バレエといえば女性が躍るもの、というイメージをお持ちの方も多いと思いますが、この作品は「少年たちのバレエ物語」です。主人公とライバルたちの成長の過程は、まさに青春スポ根モノ。手に汗握る展開で、とにかく熱くなる!そんな本作の魅力をお伝えします。
主人公・村尾潤平(むらお じゅんぺい)は、幼いころに見たバレエの舞台で、主役の男性ダンサーに心奪われて以来、ずっとバレエに憧れていました。
しかし父が急逝してからは、意思を継ぐために格闘技に励み「男らしく生きる」ことを決意したのですが、バレエへの憧れを捨てきれず、こっそり動画を見て練習していました。
そんな彼の運命を変えたのは、転校生の五代都(ごだい みやこ)でした。潤平が遊びでジャンプしている姿を見て、それがバレエの「540」という技だと気づき、バレエスタジオを営む母・千鶴(ちづる)のもとへ連れていきます。
- 著者
- ジョージ朝倉
- 出版日
- 2016-02-12
スタジオで踊る潤平に衝撃を受け、可能性と底知れない魅力を感じた2人。この出会いから、彼のバレエダンサーとしての物語が始まります。
千鶴にバレエの基本を学び、その後、名門と言われる生川はるかバレエスクールのサマースクールに参加。それをきっかけに所属を変更し、厳しい練習に励むようになります。
都の従兄弟である天才ダンサー・流鶯(るおう)をはじめ、生川バレエスクールでもたくさんのライバルと出会う潤平。世界で活躍し続けることのできるダンサーはほんの一握りで、厳しい競争の中を生きていくことになります。同世代のダンサーたちと切磋琢磨し成長していく姿は、読む人の胸を熱くします!
実写化作品も多くあるので、ご存知の方も多いのではないでしょうか。
作者のジョージ朝倉は、繊細でセンスが光る画風と、キャラクターの心情描写に定評があります。少女漫画家として、主に恋愛漫画を描く漫画家です。クセの強いキャラクターたちが紡ぐ物語は、独特の世界観を醸しだします。
『恋文日和』はテレビドラマに、『平凡ポンチ』『ピース オブ ケイク』『溺れるナイフ』は映画化されており、人気を博しました。特に『溺れるナイフ』は約10年に渡り連載され、菅田将暉と小松菜奈のW主演で映画化され話題となりました。
- 著者
- ジョージ 朝倉
- 出版日
- 2005-03-11
そんな作者が、2015年から週間ビッグコミックスピリッツで連載をスタートしたのが、今回ご紹介する『ダンス・ダンス・ダンスール』です。恋愛要素は少なめですが、バレエの芸術性を描くシーンや、キャラクターたちが躍る姿は作者の魅力が爆発しており、大注目の作品です。
スポーツ漫画でもバトルものでも、やっぱり主人公の成長は1番胸が熱くなるポイント。彼の成長はとどまることを知りません。
独学で踊っていましたが基礎ができているわけではなく、まったくの初心者でした。
後の師となる生川先生も、初見では彼の踊りを「バレエではない」とばっさり。そして彼自身も、いろんなダンサーとの関わりの中で、基礎の大切さや自分の踊りの歪さを実感していくことになります。
しかし、彼には天性の表現力という強みがありました。音楽に含まれた感情やメッセージを表現する力に優れていて、憑依されたかのように別人となって踊ります。
そして驚く練習量で、どんどん成長していきます。朝4時ごろから練習し、他のクラスのレッスンにも出て、ずっと練習しているのです。
生川バレエスクールに移ってからは、週5回のレッスンと、個人練習、実際の舞台を観にいったり、映画を観たり音楽を聴いたり、とにかく1日中バレエのことだけ考えて生活しています。それが楽しくてしかたないと思えるのが、彼の才能といえるでしょう。
天性の表現力と持ち前の運動能力、そして圧倒的な努力で、たった2年程で、驚くべき成長を遂げていきます。それでも「もっとうまくなりたい」と前へ進み続ける潤平。これからの進化も楽しみな主人公です。
都の従兄弟・流鶯は、潤平にとって特別なライバル。
潤平が今まで隠していた「バレエが好き」という気持ちを周りに言えるようになったのは、流鶯のおかげです。彼の母は伝説のダンサーであり、幼いころからバレエを叩き込まれ生きてきた流鶯。積み重ねてきた練習と才能により、同世代では一線を画す実力の持ち主でした。
しかし彼にとってバレエとは「踊らなくてはいけないもの」。そんな意識が、潤平との出会いによって変わっていき、2人はよきライバルとなるのです。
そんな彼の過去は、5巻で詳しく語られます。
- 著者
- ジョージ朝倉
- 出版日
- 2017-04-12
ある時から2人は別の道を行くことになります。
潤平がダンサーとして必要なのは、基礎の積み重ねと、バレエへの理解を深めること。一方流鶯は、育ってきた特殊な環境もあり、周りとコミュニケーションが取れなかったり、メンタル面の強化が必要でした。自分に足りないものを得るために、潤平は生川バレエスクールを、流鶯は五代バレエスタジオで学ぶことを決意します。
それからもお互いのことを意識して、相手がコンクールに出場するとなると、気になって仕方がないといった様子を見せます。
ひとりで踊ってきた流鶯にとって、同世代のライバルは初めてだったのでしょう。ふたりが今後、同じ舞台に立つところを想像すると、とても熱くなります!
