漫画『ジョジョの奇妙な冒険』第1部「ファントムブラッド」をネタバレ解説!

更新:2021.11.17

『ジョジョの奇妙な冒険』は今でもシリーズの連載が続く、日本を代表する漫画です。 今回はその第1部、19世紀のイギリスを舞台としてくり広げられる、波紋の戦士と吸血鬼との暗闘「ファントムブラッド」をご紹介。ジョジョとディオ。100年以上続く血の宿命の始まりです。

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漫画『ジョジョの奇妙な冒険』第1部「ファントムブラッド」も面白い!あらすじやキャラをネタバレ紹介ィーーッ!

 

19世紀イギリス。名門貴族の長男ジョナサン・ジョースター(ジョジョ)は、父ジョージのような紳士になるべく日々己を律して生活していました。

しかし、ジョージの恩人の息子というディオ・ブランドーが養子にきてから、彼の生活は一変。支配欲に支配されているディオによって、徐々にジョナサンは孤立していくのです。

7年後、表向きは友好的だったディオによるジョースター家乗っ取りに、ジョナサンは気が付きます。追い詰められたディオは、謎の石仮面を被って不死身の吸血鬼に変貌するのです。

ここから、2人の青年の戦いが始まります。

 

著者
荒木 飛呂彦
出版日

 

これぞ伝説の始まり。シリーズの代名詞たる超能力のスタンドこそ出てきませんが、紛れもなく「ジョジョ」です。

ジョジョ第1部「ファントムブラッド」。連載当時のサブタイトルは「第1部 ジョナサン・ジョースター ―その青春―」でした。この時点で複数に渡るシリーズ構想があったわけです。そのせいか、かなり短い話で巻数も5巻しかありません。

連載時期は1987年なので、今から30年以上も前。作画は『北斗の拳』を思わせる劇画調ですが、そこで語られる奇妙な物語には、やはり今に通ずるものがあります。

2007年に映画化、2012年にテレビアニメ化された本作。特にテレビ版の熱量は凄まじく、原作コマから3Dキャラが動き出すOPや、洋楽『Roundabout』を起用したEDなどでも話題を呼びました。

複数回のメディアミックスで主要キャラの声優がそれぞれ異なりますが、現在はテレビアニメを担当した興津和幸と子安武人が、それぞれジョナサン役、ディオ役として認知されているようです。

 

「ジョジョ」第1部の波紋を紹介!能力や必殺技とは?

 

前述したように、第1部にはスタンドが出てきません。代わりにジョナサン達が使う技術が「波紋法」です。チベット発祥の秘術で「仙道」とも呼ばれます。

波紋法は特殊な呼吸によって肉体を制御し、太陽光と同質のエネルギーの波=波紋を生み出す技です。波紋は、太陽光が弱点である吸血鬼などに効果的。また、この波紋を応用することで肉体を強化したり、負傷を治したり、さまざまなことに実用出来ます。

代表的な必殺技は、拳から波紋を叩き込む「山吹き色の波紋疾走(サンライトイエローオーバードライブ)」。他に、水に伝導させる波紋や、金属に伝わせる波紋など、さまざまな技が登場します。

 

「ジョジョ」第1部の登場人物を紹介!初っ端から濃いキャラだらけ!

 

「ファントムブラッド」は、主人公ジョナサンと、ライバルのディオの物語ですが、その脇を固めるキャラも彼らに負けないくらい存在感の強い者達が多いです。

まず、名解説役にして、後の部でも強い影響力を残す、ロバート・E・O・スピードワゴン。波紋が使えないのでボス格の相手は出来ませんが、彼の普通の人間らしい戦い方も見所です。

そしてジョナサンの波紋の師匠にして、人生観にも影響を与えたウィル・A・ツェペリ男爵。老練さと茶目っ気が同居した、ナイスミドルです。登場時のインパクトが絶大でした。

