経済学と聞いて、どんなイメージを持ちますか?聞いたことのない言葉が多く、とっつきにくい……そう感じている方も、安心して学べる本があります。社会人として基本くらいは身につけておきたい、と考えている方にはおすすめの入門書5冊をご紹介!
経済学は、お金の動きに関する学問です。人がモノをつくり(生産)、それを使う(消費)といった活動が、お金とどのように関連しているかを細かく考えていきます。
人の活動はほとんどすべてが「価値(お金になりうるもの)」と結びついているため、一見お金と関係なさそうなこと(例:環境問題など)も経済と連動するものとして考えられます。
経済学の基本となるのが、「マクロ」と「ミクロ」の視点です。簡単に言えば、マクロ経済学は大きな指標・視点から、ミクロ経済学は小さい指標・視点から見た経済ということになります。
マクロ経済学は、全体の消費や投資、GDP、物価などの「集計概念」と呼ばれるデータを参考に分析し、ミクロ経済学は生産者や消費者といった個人(企業)がどのような行動をするのかを分析していきます。この2つは経済学の両輪であり、どちらが欠けても成り立ちません。
経済学と聞くと、すぐに拒否反応が出てしまう人もいるかもしれません。その最大のハードルは、「専門用語が多く難しい」というイメージにあるのではないしょうか。ですが実は、経済は日常に常に存在し、生活の中で考えることができるものです。
そこで、初心者にもわかりやすく、また、身近な例と簡単な言葉を使って書かれている入門書を選んでみました。
経済学をまったく学んだことのない人におすすめの1冊がこちらです。需要と供給といった経済学の入り口から、マクロ経済学、ミクロ経済学の基礎をしっかりと解説してくれているので、初心者にわかりやすい内容になっています。
- 著者
- 小塩 隆士
- 出版日
- 2002-03-01
日本の学校では、経済を学ぶ機会がとても少ないのが現状です。高校の授業で「政治・経済」という科目がありますが、理系の人などは履修していない場合もありますし、小学校や中学校では詳しい内容は学びません。大学でも経済学部などに行かなければ学ぶことはない経済学ですが、社会に出ると最も大事な知識のひとつだったりします。
テレビの経済ニュースですらよくわからないという方は、本書を読んでみると何かきっかけをつかめるかもしれません。高校生までの知識でわかるように書かれているので、難解な言葉は一切なく、基本事項を頭に入れることができます。
現在社会で起こっている経済上の問題は何なのか、どのような状況なのかということも理解でき、自分の仕事や生活が経済とどのような関連を持つのかイメージできる本です。
経済学は日常生活と密接した学問ではありますが、用語の難しさなどから、日常へ結びつけることは難しい印象があります。本書は、そんな学問と日常の乖離を埋めてくれるような1冊です。
- 著者
- 茂木 喜久雄
- 出版日
- 2011-09-12
「経済学の予備知識はいりません。」と断言されており、用語も何もわからない経済学初心者でもハードル低く読み進められる本です。著者は「資格試験における経済学のカリスマ的講師」。試験で狙われそうなポイントが抽出してあるため、経済学の知識が必要な資格試験や就職試験、定期テスト対策などには最適と言えるでしょう。
ミクロ編とマクロ編からなり、初心者でも体系的に学べます。さらに本書も、「定食のほうが単品よりもお得なのはなぜ?」といった日常の疑問を、簡単な言葉だけで理解できるように工夫されています。
「らくらく経済学入門シリーズ」は、「ミクロ経済学」「マクロ経済学」にそれぞれフォーカスしたものもありますので、本書を読んだ後、そちらで深めてもいいでしょう。知識の土台作りにはおすすめです。
こちらも「ミクロ編」と「マクロ編」のあるシリーズ本。スタンフォード大学で「学生が選ぶ講義が上手な教師」の1位を獲得した著者の本です。日本でもアメリカでも「とっつきにくい」と思われる経済学のイメージを払拭するため、複雑でややこしい経済学を簡単に理解できる本をつくるという目的で書かれました。
- 著者
- ティモシー・テイラー
- 出版日
- 2013-02-27
本書によれば、「経済学の基礎を知れば、世の中のしくみが見えてくる。 国民のためにどんな政策が必要かもわかってくる。経済学の基礎が身についていれば、日本の未来シナリオを、自分自身で描けるようになる」のです。
監訳は池上彰氏。なるべく身近な例から経済を語るように工夫された1冊です。経済学部の学生にはもちろんですが、就職活動前の学生や、改めて学んでおきたいビジネスパーソンにもおすすめです。ここで解説される経済学は、教養として持っておいて損はないどころか、持っておくべき知識です。
・社会は何を生み出すべきか
・どうやってそれを生み出すのか
・生み出されたものを誰が消費するのか
この3つの問いが経済学を考える際のポイントとしてあげられています。この3つによってあらゆる人の生活が動かされているという記述が特に印象的です。
理論ばかりで何を言っているのかわからない……という悩みを払拭するのがこの「図解」です。図を読み解いていくことで、経済の何たるかがわかるようになります。文章だけでは理解しにくい現象も、図にすることでグッと頭に残りやすくなるのです。
- 著者
- 高橋洋一
- 出版日
- 2016-08-04
はじめは、経済学にはおなじみの需要供給曲線から。これをたとえばラーメンや牛丼の値段と関連させて読み解いていきます。ただ図にするだけでは教科書や資料集と同じですが、こうした具体例のチョイスが読者に理解しやすいものになっています。
後半は、日銀と経済の関係として、「ゼロ金利」などについてページが割かれています。また、「政府と経済」の関係はやはり切り離せない問題です。これらについても触れることで、「自分の頭で考えられるようになること」が本書の目標とされています。
読み終わった後には、「モノの値段が上がった」「消費税が上がる」というニュースが入ってきたときに「嫌だな」という感想で終わらせず、「なぜ?」と考える習慣ができそうです。大蔵省(現在の財務省)や、内閣参事官などを務めた経験のある著者のリアルな1冊です。
ここまで、経済学基礎をやさしく解説した本を紹介してきましたが、最後はこの本。「スティグリッツ 経済学」シリーズは、経済学分野のグローバル・スタンダード・テキスト。1993年に初版刊行以来、多くの人に読み継がれている良書の、第4版です。
- 著者
- ["ジョセフ E.スティグリッツ", "カール E.ウォルシュ"]
- 出版日
- 2012-03-23
ミクロ経済学とマクロ経済学を合わせて解説し、両方を一気に学んでいけるようになっています。第12章には、2008年の大不況や地球環境の危機についても加えられています。日常から世界へと視点を移して考えることができる本です。
他の4冊と比べると学問的・本格的な内容で、600ページ近くもある大著です。それでも、解説は極力わかりやすく、複雑な数式なども出てきません。そして何よりも、経済学の基本事項は漏らすことなく網羅されているため、さすがはグローバル・スタンダードといえる内容です。自分の生活に関連することだけにとどまらず、初歩から一歩踏み込みたい人におすすめの本でしょう。