すでにスケジュールが組まれたツアーや団体旅行などに同行する職業をツアーコンダクターと呼びます。添乗員やツアーリーダーと呼ばれることもあり、旅行客が快適に楽しい旅行ができるように「旅の案内役」としてさまざまな仕事をおこないます。実は、ツアーコンダクターとして働くためには、国内旅程管理主任者・総合旅程管理主任者といった国家資格が必須です。受験時に旅行業に従事していれば誰でも数日で取得可能なので、ぜひ取得を目指してみてください。本記事では、そんなツアーコンダクターのなり方や資格の取得方法、収入事情、未経験からの転職内容まで詳しく解説していきます。記事最後には参考となる書籍もご紹介しています。
ツアーコンダクターは、日本語で添乗員と呼ばれます。主に、団体客のツアーの始まりから終わりまでを運営します。スケジュールの管理、宿泊場所や飲食場所の手配、お客様の安全管理、その他さまざまな手続きなどをおこない、当日も同行します。
営業からツアーコンダクターがおこなう場合もあり、営業力、判断力、行動力、体力と複数の能力を求められるハードな職種です。
ツアーコンダクターの仕事は、大きく3つに分けられます。
1つ目は、ツアーコンダクターの仕事のなかで重要な要素を占めているツアーの計画および準備です。お客さんにとって満足度の高いツアーになるかどうかは、ツアーの内容や手配が十全かどうかに左右されます。
旅行先の基本情報を頭に入れたり、ツアー内容に含まれている参加イベントのチケットの手配、参加顧客のリスト確認などをおこないます。お客さんからの質問も想定して、解決できる回答を準備することもあります。トラブルが起きた時の対応も決めておく必要があります。
2つ目は、ツアー当日の進行管理・サポートです。ツアーをスケジュール通りに終了させるためには、時間管理・進行管理が欠かせません。すべてのお客さんがツアーコンダクターの指示通りに動いてくれるとは限らないので、そういった場合も想定しながら管理をおこないます。
またトラブルが起きないよう先導したり、出発時の点呼などもおこないます。
3つ目は、ツアー終了後の報告書の作成と精算です。ツアーの内容をよりよくするため、またトラブルが起きてしまった場合は起こさないための対処法を考えるため、ツアー終了後の報告書の提出は重要な業務のひとつです。
ツアーの準備から終了後の報告までをおこなって、やっとひとつのツアーに必要な業務が完結します。
添乗業務やスケジュール管理、各種予約などをおこなうツアーコンダクターになるには、資格取得が必須です。国内旅行に添乗するには「国内旅程管理主任者」、海外旅行に添乗するには「総合旅程管理主任者」という資格が必要となります。
資格取得には2つのタイミングがあります。ひとつは、専門学校や大学で学び資格を取得する方法で、もうひとつは企業に入社または派遣会社に登録した後に取得する方法です。
もちろん個人で取得を目指すこともできるので、仕事をしながら転職に向けて資格を取得し、ツアーコンダクターに転身することも可能です。
ツアーコンダクターになるためには、まず「国内旅程管理主任者資格」または「総合旅程管理主任者資格」を取得する必要があります。2つの資格にはどのような違いがあり、どのような試験がおこなわれるのでしょうか。その他にも取得すると役立つ資格も合わせてチェックしてきましょう。
国内旅程管理主任者資格・総合旅程管理主任者資格を取得するためには、観光庁長官登録研修機関がおこなう旅程管理研修を受講し、テストに合格する必要があります。総合旅程管理主任者資格の場合は、実地研修として海外で研修をおこなうのが特徴です。
それぞれの受講対象や講義科目などの概要は以下のようになっています。
どちらの資格も2日間と3日間と短期間で取得が可能であるため、挑戦しやすい資格といえるでしょう。旅行業に従事している方であれば実務経験年数も問われないため、好きなタイミングで資格を取得することができます。
参照:旅程管理主任者登録研修
