『弱虫ペダル』の主人公・小野田坂道(おのださかみち)は、急斜面の坂を鼻歌混じりで平然と登り、坂を見ると笑顔でハイになる、いろいろと規格外なロードレーサー。競技歴4ヶ月目にして、初出場のインターハイで優勝という偉業を成し遂げ、その後のレースでもチート級の強さを見せつけます。 しかしどこか憎めない雰囲気を持っており、ファンからは恐ろしいまでのペダルの回転数(=ケイデンス)を妖怪ペダル回しといじられることも。 この記事では、小野田坂道の強さについて、作中での活躍や最新章での展開を交えつつ解説します。熱がこもって長文になってしまいましたので、目次からご自身が興味のある内容をご覧いただければと思います! ちなみに『弱虫ペダル』は2020年8月に実写映画化。主人公のことを知っていれば原作も映画もより楽しめますよ!
まずは基本情報をお伝えしましょう。読み飛ばしても問題ありませんので、エピソードなどから読みたい方は目次から興味のあるところをご覧くださいね。
- 著者
- 渡辺 航
- 出版日
- 2008-07-08
『弱虫ペダル』の小野田坂道(おのださかみち)は、アニメと漫画をこよなく愛する、眼鏡の少年。
最初は総北高校のアニメ研究会を復活させるため奔走し、あるきっかけから自転車部に入り徐々にロードレーサーとしての才能を開花させていきます。
典型的なアキバ系オタクで、入部当初は自転車やロードレースの知識もまったくありませんでした。しかし脚力やメンタルの強さを周囲に見込まれ、仲間との練習を通じてぐんぐん成長。作中最強クラスのロードレーサーになりました。
ただのオタクだった小野田坂道は、いかにして「山王」と呼ばれるようになったのか。この記事では、小野田坂道の能力や作中での活躍、ライバル選手との関係などを漫画の巻数とともに解説していきます!読み返したくなるエピソードばかりなので、ぜひご自身でもご覧になってみてください。
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坂道の武器といえば、並外れた脚力と高回転(ハイケイデンス)を活かしたクライミングです。
坂道は小学4年生の頃から毎週、学校帰りに45km離れた秋葉原へママチャリで遊びにいっており、脚力がかなり鍛えられていました。
1巻では、ママチャリで走行中の車を追いこし、自転車競技界のホープとして期待される1年選手・今泉俊輔(いまいずみしゅんすけ)に並走。坂をアニソンを歌いながらロードレーサーと並走しているのだから、坂道がどれだけ常人離れしているかが分かります。
坂道の強さが分かるおすすめのエピソードが、3・4巻で描かれる自転車部のウェルカムレース。前半ママチャリ、後半はロードバイクへの交換で5分のロスがあったにも関わらず、峠でケイデンスを30上げて今泉に追いつきます。
最後は1年の鳴子章吉(なるこしょうきち)から教わったダンシングで今泉を追い抜き、見事山岳賞を勝ち取りました。坂道のポテンシャルの高さや、彼の今後の活躍が期待できる名シーンです。
しかし、勝負中の坂道には「ちょっとこの人ヤバいな」と感じる一面も。上り坂で息が上がっている場面で、なんと満面の笑顔を見せるのです。
とても良い笑顔でハァハァ言いながら坂を登ってくるので、見ようによっては軽くホラーです。読者の間でも怖いと感じる人が多いのか、ファンからは「妖怪ペダル回し」と妖怪呼ばわりされることも。
作中では坂道の妖怪っぷりにさらに磨きがかかっていくので、坂道の強すぎる脚力が気になった人はぜひ、本作を読んでその人外ぶりを体感することをおすすめします。
- 著者
- 渡辺 航
- 出版日
- 2008-11-07
ここでは1年目インターハイでの坂道の軌跡をたどってみましょう。
6~8巻では合宿のIHメンバー選抜戦が描かれます。坂道は2年生部員に勝利し、インターハイにクライマーとして出場。全国の強豪相手に圧倒的な走りを見せつけます。
12巻のインターハイ1日目では、落車に巻き込まれるアクシデントで一時期最下位にまで落ちますが、先にいるチームに追いつくため、『ラブ☆ヒメ』のOP「恋のヒメヒメぺったんこ」を歌いながら100人をごぼう抜きします。
上り坂でも随所でケイデンスを上げ、相手をどんどん追い抜いていく坂道。さらに、前方の集団を側溝の溝を走って追い抜き、そのまま道路に復帰というアクロバティックな走行を披露し、無事にチームに追いつくことができました。
ゴール手前では強豪校相手にトップを争い、他校の選手と同着ながら1日目優勝を果たしました。
16巻の2日目では、3年の田所迅(たどころじん)が体調不良で出遅れ、坂道が田所を引くことに。2人で「恋のヒメヒメぺったんこ」を合唱しながら数十人を追い抜きます。その後もチームを引っ張り、6位でゴールしました。
26巻の3日目インターハイのラストでは、同学年にしてライバルのクライマー・真波山岳(まなみさんがく)と一騎打ち。27巻のラストスパートで真波を追い抜き、総合優勝並びに個人優勝を果たしました。
坂道がチームのため全力を尽くして走る姿は心揺さぶるほど熱く、彼が田所とチームに合流する場面や、最終ステージでトップを争う場面では、思わず手に汗握ってしまいます。
特に27巻のインターハイのラストで、真波と全力で競い合うシーンは、本作の数ある名場面のひとつ!
