高等学校で教育に携わる高校教師。高校生の年代は、就職や大学進学など人生にターニングポイントに立っているので、高校教師は生徒がそれぞれの道に進めるように導く大切な役割を担っています。授業のイメージが強い高校教師ですが、仕事は幅広く、学生時代には見えなかったたくさんの仕事があるのです。今回は、高校教師について、仕事内容やなり方、試験の難易度、給与などを詳しくご紹介していきます。
高校に通っていた頃を思い出してみましょう。教師と関わる機会のほとんどは、授業ではありませんでしたか。
授業で勉強を教えるのが高校教師の仕事と思いがちですが、授業以外にもたくさんの仕事があります。どのような仕事内容があるのかチェックしていきましょう。
高校の授業は、中学校よりも教科が細分化されています。国語だけでも現代文、古文、漢文に分かれるので、専門性が必要です。学習指導要領に沿った授業計画が必要なだけでなく、入試を視野に入れる必要もあり、ただ授業をすればよいというわけではありません。
学期末や単元の区切りでは、小テストや定期テストを実施します。教師自ら作成するので、授業や他の仕事と並行して作成を進めなければいけません。授業ひとつとっても奥が深く、業務量は多いです。
担任や副担任になると、クラス運営にも関わることになります。ホームルームの実施や日誌のやりとりなど日常的にクラスの生徒と接していきます。クラス行事で生徒をまとめあげる力も必要です。
文化祭や体育祭などで、生徒で自発的に行動できる土台をつくり、適宜サポートしながら、モチベーション高く取り組める環境づくりをおこないます。
クラスの生徒の保護者との関わりも忘れてはいけません。気になった生徒の保護者への連絡や面談などを行い、保護者とも信頼関係を作ることが大切です。
校務分掌とは、学校に関わる仕事を分担し、学校運営していくことを指します。学校によって部門が分かれており、行事の企画・運営を担当する総務部や試験の運営・成績の管理をおこなう教務部など、たくさんの部門があります。
生徒と直接関わる仕事ではなく裏方ですが、学校を運営していくために欠かせない仕事です。
高校生は、進路を決めなければならない年代です。進路指導は、入試を控える3年生はもちろん、1年生、2年生から始まっています。進路希望調査や文理選択、面談などをサポートし、進路を実現できるように適切な指導をおこなうことが大切です。
部活動の担当になると、放課後に部活動の指導をすることになります。経験したことのないスポーツの部活動を担当することもあり、指導だけでなく勉強も欠かせません。
日々の部活動のほか、大会準備や大会参加に必要な手続き、交通手段の手配などさまざまな業務が必要になります。部に所属する生徒のスキル以外にも、人間性や学業との両立なども総合的にサポートすることが顧問に求められます。
高校教師の年収・給与は、公立高校なのか、私立高校なのかで違いがあります。
公立高校の場合は、公務員の扱いになり、初任給で約22万円・年収約350万~400万円となっており、安定した給与を得ることができます。
私立高校は、公務員ではないので、学校独自の待遇になります。残業手当が充実していることもあり、公立高校の教師よりも年収が10万円ほど多くなることが多いようです。
公立高校・私立高校の教師はともに、年齢を重ねていくほどに給与が上がっていきます。30代、40代、50代と経験を積んでいくと、年収500万~800万円を得ることも可能です。
高校教師という仕事は、免許の取得や試験合格など道のりは厳しいですが、安定した収入を得ることができます。安定した収入だけで目指すべき仕事ではなく、やりがいや大変さも知らなければ、長く続けたり、モチベーション高く取り組んだりできないでしょう。
高校教師として働くやりがいと大変さをご紹介していきます。
高校教師は、生徒が人生の大きな選択をする瞬間に立ち会うことができます。やりたい仕事や学びたいことなどを生徒の想いを尊重しながら聞き取り、実現したい道に進めるように導いていきます。
指導がきっかけでよい方向に進めば、「先生のおかげでよい仕事に出会えた」という言葉をもらえるかもしれません。
生徒とは、卒業後も繋がりが続くことも多いです。卒業後学校に遊びにきたり、同窓会で進路を聞いたりして、夢を実現しようと成長を続ける姿を見られるのも高校教師のやりがいでしょう。
高校教師には、たくさんの仕事があります。授業以外にも校務分掌や部活動などがあり、授業準備などもしなくてはいけないので過重労働になりがちです。プライベートな時間がとれずに疲弊してしまう教師も多くいます。
生徒や保護者、教師同士の人間関係の構築も簡単ではありません。多感な時期にいる生徒は、学業や友人との人間関係、進路などさまざまな悩みを持っているので、時にはぶつかったり、思うように指導できなかったりすることもあるでしょう。大切な時期に生徒と関わるため、保護者からのプレッシャーが精神的なダメージになることもあります。
教師同士の人間関係がうまくいかずにストレスをためてしまうことにも気を付けなければなりません。学校社会は独特で、学校独自の暗黙のルールや年功序列などに苦労するでしょう。ルールを理解した上で、割り切って関わることも時には必要になります。
高校教師になるためには、まず教員免許状を取得する必要があります。また教員免許状を取得するには、大学で学ぶ必要があるので、しっかりルートをおさえて、着実に高校教師のステップを踏むことが大切です。高校教師になるための道のりをご紹介していきます。
