バンドが好き・ライブが好き・青春が好きという方におすすめの作品です。ごく平凡な14歳の少年コユキが仲間とバンドを結成し人気ロックバンドへと成長していく過程を描きます。 個性豊かなメンバーたちとのくり広げる紆余曲折。こだわった楽器や楽曲の設定、紙面だからこそ描けるライブの臨場感など、読みごたえのある音楽青春マンガをぜひスマホアプリで無料でお楽しみください。
特別な目的もなくぱっとしない平凡な毎日を送っていた主人公の少年田中幸雄ことコユキは、南竜介と出会うことで生活が一変します。
竜介は天才的なギターの腕を持つニューヨークからの帰国子女で、未来のロックスターを目指しバンド活動をしていました。
ある日、コユキがつぎはぎだらけの竜介の飼い犬「BECK」を助けたことで2人は出会います。その後、コユキが外国人に車を傷つけたとの疑われたところを竜介に助けられ、親しくなります。
ギタリストの竜介は、飼い犬の名前を由来にした「BECK」というバンドを始動。そんな中、竜介の妹である真帆がコユキの天才的な歌唱力に気づきます。竜介から誘われたコユキはバンドに加わり、ロックという世界に足を踏み入れることになるのです。
徐々に仲間が集まり失敗や挫折をくり返しながらも、バンド「BECK」が成長していく過程が描かれます。少年たちの友情や、甘酸っぱい恋愛模様がたくさんつまった音楽青春マンガです。
2010年には映画化もされ、佐藤健がコユキ、水嶋ヒロが竜介を演じました。実在のライブハウスで撮影されたシーンや現役のロックバンドの出演など、ロックファンの心をくすぐる演出でも話題になりました。
『BECK』の作者・ハロルド作石のおすすめ作品を紹介した<ハロルド作石のおすすめ漫画5作品!漫画家漫画『RiN』で大人気!>の記事もおすすめです。
本作に登場する主要なキャラクター4人をご紹介します。
・田中幸雄(コユキ)
本作の主人公。平凡で特別ぱっとしない日常を送っていた14歳のある日、南竜介と出会い、ロックの世界に魅了されていきます。性格は温厚で頼まれると断れない性格の中学生ですが、歌唱力は非常に高く、世界の著名なミュージシャンをもうならせます。普通の中学生がどうやって人気バンドのボーカリストとして成長をとげるのか、見どころです。
・南竜介
未来のギタリストを目指しバンド活動をしていた16歳の竜介は、コユキとのひょんな出会いから、ともにバンド「BECK」を組むことになります。
ところが車上荒らしを繰り返していた素行の悪い過去が原因となり、バンドにさまざまなトラブルを巻きむことに。その上、女を泣かせる、借りた金を返さない、などとんでもない性格。
けれど音楽にだけは、真剣に向き合います。妥協を許さないがために、仲間へ辛辣な言葉を投げつけることもありますが、バンドに欠かすことのできない存在なのです。
・千葉恒美
コユキの高校の先輩。ケンカ早く、曲がったことが大嫌いな性格と同時、繊細で感受性豊かな一面をもっています。ラップの才能がありながらも、コユキのボーカリストとしての成長を間近で見るうちに、自分の存在意義を見出せずに悩みます。
当初はためらっていたものの、バンド加入後は、ムードメーカーに。人を惹きつけるカリスマ性があり、ライブではMCを担当。喜怒哀楽が豊かで、BECKを誰よりも愛しています。
・平義行
BECKのベースを担当。沈着冷静で温厚な人柄で、バンド内のまとめ役的存在です。メンバーからは厚い信頼を寄せられています。
ライブでの日本人離れしたファンキーなプレーが魅力で、ベースの技術とセンスも抜群。プロアマ問わず多くのバンドから誘いの声が常にあるほど。上半身裸での演奏がトレードマークです。
・桜井裕志(サク)