国内・総合管理主任者資格の難易度は、比較的優しいのが特徴です。国内旅程管理主任者資格の場合は合格率98%ほど、総合旅程管理主任者資格の場合の合格率は70~80%ほどとなっています。
数日間研修をおこなうことや、もともと旅行業に関わっている方を対象としていることが合格率の高さの理由です。試験自体が易しいわけでなく、準備をして臨むことができるので合格率が高いのです。
ちなみに、総合旅程管理主任者資格の方が合格率が落ちるのは、英語の試験が含まれていることが関係しています。国内旅程管理主任者資格よりも求められるスキルが増える分、難易度が少々上がるのです。
ツアーコンダクターとして必須の資格以外に、取得しておくと役立つ資格も複数ご紹介します。
上記のような資格は、業務で活かすことができるでしょう。
特に語学に関連する資格は、国内旅程管理主任者資格、総合旅程管理主任者資格どちらの資格を保有している方でも取得しておくことをおすすめします。基本的には英語を話せれば十分ですが、中国語や韓国語、他の言語なども必要な場面もあるでしょう。
それらの資格を取得せずとも、日々勉強しておくことが大切です。
資格を取得した後ツアーコンダクターとして働くには、3つの方法があります。どの働き方をするかによって年収には差があります。
旅行会社ではツアーコンダクター専業になることは少なく、業務のひとつとして添乗業務をおこなうことがほとんどです。添乗派遣会社に登録し、ツアーや修学旅行などに派遣されることが多い傾向にあります。
就職先の企業にもよりますが、旅行会社に就職する場合はツアーコンダクターの業務を専任することはほとんどありません。その他の業務をおこないながら、ツアーコンダクターの仕事も担当します。
月給は約25万円前後、年収に換算すると300万円〜400万円が平均値となります。この基本給に加え、添乗業務が発生した場合は添乗手当や日当が支給されるのが基本です。
手当の額は添乗業務が日帰りなのか、宿泊なのかによっても変動するため、ツアーコンダクターの年収は一概に言うことは難しいのです。
添乗派遣会社に登録し、ツアーコンダクターとしての仕事を得る場合、給料は日給制で支給されることが多いです。国内と海外の添乗を比べると、海外の添乗の方が高くなる傾向があります。国内の場合は7000円~1万2000円、海外の添乗は8000円~2万5000円が平均の日給と言われています。
基本的に日給×日数となり、稼働日数にも限界があるので、必ずしも安定しているとは限りません。日給には幅があり、経験やスキル、派遣先の評価などによって単価は上下します。実務経験を積み、スキルやノウハウを習得すれば、安定した給与やより高い給与を得られるでしょう。
今後のツアーコンダクターは、高齢化社会の進展などによって、手間をなくして快適な旅行を楽しみたいというシニア層が増え、需要が高まる可能性があります。需要が高まれば、単価の上昇や依頼の増加などで収入アップを期待できるでしょう。
ツアーコンダクターは旅程管理の他にも、多くの仕事をおこなわなければなりません。快適な旅を実現したり、旅で起こるトラブルに対応したりするためには、適した資質・スキルを求められます。ツアーコンダクターが持ち合わせておきたい資質・スキルをおさえていきましょう。
スケジュール通りに旅が進むこともあれば、思わぬリスクが降りかかることもあるでしょう。たとえば、急に天気が崩れてしまったり、イベントが予想よりも混雑していたりすると、準備なしでは対応が難しく、旅行客に混乱を招いてしまいます。
思わぬトラブルが起きても対処できるように、あらかじめリスクを想定しておき準備する力が必要です。天気予報やツアーのルート、その日のニュースなどさまざまな情報にアンテナを張り、できるだけ具体的な解決策を準備しておきましょう。
できるだけ準備をしても、旅にはハプニングがつきもので、ピンチになることがあります。天気予報ははれだったのに突如大雨に見舞われたり、トラブルで交通機関がストップしたりしたときに、ツアーコンダクター自身が動揺してしまうと、旅行客も不安にさせてしまうでしょう。
