欧米では馴染みあるキュレーターという職業。日本では学芸員と呼ばれることが多い職業です。若い方が美術館に足を運ぶ機会が増え、キュレーターという仕事に注目が集まっています。高い専門知識を有しており、好きではないとつとまらない仕事であるため、就職や転職事情について気になっている方は多いでしょう。 今回はそんなキュレーターについて、仕事内容や取得必須の資格、収入などを詳しく解説します。おすすめの本もご紹介するので、キュレーターについてもっと詳しく知りたい方はぜひチェックしてみてくださいね。
キュレーターという言葉を聞いたときに、あるジャンルに特化して情報をまとめたキュレーションメディアを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか?
実際は、美術館や博物館などの施設で美術品の管理・保存や研究調査などをおこなう人のことをキュレーターと言います。
美術館や博物館が多い欧米では一般的な職業であり、美術品の管理だけでなく、展示会の企画や実施など幅広い仕事をおこなっています。
日本では、学芸員という呼び方が一般的で、欧米のキュレーターに比べると仕事内容が異なっています。以下は文化庁が記載している、学芸員の主な職務内容です。
他にも勤めている美術館や博物館の広報活動をしたりと、展示会の企画などのクリエイティブな仕事よりも、事務的な作業も多くあります。基本的には雑務が多いのが実状です。
日本でも欧米のキュレーターのように活躍している方もいます。作家としても活躍する原田マハさんは、ニューヨーク近代美術館などでの勤務経験を経て、フリーのキュレーター、カルチャーライターとして幅広く活動しています。
キュレーターは日本で言う学芸員であり、キュレーターになるためには学芸員資格を取得する必要があります。学芸員資格を取得する方法や活躍場所などをチェックしていきましょう。
学芸員資格は、文化庁が認定している国家資格です。資格の取得要件には、以下の3つのいずれかに該当する必要があります。
▶︎資格の取得要件
大学で学芸員取得に必要な単位を取得する、または学芸員資格認定の試験に合格することによって、資格を取得したことになります。学芸員資格認定の受験資格は以下の通りです。
▶︎試験認定(筆記試験)の受験資格
▶︎審査認定(学識および業績の審査)の受験資格
学芸員資格を取得した後は、希望する博物館などに採用される必要があります。博物館など施設によって、採用方法や要件が異なるので、応募する前に問い合わせをおこないましょう。
参照:文化庁/学芸員について
博物館や美術館で働くキュレーターは学芸員資格が求められますが、フリーランスで活動する場合は資格は必要ありません。
しかし、フリーランスとして独立・活動するためには、より専門的な知識やキュレーターとしての実務経験が求められます。フリーのキュレーターを目指すなら、芸術に関わる業界で働いたり、専門的な知識を学校で学んだりするなど、経験を積み知識を身に付けましょう。
しかし学芸員資格は取得しておいて無駄になることはないので、専門知識を身に付けるためにもなるべく取得しておくのがおすすめです。
キュレーターとして活躍するためには、幅広いスキルを要求されます。展示会の企画や美術館のプロデュースなどに携わりたい場合は、さらに高度で幅広いスキルが必要になるでしょう。キュレーターの求められる主なスキルを見ていきましょう。
キュレーターとして働くには、第一に美術作品や資料に関する幅広い専門知識を求められます。博
物館であれば、資料の収集・整理や保管・保存、調査研究などが主な仕事であり、知識なくしてはキュレーターは務まらないでしょう。
古くから親しまれている芸術はもちろん、最新の芸術や文化にもアンテナを張り、勉強・研究を続けることが大切です。
展示会を企画・実施を成功させるためには、芸術作品を魅力的に見せる空間をデザインする力も求められます。
ただ芸術作品を並べるのではなく、作品そのものの魅力や展示スペースの特性などを生かすことで、美術館や博物館、展示会に訪れる人たちを感動させられるでしょう。
展示会の企画や美術館のプロデュースなどは、世界を股にかけてグローバルに働くことができる可能性も秘めています。世界を舞台に活躍したいという方は、海外の方とコミュニケーションをとれるように語学力が必要になります。
