就活で履歴書やエントリーシートを書くとき、資格欄に書けるような資格がない……と焦る人は少なくありません。実際に、記載があるのとないのとでは試験官の印象も違います。そこでこの記事では、就活に役立つ資格とその対策本についてご紹介します。
「そろそろ就活の準備をはじめよう」。そう思ったときに、真っ先に考える学生が多いのが「資格取得」です。何らかの資格を取れば企業にアピールできるからです。
では、学生のうちに取っておきたい資格にはどんな種類があるのでしょうか。また、特に有利になる資格は何でしょうか。この記事では、TOEIC、簿記、秘書検定の3つを中心にお話します。
まずは、TOEICです。受験が必須とされている大学も多いでしょう。TOEIC(L&R)のテストはリスニングとリーディングで構成されており、リスニングは約45分間で100問、リーディングは75分間で100問の設問に答えていきます。年に10回、80都市という規模で実施されており、日本でも広く受け入れられています。
TOEIC受験の特徴は、世界中で同じ試験が行われているということです。「英語コミュニケーション能力を公平公正に評価する世界共通の基準」(公式HPより)と謳われており、世界約160か国で実施されています。
そのため、問題文にも解答欄にも日本語は一切使われていません。英文和訳、和文英訳のような問題もありません。英語による英語のテストだと考えてください。また、日本の中学・高校のテストのような「知識」を問うものではなく、「コミュニケーション」としての英語力を計るものです。
つまり、英語話者とのコミュニケーションが求められる場合に必須の能力を問われるということ。ビジネスにおいて今後、そういった場面は多数出てきますので、英語コミュニケーション能力の高さをアピールできるTOEICは、就活に有利になるのです。昇進試験などにTOEICを利用する企業もありますので、入社時だけでなく、その後のキャリアにもかかわる資格です。
それに加えて、学生にとって英語はこれまでにも学んできた科目であり、手が付けやすい点からもおすすめの資格と言えます。TOEICは「合格」「不合格」という線引きをするものではありません。「990点満点中〇点」というスコアが出るだけなので、自分の現在地を測るには最適です。
次に「簿記」について。簿記をおすすめする一つの理由は、ビジネスに直結しているからです。収入と支出を記録した損益計算書(P/L)、貸借対照表(B/S)は企業が必ず扱わなければならないもの。キャッシュフロー計算書や、株式資本等変動計算書などの財務諸表知識も必須です。
しかしながら、日本の教育上、簿記は商業科のある高校を除いて、ほぼ大学生以降にしか学ぶ機会がありません。そのため、経営者であっても財務諸表の細部までは理解している人が少ないのが実情です。ですが、ビジネスにおいてお金の流れをつかんでおくことほど大切なことはありません。
実はこれが、簿記をおすすめするもう一つの理由です。お金の流れをきちんと把握して整理できる人がなかなかいない。だからこそ、簿記の勉強をしておけばチャンスが増えていくのです。
多くの経営者は税理士などに委託して財務管理をしているのですが、あなたが財務諸表をきちんと読めるようになり、施策の根拠を数字で示せるようになれば、大変な武器になります。
多くの人が横一線で勉強を始められるので、大学生になってから考えはじめても遅くはないのが簿記検定です。金融関係の業種への就職を考えている人、経理や事務職を希望している人は取得しておくといいでしょう。
就活に有利になるレベルというと、日本商工会議所が主催する日商簿記検定の1級レベルとなり、かなり勉強量を必要とします。ですが、1級までいかなくても、2級を取得しておくだけで実践には大いに役立ちますし、担当者に印象付けることも可能です。自分の目指す業界なども考慮に入れながら目標レベルを設定しましょう。
続いて、秘書検定もおすすめできます。秘書検定とは、ビジネスシーンで求められる知識や技能、マナーなどを総合的に測る検定です。社長秘書を志望する人だけが対象かというと、そうではありません。
一般的なビジネスマナーなども漏れなく学ぶことができるため、資格の勉強をしているだけで就活に役立つ可能性が高いものです。秘書検定に求められるのは次の5つの領域の力です。
理論
1.必要とされる資質
2.職務知識
3.一般知識
実技
4.マナー・接遇
5.技能
この5領域において60%以上の正解率だった場合、合格とされます。たとえば、必要とされる資質の一つ「秘書の仕事で心掛けること」、マナー・接遇でおける「敬語の使い方」などの基本事項は3級の範囲です。
「上司の不在時の対応について」や「あいさつ状に適切な言葉」など、より実務に近く、複雑で高度な知識・技能を必要とするのが1級の試験です。
秘書検定はビジネスによくある場面をケーススタディで学べるため、実務を行ううえで、画一的ではない、柔軟な対応を求められたときにも応用が利きます。資格を持っているという事実だけで有利になるということはあまりありませんが、持っていればビジネスマナー等に関して理解があるという印象を与えることができるでしょう。
大学生までのマナーと、社会人としてのマナーはまったく違います。社会に出てから、「あれもこれも身につけないと」とゼロから焦るよりは、少しでも社会人としてのマナーを身につけておくのは就活以外の観点からも大事なことではないでしょうか。
資格取得において注意すべき点がいくつかあります。
一つは「資格取得そのものを目的にしてはいけない」ということです。資格が就活に有利だからと言って、資格の勉強ばかりに力を入れて「資格コレクター」になってはいけません。なぜ資格を取るのかをよく考えるべきです。
資格は、「就職のため」に取得するのものではありません。「その後のビジネスに役立たせる」ためのもの。あるいは、「学業の補助になる」という取得理由でもいいかもしれません。学生の本分は学業です。学業をせずに資格ばかり集めている人に、企業の担当者はいい印象は持ちません。
