斬新な設定と複雑な伏線で人気を博している『進撃の巨人』。個性的なキャラクターも人気の一因です。中でもトップクラスの人気を誇り、男女問わずファンが多いミカサ・アッカーマン。今回はこの重要キャラクターを考察してみます。
- 著者
- 諫山 創
- 出版日
- 2010-07-16
ミカサ・アッカーマンとは『進撃の巨人』のヒロイン。主人公であるエレンと供に育ち、常に彼の側にいます。女性の割にがっしりとした体躯を持ち、調査兵団104期生の中でトップの成績を持つ彼女は戦闘能力が非常に高く、同期の中で右に出る者はいません。
冷静沈着な性格をもち、戦闘では的確な判断を行いその持ち前の圧倒的な能力で多くの巨人を仕留める一方で、情熱的な性格も持ち合わせており、仲間の危機に対して感情的な行動を起こすことも多いです。
そんなミカサですが、なぜそんなに戦闘能力が高いのでしょうか?顔立ちや髪色などが周りと違う理由は?なぜ両親は殺されなければいけなかったのでしょうか?伏線が多いことで知られる『進撃の巨人』の中でも、数多くの謎を抱えております。今回はそんな謎に迫っていきましょう。
- 著者
- 諫山 創
- 出版日
- 2011-04-08
基本的に笑ったり泣いたりせず、いつもクールな表情のミカサ。しかし、そんな彼女の一番強い想いの矛先はエレンにあります。ミカサにとって、彼より大切なものはありません。その最も大きな理由は2人の過去にあります。2人がまた幼く互いのことを知らなかった頃、ミカサは両親と幸せに暮らしていました。しかしある日、強盗に襲われて両親も殺された挙句、本人も誘拐される寸前に……。
それを助けてくれたのが、たまたまそこに居合わせたエレンだったのです。エレンとミカサは協力し、強盗を殺してその場を脱出。孤児となった彼女はエレンと共に暮らすこととなりました。
そんな経緯から、ミカサにとってはエレンが一番大切。巨人となって様々な運命と戦うエレンを守り、助け、彼のために戦います。
エレンについては<漫画『進撃の巨人』主人公エレンの寿命は残りわずか?【ネタバレ注意】>の記事で紹介しています。気になる方はぜひご覧ください。
既刊23巻現在でまだ明かされておらず、かつ当時からずっとファンの議論テーマとなっている、この物語の「ループ説」。その噂のきっかけとなったのがミカサです。
第1巻、第一話。エレンが木陰で居眠りしており、ミカサがそれを起こしにくるところからストーリーは始まっていきます。「いってらっしゃい、エレン」という声に気がつき、うっすらと目を開けるエレン。そのぼやけた視界に映るのはミカサと思われる人物でした。
そして、続けざまにかけられた「エレン、起きて」の声ではっきりと意識が覚醒すると、実際に彼女は目の前に。この「いってらっしゃい」を言ったのが、「エレンをループに送り出した未来のミカサなのではないか」と仮説を立ててみます。
まず注目してほしいのが、彼女の「髪型」です。エレンは起きた直後、唐突にミカサに髪が伸びたんじゃないか?と問いかけ、「なんかすっげー長い夢を見ていた気がするんだけど……」とこぼしました。
実はこの数年後、2人が調査兵の訓練に入る前まで彼女は髪を伸ばしていました。そのときエレンが髪を切ったらどうかと提案して以来、彼女は髪が短いままなのです。
つまり、髪が短い未来のミカサが「いってらっしゃい」とエレンを過去に送り、髪が長かった幼い頃の彼女の元にループしたのではないかと考えられます。
基本的にループというのは何かをやり直したいときに行うもの。『進撃の巨人』にはそんなシーンがたくさん出てきます。実際エレンも「俺が選択を間違えなければ……」と後悔するシーンがありますし、多くの人物が「後悔」を語っています。
たくさんの「後悔」が出てくる、つまり誰もが「やり直したい過去」を持っているということです。このあたりの描写もループ説を根強く浸透させているのでしょう。
ミカサの両親はまだ彼女が幼い頃、家に入ってきた強盗によってどちらも殺されてしまいます。彼らの目的は、彼女の母親および彼女本人を売り飛ばすことでした。大多数と違った風貌をもつ「東洋人」は高く売れるからです。母親は純粋な東洋人であり、その娘であるミカサの外見も他とは少し違うことが作中でも示唆されています。
東洋人の母の血を引いていることと、「アッカーマン」の姓を持つことから、「東洋の一族とアッカーマン一族のハーフ」であることがほぼ確定されます。この2つの一族には大きな特徴があるのです。
作品の舞台となる壁の中の世界は「レイス家」という王族が統治してきました。最初に壁が築かれて人類が壁内に逃げ込んだ頃、初代レイス王は自分の思想に都合がいいように人類の記憶を改竄したのです。 しかし、レイス王が記憶を改竄できるのは主民族であるエルディア人のみ。一緒に壁内に入った少数の他民族である「アッカーマン一族」と「東洋の一族」の記憶には関与できません。