コユキがいじめに悩んでいた頃の唯一の友人で、同い年。担当はドラム。メンバーや観客、誰にでも温厚に対応する一方で、自分の信念を貫く芯の強い一面もあります。転校でコユキとは離ればなれになりますが、その後も親友として精神的に支えています。
サブキャラクターの5人を紹介します。
・ベック
竜介がレオン・サイクスから盗んできた犬で、バンド名BECKの由来ともなっています。外見はつぎはぎだらけ。闇の病院で手術した結果、怪我で重傷を負った本来3匹だった犬の、無事な部分が組み合わされています。なぜかコユキにだけ獰猛な性格で、バンドの愛嬌あるキャラクターです。
- 著者
- ハロルド 作石
- 出版日
- 2000-02-15
・南 真帆
竜介の母親違いの妹。義兄との仲は良好。性格も似ている部分が多く、積極的で行動力があります。コユキの歌唱力を最初に気づき、その後は彼と交際します。
真帆自身も素晴らしい歌声の持ち主ですが、プロへの興味はなく、バンドの物販スタッフやイギリスでの交渉時に通訳をするなど、裏方としてBECKを支える存在です。
・斎藤 研一
おそらく作品内で1番強烈なキャラクター。年齢は40代半ばで、自分の店で「斎藤紙業」でコユキをアルバイトとして雇います。色恋が大好きな独身貴族で、自己中心的。
コユキにとっては、ギターの基礎を教えてくれたり、折にふれコユキを支えてくれたりするありがたい存在です。コユキの副担任だった桃子先生との恋の行方にも注目です。
・レオン・サイクス
RJレーベルを率いる人物で、孤独な少年時代を送った過去があります。竜介が盗んだルシールがきっかけでBECKとかかわるように。
音楽への清らかな心を持ちながらも、自分の利益のためには殺人すらいといません。逮捕されるも司法取引により無罪で釈放されます。
・ジム・ウォルシュ
全米で注目を集めている世界的に有名な映画監督。ダイイング・ブリードのシークレットライブで歌うコユキをフィルムに収めた縁で、数年後にBECKのプロモーションビデオ作成を無料で引き受けてくれます。記憶力に自信があり、一度会った人を決して忘れないという特技も。
『BECK』の魅力の1つは、音楽の素晴らしさが伝わってくるところです。今までにもロックをはじめ、音楽をあつかうマンガやドラマ、映画は数多くありますが、難しいといわれています。
なぜなら、実際に音が流れるドラマや映画の場合、演奏者の力量とサウンドトラックのバランスがうまくとれないと不自然な作品になるからです。
『BECK』はこれを逆手にとり、マンガだからこそ描ける最高の音楽シーンを成立させています。
演奏シーンの効果的なコマ割や、一人ひとりのキャラクターがみせる表情の細やかな変化、飛び散る汗などが丁寧に描かれ、読者がライブ会場にいるような臨場感を体験できるのです。
『BECK』の音色は想像するしかありません。けれどそれゆえに、あなたにとって最高の音楽を味わえるでしょう。
『BECK』は14歳の少年コユキがボーカリストとして成長していく音楽漫画ですが、専門的な話だけではありません。
コユキは多少の歌謡曲が分かるレベルの、ロックに関してはド素人です。いろいろな壁にぶつかりながら、一つひとつの出来事に向き合っていく過程が丁寧に描かれています。
親友サクとのエピソードでは、いじめに悩んでいた時期のコユキが周りから見下されながらも、サクと2人でひるむことなく立ち向かう姿が見られます。日常の中でつい逃げたくなる出来事に向き合ったことがある読者なら、思わず共感するのではないでしょうか。
個性的なバンドメンバーとのかかわりは、1筋縄でいかない場面も。メンバー間の対立や脱退、解散、再結成と紆余曲折する過程で、それぞれが葛藤を乗り越えていく姿は、心打たれます。
また、コユキと竜介の妹の真帆や、石黒泉との淡い恋模様も見どころのつ。青春を彩る要素がたっぷりとつまった物語なのです。