また、その資格が「志望する業界に合っていない」場合は、よほどの理由がない限り、アピールポイントにはならないので注意しましょう。
業界に合っていても、資格をアピールしすぎるのは良いことではありません。そもそも大卒時の就活においては企業側もそこまで「業界経験」や「即戦力」を求めていないのです。大学生の間にできる社会経験なんて、たかが知れているからです。
だから学生がいくら資格を取ったと言っても、すぐに戦力になるとは思っていません。資格によってアピールできるのは、真剣にその業界で働きたいという意欲や熱意。あるいは、資格を取るために努力した過程となります。
なので学生側も、「資格、資格」と視野を狭めず、自分の将来に必要だと思うものから手を付けていくことをおすすめします。
ここからは対策本をご紹介します。まずは、TOEIC対策におすすめできる本です。一般企業の就活の際に履歴書に「書ける」基準と考えると、550~600点以上は必須。また「業務に役立つ」レベルとなると800点ほどは必要とされるでしょう。
今回はまず最低限の基準となる550点を突破するための参考書を、分野別に3冊厳選しました。
1冊目はリーディングの文法(パート5,6)の攻略に役立つ本です。学生は英語以外にも、勉強しなければいけないことがたくさんあります。そんな人のために、特急列車に乗るようなスピード感で文法を学んでいけるのがこの本。
- 著者
- 花田 徹也
- 出版日
- 2009-10-07
初級(550点)、中級(730点)、上級(900点)とレベル別にポイントを解説。解き方のテクニックも身につきます。とにかく効率を重視し、スピードをいかに上げるかというとところに重点が置かれています。各章の解答目標タイムも設定されていて、テンポよく学べるのが特徴です。
著者がTOEIC専門スクールを運営している人物なので、まさに実践に則した形で教えてくれます。問題と向き合い、どんな手順で解いていくのか、その場で講師が話しているような解説が入っているので、学生が迷うことがありません。
「読めばわかるけど聞くとわからない」これは、日本人にはとても多い特徴です。知識があるだけでは、リスニングは突破できないのです。この参考書を使えば、パート3,4の聞き取りがよりスムーズにできるようになるでしょう。
- 著者
- ["早川 幸治", "ヒロ 前田"]
- 出版日
- 2017-01-25
講義→例題→トレーニング→練習問題とステップを踏んで勉強を進められます。会話形式の問題はどこがポイントなのか、スピーチやニュースなどの長文聞き取りではどこに気をつければいいのかなど、問題形式によっても詳しく解法が書かれています。
この本でも、初級・中級・上級とレベルごとに押さえておきたいポイントが整理されているので、どのレベルの人でも対応可能。最後は2回分ついている「ミニ模試」で仕上げ、本番への準備をしましょう。
最後は総合問題演習。実践と同じ形式、問題数で演習を行いましょう。紹介するのは国際ビジネスコミュニケーション協会から出されている「公式問題集」。2016年5月から変更になった出題形式にも対応しています。
- 著者
- Educational Testing Service
- 出版日
- 2016-02-18
内容としては、各パートのサンプル問題を軽く行ったあと、すぐにTOEIC練習テストになります。テストは2回分。公式の問題集なので、問題開発機関の質は高く、音声も本番のクオリティーで収録されています。
約3000円と、他の参考書より値は張りますが、質の高い参考書で本番さながらの練習をして、時間配分や緊張感に慣れていきましょう。
次は簿記対策の参考書です。簿記の場合、2級以上を取得していると試験官を「おっ?」と思わせることができます。社会人になってからも、簿記の知識があると実務上の数字の理解も深まるので、取得しておいて損はないでしょう。
簿記の参考書には「みんなが欲しかった」シリーズがおすすめです。ここで紹介するのは日商簿記(商業簿記)2級の「教科書」編。日商簿記2級を受験する場合は、これのほかに「問題集」編が必要になります。
- 著者
- 滝澤 ななみ
- 出版日
- 2017-02-20
紙面はフルカラーで見やすく、解説も図解などを使いながら極力シンプルに、わかりやすくまとめられています。うれしいのは、シリーズ化されていて解説の仕方がすべて統一されているので、教科書→問題集へと進んだ時にもスムーズに理解が進むこと。
独学で勉強をする場合は特に、聞きなれない用語が出てくると混乱してしまいがちです。本書ではつまずきやすいポイントを先回りして解説してあるので、効率的に勉強を進めることができます。
最後は秘書検定の対策本をご紹介。秘書検定は、資格を持っていると有利というよりも、その内容が就活のマナーにも通じる所があるため、場合によっては参考書を読んでおくだけでも役立たせることができます。
秘書検定も、独学で学ぶことが多い資格ですが、その内容は単純な知識暗記では太刀打ちできないことが多く、一般的な勉強と比べると「つかみどころがない」ように感じます。ですがしっかりと問題集をこなせば、十分に力をつけることはできるものです。
- 著者
- 佐藤 一明
- 出版日
- 2014-03-20
この本は、「必要とされる資質」「職務知識」「一般知識」「マナー・接遇」「技能」の5領域それぞれの準備の仕方を丁寧に教えてくれます。「マナー・接遇」「技能」に関しては、実技編と記述編というかたちで別々に対策ができます。
「そもそも秘書検定とは何なのか?」「どのように合否の判断がされるのか」といった概要も前半で説明されているので、初心者にもおすすめできる1冊です。どれだけの期間で、どれだけの力をつけ、どう役立てるのか、という戦略を、本書をお供にして立てていくと良いでしょう。