展示会で展示したい作品を手配するためには、交渉力も求められます。展示会にかける思いを伝えたり、メリットを示したりするなど、作品を提供したくなるようなコミュニケーションが必要になるでしょう。
キュレーター・学芸員は、芸術・文化を扱う重要な職業ですが、年収・収入といった給与面はあまり高くないという現状があります。公立の博物館などで働く場合は公務員の扱いとなり、給与は年収250~400万円ほどが目安です。
正規雇用は枠が少なく、非正規雇用が多い傾向にあり、一般的な学芸員よりも給与が下がる場合もあります。
フリーのキュレーターとして活動する場合は、依頼によっては博物館などで働くよりも、収入が高くなることもあるでしょう。ただし、独立してすぐに依頼がくるとは限らず、満足した収入がもらえない可能性もあります。
専門的な知識や資格、実務経験などを活かし、積極的な活動をすることでさまざまな仕事をこなし、年収が高くなる可能性があるでしょう。
キュレーターは専門性の高い職業です。日本では学芸員の資格を保有していなければ正規のキュレーターとして働くことができないため、ほとんどの方は学芸員資格を取得しています。
しかし資格を保有しているからと言って正規雇用されるかどうか、難しいのがキュレーターの就職の実情です。つまり、ほとんどの資格保有者が非正規雇用で働いているのが日本の現状なのです。
正規雇用のある美術館・博物館が少ないため離職率が低く、就職の倍率は100倍になることもあると言われています。
時には倍率は100倍にもなる一般公募では、なかなか正規雇用されることは難しいでしょう。ですので紹介や知り合いのツテで就職や転職をおこなうのが一般的とも言われています。
学芸員を目指す方には、大学や大学院で教授に師事しながら専門的な知識を学ぶ方が多いはずです。そうした恩師の力を借りて就職活動や転職活動ができるよう、在学中から行動するのがよいかもしれません。
- 著者
- 難波 祐子
- 出版日
キュレーターである著者が「キュレーターとは何か」を、歴史の変遷を追いながら解説した1冊です。
日本での呼び方である「学芸員」から現代的なキュレーターまで、1950年代から日本で企画された展覧会の紹介とともに詳しく解説しています。
また「これからのキュレーター像」という章では、キュレーターを取り巻く現状や将来の展望にも触れています。キュレーターとは何かを学び、これからどのようなキュレーターが求められているかイメージを膨らませられるでしょう。
- 著者
- 難波 祐子
- 出版日
先述した『現代美術キュレーターという仕事』の著者が、より具体的にキュレーターの仕事を解説した1冊がこちらです。
キュレーターのやりがい・醍醐味とともに、展覧会の企画から実施までの流れを解説しています。ですので、より現場をリアルに想像しながらキュレーターについて理解を深めることができるでしょう。
アーティストの契約書のフォーマットも紹介されており、普段見ることのできない資料も満載です。キュレーターの入門書と合わせて手に取りたいおすすめの1冊です。
- 著者
- ["エイドリアン・ジョージ", "河野晴子"]
- 出版日
キュレーターは海外で馴染みのある仕事です。芸術の世界で幅広く活躍するためには、世界基準の知識を身に付ける必要があるでしょう。
こちらの1冊には、イギリスの専門家の著書を翻訳したもので、世界に通用する知識や情報が詰まっています。世界の大学・大学院や美術専門学校の推薦図書になっており、キュレーターを目指す上でぜひ持っておきたい1冊です。
内容については、キュレーターの仕事を12のプロセスに分けて丁寧に解説しています。企画、出品、予算、オファーなど細かく実務を解説しているので、キュレーターを目指す上でも、実際に働く上でも必ず役立つでしょう。
キュレーターは、博物館や美術館などで働くのが一般的で、美術品や資料の管理・保存や研究調査などをおこないます。展示会の企画や美術品のプロデュースなどに携わるキュレーターも存在し、活躍の幅は広がっています。博物館などで働く場合は学芸員資格の取得が必要ですが、フリーランスとして働く場合、資格は必要ありません。待遇は特別高いとはいえませんが、美術作品に関わり、プロデュースできるのは、キュレーターという仕事だからこそ感じられるやりがいです。キュレーターについてわかる書籍もチェックして、ぜひキュレーターになるために動き出してみましょう。