小説『燃えよ剣』土方歳三の生きざまを見よ!魅力が詰まった名言も紹介

更新:2018.10.10 作成:2018.10.10

新選組副長・土方歳三の生涯を描いた、司馬遼太郎の長編歴史小説。幕末の動乱期を新選組副長として剣に生き、剣に死んだ男。そして「鬼の土方」と呼ばれ、敵からも味方からも、もっとも恐れられた1人の男を活き活きと描写しています。『竜馬がゆく』と並ぶ司馬の代表作ともいわれる、幕末物の傑作です。ラストシーンのかっこよさは、特に痺れるものがあります。 本作は岡田准一が主演で、2020年に映画化が決定。今回は、そんな話題の本作についてご紹介しましょう。あらすじや名言、土方の魅力など、詳しく解説していきます。

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目次

傑作小説『燃えよ剣』が面白い!あらすじの内容をネタバレ紹介!2020年に映画化

 

武州石田村の百姓の子「バラガキ(乱暴者)のトシ」こと土方歳三は、ただの喧嘩好きではなく、組織作りの才能がありました。

将軍守護のために結成された新撰組は、当初、百姓の子や浪人の寄せ集めに過ぎませんでした。しかし彼は局長の近藤勇を補佐し、自らは裏方、憎まれ役に徹し、組織作りに力を注ぎます。新撰組は彼の統率で、幕末最強の集団へと変貌していくのです。

尊王攘夷派を新撰組が襲撃した池田屋事件以来、京都に血の雨が降るところには、必ず新撰組の姿がありました。これが、彼らの絶頂期です。

しかし、鳥羽伏見の戦いで破れて朝敵となって、江戸へ逃げることになりました。さらに盟友である沖田総司、近藤も死に、新撰組は瓦解していきます。

それでもなお、土方は戦いに憑かれたかのように、戦場のなかを北へと向かうのでした。

本作は史実に忠実なばかりではなく、架空の人物なども配置して、フィクションを織り交ぜて物語を盛り上げます。

 

著者
司馬 遼太郎
出版日

2019年2月現在で発行部数500万部を突破している本作は、国民的な作家である司馬遼太郎の作品のなかでも最高傑作との呼び声が高く、くり返し映像化もされている作品。なんと、本作をベースとした舞台が宝塚で公演されたこともあります。1966年には、栗塚旭の主演で映画化され、テレビドラマ化は3度もなされました。

映画と同じ1966年に東京12チャンネル(現テレビ東京)系列で、1970年にはNET(現テレビ朝日)系列で、1990年には再びテレビ東京系列でテレビドラマ化されています。

1990年版は、土方に役所広司、近藤に石立鉄男、芹沢鴨に前田吟、伊東甲子太郎に近藤正臣という豪華なキャストでした。また、2004年には上川隆也主演で舞台化もされています。

そして2020年、再び映画化が決定。V6の岡田准一を主演に、柴咲コウ、鈴木亮平、伊藤英明、Hey!Say!JUMPの山田涼介などのキャストが発表されています。大河ドラマに出演した俳優が多数いるところも、なんだか期待が持てるポイントです。

監督は原田眞人。かつて、司馬遼太郎作品である『関ヶ原』でも監督を務めた人物です。新たなキャストで展開される映画は、どのようなものになるのでしょうか。必見です。

作者・司馬遼太郎とは?代表作は『竜馬がゆく』!

 

1923(大正12)年、大阪市生まれ。司馬遼太郎はペンネームで、本名福田定一です。

『梟の城』で直木賞を受賞。『竜馬がゆく』『燃えよ剣』『花神』『翔ぶが如く』『坂の上の雲』などの代表作があります。小説家の他、文明批評家としても評価が高く、『この国のかたち』『街道をゆく』など数多くのエッセイも手がけた人物です。

第二次世界大戦では、満州の戦車連帯に配属されました。敗戦後、日本のおこなった戦争のくだらなさ、その戦争を支持した日本人の愚かさに悩み、「昔の日本人は、もう少しマシだったのではないか」という思いから、歴史に興味を持ったといいます。

 

著者
司馬 遼太郎
出版日
1998-09-10

 

戦後、日本の過去の歴史を「否定すべき野蛮」とする風潮があった時代に、彼は日本史のなかに優れた人物を見付け出し、描いてきました。

それも、主人公と同じ視点に立って感情移入するというよりは、少し冷めた視点で外から眺めるようなところがあり、その人物の欠点や間違いも含めて、余裕を持って、時にユーモラスに描いたのです。