その他にも、潤平の所属する生川バレエスクールには、生徒も講師も個性豊かなメンバーがそろっています。しかし、ひとつのバレエの演目で、主役の男性ダンサーはひとりだけ。普段は仲間でも、オーディションとなれば、みんながライバルになります。
そんな風に切磋琢磨して成長する彼らを、ぜひお見逃しなく。
恋ヒロインの都はとにかく可愛いく、美しいバレエシーンや、ふとした瞬間の年相応の笑顔が、とても魅力的です。
潤平は都に恋をしているのですが、その様子もいじらしくて微笑ましい。バレエをしているときは大人顔負けの迫力を見せますが、恋愛となれば中学生らしい姿がみられます。彼が恋に落ちたシーンは、美しい描写と、都の可愛さに胸を貫かれた人も多いのではないでしょうか。
そして、彼が思いを告げる場面は必見です。生川サマースクールに参加していた最中、あるきっかけから都と2人きりで話をすることに。彼女は押しに弱いとアドバイスを受けていたのに、うまく話せない潤平。
照れているように見える表情、赤くなる頬と近い距離で感じる都のにおい。その雰囲気で、潤平はつい彼女の目元にキスをしてしまいます。都は驚きましたが、嫌がるわけでもなく恥ずかしそうにしていました。
その後のやり取りはとても可愛らしく、中学生の初恋が美しく表現されています。このシーンは、ぜひ読んでみていただきたいです。
お調子者として描かれる潤平ですが、人を惹きつける魅力のある彼は、けっこうモテます。同じ学校のクラスメイトや、生川バレエ団の女子ダンサーなど、彼に想いを寄せる女の子は複数人いるのです。
年頃の男子中学生らしく、彼女たちにアプローチを受けると嬉しくなってしまう潤平。都と結ばれて、幸せになる未来はあるのか。恋模様にも注目です。
「男らしく」いるためにバレエと離れて生きていた潤平は、転校生の都にその素質の片鱗を見つけられ、一緒にやろうと誘われました。そこで出会った都の従兄弟・流鶯。彼の影響で、バレエに本気で取り組む覚悟を決めます。
その後、本格的にバレエをはじめた潤平は、初めての舞台で、生川はるかバレエ団の綾子に踊りを酷評されてしまいます。彼女に評価してもらうため、生川はるかバレエ団のサマースクールに流鶯とともに乗り込んだ潤平。同世代の男性ダンサーたちと切磋琢磨し、めきめきと実力をつけていきます。
その後、潤平は悩みながらも、自分に足りないものを得るために、五代バレエスタジオから離れて生川バレエスクールでやっていくことを決めました。
- 著者
- ジョージ朝倉
- 出版日
- 2018-11-12
中学3年になった潤平は、多くの生徒や講師に囲まれて日々練習に明け暮れていました。プロの講演に出演するチャンスをもらい、初めての大舞台も経験します。生川バレエスクールでさまざまな経験をし、自分に足りないものや学ぶべきものを見つけていきます。
初めてコンクールに挑むこととなった潤平。コンクールでは基本に忠実に踊ることができたものの、自分らしさを表現できず、自信をなくしていました。しかし流鶯のおかげで自分らしいダンスを取り戻すことができ、日本での本戦を突破するのでした。
次はニューヨークでの決戦の舞台へ。それと同時に、生川バレエ団での公演の主役をオーディションで決めることに。潤平は立候補し、コンクールと両立すると言い出します。
オーディションは女性とのペアの踊りもあり、練習は前途多難な様子。果たしてコンクールとオーディションの行方はどうなるのでしょうか。
オーディションに向けての戦いが本格始動します。
候補者は4人。内2人は、もともと主役になる予定だった期待の新人・理久と勇気。ロシア研修から帰国した直後、期待の証としてW主演を演じる予定でした。
ところがテレビ取材をきっかけに、主役を選び直すことになります。理久と勇気はもちろんエントリーしますが、他の生徒は「どうせ敵わないだろう」と、挑戦することもありません。
そこに飛び込んでいったのが、潤平ともう1人。一見イケメンで王子様、実は毒舌キャラの海咲です。
- 著者
- ジョージ朝倉
- 出版日
- 2019-02-12
彼はこれまでも、潤平に厳しい言葉をかけるなどのシーンで度々登場していました。家柄は裕福ですが、家族にはバレエをあまり歓迎されず、苦労の多い人物です。
そんな海咲のコンプレックスや悩みが、12巻で詳細に語られています。彼の気持ちに共感したり、親近感が生まれたりするはず。
そして、オーロラ姫候補の新しいダンサーも登場します。地味な見た目をしている、白波響(しらば ひびき)です。ひとたび役に入って踊りだすと、見違えるほどの美しさを表現する実力のあるダンサーです。
しかし彼女も家庭環境が原因で、自分に自信がありません。オーディションは、周りに言われたから参加しているだけという消極さ。
そんな彼女と海咲がペアになってオーディションに挑みますが、彼がコミュニケーションをとろうとしても、まったく受け入れてくれません。海咲は、響の表現力に衝撃を受け、同時に劣等感も抱いていました。すれ違う2人は、うまくいくのでしょうか……?
一方潤平も、なかなかうまくいかない様子。講師から「王子をかっこ悪いと思っているのでは」と指摘を受け、はっとする潤平。物語の中で突然出てきて結婚してしまう王子を、彼は理解できていなかったのです。そのことを告げると、講師は「王子」という存在について、話し始めるのでした。
その後、王子は誰よりも自分に近い存在だったことに気づきます。王子を理解することによって、すべてがピタっとはまっていく感覚は、とても気持ちよく、胸が熱くなるでしょう。
海咲ペアはどうなるのか?そして、王子とはなんなのか。彼らの変化は、12巻の見所といえるでしょう。ぜひ、手にとって確認してみてください。
いかがでしょうか?スポーツ漫画が好きな人、青春漫画が好きな人、ジョージ朝倉が好きな人、すべてにオススメです!ぜひ読んでみてください。
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