かに貯め続けたストレスを、週末の自宅で行う1人背徳飯で一挙に発散するドカ食い系作品となっています。ただしドカ食いと言っても本人の満足感が重視されており、好きなだけ食べたら無理せず残して、余り物をアレンジして綺麗に終わるのがポイント。

『週末やらかし飯』は連載開始当初こそあまり注目されていませんでしたが、同時期に始まった『ドカ食いダイスキ！もちづきさん』がSNSで大バズリしたことで、その話題に引っ張られる形で脚光を浴びました。

両作品は同時期（『週末やらかし飯』の方が約1週間ほど先行）にスタートしたため、要素が被ってしまったのは完全に偶然。限界OLの主人公がストレス発散でドカ食いするところまで同じなのに、後追いでもパクりでもなく、たまたま似てしまっただけというのが世相の反映や奇妙なシンクロを感じて面白いです。

ちなみに『ドカ食いダイスキ！もちづきさん』がやや破滅的な無茶な食べ方なのに対して、本作の場合は適度なガス抜きとして描かれるため、両作品の方向性はまったく違います。もしどちらかしか読んでいない（どちらも読んでいない）なら、両方読んでみることをおすすめします。

漫画『週末やらかし飯』あらすじ

社長秘書の久留米空子は、自分にも他人にも厳しいキャリアウーマンです。なんでもそつなくこなす彼女ですが、マイペースで自分勝手な社長が天敵。毎日のように仕事と問題を山積みにする社長のせいで、毎週末になるころには空子の疲労とストレスは限界に達します。

死に物狂いで働く空子の癒やしは、週末の夜に決まって行う「あること」でした。しごでき女子が平日にストレスを残さず、ぱーっと気持ちを切り替える気晴らしとは――自宅で好きな食べ物を好きなだけ作って、1人で満足するまで食べてそのまま心地よく寝落ちすることでした。

空子は週末のやらかしドカ食いを楽しみに、メリハリのある日々を送っていきます。

漫画『週末やらかし飯』登場人物紹介

『週末やらかし飯』はほぼ主人公しか出てきませんが、出番は少ないながらも印象的なキャラクターが何人かいます。人となりを押さえておくと、より楽しみやすくなるでしょう。

主人公は久留米空子。名前の響きから「グルメ食う子」をもじったネーミングと思われます。詳しい年齢は不明ですが、家族との会話からすると20代（後半？）のようです。ある会社の敏腕社長秘書。自他共に厳しい性格で、仕事ではきっちり計画的に行うことを好みますが、大抵は周囲（主に社長）のせいで狂って奔走することが珍しくありません。

空子はオンオフきっちりしており、オフモードでは普段の様子から想像出来ないようなちょっと幼い印象を受けます。

社長は空子が秘書を務める直属の上司。現在までに名前は登場していません。かなりの自由人でだいたいのことを空子任せにして好き勝手に振る舞い、彼女の仕事を増やすはた迷惑な人物です。ただし空子が珍しくミスした時などは、鮮やかな手並みでフォローして見せることがあり、経営者なだけあって有能ではあるようです。

社長はスマートな見た目に反して超大食いであり、美味しいものをたくさん食べられることから密かに空子に羨ましがられています。

野乃は空子の会社での後輩。感情に合わせてよく動く、猫耳のような髪が特徴的な女性社員です。業務中や休憩中を問わず、何かと空子に張り合うように突っかかってきますが、実はすべて空子への好意の裏返し。素直に感情表現出来ないせいで挑発的な言い回ししか出来ませんが、本心では仲良くなりたいと願っています。

空子の隣人、灰谷征一郞（はいたにせいいちろう）も準レギュラーキャラクターです。28歳の小説家で仕事柄あまり外出せず、私生活にも頓着しないのでやや不健康。空子とは以前から顔見知りではありましたが、灰谷が空腹で倒れかけた一件からしばしば交流を持つようになります。野暮ったい格好と眼鏡でわかりづらいですが、実はイケメン。

そして空子の母と姉。久留米家の女衆として3人集まることがよくあるようで、家族仲は良好です。姉は空子に似ていますが、性格は快活で夫と子供がいます。母は少しふっくらしていますがまだまだ若々しく、オフの空子を思わせる大らかなところがあります。空子のやらかしは家族ゆずりで、父親は未登場なので不明ですが母と姉は食べることが大好き。

漫画『週末やらかし飯』の魅力

『週末やらかし飯』の魅力はいくつかありますが、まず注目したいのはグルメ漫画の醍醐味である食事シーンです。

主人公の空子は何かとストレスに晒されがちな社会人。彼女は平日に少しずつもやもやを溜め込み、週末にストレスを発散させるのがお決まりのパターンです。その発散方法というのが、「やらかし」と称して好きな食べ物を思う存分食べること。

普通のグルメ漫画であれば、トレンドグルメや高級志向の美食が描かれますが……本作に出てくるメニューは人気や流行に関係なく、時には栄養バランスも無視して、空子がその時に食べたいもののみ。

基本的に自宅なので多少ラフではありますが、空子は食べ方がとても綺麗でとにかく美味しそう。グルメ漫画に登場する美女のリアクションにありがちな、どことなくエロチックな表現が皆無なので、老若男女親しみやすいのもポイントです。

しかも！　空子はたくさん食べる方ですが、満足したらそこでストップします。必然的に食べ残しが出ますが、保存処理した上で別の日に消費するので大丈夫。空子は大量に余るのも織り込み済みで、アレンジレシピによって飽きずに食べきる工夫をします。