ロックバンドをあつかう上で、ギターの設定が詳細でリアルなのも、『BECK』の魅力。ルシールと名がついている竜介の使うメインギターは1958年製のギブソン・レスポールです。
ところが、以前の持ち主がステージ上で銃殺されたというエピソードがあり、その際に受けた弾丸跡が7つ、痛々しく残っているものでした。
『BECK』が連載されると、この設定を受け、レスポールに弾痕をつけることが流行ったという逸話もあります。ぜひ作中のルシールに注目してみてください。
- 著者
- ハロルド 作石
- 出版日
- 2000-06-14
作中で演奏される楽曲にもこだわり、実際の楽曲をコピーしたものが演奏されています。ここではそのいくつかをご紹介します。
・「SISTER」
もとはヒダカトオル作詞、Shinobu Watanabe作曲の「FACE」という曲です。生きていくなかで感じる寂しさ、そしていつかやってくる明るい未来に思いをはせるという歌詞。コユキは自分の過去や現在を投影しながら歌っているのかもしれません。
・「I’ve Got A Feeling」
ビートルズの楽曲で、1970年に発売されたラストアルバム『Let It Be』に収録されている曲です。実在する楽曲でアニメにも使われたのは唯一この曲だけです。叶わなかった恋のせつなさや抑えきれない恋心を、物語のクライマックスシーンでコユキが心を込めて歌いあげます。
『BECK』の魅力的なキャラクターたちは数々の名言を残しています。ここではそのいくつかをご紹介します。
「この世の中には2種類の人間がいる。賢い人間と素直な人間だ。賢い人間は誰かのつくった規律と道徳がこの世の中を動かす全てだと思っている。だが俺はそんなもん屁とも思っちゃいない」(『BECK』第4巻より)
エディ・リーの名言を引用したサクからコユキへのセリフです。間違いのない敷かれたレールを歩く人は失敗がなく安定していて賢い人かもしれません。でも、それだけが全てではありません。情熱を持てるものを見つけたら、素直に全力でぶつかっていくのも1つの生き方でしょう。
「ボーッとしてたら、何事もなく人生は過ぎていくんだ!」(『BECK』第5巻より)
コユキが自分自身を鼓舞した言葉です。特に目的もなく平凡な日常を送っていたコユキは、しだいにバンドへ情熱を傾けはじめます。
今までになかったワクワク感、充実感、高揚感、やりがい……。何事もなく人生を終わらせるにはもったいないのだと伝わってくるこの言葉は、コユキの心の成長をうかがわせるセリフといえるでしょう。
「妥協してちゃ それなりのもんしか手に入んねーぜ」(『BECK』第6巻より)
音楽業界が認めざるを得ないような最高のアルバムを作ろうと、竜介が発したセリフです。普段は決して素行のよくない生活をしている竜介ですが、音楽に対しての姿勢は違います。プロのロックスターになるという情熱と覚悟を表した竜介の生きざまを投影したセリフです。
さまざまな経験を積みながら、コユキと竜介たちはBECKのファンを増やしていきます。
最終巻ではアメリカでのフェスのオファーを断り、BECKにとって大きな意味を持つグレイトフル・サウンドでヘッドライナーとしてライブに出演することになります。
しかし、天候が荒れライブ会場は混乱を極めます。このままライブを続けるのか、続けたとして観客の期待に応えられるのか、またコユキたちが心を込めるBECKのロックとはいかなるものか……。
最後までコユキたちの熱い思いがほとばしる『BECK』最終巻を、ぜひお読みください。
- 著者
- ハロルド作石
- 出版日
本作の魅力が十分伝わったでしょうか。気になった方や、過去に読んでもう一度読みたいという方は、スマホアプリで無料で読むことができます!ぜひチェックしてみてください。