高校教師になるためには、大学で取得できる1種免許状、大学院で取得できる専修免許状のどちらかが必要になります。そのため、まず教職課程のある4年制大学に進学しましょう。
大学では、取得できる教科の免許状に合わせて単位が設定されています。どの教科の教師になりたいかを考えて受講し、無事に単位を取得できれば、卒業時に免許状を取得し、晴れて高校教師になる資格を得られます。
実際に教員として働くためには、公立高校の場合は教員採用試験、私立高校の場合は各高校の採用試験に合格しなければなりません。教員採用試験の実施日や内容は各自治体ごとに異なります。
採用試験の倍率は例年高いため、合格は決して簡単ではないです。合格を果たし、配属が決まれば、高校教師として働くことができます。
教員採用試験に不合格になってしまったら、次の試験まで待たなければならないかというと、そうではありません。臨時教員として登録しておくと、教師が必要な学校から連絡がきて、臨時的任用職員として採用が決まる場合もあります。
産休や病休、教員不足などのタイミングで募集されることが多いです。非常勤講師として働きながら試験勉強するのは大変ですが、現場の体験を生かして合格を勝ち取る方も多くいます。
高校教師になってからのキャリアは、そのまま高校教師としてキャリアを積むか、教頭や校長を目指すかに分かれます。教師として経験を積めば、より充実した授業ができたり、より多くの生徒の将来を切り拓いたりできるでしょう。
学校全体の運営に関わりたいという思いがあれば、教頭・校長を目指すのもおすすめです。教師生活で培ったスキルや経験を生かして、より幅広い業務に携わることができます。
高校教師になるための試験に、教員採用試験があります。年に一度の重要な試験であり、ライバルが多い難関です。
近年では、倍率が下降傾向にあるものの、依然として競争率は高くなっています。試験概要や難易度、倍率などを知り、勝ち抜くための準備を始めましょう。
教員採用試験は、自治体や私立高校各校で異なります。公立高校の教員採用試験を参考にすると、筆記試験、面接試験、実技試験、適性検査の4つがおこなわれるのが一般的です。
それぞれの試験に内容は以下のようになっています。
高校教師の教員採用試験は、非常に競争率が高い試験です。文部科学省が発表した「令和元年度公立学校教員採用選考試験の実施状況」によると、倍率は小学校28倍、中学校57倍、そして高校69倍という競争率でした。栄養教諭の80倍に次ぐ倍率で、狭き門といえるでしょう。
試験内容も幅広く、知識をしっかり身に付けていても、面接試験で人柄や指導力をアピールできなければ、合格は難しいと言われています。
幅広い知識・スキルを身に付けるために、参考書での勉強や面接練習、実技の練習など、試験に向けてコツコツと準備を進めることが大切です。
- 著者
- おおたとしまさ
- 出版日
「イモニイ」という愛称で知られるカリスマ教師の教育を、ルポルタージュでまとめた1冊です。
「ふざけ」「いたずら」「ずる」「脱線」を大切にし、教えずに育てる教育法は、知識を教えるこれまでの教育に一石を投じています。
解説本ではなく、リアリティのあるルポルタージュなので、読みやすさもおすすめのポイントです。「実際の教師の働き方を体感したい」という方は、気軽に手に取って、笑いあり涙ありのルポルタージュで教育を学んでみましょう。
- 著者
- 江澤 隆輔
- 出版日
高校教師をはじめとした教育現場は、「ブラック」「多忙」といったキーワードが根付きつつあるでしょう。高校教師として働くためには、大変さを理解することも大切です。本書は、現役の教師が語る学校のリアルが詰まっています。
忙しさとやりがいの間で悩む教師や、増えていくばかりの仕事量に悩む教師など、現場の様子が伝わってきます。授業準備や部活動にも触れられているので、高校教師の幅広い仕事の現状が見えてくるはずです。
最終章には、これから教師がどうあるべきかも語られているので、どう働きたいかを考えるきっかけにしてみましょう。
- 著者
- 栗田 正行
- 出版日
「高校教師はどんな1日を過ごしているんだろう?」「どんな仕事があるんだろう?」という疑問を、本書では網羅しています。
序章の「高校教師の1日&1年のタイムスケジュール」では、高校教師の仕事の流れを知ることができますよ。
仕事のやり方・考え方や授業、部活指導、会議・書類作成、補習・定期テスト・面談などの5つの章に分けられ、高校教師の幅広い仕事のコツが満載です。高校教師の仕事の知りたいときに役立つだけでなく、なってからも仕事に生かすことができるでしょう。
高校教師は、公立高校や私立高校で高校生を指導し、目指す将来へ導く役割を持っています。責任重大ですが、人生の重要な選択をささえるのは高校教師ならではのやりがいです。一方で、仕事内容は多岐に渡り、過重労働になったり、プレッシャーがかかったりするなど大変さもクローズアップされています。
高校教師になるためには、教員免許状を取得し、教員採用試験に合格する必要があります。試験の倍率は下降傾向にあるので、合格の可能性は今後高くなるかもしれません。「教育に携わりたい」「高校教師になりたい」という方は、本記事やおすすめの本をチェックして、ぜひ目指してみてくださいね。