ギアチェンジと優れた加速でどんどん距離を引き離してくる真波に、坂道が必死に食らいつきます。ゴール前ギリギリで坂道が真波を頭一つ抜かすシーンは激熱で、感動のあまり坂道と一緒に拳を突き上げそうになった読者もいるのではないでしょうか。
坂道の熱い闘志や自転車にかける想いがひしひしと伝わる、1年目インターハイのラストバトル。読み終える頃には坂道がとても頼もしく見えてくることでしょう。
- 著者
- 渡辺 航
- 出版日
- 2009-12-08
2年目のインターハイが本格的に始まるのは35巻から。
38巻の2年目インターハイ初日では、前年度の優勝者ということもあって複数の相手校にマークされ最下位になりますが、なんとか巻き返してトップ争いに食い込みます。
58巻の3日目ラストでは、再び真波とゴール争いをくり広げ、接戦の末に真波を破り2年連続総合・個人優勝達成。坂道のプレッシャーにも負けない強靭な精神と、「仲間のために絶対勝つ」という思いが感じられる名勝負となりました。
しかし、2年目インターハイの展開が1年目とほぼ同じであったことや、坂道以外のメンバーの戦績が微妙だったこともあり、読者の間ではかなり賛否両論が分かれることに。
読者の中には「いくらなんでも主人公が強すぎる」という意見もあり、「1年目ほどは熱くなれなかった」という意見が多く寄せられました。
読者から厳しい意見が多い2年目インターハイですが、成長した坂道の戦いや、前年度参加できなかった3年生部員たちの熱い走りが見られるので、ぜひ本作でその戦いを読んでみてください。
2年目のインターハイでも特に見どころなのが、58巻で今泉と鳴子の2人のサポートを受けてゴール争いに躍り出るシーン。
2人のために優勝しようとする坂道の仲間思いな一面や、3人の強い絆を感じられる、2年目インターハイの中でもとりわけ熱いシーンです。
- 著者
- 渡辺航
- 出版日
- 2018-10-05
ここまで1、2年目のインターハイを振り返りましたが、結局戦績はどうなったのでしょうか。ここでは結果をまとめてみました。
坂道は初出場となる1年目インターハイ初日、山岳コースを1位でゴールし山岳賞を獲得。3日目では最終ステージで個人優勝を果たし、総北に悲願の総合優勝をもたらしました。
2年目インターハイでは、他校のマークにもめげずに山岳ステージで3位を獲得。3日目の総合ステージで1位を取り、2年連続で総合・個人優勝を果たすという快挙を成し遂げます。
1年目インターハイから脚力の強さやポテンシャルの高さが目立った坂道ですが、2年目では先輩から走り方についてアドバイスをもらい、技術が加わったことでさらに成長しました。自身の力を過信せず、謙虚に学んでいこうとする坂道の姿勢が感じられます。
1年目初日の100人抜きや田所のアシスト、2年目初日の最下位からの巻き返しや、1年目・2年目最終日でのゴール争いなど、インターハイは1年目・2年目ともに見どころが満載です。
特におすすめしたいのが、坂道の脚力の強さがよく分かる、11巻の100人抜きを達成する回。読者が思わず「ギャグかな?」と感じるほどのハイテンポで、坂道が相手をすいすい抜いていくので、読んでいでどこか爽快感すら感じるでしょう。
坂道のインターハイでの華々しい活躍は、ぜひ本作を読んで確かめてみてください。
- 著者
- 渡辺 航
- 出版日
- 2010-04-08
ライバルの真波山岳は箱根学園の1年部員で、羽が生えたかのような優れた加速を武器とするクライマーです。
坂道と真波が出会うのは5巻。合宿で神奈川に行く道中、坂道は車酔いでダウンし、のどが渇いたため水分補給しようとしますが、財布がなく水が買えません。
そこへ、通りがかった真波が自転車用ボトルごとスポーツドリンクを渡して坂道を助けます。真波の語る坂への思いに強く共感した坂道は、もう一度会って真波と走りたいと思うようになります。
6巻で真波と再会した坂道は、「坂道が勝ったらボトルを返す」という条件で坂の上まで競争。結果として真波が勝利しますが、坂道の実力を認めた真波から「インターハイで会ったときにボトルを返してもらう」という約束を持ちかけられます。
これが、坂道と真波のライバル関係の始まりになりました。