トラブルが起きても不安にさせたいためには、ピンチでも動揺しない冷静さが求められます。日ごろから状況を整理して適切な判断・対応するように心がけるなど、対応力や冷静さを身に付けましょう。
ツアーコンダクターは、旅行客はもちろん、旅に関わるさまざまな人とコミュニケーションをとる必要があります。バスドライバーやホテル・レストランのスタッフ、現地ガイドなどと関係を構築することが旅の成功に欠かせません。
どんな方とでも気持ちのよいコミュニケーションをとれると、よいチームワークが生まれ、旅行をよりよいものにしていけるでしょう。
総合旅程管理主任者が添乗できる海外のツアーや旅行をサポートするには、英語力が必要です。現地ガイドの言葉を翻訳したり、旅行客の言葉を英語で伝えたりするなど、さまざまなシーンで英語を使用します。
現地ガイドがいない場合には、観光地の案内だけでなく、体調不良時の病院とのやり取りや店舗でのスタッフとのやり取りなども、英語でサポートしなくてはいけません。
旅行業という業種の面からいえば、未経験から転職することは可能です。しかし、職業の面からいうと未経験では資格を取得することはできません。なぜなら資格を取得するには、資格取得時に旅行業に従事している必要があるからです。
ですので未経験からツアーコンダクターを目指す場合は、まず旅行業の仕事に転職することから始めましょう。資格は転職後に取得し、その後の更新は5年ごと。主任者証の写しと旅程管理研修修了証明書の写しがあれば有効期限が切れた後も発行を受けることができるので、他の職業で働きながら、派遣として週末にツアーコンダクターの仕事をおこなうことも可能でしょう。
- 著者
- 芦原 伸
- 出版日
こちらの1冊には、カリスマツアーコンダクター・ベテランツアーコンダクター20人に直撃インタビューした内容が詰まっています。ツアーコンダクターの添乗業務や仕事はもちろん、20人のツアーコンダクターが実際に関わった添乗体験に触れられるのが本書の魅力です。
ツアーコンダクターが体験から気づいた生き方や働き方なども綴られているので、ツアーコンダクターとしての働き方や人生の歩き方についても参考になる部分が多いでしょう。
- 著者
- 梅村達
- 出版日
本書は、50歳を過ぎてからツアーコンダクターになった筆者が、ツアーコンダクター業界を赤裸々に綴った1冊です。ツアーコンダクターは旅行会社の社員であることは少なく、ほとんどが派遣添乗員であることをはじめとして、リアリティのある実態が大胆に書かれています。
派遣添乗員の不安定な立場や旅行客からのクレーム、旅行会社との軋轢などネガティブな実態のなかに、添乗員としての喜びや希望も見え隠れしているのも本書の特徴です。実際に派遣添乗員をしているからこそわかるツアーコンダクターのリアルから、キャリアを考えたり、やりがいを見つけたりしてみましょう。
- 著者
- 梁瀬 昌宏
- 出版日
ツアーコンダクターについて書かれた本は多くあるものの、海外添乗員について書かれた本はあまりありません。こちらの1冊は、趣味が海外旅行であることを理由に業界に飛び込んだ、現役海外添乗員の筆者が海外添乗員という仕事を詳しく解説しています。
海外を舞台にして添乗員として働く方法だけでなく、好きなことを仕事にすること、人生でやりたいことを見つけることも、経験を踏まえて綴られた本です。趣味を仕事にし、ひたすら海外添乗員を続けたきた筆者の経験や思いに触れると同時に、海外添乗員についても学んでみましょう。
国内旅行・海外旅行で添乗業務や旅程管理などをおこなうツアーコンダクターになるためには、国内旅程主任者資格または総合旅程管理主任者資格が必須です。旅行会社に入社してから研修を受け資格を取得することもできるので、他の業界から転職することもできます。
ツアーコンダクターとして活躍するためには、トラブルに備えた準備力や対応力、コミュニケーション力などが求められます。ツアーコンダクターについて詳しく理解して、旅行好きの方や旅行に関わる仕事をしたい方はぜひ目指してみてくださいね。