頭空っぽにした馬鹿みたいなメニューを用意して、ストレス発散のやけ食いをして寝てしまう……と見せかけて、しっかり事後のことまで考えている用意周到さが見事。

「残してもいい」というのは「残さず食べる」ように小さいころから教育されている人の多い日本人にはある種の発見ですし、フードロスが叫ばれる昨今、ドカ食いは別にしても食べ物を粗末にしないのは見習いたいです。

また事後のフォローは余り物のアレンジだけではありません。空子は美味しい食事を長く楽しむには健康維持が大事という信念のもとに、やらかした後は食事量を調節し、摂取したカロリーを運動で消費するのが偉い。

空子のオンオフの差がかなり激しくて、仕事中はなんでもこなす完璧な美女でも、やらかし中は童心に返ったかのようにあどけない表情を見せます。全力のガス抜き本当に楽しそうですし、食べているのも美味しそうでつい真似したくなります。

本作に登場するメニューは、ほぼすべて作る難易度が低いもの（もしくは出来合い）ばかりなので、意外と簡単に真似して空子と同じ気分を味わうことが可能です。実は作者の小村あゆみ本人による実演というか、実際に作ってみた動画がYouTubeにアップされており、劇中通りの分量がどれくらい多いのか見ることが出来ます。作品そのもののではありませんが、アレンジレシピの実例も見られるので本編と合わせて視聴するとより楽しめますよ！

漫画『週末やらかし飯』のやらかしエピソード①：チキンラーメン【ネタバレ注意】

社長の無茶ぶりで右往左往するハメになる空子。疲れ切って仕事を終えたものの帰り道で雨に降られるわ、車に水を引っかけられるわ、散々な1日になってしまいます。ブチギレた彼女は鬱憤を晴らすべく、やらかし飯を決意。

断固料理しないと己に誓って、向かった先はコンビニ。後先考えないバカをやらかすために、栄養バランスを無視してチキンラーメン5袋と卵1パック、薬味のネギとバターを買い込みます。

そうして作ったのは……チキンラーメンをすべて投入したデカ盛り。ネギを散らして、卵5個とバターまるごと惜しげもなくトッピングし、器にしたそば用こね鉢から直接すする豪快な食べっぷりがいっそ爽快です。

美女の食事風景にしてはあまりにもわんぱくすぎますが、気分をリセット、リフレッシュしているのが目に見えてわかります。量の問題は別にして、身も心も冷え切った状態で食べるチキンラーメンの塩っ気とバターの脂分、半熟卵の濃厚な味わいは想像する空腹感が刺激されます。

アレンジレシピの残り物炊き込みご飯と、それを活用したチャーハンや焼きおにぎりもとても美味しそうです。このエピソードの空子は本当に幸せそうで、どうしてもつらい時は真似してやらかしたくなること請け合い。

週末やらかし飯(1) (シリウスKC)

著者

小村あゆみ

出版日

漫画『週末やらかし飯』のやらかしエピソード②：くそでか角煮【ネタバレ注意】

毎度のことながら、社長関連でイライラを募らせていく空子。いつもは金曜にピークが来るのですが、彼女のせいではないタイミングの悪さで一気にストレスが重なり、水曜の夜には爆発寸前になってしまいます。

空子はドカ食いしたい衝動を抑えられず、近くのスーパーに行ってとあるものを見つけるのでした。それは豚バラのブロック肉、それも重量2kgもある超大物。ブロック肉をまるごと用いた角煮を思いつくと、下準備の手間暇と来たるべきやらかしに向けた期待感によって、空子はストレスで落ち込むどころか普段より生き生きとし始めます。

テキパキ働いて金曜は定時で上がり、いざ宴開始。信じられないほど大きな豚バラ角煮、10個も仕込んだ半熟卵、大振りな輪切り大根……どれもこれもしっかりタレが行き渡って、最高の仕上がりでした。辛子をつけてそのまま食べたり、ご飯に盛って角煮丼にしたり、具なし中華まんに挟んで即席角煮まんにしたりと空子は色んな方法で楽しみます。

準備段階からウキウキする空子で、読んでいるこちらもほっこりするエピソード。食べてストレス発散するだけでなく、目標を設定してゴールに至る過程を楽しんで乗り越える、という姿勢がとても素敵です。

漫画『週末やらかし飯』のやらかしエピソード③：お好みすぎ焼き【ネタバレ注意】

空子は仕事を順序立てて進めて、計画通りに終わることに快感を覚える性分です。とはいえ会社の仕事はチームワークで、さらに取引先の都合もあるため、なかなか思うようにはいきません。

それらが積み重なって精神的に疲労困憊した空子は、週末のお楽しみとして好きな具材をてんこ盛りに出来るお好み焼きを思いつきます。

例によって1人前をオーバーする量を用意。スライサーを使わずにわざわざ包丁で野菜を切り刻むのですが、平日のモヤモヤを千切りで発散している気配があります。やや闇を感じさせる一方、お好み焼きをふっくら仕上げるすりおろし山芋もしっかり準備しており、抜かりないのがさすが。

完全にリラックスモードの空子は、ビール片手にお好み焼きを焼き始めますが、サイズ感をミスった挙げ句に裏返しに失敗してしまいます。計画が狂ってしまったわけですが、やからし中のお1人様ご飯ならただの笑い話！　飛び出した具をおつまみ代わりにして、トラブルも楽しんでしまう空子に癒されます。

そして完成したのは、無心で好きなだけ焼き続けたお好み焼きのタワー――お好みすぎ焼きでした。

最終的にうっかり食べ過ぎてしまうのがご愛敬ですが、満腹の中で空子はある心境に至ります。お好み焼きがあらゆる具材を受け止めるように、良いことも悪いことも全部引っくるめて良かったと思えれば、人生は楽しくなるかも……。なんでも楽しめた方が効率重視よりも効率的、という結論はある種の真理を突いているように思えます。