その後、1年目インターハイで再会した2人は、山岳ステージで競い合うことを約束し、3日目にてついに激突。坂道はハイケイデンス、真波は優れた加速を武器に戦い、ラストは坂道が真波を追い抜いて勝利しました。
インターハイ後、真波は勝負に負けた自責の念から、坂道から返されたボトルをそのまま捨ててしまい、坂道との関係もぎくしゃくしてしまいます。しかし、同じクライマーの先輩に激励されて元に戻り、2年目インターハイで再び坂道とトップを争いました。
坂道と真波のエピソードで特におすすめなのが、6巻で坂道に勝利した真波が、坂道に約束を持ちかける回。真波の魅力あるキャラクターや、ひとつのボトルが2人の絆を紡ぐというドラマティックな展開に思わずワクワクしてしまう、本作きっての名エピソードです。
坂道と真波は、互いに競い合う良きライバルであり親友のような間柄。坂道の真波に対する思いはとても真っ直ぐで、坂道の純粋さや誠実な人柄が真波との関係を通して伝わってきます。
現在は坂道が2連覇を達成していますが、真波の実力も非常に高く、レースの展開によっては真波が勝利する可能性も考えられます。
果たして、3年目インターハイで勝利を掴むのは、坂道と真波のどちらなのか。本作の今後の展開に注目です。
真波山岳について紹介した<真波山岳の読んで楽しいwiki!あざとかわいい魅力、委員長との関係、進路…>の記事もおすすめです。
- 著者
- 渡辺 航
- 出版日
- 2009-06-08
坂道に彼女はおらず、恋愛展開もほとんどありません。しかしファンには、同学年の女子生徒・橘綾(たちばなあや)とフラグが立っているのではないかと言う者もいます。彼女はサバサバしたツンデレ女子ですが、坂道に対する印象が変わってからは女性らしい言動が多くなっていきます。
橘は当初、坂道を「根性のないオタク」と思い、彼が秋葉原まで自転車で往復している話も嘘だと思っていました。しかし、彼の自転車のチェーンが往復のせいで外れたという話を聞いて驚き、「根性のあるオタク」として見るようになります。
橘は1年目インターハイで坂道が優勝したことを受け、坂道の男気ある一面やその実力を認めるようになり、それ以降明確に彼を意識し始めます。
2年目インターハイを控え、坂道がプレッシャーに悩むようになったときは、坂道をできるだけサポートしようと奮闘。
63巻で坂道が優勝のゴールを決めたときは、他のチームメイトを押しのけて坂道を抱きしめており、1年目よりもさらに積極的な彼女を見ることができます。しかし、坂道はそんな橘の恋心に気づいていない様子。
坂道は気が小さく他人と話すことが苦手な性格であり、自分とは真逆なタイプの橘が、自分を好いているとは思わないのでしょう。また、坂道は好きなアニメの話はしますが、好きな女の子について話すことはなく、彼の恋愛の疎さを感じます。
坂道と橘の2人で特におすすめのエピソードが、27巻の1年目インターハイ最終日、1位でゴールした坂道を橘が祝福する回です。優勝した坂道に、照れながらも素直に「おめでとう」と言う橘の顔は恋する女の子そのもので、多くの読者を驚かせました。
65巻時点ではまだ坂道に告白していない橘ですが、3年目インターハイで一気に2人の関係が進展する可能性が十分考えられるのではないでしょうか。卒業までに橘は坂道に想いを伝えられるのか、今後の展開が気になります。
- 著者
- 渡辺 航
- 出版日
- 2013-03-08
坂道の母は、パーマヘアーが特徴の超マイペースな人物。坂道いわく「台風みたいなオカン」で、思い込みでどんどん話をまくし立て、思ったことはストレートに口に出すなど、大阪のおばちゃん顔負けの性格をしています。
当初は坂道がロードレースの選手になったことに気づかず、自転車競技部のこともまったく理解していませんでした。
偶然観戦していた1年目インターハイで走っている坂道に気づきますが、表彰式まで見たのにも関わらず、今泉と鳴子に説明されるまで自分の息子がインターハイで優勝したことを理解できませんでした。また、未だにロードレースとサイクリングの違いが分かっておらず、フリーダムな言動で坂道を悩ませることも。
