『ハヤテのごとく!』は、ラブコメパートとシリアスパートで賛否両論が分かれる作品です。そこで今回は、作中で特に重要な役割を果たしたキャラクターたちの魅力を、ラブコメとシリアスの両面から紐解いていきます。
2004年から2017年まで「週刊少年サンデー」で連載され、単行本は累計1000万部以上を売り上げた『ハヤテのごとく!』。
親から1億5000万円もの借金を背負わされた少年・綾崎ハヤテが、規格外の大富豪の少女・三千院ナギの執事となり、さまざまなトラブルに巻き込まれる日常を描いた作品です。
メインヒロインのナギ以外にも魅力的な女の子が多数登場することから、いわゆる「萌え系マンガ」の金字塔としても知られています。
- 著者
- 畑 健二郎
- 出版日
- 2005-02-18
しかし作風がコロコロと変わることから、賛否両論ある作品でもあることをご存知でしょうか。
初期はトンデモ系ギャグ漫画でしたが、ヒロインが増えるにつれてラブコメへと移行し、最終的にはシリアスな展開がくり広げられるストーリーになりました。
そこでこの記事では、『ハヤテのごとく!』に登場する特に重要な7人のキャラクターを、ラブコメパートとシリアスパートの両面から分析していきます。
- 著者
- 畑 健二郎
- 出版日
- 2005-06-16
綾崎ハヤテ(あやさきはやて)は三千院家の執事として働く16歳の少年。本作の主人公です。
ロクデナシの親に1億5000万円もの借金を背負わされ、ヤクザに売り飛ばされそうになったところ、ナギに救われて彼女の家の執事として生きることになりました。
基本的には何をやってもうまくいかない不幸体質で、事故やトラブルに巻き込まれるのが日常茶飯事です。
ただ、異常に不幸であること除けばハイスペックの持ち主で、料理・洗濯・掃除といった執事としての才能だけでなく、猛獣や怪物と素手で戦っても勝てる強さや、どんな仕事でもすぐにマスターしてしまう器用さを持ち合わせています。
彼の能力のなかでも特筆すべきは、「天然ジゴロ」だということでしょう。本人が意図しているわけではないのですが、とにかくモテるのです。メインヒロインのナギ以外にも細やかな気遣いを見せるため、無意識のうちに会う女性をことごとく落としていきます。
シリアスパートでは、暗い過去を持つハヤテの重たいストーリーが展開されていきます。物語が進むにつれて、彼の「不幸体質を利用した者」の存在がほのめかされていくのです。
初期のギャグパートにも、後半のシリアスパートで明かされる重要な伏線が紛れ込んでいるので、さまざまなことを考察しながら読むと面白いのではないでしょうか。
- 著者
- 畑 健二郎
- 出版日
- 2009-04-17
三千院ナギは、桁外れの大富豪である「三千院家」の跡継ぎ候補筆頭で、天才的な頭脳を持つ13歳の少女です。ヤクザに売り飛ばされそうになっていたハヤテの借金を肩代わりし、その代わりに彼を執事として雇っています。
本来は優しい性格をしているのですが、幼い頃から誘拐されることが多く、頭が良すぎて周囲と合わなかったことなどから、ワガママなうえに家に引きこもるようになっていました。
しかしハヤテと出会ったことをきっかけに、他人と接する機会も多くなり、友人も増えて人間的に少しずつ成長していく様子が描かれます。
一応、本作のメインヒロインという立場ですが、ラブコメパートでは存在感が薄いキャラクターでもあります。ハヤテにとって1番大切な人であることに間違いはありませんが、彼はナギのことを「命の恩人」として見ているため、女性としては意識されていないのです……。
一時期はヒロイン争奪戦から脱落したかにも思われましたが、シリアスパートは「三千院家の遺産を誰が継ぐか」という問題を中心に進んでいくため、自然と登場回数も増えていきました。
賛否両論があるシリアスパートですが、最初は何もできなかった彼女が大きく成長する部分でもあるので、やはり本作には欠かせないプロセスであったといえるでしょう。
- 著者
- 畑 健二郎
- 出版日
- 2005-08-08
マリアは、ナギの身の回りの世話をしているメイドです。 成熟した女性に見えますが実はまだ17歳で、わずか13歳で高校を卒業した天才でもあります。
誰のことも信用していなかった幼いころのナギが唯一心を許した存在で、彼女にとってはメイドというより母親のような人物なのかもしれません。
中盤からどんどんヒロインが増えていく本作ですが、序盤はナギとマリアが2大巨頭として活躍していました。優しくて何でもできるお姉さんのマリアは、下着姿などのセクシーなシーンも多く描かれています。
ただ彼女は、ヒロインのなかでもっとも謎が多い人物でもあります。重要なキャラクターのなかでただひとり苗字が明かされておらず、あまり女性に興味を持たないハヤテがなぜか惹かれる存在でもありました。
しかし物語が進むにつれて彼らの関係性は変わっていき、ヒロインというよりはハヤテとナギの「家族」のようになっていきます。
実はこの展開、苗字が明かされていないことと少なからず関連があるのです。隠された設定の答えは本編では名言されませんが、注意深く読んでいくと真実に気付けるかもしれませんよ。
- 著者
- 畑 健二郎
- 出版日
- 2005-11-18
