1818年に一人の女性の手によって産み落とされた作品『フランケンシュタイン』は、まもなく200年という月日が経とうとしています。2017年に入り、綾野剛主演のドラマ『フランケンシュタインの恋』や、小栗旬主演のミュージカル『ヤングフランケンシュタイン』など、フランケンシュタインに関する作品が多数登場しました。そこで今回は、「そもそもフランケンシュタインって何だっけ?」という方に向けたフランケンシュタイン入門書をご紹介します。
フランケンシュタインといえば、ハロウィンの仮装の定番となったつぎはぎの怪物、もしくはマンガ『怪物くん』に登場するフランケンなどを思い浮かべる人が多いかもしれません。これらは1931年に公開された映画『フランケンシュタイン』でボリス・カーロフが演じた怪物のイメージが強く影響しています。意外と誤解されがちなのですが、フランケンシュタイン=怪物ではありません。実はフランケンシュタインは怪物を造った創造主=ヴィクター・フランケンシュタインを指し、怪物は名前を与えられる前に捨てられてしまった名無し人なのです。
- 著者
- メアリ・シェリー
- 出版日
- 1984-02-24
物語は北極探検隊の隊長ロバート・ウォルトンが姉に向けて書いた手紙という形式を取っています。ウォルトンは北極点に向かう途中、北極海で衰弱した男性を助け出すのですが、助けられた彼こそが怪物を創造したヴィクター・フランケンシュタインであり、彼はウォルトンに自らの体験を語り始めます。
若き科学者であったヴィクターは、生命の起源に迫る研究に打ち込み、ついには神に成り代わって生命の創造を行います。しかし、死体をつなぎ合わせて創り上げた名もなき怪物の容貌はあまりにも恐ろしく、怪物を見捨てて故郷へ逃亡してしまいました。生みの父に見捨てられた怪物は、醜さゆえにさまざまな偏見と孤独に打ちひしがれ、ヴィクターへの復讐を誓います。
怪物が言語を習得し「人間になって」いく過程は、何度読んでも胸を打たれます。映画の影響でただただ暴れる巨大な怪物だと思っている人ほど読んでほしいです。『フランケンシュタイン』はさまざま出版社から翻訳が出版されているので、一度手に取って読んでみてください。
『フランケンシュタイン』は、SF(サイエンス・フィクション)の起源とも言われており、現在知られているSF作品(小説、映画、マンガ・アニメーションなど)に多大な影響を与えています。そしてまた、人工生殖やクローン技術、遺伝子操作といったものがフィクションではなく現実のものとなってきているいま現在において、『フランケンシュタイン』の物語が注目されるのは自然な流れなのかもしれません。
- 著者
- 武田 悠一
- 出版日
- 2014-09-09
この書籍の中では、原作を知らない人でも読めるようになっており(もちろん原作を読んでおいたほうがより楽しむことができます!)、作者メアリ・シェリーの生い立ちから『フランケンシュタイン』を考察してみたり、フェミニズム・ジェンダーの観点から検討してみたり、映画における受容や影響関係にある作品群との比較など、さまざまな観点から『フランケンシュタイン』について知ることができる一冊です。
少し専門的な単語が多いかもしれませんが、原作を読んでみて「これってどういう意味だったんだろう?」「あれはこういうことを言いたかったのかな?」という疑問を解消することができるかもしれません。そうしてから改めて原作を読み直してみると、新たな発見や解釈が生まれること間違いなしです。
こちらも『フランケンシュタイン』について学術的に書かれた一冊です。第一部(第1~4章)と第二部(第5~8章)に分かれているのですが、特に第二部は戦後日本において『フランケンシュタイン』がどのような影響を与えていったかを独自の視点から考察しています。
- 著者
- 小野 俊太郎
- 出版日
- 2015-08-19
戦前においても日本にSFはありましたが、本格的な日本SFが立ち上がったのは1960年の前後(1957年SF同人誌『宇宙塵』創刊、1959年『S-Fマガジン』創刊、1962年第1回日本SF大会開催など)のことです。本書も60年代に登場し始めた作家や作品に触れ、当時の社会背景などを踏まえながら『フランケンシュタイン』との関連性を紐解いていっています。
『フランケンシュタイン』は読んだことがなかったけれどSFは好きという方や、本書の副題にもあるように伊藤計劃と円城塔による『屍者の帝国』は読んだことがあるという方にはおすすめの一冊です。