5分でわかる航海士!海技士(航海)国家試験の概要やなり方、収入、向いている人まで解説

更新:2021.12.4

大海原を舞台に船や船員を操る航海士。船の操縦から船内の幅広い業務をこなす仕事で、貨物の輸送や乗客の移動などを支えます。そんな航海士になるためには、海技士(航海)国家試験に合格し資格を取得するのが第一歩です。海が好き、海に関係する仕事で働きたいという方にとっては天職でしょう。やりがいだけでなく年収水準も高いため、満足度の高い職業です。 そこで今回は、航海士の仕事に興味のある方に向けて、仕事内容や国家試験の概要、なり方、収入、向いている人など詳しくご紹介します。ぜひ参考にしてみてくださいね。

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航海士とは

航海士とは、船を操り、船員の指揮をとる仕事です。船の操縦をひとつとっても、GPSや天体情報から現在地を把握したり、気象情報や潮流から最適な航路を選択したりするなど専門的な知識・技術が要求されます。その他にも、船員の指揮や荷物の管理、出入港の指示も主な仕事です。

仕事内容や責任の重さは、航海士の階級によって異なります。

階級に合わせて必要となる海技士資格の等級が上がり、船長は一級海技士、一等航海士は二級海技士、二等航海士は三級海技士、三等航海士は四級海技士資格がそれぞれの必要です。階級が上がるほど、船全体の管理や航行の計画など重要な仕事が多くなります。

航海士が活躍できる就職先や働き方、転職事情

航海士の就職先

航海士は、船を必要とする場所で活躍しています。職場としては、海運会社や商船会社、海上保安庁、漁船、調査船・研究船など。船の種類は、貨物船やタンカー船、コンテナ船、クルーズ船、フェリーなどがあります。

航海士の働き方

航海士は、他の職業に比べて特徴的な勤務体系となっています。一度港を出港すると目的地へ長い航行になるので、休みなしで数カ月間を船のなかで勤務します。また等級により働く時間が異なるのも特徴のひとつでしょう。

  • 一等航海士:4時〜8時、16時〜20時
  • 二等航海士:12時〜16時、0時〜4時
  • 三等航海士:8時〜12時、20時〜0時

一等航海士に属する船長はまた働き方が異なり、細かく休憩を取りながら24時間勤務をこなします。また等級をもたない一般の船員は8時〜17時の勤務となります。

航行を終えると数週間ほどの長期休暇が与えられ、まとまった休暇を過ごすことが可能です。長期勤務と長期休暇を繰り返しながら、航海士として働くことになります。

航海士の転職事情

航海士を目指す方の多くは10代です。国家資格の年齢制限はないものの、受験資格を得るには一定の乗船履歴が求められるため、海事系の4年制大学や専門学校、短期大学の修了は必須はほとんど必須といっても過言ではないでしょう。

また海事系の大学では社会人の編入枠が少ないため、多くの方は新入生として入学しなくてはなりません。長い道のりのように見えて、実際はこのルートが最短コースとなるのです。

そうした理由から30代以上の年齢で転職するには、体力も時間も確保することは難しいでしょう。もちろんなかにはそうした状況のなかで航海士に転職した方もいらっしゃいますが、相当の覚悟や努力、忍耐力が必要となります。

航海士になるには?海技士(航海)国家試験の合格が必要

航海士になるためには、海技士(航海)国家試験に合格する必要があります。受験資格として等級ごとに規定された乗船経験が求められるので、専門知識・技術を学べる学校への進学するのが一般的です。

航海士は国際航海をする「外交船員」と国内航海をする「内航船員」に分けることができ、それぞれで以下のようにルートが異なります。

  • 外交船員:商船高等専門学校→海事系大学→国家試験受験
  • 内航船員:海上技術学校(本科)→海上技術短期大学校(専修科)→国家試験受験

国家試験をパスし無事に海技士(航海)資格を取得した後は、商船会社や船舶会社などの就職試験を受けることになります。欠員を補充する形で求人が出されることが多いので、求人数自体は多いとはいえません。

就職試験に合格して晴れて航海士として働くことができます。

海技士(航海)国家試験の概要

海技士国家試験は、全国にある地方運輸局で筆記試験と口述試験で合否を問う試験が実施されています。海技士(航海)国家試験の概要は以下の通りです。

  • 試験地:札幌、仙台、横浜、新潟、名古屋、大阪、神戸、広島、高松、博多、那覇
  • 受験資格:試験開始期日の15年間以内に、等級に応じた規定の乗船履歴がある者
  • 受験料:筆記2400円~7200円・口述3000円~7500円
  • 試験科目:航海・法規・運用・英語