桂ヒナギクは、ハヤテやナギの通う「白皇学院」の生徒会長を務める16歳の少女です。成績優秀で運動神経も抜群。性格もよくて、作中でもトップクラスのスペックの持ち主となっています。
多くの女の子が登場する本作のなかでも、メインヒロインの座にもっとも近いキャラクターのひとりといっても過言ではありません。ハヤテにとって「家族」としての側面が強いナギやマリアとは違い、しっかりと「女性」として意識された人物でした。
初期はギャグの要素が強かった本作を「ラブコメ」に押し上げたのは、間違いなく彼女の功績だといえるでしょう。
また、シリアスパートでも常に出番を確保しています。実は戦闘能力も最強クラスで、ハヤテはヒナギクのことを「女性」として意識しつつも「頼れる戦友」のように扱う場面が多々ありました。
強くてたくましいため、ファンからは「男子小学生みたい」などという評価をされることもありますが、恋愛に関しては誰よりも一途で女の子らしい一面を持っています。当初は「告白したら負けな気がする」なんて言っていた彼女が、最終巻で素直に想いを伝えるシーンには心打たれるはずですよ。
- 著者
- 畑 健二郎
- 出版日
- 2006-06-16
西沢歩は、ハヤテが以前通っていた高校のクラスメイトだった少女です。大富豪にメイド、さらに霊能力者やアイドルなど特殊な経歴を持つキャラクターたちが登場する本作のなかで、唯一なんの特徴もない普通の女子高生だといえるでしょう。
しかし彼女は、全ヒロインのなかでもっとも積極的にハヤテにアプローチをかけました。誰よりも早く告白し、誰よりも多く好意を伝え、何度フラれてもあきらめずにアタックを続けています。
ハヤテの鈍感さに脱落していく女の子も多いなかで、もっとも結ばれる可能性が高いひとりとして最後まで生き残っています。
そもそも、初期のハヤテが歩の告白を断ったのは、「1億5000万円の借金を完済するまでは誰とも付き合えない」からでした。彼は歩のことをちゃんと女性として見ているので、もしもタイミングさえ間違えなければ簡単に付き合えていたでしょう。
ラブコメパートではかなり重要な役回りを果たしていましたが、シリアスパートでは極端に出番が減ってしまいました。良くも悪くも普通の高校生なので、「三千院家の遺産相続」や「王族の力」など非日常の要素が絡むときは仕方ないのかもしれません。
ただ、最後の最後で非常に重要な活躍をするので見逃さないでくださいね。ハヤテが絶望的な状況に陥った時に彼を救ったのは、歩だったのです。作中屈指の名シーンでもあるので、ぜひ実際に読んでみてください。
- 著者
- 畑 健二郎
- 出版日
- 2006-12-16
瀬川泉は、白皇学院でハヤテのクラスメイトになった少女です。実家は日本を代表する電気メーカーで、お金持ちの多い学院でもトップクラスのお嬢様。しかし彼女は裕福なことを鼻にかけることもなく、誰にでも対等に接する明るくて優しい性格をしています。
ただ、かなり頭が悪いのが悩みどころ。日本屈指の名門であるはずの白皇学院に通っているにも関わらず、普通高校で習う三角関数なども「習っていない」と言い張り赤点をとり続けています。
また恵まれた生活をしてきたせいか、人を疑うことをせず、たびたび友人に騙されては恥ずかしい目にあっているのです。
初期の出番は少なめでしたが、中盤あたりから徐々にヒロインとして頭角を現しはじめます。成績が悪いということでハヤテに勉強を教わることが多くなり、そのうえ隙が多いので下着姿や全裸で彼の前に登場することも増えました。
さらに、ハヤテの子供時代を描いた過去編では、幼い頃のハヤテと泉が出会っていたことが明らかに。そのうえ彼女のファーストキスの相手がハヤテだったという衝撃の事実まで……。
シリアスパートにはほとんど出番がありませんが、ラブコメパートではハヤテと親密になっていく特別なキャラクターです。
- 著者
- 畑 健二郎
- 出版日
- 2010-04-16
天王州アテネは、10代にして白皇学院の理事長を務める天才少女です。とある事情からハヤテと一緒に暮らしていたことがあり、彼に執事の仕事や闘い方などを教えた人物でもあります。
そして何より、アテネはハヤテと将来を誓い合った「初めての彼女」なのです。
何人もの美少女から告白されるハヤテですが、それらすべてを断り続けた理由のひとつが、彼女の存在でした。2人はちょっとしたすれ違いからケンカ別れをしており、彼はもう1度アテネに会って謝りたいと思っていたのです。
一方のアテネも、ハヤテとヨリを戻したいと考えている節があり、お互いに未練タラタラなカップルでした。
見るからにお嬢様といった外見をしているうえ、いかにもな高飛車な口調で喋るため、周囲からは怖がられることも多いアテネ。しかしハヤテに対してはデレデレで、途端に恋する女の子になってしまいます。
そんな彼女ですが、実はラブコメパートにはほとんど絡んでこないのです。本作のもっとも重要な謎に深く関わっているため、アテネが登場するのは大抵がシリアスパートでした。
ただハヤテが唯一「僕の好きな人」と公言する人物でもあるので、他のヒロインに大きな差をつけていることは間違いありませんね。
果たして2人は元サヤに収まるのか、はたまたハヤテは新しい恋人を作ってしまうのか……その真相は、最終話までのお楽しみです。
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