しかし、息子を想う気持ちは本物。坂道を激励する場面ではいつものコミカルな表情を真面目に変え、優しく温かい言葉をかけてくれます。
坂道の驚異的な極力も、実は息子を心配する母の工夫の賜物。小学4年だった坂道がママチャリで遠くへ行き過ぎてしまわないよう、ママチャリのペダルを重く改造しており、それが坂道の高ケイデンスへと繋がったのです。
そんな母のエピソードで特におすすめなのが、41巻で2年目インターハイ初日の日光レースを終えた総北の元に彼女がやってくる回。
- 著者
- 渡辺航
- 出版日
- 2015-08-07
坂道の母はレースを見れなかったようで、代わりに日光東照宮へ観光に行ってきたと話します。いつものマイペースさで場をかき回す母に、相変わらずだなと思う坂道。
しかし、内面では坂道のことを気にかけており、坂道が頑張りすぎて気が抜けてしまい、自転車競技をやめると言い出すのではないかと心配していたことを話します。
母の「頑張りすぎると気が抜けることも多いから」の言葉に、坂道や総北メンバーはハッとさせられます。坂道含めチームメンバーは「総北を2連覇させる」というプレッシャーに悩んでいましたが、この言葉で肩の荷が少し軽くなったのでした。
坂道の母は再び日光東照宮の話を始め、日光東照宮で「坂道が3日間無事にゴールできるように」とお願いしてきたことも話します。彼女のあたたかな優しさを知った坂道は、仲間とともに再びレースへ気持ちを入れ直すのでした。
坂道の母の息子を想う気持ちはもちろん、母の自分に対する間違った認識やフリーダムな行動にも決して怒らず、応援を素直に受け取る坂道の優しさにもじんわりさせられ、読んでいて心が暖かくなってきます。
いつもはフリーダムだけど息子のことを心から応援してくれる、どこか憎めないお母さん。それこそが坂道の母なのです。
64巻は、2年目インターハイ後の夏休みからスタート。久々にのんびり1人だけのサイクリングを楽しんでいた坂道ですが、ふと「峰ヶ山」の旧道が気になり、方向転換して旧道をロードバイクで進み始めます。
旧道の頂上を目指していた坂道ですが、旧道の山道はロードバイクで登るにはあまりにも険しく、とても登りきれそうにないとがっくり落ち込んでしまいます。
しかし、そこへマウンテンバイクに乗り、前輪をぴょんぴょん浮かせながらどんどん進んでいく少年が。坂道が頂上へ向かう少年に声をかけると、「登りたくなるのが習性」と答えられ、坂道はその言葉にハッとします。
坂道はすっかりマウンテンバイクに魅了され、自分もロードバイクで頂上に行こうとしますが、バランスを崩して前輪がパンク。そんな坂道を見た少年は、坂道がマウンテンバイクを求めていることに気づき、彼にスペアのマウンテンバイクに乗るよう促します。
少年の名は、雉弓射(きじきゅうい)。彼との出会いをきっかけに、坂道は新たにマウンテンバイクの世界へと足を踏み入れていきます。
- 著者
- 渡辺航
- 出版日
- 2019-11-08
新章の見どころは、坂道がマウンテンバイクと出会い、その楽しさに目覚めていくところです。
ロードバイクでは無類の強さを誇るようになり、覇者としてのプレッシャーなどから以前のように気楽に自転車に乗る時間が減っていた坂道。しかし、マウンテンバイクの世界に足を踏み入れたことで新たな自転車の可能性を見つけ、再び楽しいという素直な気持ちを思い出すのでした。
マウンテンバイクに夢中になる彼の姿は、純粋ながらどこか貪欲なもの。さらに彼が「山王」としてのプレッシャーに苦しんできたのであろうことが伺えます。
新章で特におすすめのエピソードが、65巻から始まる雉弓のレース戦です。ロードレースとは違いマウンテンバイクは個人戦で、自分以外の全員がライバル。序盤から土埃舞うアクロバティックなレースが展開され、読者をぐいぐいと惹き込んでいきます。
坂道はマウンテンバイクを乗りこなし、雉弓と同じように山道を制覇できるようになるのでしょうか。坂道とマウンテンバイクの物語を描く新章は、ぜひ本作を読んで確かめてみてください。
驚異的な脚力を誇り、作中でもチート級の強さを誇る小野田坂道。ちょっと怖いけどひたむきでかっこいい彼の走りを、ぜひ本作を読んでチェックしてみてください。