当時の価値観と現代の価値観を比較しながら、歴史の大局を俯瞰する文明批評的な視点は、そこから生まれたのでしょう。

小説のなかで突然「余談だが……」あるいは「筆者は思うのであるが……」といった形で、ストーリーには直接関係のない自分の意見や経験、連想されることなどを挟む手法は散漫であるとして嫌う人がいる一方、司馬ファンの多くが大好きだ、それが魅力だと言っており、人気な点です。

1981年(昭和56年)に日本芸術院会員、1991年(平成3年)には文化功労者となり、1993年(平成5年)に文化勲章を受章しました。そして1996年(平成8年)に、72歳で亡くなったのです。

 

『燃えよ剣』登場人物を紹介!

 

ここではそれぞれに個性的な登場人物たちをご紹介します。

・土方歳三

新撰組副長。戊辰戦争では、旧幕軍側指揮官の1人だった人物です。「天才」「鬼」と呼ばれましたが、等身大の男として受け入れたのは、近藤と沖田、そしてお雪だけでした。

・近藤勇

新撰組局長。豪傑肌の人物ですが、拳を口の中に入れるのが特技というお茶目なところもあり、初めて写真を撮る時のはしゃぎようなど、垣間見せる可愛らしさも魅力です。

・沖田総司

新撰組一番隊組長。土方、近藤を凌ぐ天才剣法者。愛刀は菊一文字則宗です。人の命を軽く見る冷酷さもありますが、この作品では天真爛漫、陽気な人物で、熱烈なファンも多くいます。

・芹沢鴨

新撰組の前身である、壬生浪士組の初代筆頭局長となりますが、その権威を笠に着た乱暴狼藉を働きます。七里研之助と並ぶ、前半最大の悪役です。

・斎藤一

新撰組三番隊組長。維新後も生き残った、数少ない新撰組幹部の1人。この作品では土方と北海道まで行ったことになっていますが、史実ではありません。

・佐絵

宮司の娘で、武蔵国時代の土方の恋人だった人物。彼女の許へ忍んで行ったとき、土方は初めて人を斬りました。京都で再会しますが、その際に彼女は土方を裏切ります。

・七里研之助

居合いの名人。土方を恨んでつけ狙います。武蔵国では決着が付かず、京都では攘夷派の1人となって土方の前に現われるのです。京都では「人斬り研之助」と呼ばれました。

・市村鉄之助

新撰組隊士。土方歳三附属。沖田に似ているという理由で、土方の小姓に選ばれました。箱館戦争の際、彼の遺品を持って脱出します。

・清河八郎

将軍警護の浪士組誕生を影で促しますが、実は尊王攘夷に利用しょうとする策士です。「あれは悪人だぜ」というのが、土方の彼に対する評価でした。

・榎本武揚

幕臣、化学者、外交官、政治家、海軍中将。箱館戦争における土方の上官に当たります。土方は彼を近藤に似た楽天家と見抜き、助けてやろうと思います。

・桂小五郎

長州藩士。薩長同盟の締結などで有名ですが、本作では土方らの道場「試衛館」に道場破りにやってきた剣豪の助っ人として登場します。

・お雪

京都で七里から逃げるときに出会った土方の恋人で、本作のヒロイン。江戸出身で、武士の未亡人です。殺伐とした物語のなかで、土方と彼女の交流だけがしみじみとした情緒にあふれます。

 

『燃えよ剣』主人公・土方歳三とは?名言も紹介!

 

ここでは土方歳三について、さらに掘り下げてご紹介しましょう。天保6年(1835年)、武蔵国多摩郡石田村(現在の東京都日野市石田)生まれ。武士の家系ではなく、多摩の豪農の10人兄弟の末っ子でした。薬の行商をしながら、各地の剣術道場で修行を積みます。

やがて近藤勇と出会い、天然理心流に入門。そして近藤らとともに、将軍警護のための浪士組に応募し、京都へと向かいました。

京都で浪士組の活躍が認められて新撰組が発足すると、近藤が局長、土方は副長の地位に就任。地位は近藤の方が上ですが、実際の指揮命令は土方から発したといわれます。尊王攘夷派の志士を襲撃した池田屋事件では、天下に新撰組の名を轟かせました。