海技士(航海)国家試験の難易度

2018年海技士国家試験の合格率のデータを参考にみてみましょう。

  • 六級:100%
  • 五級:84%
  • 四級:83%
  • 三級:88%
  • 二級:55%
  • 一級:65%

受験者数や合格者数は同じではないため、純粋に比較することはできませんが、等級に応じて難易度が高くなる傾向があります。

航海士に向いている人

航海士はただ船に乗るだけでなく、船の中で長期に渡ってさまざまな仕事をおこないます。そのため、知識や技術だけでなく、それぞれが持つ資質・スキルも適性を見極めるポイントです。では、どのような人が航海士に向いているのでしょうか。

心身ともに健康で強い人

長期間に渡る航海に臨むためには、心身の健康状態が重視されます。どれだけ知識・技術が優れていたとしても、健康状態で問題が見つかると航海に出ることは許されません。心身ともに強いだけでなく、良好な健康状態を保つために自己管理できる人が航海士に向いています。

チームをまとめる統率力・コミュニケーション力がある人

航海中は、複数の航海士が船に乗り合わせています。チームで業務にあたるので、チームをまとめる統率力やコミュニケーション力がある人が重宝されます。複数人をまとめる経験をしたり、コミュニケーションをとったり、日ごろからスキルを磨いていきましょう。

トラブルに対応できる冷静さ

大自然を相手に仕事をするので、天気や潮流などの変化で予期せぬトラブルが起こるかもしれません。船には計器類が多くあり、それらに問題が起こる可能性もあります。トラブルが発生したときに焦らず、冷静に状況を判断できる冷静さが欠かせません。

日頃から物事に対して複数の選択肢を考え、トラブルに焦らない力を身に付けましょう。

航海士の年収は一般企業より高い水準

航海士は特殊な仕事であり、高度な知識や技術を求められるので、一般企業よりも高めの給与を得られる可能性が高いです。初任給でも30万円ほど得られることが多く、年齢や等級が上がっていくに連れて、月収はさらに上がっていきます。

年収で見ると、平均で500万円以上を超え、船長クラスになると1000万円以上になる場合もあります。

一度の勤務が長期勤務になるものの、まとまった休暇を得られたり、長期勤務中に自宅の生活費や光熱費がかからなかったりするなど、健康面や金銭面でもメリットを得られます。

五級海技士(航海)の受験準備におすすめの本

著者
航海技術研究会
出版日

こちらの1冊には、五級海技士(航海)試験の2014年4月~2018年2月までにおこなわれた定期試験の問題と解答がまとめられています。航海、運用、法規、英語の順にカテゴリ分けされ、そのなかでさらに出題年月順に並べ替えられているので、出題傾向を探りやすいのが特徴です。

模範解答は、詳しい解説を含めて作られています。計算問題や記述問題などの回答の要点をつかむことによって、実際の試験で限られた時間・回答スペースで答えられるようになるでしょう。

四級海技士(航海)の受験準備におすすめの本

著者
航海技術研究会
出版日

航海技術研究会の最近3カ年シリーズの1冊で、四級海技士(航海)の過去3年間の定期試験が収録されています。問題は科目別、出題年月順に配列されており、系統的に学習できるのが魅力です。模範解答は親切・丁寧な解答を目指し、丸暗記ではなく応用できるようにまとめられています。

海技士国家試験の手引きと試験科目・科目細目も完全掲載しているので、初めて試験を受ける方にとって心強いテキストです。

三級海技士(航海)の受験準備におすすめの本

著者
航海技術研究会
出版日

「四級海技士(航海)800題」と同じシリーズの1冊で、過去3年間の三級海技士(航海)の定期試験が科目順・出題年月順で収録されています。海技士国家試験の手引きや試験科目・科目細目も同じく掲載しており、試験について詳しく理解できるのがうれしいポイントです。

「二級海技士(航海)800題」「一級海技士(航海)800題」も発行されているので、受験する級に合わせて活用してみましょう。


航海士は大海原を舞台にして、船の操縦や船員の統率をおこない、貨物の輸送や乗客の移動などで活躍する仕事です。大自然で働くことができるだけでなく、収入が高いことや定期的に長期休暇があることなど魅力が多くあります。

航海士になるためには、等級に合わせた乗船履歴が必要になるので、海事系大学などへの進学が一般的な道のりです。海で働きたい、スケールの大きい仕事をしたいといった方はぜひ航海士を目指してみてくださいね。

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