ここまでの情報から、ミカサが作品に出てくる大多数のキャラクターとは違うことがわかります。なにしろ壁の中の大多数を占めるエルディア人の中でごく少数しかいない一族、しかも2つの一族の血を引いているのです。外見が人と違っていること、さらに戦闘において並々ならぬ強さを持つ理由はこの血筋にあるのかもしれません。
人類最強の男として称され、調査兵団を率いるリヴァイ。「最強」と謳われる強さを持つ彼の本名は、しばらくの間明かされていませんでしたが、14巻で、リヴァイの本名が「リヴァイ・アッカーマン」だと判明します。ミカサと同じ姓を持っていたのです。
また、リヴァイは彼女に「ある日突然力に目覚めたような感覚を経験したことがあるか」と問いかけます。そしてミカサは「あります」と返答。
それを聞いたリヴァイは「ある時ある瞬間に突然バカみてぇな力が体中から湧いてきて……何をどうすればいいのかわかるんだ……」と続けました。さらに、リヴァイの叔父であるケニー・アッカーマンにもその瞬間があったと言うのです。
戦闘技術が特に抜きん出ているミカサとリヴァイ。2人とも、幼少期のある出来事で「覚醒」し、その後戦闘能力が飛躍的に高まったとのことでした。アッカーマン一族が、特別な能力を持つ一族であることが見てとれます。
そして、兄妹説があがったもう一つの理由は「リヴァイの父親が明確になっていないこと」。売春婦であり、客の子を身ごもった母から生まれたのがリヴァイであり、その客が誰だったのかは明らかになっていません。そして早くに母親を亡くしたリヴァイは、地下街で生きてきたのです。
ミカサの父親がその「客」であったのなら、2人の異母兄妹説は成り立ちます。しかし、叔父のケニー・アッカーマンも戦闘能力に秀でていたことから、親子や兄妹でなくてもアッカーマン一族なら同じ能力があるのかもしれない……そう考えると、2人は兄弟もしくは親戚筋にあるのでしょう。
調査兵団の生存メンバーを一覧にした<漫画『進撃の巨人』調査兵団で生存しているメンバー一覧【最新23巻時点】>の記事もおすすめです。
過去の回想時、彼女の両親が強盗に襲われる前のこと。彼女の母親がミカサの右手首に刺青を彫りました。母親いわく、それは「一族の印」であり、子どもができたらこの刺青を受け継がなくてはならないとのこと。
さらに、ミカサに関わる謎としてファンの中でよくあげられるのが「頭痛」です。ショックな出来事があった時、彼女は決まって頭痛を起こします。
過去に頭痛が起きたのは、両親が殺された際や、エレンが死にそうなときなど……、家族、もしくは家族と認識しる人に何かがあったときです。また、ミカサは痛む頭を、刺青の入った方の手で抑えます。この「刺青」と「頭痛」が、彼女の持つ秘密と関係していることは疑いようもありません。
ミカサとリヴァイはあまりにも強すぎることから、ファンの間では超小型巨人なのではないかと、しばしば議論されていました。ただ人間の姿をしているだけであって、実は巨人なのではないかと言われていた2人。直接的な回答にはなっていないものの、猿の巨人ジークの発言によって、アッカーマン一族の力は巨人化学によって生み出されたことが明らかになりました。
気になるのはジークのセリフ内の「巨人科学の副産物」という言葉。あくまでアッカーマン一族を目的とした研究ではなく、巨人の力を生み出そうとした研究で、たまたま生まれてしまった、という印象を受けます。
23巻にしてようやく、少しだけ明らかになった圧倒的な力の理由。彼らが巨人なのか否かはまだ分からないものの、その謎が完全に明かされる日は近いのではないでしょうか。
『進撃の巨人』のヒロインを務めるミカサ・アッカーマン。ジャンを一目惚れさせるような可愛さを持ちながら、常人離れした戦闘能力で多くの巨人を駆逐してきました。今回は、そんな美貌と戦闘能力を兼ね備えた彼女の魅力を、エピソードとともに徹底紹介します。
超大型巨人が壁を破壊したことによって、思いがけず初陣となってしまった104期の調査兵団たち。奮闘するものの、初めての巨人に対抗することができず、多くの仲間が死んでしまいます。主人公のエレンもアルミンをかばい、巨人に食べられてしまいました。
そんな中、冷静に巨人を倒し、多くの市民を守ることに成功したミカサ。エレンが無事を知るために、俯いているアルミンに「エレンをみた!?」と尋ねます。しかし、アルミンは涙を流しながらエレンの死をミカサに伝えました。何よりも大切なエレンを失ったことから、彼女は言葉を失います。しかし次の瞬間、ミカサは多くの兵士たちの中央へと歩き出し、剣を振り上げ喋り始めました。
「私は…強い…あなた達より強い…すごく強い!