波紋といえばトンペティ師匠、ダイアーストレイツォも忘れられません。特に容姿端麗なストレイツォは、ここで途轍もなく頼もしい仲間として登場するのですが、第2部で……。

また決戦の地ウィンドナイツ・ロットの少年ポコとその姉も、脇役ながら印象的でしょう。姉は「ポコの姉ちゃん」と名前すら出てきませんが、吸血鬼ディオに屈さなかった数少ない一般人の1人です。

 

「ジョジョ」第1部のジョナサン・ジョースターを紹介!親しみやすい主人公

著者
荒木 飛呂彦
出版日
1988-01-08

ジョナサン・ジョースター、略してジョジョ。歴代最初のジョジョであり、7部以降のシリーズを除けば主人公は全員が彼の血を継いでいます(5部のジョルノも、肉体的にはジョースター家です)。

立派な紳士たることを目指す、正義感の強いキャラ。生真面目で優しく、後の主人公達がどこか尖った性格であることを思うと、とても親しみやすい人物像だったといえます。

波紋で戦う事情から、肉体的にはかなり鍛えています。精神的にも非常にタフであり、作者のとあるインタビューによれば、案外ジョナサンこそ歴代ジョジョ最強かもしれないとのこと。

ジョナサン・ジョースターについて、詳しくはコチラの記事もチェック!
<ジョナサン・ジョースターに関する9の事実!名言や波紋、基本スペックなど>
 

「ジョジョ」の圧倒的ラスボス!ディオ・ブランドーを紹介!

 

彼こそのちに邪悪の化身、悪のカリスマとなるジョースター家の宿敵です。生来の甘い顔立ちと高い知性を持ちながら、途轍もない野心家。貧民街出身ゆえのハングリーさもあり、「ジョジョ」を代表する悪役ながら、複雑な背景を持っています。

 

著者
荒木 飛呂彦
出版日

第3部ではさらに成熟した姿、通称「DIO」として登場し、最強クラスのスタンド能力「ザ・ワールド」まで身に付けるのです。

第2部と第4部、そして第8部以降を除けば、ほとんどの部において、なんらかの形で彼が関係してきます。

直接出てくるのは第3部までですが、多くの物語に関わってくるところから「ジョジョ」の物語自体が、ジョースター家とディオを描くものだと考えられるでしょう。

ディオについて、詳しくはこちらの記事もチェック! 
<ディオ・ブランドーに関する8の事実!第三部の承太郎との決戦がかっこいい!>
 

愛犬・ダニーのエピソードが悲しすぎる……ディオの残虐性

 

ダニーとは、ジョナサンの愛犬です。犬種は明かされていませんが、作中の描写からするとイングリッシュ・ハウンドか、もしくはグレート・デーンだと見られます。

元々は幼少期のジョナサンと仲が悪かったのですが、彼が溺れていたところをダニーが身を挺して救ったことから、無二の親友となったのです。ジョナサンにとっては、まさに心の拠り所となりました。

 

著者
荒木 飛呂彦
出版日

 

しかし、最終的にジョナサンを排除したいディオにとって、ダニーは目障りでした。

ある時、ディオはジョナサンに屈辱的な敗北を喫し、その腹いせとしてダニーを狙います。口を針金で縛り、木箱に閉じ込めたうえで、屋敷の焼却炉に入れたのです。そして……。

この出来事は前向きなジョナサンに、深いトラウマを植え付けました。

 

ブラフォードとの決闘がアツい!幸運と勇気の剣の名シーン

 

黒騎士ブラフォードは、ディオ配下のゾンビとしてタルカスとともに登場する強敵です。

2人は元々、300年前にエリザベス1世と王位継承を争った女性メアリー・スチュアートに仕えた騎士でした。主君の助命のため、自ら命を差し出すほど忠義に篤い男達だったのですが、ディオの手で蘇らせられたのです。

しかし、ブラフォードは心まで悪に染まっておらず、最後まで高潔な騎士としてジョナサンと戦いました。

 

著者
荒木 飛呂彦
出版日
1988-06-01

ジョナサン……このおれの剣に刻んである、この言葉をおまえに捧げよう!
Luck!(幸運を)
そして 君の未来へ これを持って行けッ!
PLUCK(勇気をッ!)
(『ジョジョの奇妙な冒険』4巻より引用)

最後には人間の心を取り戻し、自らの愛剣をジョナサンに託して死亡。一連のシーンは、シリーズ屈指の名場面です。

ツェペリ VS タルカスの死闘!