新撰組内部では、隊士らに規律を厳しく守らせます。守らなかった隊士には、たとえ幹部の人間であろうと切腹を命じました。新撰組隊士の死亡原因第1位は切腹であったといわれているほどで、これも「鬼の副長」と怖れられた所以の1つです。

また、これからは刀では戦はできない時代であると悟り、銃や大砲などの洋式軍備を始めようとする、先見の明もありました。鳥羽・伏見の戦いに始まる戊辰戦争では、負傷した近藤の代わりに新撰組を率いて戦いますが、敗戦を続けながら東北から北海道へと転戦します。

彼は正統な天然理心流の剣術者としては、あまり高い地位にはなれなかったようです。どうやら行商中に身に付けたさまざまな流派の癖が取れず、天然理心流としては邪道と見られたよう。しかし、道場ではともかく、実践では滅法強かったといいます。

これは近藤や沖田も同様で、武士ではないゆえに剣術の型にとらわれず、臨機応変な戦い方ができたということでしょう。土方の愛刀は、和泉守兼定という名刀でした。

当時としては長身のうえ色白の美男子であり、衣服にもこだわる洒落者。おまけに和歌や俳句をたしなむ風流人でもありました。当然、女性にはもてたようです。京都で新撰組が活躍した頃は、芸者や舞妓の恋文が大量に送られたといいます。

もっとも、俳句は上手ではなかったのか、本作のなかでは沖田にからかわれています。

次に、土方の気性をよく表わす名台詞を紹介しましょう。

「目的は単純であるべきである。思想は単純であるべきである」

 

 「なあ総司、おらァね、世の中がどうなろうとも、
たとえ幕軍がぜんぶ敗れ、降伏して、最後の一人になろうとも、やるぜ」 

 

「おらァ、子供のときからずいぶんと喧嘩をしてきた。
喧嘩てのは、おっぱじめるとき、すでにわが命ァない、と思うことだ。
死んだ、と思いこむことだ。そうすれば勝つ」
(すべて『燃えよ剣』より引用)

こういったセリフからは、幕府の将来や日本の未来を考えるわけではなく、ただひたすらに筋をとおそうとする彼の気性が感じられます。

将軍の権威のためでなく、民の幸福のためでなく、言ってみれば彼がいかに生きればもっとも輝くかという一種の「美意識」に準じて生き、そして死んでいった。そういう彼を、司馬遼太郎は作り上げたのです。

 

お雪とは?実在しないキャラクターの魅力を考察!

 

彼女は司馬遼太郎が創作した人物で実在しませんが、この作品に登場する女性のなかではもっとも鮮やかな印象を残します。描写も細やかで、控え目ながら芯が強く、普段の物静かさからは想像もできない大胆な行動を取るところなどが、活き活きと描かれているのです。

生い立ちなども詳しく書かれており、何よりも土方への愛情が深く強いにもかかわらず、べた付かない距離の取り方がいじらしくも毅然と描かれて、読者の胸を打ちます。

京都で暮らしていた頃、土方が江戸へ行く用事があり、「何か伝言でもあるか」と訊ねると、京都にはない「たたみいわし」が食べたい、と応える彼女を、土方は可愛いと思います。この場面などは、ロマンチックであると同時にリアリティがあって、まるで彼女が実在したような錯覚を覚えますよね。

 

『燃えよ剣』の内容は嘘!? 史実の違いを解説!

 

この作品は歴史の再現を目的とした研究書の類ではなく、娯楽を目的とした小説なので、歴史資料とは異なる部分も多くあります。読物として面白くなるように、意図的に創作を混ぜ込んでいるのです。その例をいくつかご紹介しましょう。

天然理心流を田舎剣法と強調しているのは、後の新撰組の活躍との落差を付けて、物語を盛り上げるためでしょう。実際には名門とはいえないまでも、そんなに粗末な無名の流派ではなく、道場は大小30~40ほど。近隣の農村へ出向き指導したため、門下生の数は大変多くありました。

沖田はドラマなどでも必ずイケメンの美男子が演じますし、本作でも「ちょっと色小姓にしたいような美貌」(『燃えよ剣』より引用)などと書かれていますが、それを示す資料はありません。残っている肖像画などは、少なくとも現代の基準では美男子とはいいがたいものとなっています。

一方、土方については写真も残っており、美男子であること、女性にもてたことを示す証言も多く、「役者にしたいようないい男」だったことは間違いありません。

彼の敵役の七里研之助は完全なフィクションで、作者の創作したオリジナルキャラクター。また、先ほどご紹介した土方の恋人・お雪も架空のキャラクターです。

 

『燃えよ剣』は聖地巡りにも最適!