…ので私は…あそこの巨人共を蹴散らせることができる…
例えば…1人でも(中略)
できなければ……死ぬだけ…でも…勝てば生きる…
戦わなければ勝てない…」
(『進撃の巨人』2巻より引用)
たどたどしい言葉ながらも、仲間に発破をかけたミカサ。走り出した彼女に続くように、調査兵団の仲間たちも巨人に向かって走り始めました。
「残念なのはお前の言語力だ」とジャンの言う通り、とてもたどたどしい言葉遣い。しかし彼女の言葉は、仲間の戦意を奮い立たせました。圧倒的な強さとカリスマ性を持つミカサだからこそ、できたこと。彼女にしては珍しく、リーダーのように仲間を鼓舞した名シーンです。
アニが女型の巨人であることを伝えられたエレン。しかし、「今まで一緒に戦ってきた仲間だろ!」と事実を受け入れることができません。実際に女型の巨人とアニ、どちらからも回し蹴りを受けたことのある彼は、女型の正体に薄々気づいてはいるものの、その事実を認めることができませんでした。
刻々と迫ってくる女型からエレンを守るために動き出すミカサとアルミン。走り出した2人に向かって「何でお前らは…戦えるんだよ」と呟いたエレン。するとミカサは振り向いて、こう答えました。
「仕方ないでしょ?
世界は残酷なんだから」
(『進撃の巨人』8巻より引用)
この言葉で目が覚めたエレンは、自らの手を噛みちぎり、アニと一騎打ちを迎えます。
今まで何度もこの世の理不尽を体験してきたミカサだからこそ生まれた名言。人さらいによって幼少期に両親を失い、15歳という若さで何度も巨人との死地をくぐり抜けてきました。残酷な世界を強く生き抜くミカサの言葉は、強く胸に響くものがあります。
「俺が鎧の巨人で、こいつが超大型巨人ってやつだ」と、さらりとエレンに正体をあらわにしたライナーとベルトルト。調査兵団の仲間たちを無残に殺すしてしまうことをためらった彼らは、平和的な解決をエレンに求めるも失敗してしまいました。
俺が馬鹿だったと呟き、鎧の巨人へと姿を変える決心をしたライナー。彼の右手からは煙が立ち上り、ベルトルトも意志を固めます。「あぁ!!勝負は今!!ここで決める!!」とライナーが叫びます。そしていざ鎧の巨人へと姿を変えようとした瞬間……
なんとミカサが、一瞬の間にライナーの右腕を切り落とします。そして続け様にベルトルトの首を斬りつけました。彼に馬乗りになり、顔面を目掛けて剣先を突き刺そうとしたところで、ライナーに突き飛ばされてしまいます。そして覚悟を決めた彼らは、巨人へと姿を変えるのでした……。
結果的にライナーとベルトルトを防ぐことはできなかったものの、一瞬の判断で彼らに斬りかかったミカサ。圧倒的な戦闘能力はいつものことではあるものの、一瞬の判断能力も常人離れしていました。見開き1ページを丸々使い、ライナーに斬りかかる彼女の迫力は凄まじいものがあります。その後の流れるような攻撃も並外れており、『進撃の巨人』最強の人物といっても過言ではない戦闘能力は、伊達ではありません。
ライナーとベルトルトによって、さらわれてしまったエレン。壁の中の唯一の希望である彼を奪還するために、調査兵団は馬に乗り、塀の外へと乗り出しました。巨人の群れに追いついた彼らは、エルヴィンの命を賭した攻撃によりエレン奪還に成功します。
しかし、意地でもエレンを持ち帰らなければならないライナーは、巨人を投げつけることで調査兵団を死へと追い込みます。それにより馬すら失ってしまい、何もすることができなくなってしまった、エレンとミカサ。命の恩人であるハンネスさえも目の前で失い、「何にも変わってねぇな!母さん!俺は何も、なんっっにもできないままだったよ!」とエレンは叫びます。そんな時、彼と同じように死を悟ったミカサは、エレンに優しく話しかけました。
「そんなことないよ エレン
エレン 聞いて 伝えたいことがあるの
私と…一緒にいてくれてありがとう
私に…生き方を教えてくれてありがとう
…私に マフラーを巻いてくれてありがとう」
(『進撃の巨人』12巻より引用)
それを聞いたエレンは目に力を宿し、「そんなもん、何度だって巻いてやる」と素手ながら巨人に立ち向かいます。そして彼は「座標」を手に入れ、死地を抜け出すことに成功しました。
この名言は2人の過去のエピソードを踏まえたものになっています。人さらいに殺されかけた過去を持つミカサ。その時の彼女を救ってくれたのがエレンでした。両親を失った彼女に、マフラーを巻いて「一緒に生きよう」と声をかけたエレン。人生のどん底から引き上げてくれたのは、紛れもなく彼だったのです。
死を覚悟し、自分の本当の気持ちをさらけ出したミカサ。普段の彼女とは違い、涙を浮かべ笑顔で話したその顔は、とても可愛らしいものがありました。ミカサの女の子らしい一面を垣間見ることができ、そして彼女とエレンの強い絆を改めて感じることもできるシーンです。
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- 著者
- 諫山 創
- 出版日
複雑に張られる伏線が毎度衝撃の展開を起こす『進撃の巨人』。その主要キャラだけあって、ミカサにもまだまだ謎がいっぱいです。
その謎を考えながら読み返してみるとまた違った視点が見つかるかもしれません。