 

ブラフォードはジョナサンと熱い戦いをくり広げましたが、その一方、同時に復活したタルカスはといえば……。ゾンビになっても高潔だったブラフォードと違って、彼は憎しみに取り憑かれた復讐鬼と化していたのです。

仲間だったはずのブラフォードすらも侮辱し、チェーン首輪デスマッチで波紋を練れないジョナサンを追い詰めます。まさしく、悪役に相応しい所行。

ジョナサンを救うためツェペリ男爵が戦い始めるのですが、そこには1つの懸念がありました。それは、師トンペティに予言されていた死が、ここで訪れるという予感です。

そして、非情にもそれは現実となってしまいます。ツェペリは瀕死の状態から最後の波紋をくり出して、ジョナサンにすべてを託すのです。それは、あまりにもつらい別れでした。

連載時、ツェペリには妻子がいないとされていましたが、直後の第2部には孫に当たるシーザー・ツェペリが登場します。設定の変遷による矛盾ですが、妻子をいないものと思って戦いに賭けていた、と考えることも出来るでしょう。

 

「ジョジョ」第1部にはたくさんの元ネタがあった!? 音楽からの由来多数!

 

作者の荒木飛呂彦は洋楽好きで知られており、「ジョジョ」シリーズにも洋楽に由来する名称が多数登場します。

たとえばシリーズ名「ジョジョ」は、The Beatlesの「Get Back」に歌われる「JoJo」という歌詞が元ネタ。歌詞の「JoJo」はジョン・レノンのことだとされています。また、ヒロインのエリナは「Eleanor Rigby」で、ジョージ・ジョースターはThe Beatlesメンバー、ジョージ・ハリスンからきているとか。

ディオ・ブランドーは「DIO」、スピードワゴンは「REO Speedwagon」、ウィル・A・ツェペリは「Led Zeppelin」と、いずれもロックバンドが由来です。

こうして元ネタを探しながら読むのも、「ジョジョ」の楽しみ方の1つといえるでしょう。

 

「ジョジョ」第1部のラストでエリナが抱いてた赤ちゃんの正体を考察!実は、あの人!

 

「ファントムブラッド」のラストでは、ジョナサンと結婚したエリナが、沈没する船から脱出するシーンが描かれます。その時に彼女は、1人の赤ん坊を抱いていました。それは2人の子供ではなく、沈む船から救助した生き残りの子供だったのです。

実はこの赤ん坊こそ、第2部に登場する波紋の師範、リサリサその人。エリナが身籠もっていたジョナサンの息子ジョージ・ジョースターII世と後に結婚し、数奇な運命を辿るキャラです。

そのことを踏まえて読むと、より一層ラストシーンが感慨深いものとなるでしょう。

 

「ジョジョ」第1部の名言にシビれる!あこがれるゥ!ランキングベスト5

ジョジョには名シーンを彩る、熱い名言が多数あります。それは、シリーズ初代たる第1部も例外ではなく、今見てもまったく色褪せないものばかりです。そのなかから、見れば必ずテンションの上がる名言ベスト5をご紹介しましょう。

第5位

こいつはくせえッー!
ゲロ以下のにおいがプンプンするぜッ――――ッ!!
こんな悪(ワル)には出会ったことがねえほどなァ――――ッ
環境で悪人になっただと?
ちがうねッ!!
こいつは生まれついての悪(ワル)だッ!
(『ジョジョの奇妙な冒険』2巻より引用)

スピードワゴンの代名詞ともいえる名言。ディオの演技から本質を見抜き、ジョナサンに警告しました。彼にここまで言わせるディオの邪悪さも際立っています。

第4位

きさま、いったい何人の生命をその傷を癒すのに吸い取った?