 

ここでは、本作の舞台となったところを中心に取り上げていきます。ぜひ参考にして、聖地を巡ってみてはいかがでしょうか。

・武蔵国(多摩地域)

この地域は土方や近藤の生まれ育った場所であり、天然理心流の日野道場などもあった場所。ですので聖地は多く、マニアには巡礼のし甲斐があります。

マニアでなくとも印象に残っている、作品冒頭の乱交の祭礼・くらやみ祭りがおこなわれた神社・六社明神は、現在の府中市にある大国魂神社です。土方の生家跡は、今は「土方歳三資料館」になっています。

日野駅近くには「日野市立新選組のふるさと歴史館」が存在。そして、関東三大不動の1つでもある高幡不動尊金剛寺は土方の菩提寺だったこともあり、彼の銅像や「近藤勇・土方歳三顕彰碑」が建っているのです。

七里研之助は架空の人物ですから、当然、土方、沖田との決闘も史実ではありません。しかし、決闘の場所となった分倍河原は実在しています。ちなみに、七里が八王子比留間道場師範代であるため、八王子に関するエピソードも登場。こちらも聖地として親しまれています。

・京都

京都は幕末動乱の主な舞台ですから、関連する場所も多々あります。そのなかでも、特に本作と関連が深い場所を挙げてみましょう。

新選組屯所跡・壬生郷士八木邸は、新撰組の最初の屯所として使われていました。八木邸内には、新撰組最初の局長・芹沢鴨が暗殺された部屋、そのときに付けられた刀傷も残っています。その壬生屯所にほど近い光縁寺と壬生寺には新撰組隊士の墓が多くあり、参拝する歴史ファンの姿が絶えません。

池田屋跡は、聖地というよりは超メジャーな観光スポットですが、やはり外せないでしょう。池田屋事件の跡地は現在、居酒屋「池田屋 はなの舞」となっています。店内には大階段があり、池田屋事件の舞台となった旅籠「池田屋」を再現したイメージの内装です。

 

『燃えよ剣』の結末をネタバレ解説!気になる最後は?

 

近藤の死後、土方は宇都宮、会津、箱館と転戦していきます。彼とともに北海道に上陸した旧幕府軍は、10日ほどで箱館を占拠しました。

インテリぞろいの幹部たちのなかで、彼だけは無学な喧嘩屋。そのため常にもっとも激しさの予想される戦地へ派遣されましたが、彼はそれで満足でした。喧嘩の巧さだけが、彼の存在意義だったのです。

 

著者
司馬 遼太郎
出版日
1972-06-01

 

彼の活躍で松前城を落とし、さらに敵の軍艦を襲撃します。しかし勝機は見えず、すでに死を覚悟している彼の許に、なんとお雪が現われるのです。そして2人は、束の間の幸せな時を過ごすのでした(終盤の萌えポイント!)。

いよいよ最後の決戦が近付いたある夜、彼の夢の中に近藤と沖田が現われる場面は読者の胸を熱くし、思わず泣ける展開となっています。土方の最後の戦いは悲愴なものですが、その悲愴さを超えた爽やかさを感じる作品となっているのです。

彼の最後はどうなるのでしょうか。その生きざまを、ぜひ見届けてください。

 

映画『燃えよ剣』が岡田准一主演で近日公開予定!

 

『燃えよ剣』が映画化し、近日公開予定です。2020年5月22日に公開予定でしたが、公開が延期となっています。

主人公・土方歳三を演じるのが岡田准一です。新選組の局長・近藤勇を鈴木亮平が、沖田総司を山田涼介が、初代筆頭局長・芹沢鴨を伊藤英明が演じます。

土方を思う女性・雪を柴咲コウが演じるなど、豪華俳優陣が出演します。

西本願寺などの世界遺産や国宝級の建物で撮影を行ったそうで、映画の背景も注目ですね。

詳細なキャストや情報は、ぜひ映画『燃えよ剣』公式サイト 近日公開!をご覧ください。

延期後の映画公開日はまだ決まっていませんが、予告映像は公開されていますのでぜひご覧ください!