 おまえは今まで食ったパンの枚数をおぼえているのか?
(『ジョジョの奇妙な冒険』3巻より引用)

1度は敗北したディオに対して、犠牲を問い詰めるツェペリと、その返答です。ディオの復活に戦慄するのと同時に、人間を食料と見なす怪物的思考が垣間見える、恐ろしいセリフでしょう。

著者
荒木 飛呂彦
出版日
1988-06-01

第3位

ふるえるぞハート!
燃えつきるほどヒート!!
おおおおおっ
刻むぞ血液のビート!
山吹色の波紋疾走(サンライトイエローオーバードライブ)!!
(『ジョジョの奇妙な冒険』4巻より引用)

ジョナサンが黒騎士ブラフォードに、波紋ラッシュを叩き込んだ際の名言です。テンポよく韻を踏んだかけ声が、とても印象に残ります。意外なことに、こうして技名を口にしたのは、たった2回だけでした。

第2位

おれは人間をやめるぞ!
ジョジョ――ッ!!
おれは人間を超越するッ!
ジョジョおまえの血でだァーッ!!
(『ジョジョの奇妙な冒険』2巻より引用)

謎の石仮面を用いて人間を超越し、吸血鬼化を目論むディオ。その生贄に選んだのは、ライバルのジョナサンでした。ここから100年に渡る因縁が始まったのです。これこそ、ディオの起源となった名言。

著者
荒木 飛呂彦
出版日
1988-04-01

第1位

人間讃歌は『勇気』の讃歌ッ!!
人間のすばらしさは勇気のすばらしさ!!
いくら強くてもこいつら屍生人(ゾンビ)は『勇気』を知らん! 
ノミと同類よォーッ!!
(『ジョジョの奇妙な冒険』3巻より引用)

ゾンビの強さに尻込みするジョナサンに対して、ツェペリが諭すように言ったセルフです。「ジョジョ」のテーマ「人間讃歌」の意味、意義を強く押し出したシリーズを象徴するような名言でした。

ジョジョの名言について、コチラの記事も要チェック! 
「ジョジョ」のシリーズ別名言ランキングベスト3!どのキャラクターが好き?
 

最後に漫画『ジョジョの奇妙な冒険』第1部「ファントムブラッド」結末をネタバレ解説!終わりと始まり

 

風の騎士たちの町(ウインドナイツ・ロット)での死闘。ジョナサンはそれを制して、ついにディオを倒し、元凶である石仮面を破壊しました。

翌年1889年2月、ジョナサンはエリナと結婚し、客船で新婚旅行へと旅立ちます。激動の戦いを終え、ようやく平和な人生を送り始める……はずでした。

しかし、ディオとの宿命は、終わったわけではなかったのです。

 

著者
荒木 飛呂彦
出版日
1988-08-01

客船には、首だけになっても生きていたディオが密かに乗り込んでいました。船内はゾンビで溢れかえり、ジョナサンは一転して窮地に立たされます。ジョナサンの最後の機転と決断が、「ジョジョ」シリーズのその後の運命までをも決定付けました。

この結末によって、『ジョジョの奇妙な冒険』というタイトルに込められた意味が、しみじみと理解出来ることでしょう。絡みあった奇妙な運命の、終わりと始まり。今日まで続く人気シリーズの原点が、ここにはあります。

 


第2部「戦闘潮流」については<漫画『ジョジョの奇妙な冒険』第2部「戦闘潮流」が実は面白い!ネタバレ解説>の記事で紹介しています。気になる方は続けてご覧ください。

いかがでしたか?第1部は「ジョジョ」シリーズ全体の知名度に反して、ややマイナーな部類であることは否めません。しかし、第1部なくしてシリーズは語れません。未読の方は、この機会に1度読んでみてください。

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